女だらけの聖戦士伝説に召喚された  真・恋姫†有双……になるはずが(仮)番外編   作:生甘蕉

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4話

 夢から覚めなかったおかげで、夢のような時間を過ごしてしまった。

 これで俺も魔法使いを卒業したことになるのだろうか?

 でも、夢だしなあ……。

 

「どうしたの?」

 ベッドの上、俺の隣にいる裸の美少女が聞いてきた。

「……これってさ、夢だよね?」

「寝ぼけているの?」

 ……いい加減これが夢じゃなくて現実だって認めたほうがいい気がするのは確かなんだけど、華琳ちゃんのような美少女が俺なんかと、なんて信じられない。

 

「なんか急すぎて。華琳ちゃんとの数日前に会ったばかりなのに、こんなことになるなんて」

「……そうね。焦っていたのかもしれない」

「華琳ちゃん?」

「あなたの話を聞いて、自分の死を知って、焦っていたのかしらね」

 自嘲気味にふっと笑う初めての(ひと)

 それだと、別に相手が俺じゃなくてもよかったって聞こえるんだけど……。

 

「コウイチが火球にやられた時に怖くなったわ。このままコウイチが目覚めなかったらと」

「どっちも死ななくてよかったじゃないか」

「あなたのおかげね」

 世界(ゲーム)のシナリオを変えてしまったけれど、気にしても仕方がない。華琳ちゃんが生きていた方がいいし、この世界は聖戦士伝説と似ているようで違うのだから。

 もし、華琳ちゃんが生き延びたことでなにか不具合が起きてしまったら俺は全力で対処しようと思う。

 ……だって俺の大事な女の子だから。

 

「……そう言いながら手、どこをまさぐってるのさ」

「だって、さっきは痛かっただけだから」

「初心者でごめんなさい」

「こっちの方にはレベルが関係ないのね?」

 そりゃ俺が見えてるのはたぶん、戦闘レベルだからして。

 ステータスのTECの値が高くても、命中率や与えるダメージに影響する操縦技術の値であって、テクニシャンなワケじゃないから。

 

「ま、まだするの?」

「嫌なの? ……ここは嫌だとは言ってないわね」

 あんたは陵辱ゲーの主人公ですか?

 流されるまま、俺たちの初めての作業が再開される。

 

 ガロウ・ランの討伐が怪我人もなくあっさりと成功したという報告を聞いたのは翌日だった。みんなに戦わせて俺はお楽しみって……。

 

 

 

 それから数日は強獣の森に通って、家老の稟、風や他の騎士のレベル上げと資金稼ぎを行った。いやー、ドロ便利だわ。

 夜は華琳ちゃんと王族の大事なお仕事。この分だとマジに子供ができちゃいそう。いいのかなぁ……。

 

 リの騎士はかなり底上げされ、もしかしてオーラマシンの発達してない今なら楽にバイストン・ウェルを征服できちゃうんじゃないかという状態。

 冗談で華琳ちゃんにそのことを言ったら、「やりたいならやってみなさい」と返されてしまった。

 

 むう。たしかにレベルカンスト竜騎士団ならできるだろうけど……オーラバトラーよりは危険が伴うよな。弱いとはいえ、ゲドは各国に出回ってるだろうし、独自に改良している国も多い。

 それに、そのことがもしもジャコバ担当のフェラリオの怒りに触れて、P-(パンツァー)ドラグーンやレベルカンスト(オーバー)の者が、排除の対象になっても困るか。

 やっぱりある程度、聖戦士伝説のシナリオ沿いに動こう。

 ……俺がオーラバトラーに乗りたい言いわけかもしれないけどさ。

 

 

 

「精戦士、あんたを殺すー!」

「殺すな! あとなんか字が違う!」

 目の下に隈をつくった桂花ちゃんが殴ってきた。

「殺すってワリにはひょろひょろな攻撃だけど、身体だいじょうぶか? 顔色悪いぞ」

「あー、たいちょのせいで桂花が怒りで眠れないって、ここんとこ徹夜が続いてなあ」

 そういう真桜も寝不足っぽい顔だ。

 

「俺のせい?」

「あんたが華琳さまと……そうよ、これは夢、悪い夢なのよ!」

 やっぱり桂花ちゃんも夢だと思うか。でも、夢じゃないみたいなんだよ、これ。

「あかんでー桂花、夢なら寝て見んと。もうアルダム完成したんやし、思い残すことはないやろ?」

「あるわよ! 完成したんだから華琳さまに褒めていただくに決まってるじゃない!」

「桂花ちゃん、華琳ちゃんに会うなら鏡見てからの方が……。酷い顔してるよ」

「くっ。あんたに酷い顔なんて言われるとは……」

 桂花ちゃんは半泣きで走って去った。

 

「悪いことしちゃったかな?」

「ええて。アルダム完成も報告したし、うちも寝るわ」

「あ、ああ。ご苦労様」

 欠伸しながら真桜も部屋から去った。

 そうか、アルダムが完成したか。これでやっとオーラバトラーに乗れるな!

 

「遅いですよ、コウイチ殿」

 執務室につくともうリの首脳みんなが揃っていた。

 ……いや、華琳ちゃんがいない。今日は城下町を見てくるって言ってたけどあれマジだったのか。春蘭たちにはばれないようにしないと……。

「ごめん、途中で桂花たちに捕まっちゃって。オーラバトラー、アルダムが完成したよ」

「そうか。こちらは貴様が言った通りに麗羽の使者がきたぞ。やはり、貴様にこいと言っていた」

「姉者、省きすぎだ。麗羽の領内に多数の強獣が出たので、駆逐するためにラース・ワウの部隊を派遣するのだが、リに助勢を求めてきた。それも騎団の指揮はコウイチを名指しでな」

 うん。聖戦士伝説と同じだね。

 

「どうする?」

「予定通り、断る旨を使者さんに伝えておいて」

「いいのか? 結局出陣するんだろう?」

「1度は断らないと、ドレイク値……麗羽の好感度が上がっちゃうからね」

 聖戦士伝説ではドレイク値という隠しパラメータがあって、これによってシナリオが分岐する。俺たちが目指すルートではこれは低い方がいい。

 

「そんなものか?」

「そんなものだよ」

「わかった。麗羽の使者についてはもういい。華琳さまはどうした?」

 まずい。ここはなんとか誤魔化さねば。

 でないと俺の命が危険な気がする。

 

「いや、まだアの地方領主で麗羽のライバルの話を聞いてない」

「そんなものは知らん!」

 いや、知っていてよ。ザン団長担当でしょ。

「白蓮ですね。麗羽と国政などにおいて、何度か衝突しています。最近は両者は険悪な関係ですね」

「白蓮さんは、領民に慕われる良き領主という噂ですねー」

 稟と風が教えてくれた。そうか、ロムン・ギブン担当は白蓮っていうのか。他の情報は聖戦士伝説と同じね。

 

「ほら、麗羽もそんな敵がいるんだからさ、恩を売っておこうよ。うん、出陣しよう!」

「わかりました。麗羽に使者を出しておきます」

「春蘭。出陣の準備をお願い。強獣蹴散らして、華琳ちゃんに活躍したって報告しようよ」

「うむ。リの騎団、出陣するぞ!」

 ……ふう、なんとか誤魔化せたか。

 

 

 

 ギナの町に到着した俺たちは、すでに戦いを始めていた麗羽軍に合流する。

 乗機の風防(キャノピー)を開いて猪々子のゲドに近づく。

 オーラバトラーの風防はマジックミラーのようになっていて外からは中が見えず、自分が誰かわかってもらうにはこうするのが手っ取り早い。

「加勢するぞ! 猪々子殿!」

「えっ? 聖戦士? なにそのオーラバトラー?」

「リの国オリジナルのオーラバトラー、アルダムだ」

 せっかく完成したので乗ってきてしまった。1機しかないので俺だけだけどね。

 他には凪がゲドに乗っている。真桜に要請されて何度かゲドを動かしたことがあったらしく、操縦も手馴れた感じだ。

 その真桜は徹夜明けで出撃できそうになく、沙和は華琳の護衛に一緒に城下町に行っている。おかげで結局春蘭にばれて怒られてしまった。

 春蘭と秋蘭はP-ドラグーンだ。彼女たちはレベル差の問題からまだレベル爆上げをしてないのであまり戦闘には出したくないのだが、他国での国王代理の出陣に将軍が同行しないのはおかしいと、ついてきてしまった。レベルカンスト超の乗るオーラバトラーが2機もあれば余裕なんだけどなあ。

 

「猪々子殿は避難した住民の保護を。ここは俺たちでなんとかする」

「助かるぜ」

 猪々子のゲドと他のオーラマシンが住民の避難先に移動していった。

 これで経験値泥棒されないですむ。ま、カンスト超えした俺と凪には入らないんだけどね、経験値。

 

「ドラウゲン、ガッターともに3頭か。春蘭、秋蘭、ガッターを頼む。俺と凪はドラウゲンをやる」

「わかった」

 ドラウゲンの方がガッターよりも強いが、もはや敵ではない。

 返事と同時に春蘭たちはP-ドラグーンを飛ばし、俺と凪もドラウゲンを狙う。

 

「悪いが、試し斬りさせてもらう」

 素早くドラウゲンの後方に回り込んだアルダムがその鋭く長い3本指に握らせた剣を振るう。碧光のエフェクトが現れ、斬られたドラウゲンが墜落していく。

「クリティカルが出たとはいえ、一撃とはすごいのお」

 祭が驚いているが、こんなもんでしょ。それぐらいオーラバトラーは強いのよ。……アルダム急いで量産してバイストン・ウェル征服、迷うな。

 

 凪もゲドを傷つけることなく戦闘終了。

「やはりオーラバトラーは強いな」

「それを操るコウイチたちもだ、姉者」

「むう。わたしたちも早くレベルを上げたいぞ!」

 そのためには、戦闘に参加してほしくなかったんですが……。まあ、2人のレベルも上がらなかったからいいか。

 

「さすがは聖戦士だねー」

 ゲドが風防を開けながら近づいてきた。

「猪々子殿、そちらは?」

「住民は無事だぜ。いやー、助かったよ。付近を荒らし回ってるガッターも残り少ねーみてーだし、あとはあたいたちでやります」

 口調が騎士っぽくないんで俺もやりやすいけど、本当にこの娘がバーン担当なの? ……戦記版の綺麗なバーンなのかもな。

「そうか。なら俺たちはトルールに戻るよ。麗羽殿によろしく言っといてくれ」

 まあすぐに呼び出されるんだけどね。

 

 

 そして数日。

 アルダムのデータを取ったり、強獣の森で稼いだり、華琳ちゃんにしごかれながら政務を覚えたり。

 ……聖戦士伝説の主人公って書類に目を通してサインとかしてたっけ?

 バイストン・ウェルはテレパシーっぽいので言葉はわかるけど、文字にはそれが通用しないのか読み書きを覚えるのも大変だ。

 みんなの名前が俺の脳内で漢字変換されてるのは、意訳なのかな?

 

「祭、これなんて読むんだっけ?」

 だが俺には携帯用の翻訳機がある。祭は記憶喪失のわりに物知りだ。

 いつもいっしょにいてくれるんで助かるなあ。

 華琳ちゃんとの閨の時は祭は気を利かせてどこかへ飲みに行ってるけど、どこで飲んでるんだろうね? 戻ってくると本当に酒臭いし。

「コウイチ、秋蘭がお前にこいと呼んでいるぞ」

 麗羽の使者がきたのかな?

 

 謁見室に急ぐと、将軍2人と明命が待っていた。

「たった今、アの麗羽から使者がきた。今度は華琳さまに来いと言っているぞ」

「姉者……見せたい物があるから、ラース・ワウに来いと言っている。国王直々に見てほしいとな」

 ああ、そんな話だったっけ。オーラシップを自慢されるとしか覚えてなかった。

 

「どうしよう華琳ちゃん、そろそろ表に戻る?」

「私が死んで、あなたが国王になっていると思っている麗羽に悔しい顔をさせるのも面白そうだけど、まだ早いわ」

 なんだろう、華琳ちゃんって麗羽と仲が悪いんだろうか?

 

「ならば、王は重体故に代理の者を赴かせるとします」

「ええ、コウイチ、あなたの話ならオーラシップを見せられるのでしょう? それの購入をお願い」

「そんなに性能はよくないけど……わかった。倒した強獣を運ぶのにも使えるから無駄にはならないか」

 強獣の森での資金稼ぎ、強獣の死体を運ぶのが大変なんだよね。

 

「明命、他には?」

「多数のガッターがビアンの町に侵入、住民に被害が出ています」

「ビアンの町はアとの国境とは逆方向ね。ラース・ワウには少し遅れると使者に伝えなさい」

 華琳ちゃんは国民を見捨てないでほっとした。フリーシナリオって、こういう行き先がおかしいのも多いから、それこそ足の速いオーラシップがほしいんだよな。聖戦士伝説では手に入らないけどさ。ゼラーナ鹵獲できればいいのに。

 

 

 ラース・ワウに到着。ビアンの町のガッターは簡単に撃破できた。今回は3騎士勢ぞろいしてたからね。オーラバトラーには俺と凪しか乗ってなくたって、今さらガッターなど敵ではない。ラース・ワウへの移動の方が面倒だったぐらいだ。高速船ほしいなあ。

 

「ご足労かたじけないですわ、私が麗羽ですわ!」

「……コウイチです。リで聖戦士と国王代理やってます」

 驚いた。どんなやつかと思ったら、華琳ちゃん以上の縦ローラーさん。金髪で胸も大きな女性だ。これがマジにハゲ親父(ドレイク)担当なの?

 

「コウイチさんのお噂はここラース・ワウにまで届いてますわ。お会いできるのを楽しみにしておりましてよ。おーほっほっほ」

「そ、それより、見せたい物ってなにかな?」

「先日、我が配下の者が新たなるオーラ・マシンを開発しましたのよ。オーラ・シップ、ナムワンですの。城の中庭に待機させておりますわ。そこの窓から見えましてよ」

 言われるままに窓を覗けば、巨大な戦艦が浮いていた。前知識はあっても、実際見るとでかいな。

 

「ナムワン……」

「ルグウよりもでかいのう……」

「空を飛ぶ戦艦ですわ。荷だけでなく兵やオーラ・マシンを迅速に戦場へ運ぶことができますのよ。おーほっほっほっほ!」

 驚愕する俺と祭に得意気に高笑いする麗羽。

 

「いかがかしら? コウイチさんさえよろしければ、あのナムワンの設計技術、リに譲渡してもよろしくてよ」

 譲渡、ねえ。聖戦士伝説ではそんなこと言っておきながら、結局はくれなかったよな。こっちだとどうなんだろう?

 

「わかった。華琳王に伝えておくよ。オーラシップを貰ったって」

 試しに貰うって明言してみた。

「亡き華琳さんに……かしら?」

 うわ、すごいドヤ顔だ。これは華琳ちゃんに見せてあげたい。

「……っ」

 やばい。

 今にも爆笑しそうなのを、なんとか耐える。笑ったらバレてしまう。華琳ちゃんに怒られる。電車内で見ている漫画に笑いそうになるのを堪えるのの何倍もキツイぞ、これは。

 

「華琳さんが逝去なさったことは、もはや各国に知れ渡っておりましてよ、聖戦士コウイチ。いえ……コウイチ王?」

 やめて。追い討ちかけないで!

「…………」

 俺が答えられないのは図星と判断して、麗羽は続ける。

「コウイチ王、私は華琳さん亡き後も、リとは友好な関係を保ちたいと思っておりますわ。……泣くほど悲しいのですね。華琳さんは慕われておりましたのね。お悔やみ申し上げますわ」

 涙が出てるのは、笑ってるのを堪えすぎたせい。でも、今の台詞で笑いから怒りにスイッチが変わったんでもうだいじょうぶだよなにが「お悔やみ申し上げます」だ、お前が黒幕じゃないか。春蘭いなくてよかった。いたらブチ切れてたよ、きっと。

 

「友好な関係はリとしても願っていますよ」

 有効なオーラマシンの開発部として、ね。内心はともかく、にこやかに返答したよ、俺。

「どうかしら? これから我が機械の館を案内したいと思いますわ」

 俺の心の声が聞こえた? ……いや、これも聖戦士伝説と同じか。ショットとゼット、それにマーベル担当の地上人を紹介してくれるのだろう。

「拝見させて頂きましょう」

「それではこちらですわ」

 

 案内された機械の館はリのものよりも大きく、設備も整っていた。

「すごいのう、ごちゃごちゃした物がいっぱいじゃ……」

 物珍しそうに見回す祭。さっきは急にいなくなっていたから、どこか見えないところで笑ってきたんだろう。

 

「麗羽様?」

 現れたのは、予想外にも美少年。ショット担当は女性じゃなかったのか。

 女ショットが出てきたダンバインの漫画、昔あったな。あれ、続きどうなったんだっけ?

 

「干吉さんたちを紹介しようと思ったのですわ。こちらは、リのコウイチ王ですわ」

 正確には王代理、だけどね。

「お初にお目にかかります。麗羽様の下でオーラマシンの開発を行っております、干吉です」

「リのコウイチです。干吉君はもしかして地上人ですか?」

 軽く先制攻撃。その程度のことじゃ俺は驚きません。

「さすがですね。数年前に偶然このバイストン・ウェルへと召還されました」

 数年前ってもっと若いよね。もしかして麗羽、ショタっ子にオーラマシン開発させたの?

 その後、なんかパラレルワールド論を干吉君に聞かされたけど、あれ? こんな話、聖戦士伝説でしたっけな?

 

「同じ地上人同士で話がすすんでおりますわね。実は先日、このラース・ワウに、新たな地上人が2人招かれておりましてよ」

 自分が入れない会話が面白くなかったのか、麗羽が割り込んできた。

 

「ご紹介いたしますわ。この2人が新たに召還された地上人さんですわ」

 出てきたのは1人は美少年、1人は美少女だった。まさかマーベル担当が美少年じゃないよね?

「左慈だ。干吉のところでオーラマシンを開発している」

「コウイチです」

 ふう。美少年の方がゼット・ライト担当みたいだ。……ってそれだけ? もう喋ってくれないの?

 睨まれてる気もするし、もしかして怒ってるのかも。作業の邪魔しちゃったのかな?

 

「……関羽だ。巨人騎士の試乗を担当している」

「どうも。コウイチです」

 名乗ったのは綺麗な長い黒髪の巨乳美少女だ。ダンバインのヒロインなマーベル・フローズン担当なんだろう。関羽か。三国志みたいな名前だね。

 

「2人とも、先日より力を貸してもらっていますの。特にこの関羽さんはかなりのオーラ力の持ち主。我が機械の館が現在開発中の新たなオーラバトラーを使いこなしてくれるのが楽しみですわ」

 また出しゃばってきたよこの人。目立つのがすきなんだろうなあ。服も派手だし。

「新たなオーラバトラー?」

「開発中ですので」

 詳しいことは教えられないか。まあ、関羽がってことはダンバインなんだろうな。聖戦士伝説では弱かったけど、こっちではどうなんだろう? 気になる。

 

「……麗羽様」

 伝令の兵が麗羽を呼びにきた。クの国の使者がきたらしい。

「麗羽殿。気になさらずむかってください。そろそろお暇しますので」

「しかたありませんわね。では干吉さん、コウイチ王をお送りしてさしあげなさい」

「あ、さっきのくれるっていうナムワンは持ち帰っていいのかな? あんなのをタダでくれるなんて、麗羽殿の器は地方領主では小さすぎますな」

「ええ! もちろんですわ。すぐに準備させますわ」

 嘘、マジでタダでくれるの? この人だいじょうぶなんだろうか……。

 いや、タダほど怖いものはないって言うしな。あとで恩に着せる腹かもしれん。……まあいいか。

 

 麗羽は慌しく去っていった。クの国の王、ビショット・ハッタ担当がどんなのかも気になったけど、それは今度でいいか。

「さて、城門はこちらですよ、コウイチ王」

 干吉君がさっさと俺を帰そうとする。やっぱり邪魔なのか。

「干吉、私がコウイチ王をお送りする」

「……わかりました。お願いします」

 ここの展開も同じか。近いうちにラース・ワウを脱出する予定で緊張しまくりの関羽に見送られて、俺は帰路についた。

 ナムワンは遅かったけど、けっこう快適だったからもらえてラッキーだったよ。

 

 

 

 城に帰ると華琳ちゃんたち首脳陣と会議。

「お帰りなさい。麗羽はどうだった?」

「……濃かった。あ、ナムワンもらってきたよ」

 ナムワンは城の外に着陸中だ。あとでドックを用意しないといけないだろう。

 

「そう。麗羽は私が死んだと言っていたのね」

「うん。笑いを堪えるのが大変だった」

「ふふ。その顔は見たかったわね」

 ……麗羽のドヤ顔と、俺の堪え顔、どっちのことだろう?

 

「それにしても、私が死んだと確信して上機嫌とはいえ、ご自慢のオーラシップをタダで寄越すとは……あれらしいわね」

「やっぱりそんな感じなんだ」

「ええ。麗羽を動かしているのは虚栄心かしら。見栄っ張りなのよ。だから、愚王の下にいる今の地位が気にくわないのでしょう」

「下克上は確定か」

 聖戦士伝説でもそうだったもんな。麗羽(ドレイク)は仕えている国王に反旗を翻す。その後、バイストン・ウェル制覇を狙って他国に戦を仕掛ける。

 あの大きな機械の館は、その為の軍備拡張に他ならない。

 

「むこうの聖戦士はどうだったのかしら?」

「うん。可愛い娘だったよ。オーラマシン開発者は2人とも少年だったけど」

「なんですって!」

 あれ? そこそんなに気になる? ……やっぱりおっさんよりも若い子の方がいいの……?

 

「まさか聖戦士が美しい女性だなんて……」

「そっち!?」

 ちらりとこちらを見る華琳ちゃん。なんですかその、今にも「チェンジで」とか言い出しそうな表情は。

 華琳ちゃんは若い男よりも、美少女の方がよかったのか……。

 

「その聖戦士殿ですが、やはり脱走計画があるようです」

 ラース・ワウを調査していた明命からの報告。

「麗羽のやり方が気にくわず、技師数名とともに脱走計画を企てています」

「ほしいわね。死んだフリなんてしてないで私がラース・ワウに行くべきだったわ」

 もし華琳ちゃんが行ってたら、ナムワンじゃなくて関羽をお持ち帰りしていたんだろうか?

「明命、引き続き調査を。もしも機会があればこちらに引き込みなさい」

「はいっ」

 相変わらず明命の返事がいい。

 

「よろしいでしょうか?」

 伝令の兵士がアの国から使者を伝える。

 これは、麗羽ではなく、そのライバル領主の白蓮からのはず。俺は華琳ちゃんと目配せして、謁見室へと向かった。

 華琳ちゃんはまだ死んだことにするらしく、ついてきてはいない。隠れて見ているのだろう。どこに隠れているかは教えてもらっていない。俺はまだ、顔に出るらしい。

 

「始めまして、聖戦士コウイチ王。アの地方領主、白蓮ちゃんの名代、桃香です。よろしくお願いします!」

 やっぱりニー・ギブン担当も美少女ですか。この娘も巨乳だな……うっ、なんか今ゾクッとしたけどこれ殺気? もしかして俺が胸に注目していたのが華琳ちゃんにバレた?

 

「……王様?」

「あ、ごめん、なんでもないよ。それよりもここにきた用件は?」

 桃香……モモか。だからニーなのかな。やつの髪型ってミンキーなあれからきてるんだし。

「アの地方領主、麗羽さんが反乱を企てているんです。本当ならアのわたしたちだけでなんとかしたいけど、麗羽さんとこが強すぎて……。だから、聖戦士様の力を貸してください!」

 ……え? それだけ? なんだかずいぶん省略というか簡略化されてるような。

 

「ふん、アの内乱にリの軍を動かせと言うのか?」

 冷たく問う春蘭にも退かず、桃香は返答する。

「難しいのはわかっています。でも、麗羽さんがアを手に入れたら、次は近隣諸国をほしがって、戦火が広がるだけだと思うんです。そんなことになる前に力を貸してください」

 むう。もしかして俺には難しい言い回しはわからないと、簡単な話にしてくれてるのだろうか?

 

「稟、風、どう思う?」

 前もってこの話は会議済みだ。ギブン家……白蓮に協力するか、否か。

 これも重要な選択だ。この決定でロウルートとカオスルートのどちらに向かう決まり、第3章以降が大きく変わる。

 どちらを選ぶかはすでに決定済みだったのだが、一応2人に確認を取った。

 

「私は王の決定に従います」

「風もですよー」

 王とはつまり華琳ちゃんのことで、予定変更はないってことか。

 

「わかりました、桃香殿。しかしリの国としては白蓮殿には力をお貸しできません」

 俺たちの選択はカオスルートだ。なぜならロウルートではバイストン・ウェルで決着をつけられなければ全滅エンドだから。グッドエンドでもね。

 そんな危険は冒せないでしょ。

「そんな……」

 泣きそうになる桃香。うう、断りづらい。けどやるしかない。

 

「ごめんね」

「ううん、こっちこそ無理なお願いしてごめんなさい。それじゃ、白蓮ちゃんにこのことを、急いで報告しなきゃ!」

 ……強いな。泣き顔から一転、一礼してさっさと行ってしまった。というか涙はなかった。あれは演技? 女って怖い。

 

「ふぅ……次はフリーシナリオか」

 フリーシナリオは別にやらなくても話が進む戦闘イベントなんだけど、町が強獣に襲われてるといった類のが多くて、結局はこなさなきゃいけないんだよ。特にゲームじゃなくなっている今はね。

 今回のもアッサーブの森に異形の飛竜が出たっていうのだし。やるしかないでしょ。付近の住民が不安がってる。

 

 ラース・ワウの聖戦士、関羽の脱走は麗羽に教えるつもりはない。

 関羽はきっと桃香の下に身を寄せることになるんだろう。

 

 

「なんじゃ、あの白い飛竜、戦闘のどさくさに紛れて逃げおったぞ」

 アッサーブの森の戦闘が終わると祭が呆れた。

 他のドラウゲンに攻撃されていた白い飛竜を助けるというイベントで、オーラマシンを開発していなければ、その白い飛竜、パンツァー亜種が手に入るんだけど、今回は逃げられた。オーラマシンを開発しちゃっているからね。

 無理矢理捕獲したり、ここでパンツァー亜種を入手するまでオーラマシンを開発しないって手もあったけど、そこまでしなくてもかまわないでしょ。

「いいよ、手に入っても面倒見なくちゃいけないしね」

 強いユニットだけどレベルカンスト超の騎士たちがいるし、ドラムロが入ったら用済みになるからさ。

 

 城に戻ると、関羽がラース・ワウを脱出したという報告。やはり桃香たちが手引きしたらしい。華琳ちゃんが悔しがっていた。

「これで第2章は終了か。次はカオスルート第3章。気を引き締めないと」

「あら、今までは気を緩めていたのかしら? それと、私のレベル上げを忘れないように」

「はい……」

 でもさ、ここんとこの王族の重要なお仕事で、もしできちゃってたりしたらさ、華琳ちゃんには戦闘に参加してほしくないんだけどなあ……。

 万が一のないようにできるだけ高くレベルを上げておくしかないか。

 

 

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