女だらけの聖戦士伝説に召喚された  真・恋姫†有双……になるはずが(仮)番外編   作:生甘蕉

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8話

 アの国の王、通称愚王何進を倒すべく、地方領主麗羽がついに反乱を起こした。

 麗羽とは協力関係にあるリの国もそれに参加する。

 

「華琳さま! ようこそいらっしゃいました!」

「斗詩か。久しいわね。猪々子は元気?」

 斗詩。この子がガラリア・ニャムヒー担当っぽい。女の子でよかったなあ。性反転配置で貂蝉みたいな化け物だったらと思うとぞっとしない。

 

 斗詩に案内され、軍議の場へ。

「よく来てくださいましたわ、華琳さん」

「挨拶はいいわ。作戦を説明なさい。近いのでしょう?」

「遅れてきたのは華琳さんですのに……」

 だって、流琉ちゃんと明命のレベル上げしてきたからさあ。うん、ちゃんと2人ともレベルカンスト(オーバー)だよ。

 

 俺たちがレベル上げしてる間に華琳ちゃんたちはルーバックに駐屯していた黒金の刃騎士団も倒してきた。ゲドで編成された騎士団でゲドを動かせるぐらいには強かったけど、しょせんゲド。敵ではなかったようだ。

 

 編成はこんな感じ。

 レベル上げ班。バハムウト(沙和)、ダンバイン(俺)、ブラウニー(流琉ちゃん)、ブラウニー(凪)。

 黒金の刃騎士団攻略班。ビヒモス(秋蘭)。ブラウニー(華琳ちゃん)、ブラウニー(春蘭)、ブラウニー(季衣ちゃん)、ブラウニー(真桜)。

 流琉ちゃんはレベル上げに使用したドラムロから乗り換え済み。もちろん他にオーラシップの船員もいるよ。

 明命は狩った強獣を置いていくためにトルール城に戻った時に別れた。今頃はまた情報を集めているはずだ。

 

「斗詩さん」

「はい。我が軍は……」

 斗詩の説明によれば麗羽軍は明朝、エルフ城へと攻め上る。

 第1陣はオーラマシン隊で敵兵力の無力化。

 第2陣は騎兵隊と攻城兵器による制圧作戦。騎兵隊と攻城兵器はオーラシップで輸送する。

 本陣にはラウとゼラーナの対策にドロ中心の防衛部隊を付近の砦に待機させる。

 うん。これも聖戦士伝説と同じ。ならばこの後も予定を変えないで済みそうだ。

 

「ふむ。ならばリの騎団は本陣の守りを固めましょう」

「あらあら、エルフ攻めを私に任せてよろしいんですの? てっきりこの間のように出しゃばってくるかと思いましたわ」

 小喬ちゃんを確保した時のことをまだ根に持ってるのか。ちなみに小喬ちゃんは別に牢に入れられることもなく、トルール城でのんびり暮らしている。美羽ちゃんや季衣ちゃんたちともよく遊んでいるよ。

 

「あなたたちにエルフ城、落とせるのかしら?」

「落としてみせますわ! おーっほっほっほ! 斗詩さん、守備隊の指揮は任せますわ」

「は、はい」

 ガラリアは父親が敵前逃亡した騎士で卑怯者の娘として苦労してたけど、斗詩はなんか別の方向で苦労してそうな……。

 

 

 早朝、兵の士気を上げるための麗羽の演説がおわり、作戦が開始される。

 本陣では守備隊を任された斗詩が猪々子を心配していた。

「いっつもすぐに突っ込んでっちゃうから不安です。私がついていなくてだいじょうぶかな……」

 あれ? ガラリアとバーンって仲が悪いんじゃなかったの?

 ここは聖戦士伝説と違うようだ。

 

「心配ばっかりじゃなくて、準備もしておいてね。ゼラーナの連中がくる可能性が高いから……」

 言ってるそばから爆発音だよ。麗羽軍の兵士がかけてくる。

「敵襲です! ゼラーナが!」

 タイミングよすぎ。まさかこっちの会話を聞いていて出番を待っていたんじゃないだろうね。

 

 本陣を任されるだけあって斗詩の指揮はしっかりしていて、麗羽軍のオーラマシンが次々と発進していく。斗詩もオーラバトラーで出撃した。

 もちろん俺たちも出撃する。

 

「やっぱりバストールか」

 斗詩はピンクの細っこいオーラバトラーに乗っていた。ガラリア担当確定だろう。

 ゼラーナ隊はダンバインとボゾンにダーナ・オシーが2機か。ボゾンのあの武器、マジで青龍偃月刀っぽいな。ゼラーナの格納庫に入る時、邪魔にならないのか?

 

「ダンバインは俺が!」

 どうしても確認したいことがあったからね。

 白バインに向かって飛びながら叫ぶ。

「聞こえてるだろ、北郷」

「なんだ? コウイチか?」

「よくも典韋を撃墜したな! 殺すつもりだったのか?」

 白バインは俺の赤バインに向けてオーラショットを発射、と同時に返答。

 

「他に方法がなかった!」

 なんという言いわけ。しかも攻撃しながらとか。

 もちろんレベルカンスト(オーバー)の俺はそんな攻撃には当たらない。

「美少女を殺すのがお前の正義か!」

「美少女かどうかなんて……」

「典韋ちゃんは美少女だろうが! つか、ゼラーナ隊が今戦っているリの騎士はみんな美少女だ! それでも攻撃するというなら、貴様は敵だ! 絶対に許さない!」

「くっ!」

 よほど動揺したのか、お返しに放ったオーラショットが命中してしまった。かすった程度だろうけど。

 

「退いたか。まだ彼とは話ができる余地があるみたいだ……」

「いや、普通に不利を悟って撤退しただけじゃろ」

 そうかなあ。

 斗詩もガラリアとは違い、深追いしようとはせず、そのままゼラーナは撤退した。

 

 

 エルフ城攻めをした猪々子の方は、無事に帰ってきたが作戦は失敗。

「猪々子さん、おしおきですわね」

「あら、自分たちだけでエルフ城を落とせると判断した麗羽の失敗なのではないかしら? 責任を猪々子だけに押し付けるのは見苦しいわよ」

「くっ。……猪々子さん、わかってますわね!」

「次は成功させます!」

 華琳のフォローによって猪々子はおしおきを免れたらしく、その後お礼を言っていた。そんなにキツいおしおきなんだろうか?

 

 会議という名の反省会中に、振動と爆音。

「またゼラーナか」

 北郷は答えを見つけたのかな?

 

 

「ゼラーナ隊だけじゃなくてゲドも一緒か」

「あちらさんも必死なのじゃろうよ」

 それでも、昼間よりもゼラーナ隊のダーナ・オシーの数が少ない。修理が間に合わなかったか。

 

「コウイチ!」

 今度は白バインの方から俺に向かってきた。夜間は目立つな、あの色は。

「答えは出たのか?」

「あんなのわかるか! だけど……だけど、これだけは言っておく! ゼラーナ隊の女の子たちだって、みんな可愛い!」

 むう。彼も漢のようだ。

 昼間その場で言ってればさらにかっこよかっただろうに。

 

「そんなの知っている。だからゼラーナ隊は誰も死んでないだろう!」

「なっ、手加減してるとでも言うつもりか?」

 手加減しなくても、聖戦士伝説的には死なないんじゃないかなー、とは思っているけど万が一のこともあるから出来る限りコクピットは狙っていない。それでも殺しちゃう時はあるんだけど言う必要はないよね。

 

「わかったら、さっさと撤退しなさい。見逃してあげるから」

 じゃないと明日の朝に響きそうだ。おっさんを徹夜させないでよ。

「くそっ」

 話してる間にゲドが全滅したのに気づいたのか、やはりゼラーナ隊は撤退していった。

 それにしても、みんな可愛いのか。桃香も関羽も美少女だったし、不鮮明な写真だった他の娘たちもか……貂蝉は数に入ってないよな。

 なんとか死なさないで済ませたいな。

 

 

 明朝の再びのエルフ城攻めのために寝ようとしたら、明命が合流して報告。ジームルグに同乗したのか稟もきていた。

 鉱山を再開したザラルの森近くでラウの偵察部隊らしきオーラバトラーを発見したとのこと。

「このタイミングでというのがやらしいですね」

 リの主力騎団が留守中を狙ったか。聖戦士伝説だと騎団の移動に時間を消費しないから忘れてたけど、実際にやられるとたしかにやらしいな。

「リの資源を狙うとは、許せるものではないわね」

「騎団を2つに分けましょう」

「ザラルの森には急ぐためにもバハムウトね。エルフ城攻めにはビヒモスを使うわ。春蘭、季衣、流琉、残りなさい」

 華琳ちゃんも残るつもりか。

 ブラウニーが4機もあればエルフ城攻めにも不安はないだろうけどね。

 

「俺もこっちに残るよ」

 じゃないと予定的に困る。

「ビヒモスには収納できないわよ」

「フォウを残してってくれればいいよ。もう無線操縦、できるようになってるんだし」

 ウィングキャリバーの無線操縦装置は既に開発済み。自動操縦はまだだ。

 

「なにかあるのね?」

「北郷の相手をしなきゃいけないだけだよ」

 探るような華琳ちゃんの眼差し。

「……まあいいわ。凪、沙和、真桜、明命。ラウの盗賊を殲滅してきなさい!」

 ちょっと心配だけど、3騎士だけじゃなくて明命もついているなら数が少なくても平気だろ。

 

 

 翌朝。今度は失敗できないと麗羽は新しい聖戦士3人も出撃させるらしい。

 会っておきたいけど、こっちも準備があるので先送り。そのうち機会もあるだろう。

 

 エルフ城に近づくと、白バインが迎撃に上がってきた。

 昨日の今日でまたくるか。元気だなぁ。

「コウイチさん、お下がりください! ウィングキャリバーとドッキングしたままでは無理です!」

「やれるさ!」

 せっかくこの為にフォウを残してもらったんだ。分離するわけにはいかないの。

 こっそりと必要な荷物も積み込んだんだし。

 

 俺の赤バインはドッキングしたまま、白バインの剣をフォウの鎌で受ける。

「コウイチ! あんたみたいのがいるから麗羽がつけあがるんだ!」

「えっ、麗羽の性格は俺のせいじゃないでしょ?」

「だからって!」

 ……北郷のオーラ力が増大しているな。予定通りだ。

「俺もがんばらないと!」

 気合を入れたのがよかったのか、ダンバインが七色に輝き出した。

 フォウを持っていけるか不安だったけど、これで上手くいきそうだ。

 

「やっぱりドッキングしたままでは危険です!」

「ちょっと待ってって!」

 え? この声は斗詩? 白バインにバストールが斬りつけ、斗詩の機体も輝き出してしまった。

「まさか、小説版?」

 慌ててフォウでバストールを抱え込むように引き寄せると、それで安心したのか、そのまま俺は意識を手放してしまう。

 

 

 

 何かを叩く音と、俺を呼ぶ声が聞こえる。

「……コウイチ」

 ああ、祭の声だ。

 だんだんと意識がはっきりしてくる。俺は北郷と戦って……。

 俺の地上行き計画、成功したんだろうか?

 あれ? 祭じゃない。この声は……華琳ちゃん!

 

 目を覚ませば、華琳ちゃんがダンバインの風防(キャノピー)を叩きながら俺の名を呼んでいた。

「コウイチ、いい加減に起きなさい!」

 あ、フォウと合体したままみたいだ。

 ドッキングする時、ダンバインの風防を閉じたままにしてた。これは分離しないと開けられそうにないなあ。

 ……でもなんで華琳ちゃんが? 地上界に行くの、失敗しちゃったんだろうか?

 

「分離するから離れてて」

 風防越しでも伝わるように叫ぶと、華琳ちゃんはフォウの操縦席に移動した。むう、通路を斜めに? いや、ダンバインとフォウが横倒し気味になっているのか。

 少しだけ飛んで、現場を把握。今は夜か。暗くてよく見えないけど森、というか、山の中っぽいな。

 

「分離したらすぐに着陸するよ、斗詩もいい?」

「は、はいっ!」

 バストールもまだ抱えたままだったみたいで、この飛行で斗詩も目覚めたようだ。

 分離すると3機はすぐに森の中に着地。その後、フォウのそばにオーラバトラー2機を寝かせるように置き、フォウの中に入れておいた大きな迷彩シートを取り出す。

 

「これを被せてカモフラージュするから手伝ってくれ」

「ずいぶん準備がいいのね」

「真桜に作ってもらった」

 合体したダンバインの足で破けないようにフォウに収納するのは苦労したよ。

 

「そうではないわ。コウイチ、この状況になることをわかっていたのね?」

「いや、華琳ちゃんや斗詩までが地上にくることは予定外だったんだけど」

「地上? ここ地上界なんですか?」

 作業中、薄っすらと空が明るくなってきて太陽が顔を出した。

 バイストン・ウェルには太陽がないので、ここは地上で間違いないだろう。

 

「コウイチは……地上に帰りたかったの?」

「いや、そうじゃないよ」

 それに、ここは俺の世界とは違う。だって、華琳ちゃんや斗詩がアニメ顔のままだ。もし俺が自分の世界に戻れたのだとしたら2人の顔はもっとリアル顔ってやつになってる気がする。

 ここはたぶん、北郷の世界なんだろう。

 

「そうだ、北郷は?」

 苦労して被せおわった迷彩シートの下に潜り込み、フォウのコクピットへ。華琳ちゃんと斗詩もついてきた。祭ももちろん一緒だ。

 どんな地上界であれ、電波は飛んでいるはず……うん。なんとかラジオの電波をキャッチできた。

 

『本日未明に浅草に現れた白い人型の正体不明機は……』

 ラジオからは緊急ニュースが続いている。北郷は浅草に出たか。家がそこにあるのかな? 江戸っ子だったのか。

 

「まあ、しばらくほっておいてもいいか」

「北郷を倒すんじゃないんですか?」

「いや、そのつもりはないよ」

 だからこそここ数日の戦闘でも、生温い言い合いしかしてきてないんだし。

 

「俺の予定ではね、地上でお買い物して、北郷と適当に協力してバイストン・ウェルに戻るつもりだったんだ」

「本当に戻るつもりだったの?」

「もちろん。だからフォウを持ち込んだわけで」

 フォウは特殊なドッキング構造をしているから、合体できるオーラバトラーの種類は少ないけれどその分、合体していない時の積載量は大きい。それを見込んで今回持ち込んだのだ。

 

「華琳ちゃんこそ、どうしてここにいるの?」

「コウイチの様子がおかしいからフォウに潜り込んでいたのよ」

「嘘! 全然気づかなかった」

「儂は気づいておったぞ」

 今頃春蘭たち心配しているだろうなあ。バイストン・ウェルに戻ったら怒られるのは確実だ。……俺がね。

 

「あの、それなら早く北郷さんと合流した方がいいんじゃ?」

 ラジオから北郷のダンバインが東京上空で防衛隊のヘリと追いかけっこをしてるとのニュースが流れる。

 なにやってんの? ……いや、そうなるか。

 

「北郷はほっておいていいよ。むしろ目くらましになってもらう」

「でも、協力せねばバイストン・ウェルに帰れないんじゃろう?」

「予定ではそうだったんだけどね。華琳ちゃんや斗詩がいればだいじょうぶでしょ」

 俺は操縦席の床の一部をめくる。

 そこには折りたたまれた状態でシュットが収納されていた。これもフォウを選んだ理由の1つだったりする。フォウの標準装備なのだ。

「グライウィングを使うの?」

「うん。着替えたら、ちょっと買い物に行ってくるよ」

 そのために地上に来たんだし。フォウに準備した荷物の中には、俺がバイストン・ウェルに現れた時に着ていた服がある。それに着替えないと。

 

「私も行くわ」

「えっ?」

「地上界を見たいもの」

 むう。たしかに華琳ちゃんをこんなとこに残していくのは少し不安だ。熊ぐらいでるかもしれない。かといって、全員で移動ってのも無理だよなあ……。

 

「斗詩、祭、留守番を頼めるか?」

「儂もか?」

「祭は目立ちすぎる。こっちにはフェラリオなんていないんだよ」

「仕方ないのう……。土産は地上の酒を頼むぞ」

 それぐらいなら。ドール用の服を買ってきてあげてもいいけど、翅が邪魔になるだろうし、祭のダイナマイトボディ向けのはなさそうだ。

 

「私はかまいませんが……」

「食料と水は持ってきてるから、できるだけここにいてね。もし現地の人と遭遇しても戦闘はしないで。この国の人はそんなには危険じゃないから」

 ラジオの電波からここは日本のようだし、いきなり撃たれるなんてことは少ないだろう。ガラリアは苦労してたけどさ。

 スポーツドリンクは忘れずに買ってこよう。

 

「華琳ちゃんは鎧を脱いで。服も目立ちそうだけど……あとで買うしかないか」

 荷物を持ってフォウから出て着替える。フォウの中じゃ狭すぎてそんなことできないからね。みんなに見られるし。

 

 その後、シュットに2人乗りして人里を目指す俺たち。すぐに大きな道路を見つけ、そこでヒッチハイクをした。

 運よくトラックの運ちゃんが乗せてくれて、なんとか数時間で東京にたどり着いたよ。折りたたんだシュットはサーフボードって誤魔化したら信じてくれた。バカっぽいけど気のいい兄ちゃんだったな。華琳ちゃんはデコトラに驚いていたけど。

 カーラジオからはずっと北郷のダンバインのニュースが流れていた。

 聖戦士ダンバインの通りなら東京は危険な気もするけど、北郷も防衛隊とは戦わないだろう。そう信じてさっさと用事を済ますことにする。

 

「これが地上の街……」

 街の住人もみんなアニメ顔だった。まあ、トラックの兄ちゃんの時点で確信してたけどさ。やはりここは俺の世界じゃない。

 おかげで、バッグに入れて持ってきた金品を買い取ってもらう時の身分証明がちょっと不安になったけど、免許証が通用しちゃったよ。

 しかも俺の免許証、名前がコウイチとしか記入されてない。……なんだか自分までゲームのキャラクターになった気がしてくる。いや、もしかしたら元からそうなのかも?

 

 持ち込んだ金貨は思ったよりも高く売れた。店員さんは一瞬訝しげに俺を見たけど、詳しいことは聞かれない。こんなことでいいんだろうか? それともここは裏の買取所?

 長居するのが不安になったので、現金を受け取ったらすぐにそこを離れた。まずは華琳ちゃんの服だ。

 

 女性の買い物は長いと聞いてはいたが、入った店の店員に急いでくれと頼んで無難な服を見繕ってもらった。

「どうかしら?」

「うーん、これでも目立ちそう。華琳ちゃん可愛いから」

「当然でしょう」

 あ、カメラも買って撮影しておくか。

 

 ファミレスで軽く食事を済ませる。……軽くのつもりが久しぶりの地上界の食事にガッツリ食べてしまった。斗詩たちに悪い気がするので、あとでお土産買っていかないと。

「食材や料理の本も購入しなさい」

「うん。それもほしいけど、まずは足の確保かな」

 レンタカーの店でコンテナ付きのトラックを借りた。普通免許でも2トントラックなら運転できるしね。やはり問題なく免許証は使えてしまう。

 俺っていったい……。

 

 悩みたいがそんな暇はなく、向こうで書いたメモに従って必要なものを買い、トラックに積み込んでいく。

「けっこうあるのね」

「そのためにフォウを持ってきたんだよ」

 これをトラックからフォウに運ぶのも大変だな。……レンタカーじゃなくて引越し業者さんに相談すればよかったか。でも、オーラマシンを見られたら騒ぎになるだろうしなあ。通報されたら面倒だから、これでよかったか。

「真桜がほしがっていた集積回路は明日かな。秋葉原に出ないと」

 ICを適当にと電子工作の本を適当に買っていけばいいか。

 

「コウイチの家にはいかないの?」

「そんな暇はないよ」

 この世界に俺の家はないはずだ。……だけど免許証も使えちゃったし、もしかしたらあるのかもしれない。

 俺の家があったら? ……自分の正体を確認する覚悟ができてないので、俺ん()は探さない。怖いのだ。ゲームのようなこの世界に俺の家があることではなく、その時に事実をあっさりと受け入れてしまいそうな自分が。

 

 1日で買い物は終了せず、その日はホテルに泊まった。ラブがつかないやつだよ。予算はまだまだあるんで奮発しちゃった。

 豪華なホテルなんて新婚旅行みたいだから、やることはやるけど!

 ……食後、お風呂からあがって準備万端だった俺は、しかし断られてしまった。

 華琳ちゃんの手には小さな棒状のもの。それを俺に見せつける。

 

「こ、これって……陽性?」

「あなたに聞いた説明だとそのはずよね。私は妊娠しているようね」

 そう。華琳ちゃんが持っているのは妊娠検査薬。

 薬局で買い込んでいる時に購入したもの。

 

 華琳ちゃんが妊娠?

 俺の頭の中でそれまでに考えていたものが一気に吹き飛んでしまった……。

 そりゃ、やることはやっていたわけだし、その可能性を考えないでもなかったけどさ。

 実際なってみると、どうしていいかわからない。

「しばらくはおあずけね」

「う、うん。安静にしないと! 今日は疲れたでしょ、早く寝よう! あ、それとも産婦人科の医者に診てもらった方が……」

 華琳ちゃんの保険証はないけど現金はあるから問題ない。

 

「まだ医者に診せる必要はないわ。他にやることがある」

「で、でも……」

「落ち着きなさい。まずはバイストン・ウェルに戻るのが先決よ」

 そうは言ってもさ。うう、嬉しいけど心配で素直に喜べない。……いや、ここは喜ぶべきか?

 面倒なことは忘れて、まずは喜ぶべきじゃないのか。

 

「そうか、そうだよ。うん。華琳ちゃん、ありがとう!」

「わかればいいわ」

「そっか。俺の子か!」

 桂花か春蘭に殺されそうだな。子供が生まれるんだし、死ぬわけにはいかないけど。

 

 

 翌日、残りの買い物を済ませた俺たちは祭と斗詩の待つ森へと戻った。

 カーラジオからのニュースでは北郷はどうやら防衛隊に保護を求めたらしい。まあ、暴れてはいないようなので、そんなに悪い扱いにはならないだろう。

 

 森の付近、適当なスペースのある場所を見つけてトラックを止める。買い物に時間がかかりすぎて既に夜になってしまったが、その方が都合がよい。昼間飛ぶのは目立つからね。北郷から事情を聞いて、防衛隊が俺たちを探しているかもしれないし。

「あっち、かな?」

 トラックからシュットを出して展開。2人乗りして森へ。夜間な上にオーラマシンを隠した場所はうろ覚えだったが、祭のオーラ力を感じるので問題なくたどり着いた。

 

「ただいま」

「待ちくたびれたぞ!」

 祭が怒っているが、謝るのはあとだ。

「変わりはないかしら?」

「はい。退屈でした」

 ごめんね。俺たちだけ豪華なホテルに泊まってきたりして。

 

 まずはトラックの場所に移動だ。

 低空飛行しながらトラックのそばにオーラバトラーとフォウを移動させ、荷物をフォウに運ぶ。

 買い込みすぎて3人がかりでも手間取ってしまった。やはり引越し業者に頼んだほうがよかったかな。

「ふぅ、お疲れさま」

「いえ。これぐらいなら」

 斗詩も意外と怪力だ。季衣ちゃんたちとタメはるかもしれない。

 

「バストールの調子はどう? どこも壊れてない?」

「はい。待ってる間に点検しましたが異常なしです」

「斗詩の方は怪我とかしてない?」

「だいじょうぶです。元気ですよ」

 そうか。なら聖戦士ダンバインやオーラバトラー戦記のガラリアのようになることもないかな?

 

「俺たちが地上に来てしまったのは、エルフ城の北郷との戦いでオーラ力が異常に高まりオーラバトラーで増幅されすぎて、オーラロードを開いてしまったからだ。これはいい?」

 オーラロードとは、地上とバイストン・ウェルを繋ぐ道で、召喚された時に通るらしい。

「そうだったんですか? 私は地上人ほどオーラ力は強くありませんよ」

「バストールには新型のオーラ増幅器を搭載してるでしょ」

 パイロットに合わせて調整が必要ながらもその性能は高かったはず。

 

「それでね、帰るには同じことをする。オーラ力を高めてオーラロードを開けばいい」

「そのためには北郷さんと合流しないといけませんね」

「いや、北郷は置いていく」

 華琳ちゃんが妊娠してるのに、あんな危険要素を持って帰れないよ。

 聖戦士伝説なら、ショウがいなくてもマーベルが代わりをするようになっているから先の展開にも問題はないはずだ。

 

「俺と華琳ちゃん、祭と斗詩がいればできる!」

 聖戦士伝説ではロウロートでは主人公とガラリアだけでオーラロードを開く。だからきっとできる。

 

 荷物があるためフォウとドッキングできず、華琳ちゃんにフォウの操縦を任せて俺たちは洋上へと向かう。

 トラックは途中の道路においてきた。レンタカー屋さん、現金を多めに中に残してきたので許してくれ。

 

「どうすればいいの?」

「俺の知識が正しければ、北郷はたぶん自分の家に出たはず」

 となると俺の家は森ってことになりそうだけど、これは聖戦士伝説に合わせたんだろう。

「だからみんなは、故郷(ふるさと)へ、バイストン・ウェルへ帰ることを念じてくれ」

 

 フォウをはさむ様にしながら急上昇するダンバインとバストール。

「バイストン・ウェルへ……」

「私たちの世界へ帰ります」

「華琳ちゃんも斗詩もよく聞いてくれ! バイストン・ウェルに帰っても、それで安心して気を抜かないでね。帰ってからまだすることがあるんだからね!」

 ほっとして気を抜いたらガラリアみたいに……いや、そんなことはさせない! 機体は全機無傷だ。きっと上手くいく! 華琳ちゃんに元気に赤ちゃんを産んでもらんだ!

 

 きた時と同じように機体が輝きだし、全機を七色の光が包み込む。

 それを見計らって反転、急降下に移る俺たち。はぐれないようにダンバイン、バストールともにフォウを掴む。

「帰るぞ、みんなで!」

「ええ! バイストン・ウェルへ!」

 急降下は続き、海面にぶつかる、そのタイミングで光は一層強くなって、俺たちは、オーラロードに突入した。

 

 

 

「……ここは?」

「コウイチ!」

 祭の叫びで意識をはっきりさせると、目に映るのは巨大な怪鳥。

「あれはギャラウーね」

「バイストン・ウェルに帰ってきましたね!」

 よかった。華琳ちゃんと斗詩も無事のようだ。

 

「来るぞ!」

 突如出現した俺たちを敵、もしくは餌と認めた巨鳥がむかってくる。

「華琳ちゃんは戦闘に参加しないで!」

 妊婦に戦闘なんかさせられない。

 

「このぉっ!」

 俺のダンバインはギャラウーの背後に回りこみ、剣で攻撃。北郷や関羽には通用しなかったけど、強獣程度なら余裕だ。

 ギャラウーは一撃で俺たちとの力の差を悟って退散した。倒すと荷物になるので追いはしない。

 

「付近に人がいるはずだ。探してくれ」

 聖戦士ダンバインの時のズ・バダじゃなくてギャラウーってことは、やはり聖戦士伝説よりに進むわけか。

 

「おった、あそこじゃ!」

 祭が指差した先に2人の人影があった。

 ゆっくりと近づくが、その2人は逃げようとはしない。

 

 2人とも女性で、1人は季衣ちゃんたちと同じくらいの少女だ。頭の両脇に大きなリングを作る髪形か。エレ・ハンム担当ってことで重力を無視した髪型なのかな?

 その少女が俺たちに問う。

「あんたたち何者?」

「やれやれ。自分の名前も名乗らん無礼者か」

 うわ、祭なんか偉そうだけど相手王族だよ、たぶん。

 

「なっ!」

「そうね。名乗るのが遅れたわ。私は雪蓮。こっちが小蓮よ。あなたたちは?」

 雪蓮って……ラウの元王様? 女性だったの?

 

「私は華琳。リの国の王よ。こっちは聖戦士コウイチ」

 俺、ついでで紹介されちゃった?

「祭。見ての通りのフェラリオじゃ」

「斗詩です。麗羽さまのところで騎士をしています」

 ガラリアみたいに女戦士じゃなくて、ちゃんと騎士だったのね、斗詩。

 

「そう、やっぱりね」

「あれ、驚かないの?」

「リの聖戦士の赤いダンバインの噂は有名よ」

 むう。雪蓮ってやりにくい相手っぽいな。

「それよりも、大喬ちゃんは無事なんでしょうね?」

「ええ。大切に預かっているわ。会いたいのなら一緒にくる?」

「そうね、それも面白そうね」

「雪蓮お姉ちゃん?」

 小蓮ちゃんは雪蓮の妹なのか。ラウの王女ってことに変わりはなさそうだ。

「だいじょうぶよ、勘だけど」

 

「連れてくの?」

「フォウなら乗れるでしょう。ここに放置していくのも気が引けるわ」

 フォウの操縦席に座席は2つだけど、スペアシートを起こせばもう1つ座席が増える。

 あれ? ここでエレに説得されてドレイクを裏切るかどうかの分岐があったはずだなんけど……。

 ショウがいなくて、ピネガン王が生きてるせいで説得なし?

 

「斗詩も一緒にきなさい。麗羽の元に戻るにも、状況がわからないでしょう?」

「ヘタしたら敵前逃亡をしたって麗羽軍に狙われてるかもしれないし」

 聖戦士伝説のガラリアの場合は敵前逃亡した扱いになっていて、結局麗羽軍から姿を消して、覆面をして再登場、ヴァルキリアを名乗るんだよね。ロウルートの話だけどさ。

「そんな……いえ、ありえますか……わかりました。ご一緒させてください」

 雪蓮と小蓮ちゃんをフォウに乗せて、俺たちはそこを後にした。

 

 

「まったく、のん気なものね」

「なにを言ってるの、こんな美味しいお酒があるのに飲まなきゃもったいないじゃない」

「おお、話せるのう」

 トルール城への帰り道、フォウ内部では祭と雪蓮が酒盛りをしている。祭がフォウにいきたいって言うからなにごとかと思いきや……。城につくまで待てなかったのね。

 

「こっちは飲めないっていうのに……連れてくるんじゃなかったわ」

 通信機越しに華琳ちゃんの愚痴を聞く。ごめんね、妊婦はアルコールは駄目なんだよね。

「これが地上のお酒ねー」

「うむ。待たされただけあって、格別の味じゃ!」

 陽気な声が通信に混じってくる。飲んでるのは地上で買い込んだお酒。みんなの分、残しておいてくれよ。

 

「トルール城の様子が変です」

 今度はバストールからの通信。

 聖戦士伝説知識で戦闘が起きてるのは知ってたから、別に焦りはしない。

 攻めてきてるのはボゾンだろう。

 

「あらら、戦ってるわねー。あのオーラバトラーの色、もしかしてラウの国かしら?」

「他人事のように……」

 あ、華琳ちゃんもしかして怒っている? 酔っ払いの相手でストレスたまっちゃってるのかも。

 

「ラウのオーラバトラーに告ぐ! 雪蓮と小蓮を連れて、さっさと立ち去りなさい!」

「ちょっと、どういうつもり?」

「あなたたちをこのまま城に連れて帰ったら、人質扱いされちゃうじゃない」

 まあ、ラウから見たらそうだろうね。

 

「小喬と大喬もつけるからおとなしく帰りなさい」

「ならいいわ。次に会うのは戦場ね」

「楽しみにしてるわ」

 いや、華琳ちゃんは戦場に出さないからね! 安静にしててもらうから!

 

 戦闘を停止したボゾン隊に雪蓮と小蓮、それに小喬ちゃんと大喬を渡す。

 彼らは素直に帰っていった。まあ、現場の騎士がいきなり元王様や王女様を渡されたら、対応に困ってとりあえず帰ろうとするか。戦闘を続けて2人になにかあったら大問題だろうし。

 

「よかったの? ボゾン程度なら苦戦しないけど」

 俺たちを苦戦させようとしたら、オーラマシンをダース単位で用意しないとだけどさ。

「厄介払いができたでしょう? それに、雪蓮はラウの王であったころは勇名を轟かせていたのよ。戦ってみたいわ」

「華琳ちゃんが直接戦うのは駄目だからね」

 出産したら戦場に出てきそうだ。それまでに戦いを終わらせないといけない……。

 

 

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