女だらけの聖戦士伝説に召喚された 真・恋姫†有双……になるはずが(仮)番外編 作:生甘蕉
「地上に行くなら前もって説明しておいて下さい!」
「そうですよー、みんなを心配させるとは悪い聖戦士なのです」
「しかも、華琳さままで連れ出すとはなにごとか!」
トルール城に戻った俺を待っていたのは、長い長いお説教でした。
お説教がやっとおわり、状況確認になっても俺は玉座に座る華琳ちゃんの隣で正座させられたままだった。
「エルフ城ははどうなったの?」
「麗羽軍が落としました。現在アの国の王は麗羽となっています」
「そう。高笑いが聞こえてきそうね」
うん。俺にもその幻聴が聞こえてきたよ。
「私たちのことはどうなっているのかしら?」
「行方不明扱いですが、前回のこともあり、麗羽はこちらの欺瞞工作かと疑っているようでしたねー」
ああ、華琳ちゃんが死んだふりをしていたのがこんなところで役に立ったのか。
「斗詩殿はコウイチ殿の予想通り、敵前逃亡者となっていますね。討伐対象となっています」
「そんな……」
「麗羽は関羽や北郷に逃げられたから、これ以上敵に回る兵を増やしたくないのでしょうね」
見せしめ、か。
「しばらくはうちで戦いなさい。あなたが活躍すれば麗羽のことだもの、きっと返せと言ってくるはずよ」
それはたしかにありえそう。
「わかりました。お世話になります」
カオスルートのはずなのに、仲間が増えていくなあ。いいんだろうか?
「明命、麗羽の動向、今まで以上に注意なさい」
「はいっ」
これで第4章もおわりか。
「そろそろ、話もおわりだよね? もう正座止めてもいいかな?」
「待ちなさい。まだ大事な話が残っているわ」
できれば、その話の前に非難したかったんだけど……。
「華琳さまがご懐妊?」
「これはめでたいですねー」
「間違いないのですか?」
「ええ。地上界の検査薬で確認したわ」
……ううっ、喜んでいるみんなの中で春蘭と桂花からの殺気がすごい。逃げ出したい。
「次は妾の番じゃな」
「ボクだって!」
「季衣!」
流琉ちゃんが真っ赤になっている。季衣ちゃんに手を出したのがバレて、流琉ちゃん俺を避けるんだよな。話しかければ答えてくれるし、嫌われてはいないと思いたいんだけど……。
「国民に知らせるのは、もう少し華琳さまのおなかが目立つようになってからですかねー」
「その前に聖戦士殿との仲を発表するのが先でしょう。広報室にまわしておきます」
広報なんてあったのか。それともいない間にできたのか?
王と聖戦士が行方不明だって国民の不安を払拭させるために、なにか宣伝してたのかも。
「公表する内容は……ぶはっ」
稟、そんな鼻血を噴くようなことを公表するつもり?
その後、できあがった広報紙を見せてもらったら、華琳ちゃんと聖戦士のむず痒くなるような恋愛話がでっち上げられていた。
「これを配布するの?」
「すでに配布済みです。各地の掲示板に貼り付けられ、ほとんどの国民が目にしていることでしょう」
ぐふっ。なにその羞恥プレイ。広報部、そんなにがんばらなくてもいいのに。
俺はこの国の識字率が低いことを願うのだった……。
地上から帰ってからしばらくは、購入してきた物の説明に追われた。
「時期じゃなかったから苗じゃないけど、玄米なら発芽するはずだから」
やっぱりお米を食べたいからね。他に豆、芋、野菜の種なども持ってきたので、上手く育てられれば、数年後には食卓に並んでくれると思う。農業関連の本も持ってきたので参考になるはずだし。
……その前に翻訳作業があるけどね。
本は適当に色々と選んで持ってきているが、読めるのは俺だけっぽい。
おかげで、教えるのが大変だった。もう、稟や風、桂花は漢字までだいたい覚えてくれたんでやっと解放されたけどね。
真桜はICや工具を喜び、これで開発が進むと張り切っていた。
明命から麗羽の
予算もとんでもなかったけど、1つだけ俺からも注文した。
「大きなお風呂つけてね」
各国が建造中の巨大戦艦。
総合力と堅牢性を誇る、アの国の『ウィル・ウィプス』。
巨大さと艦載数が尋常ではない、クの国の『ゲア・ガリング』。
オーラノバ砲をはじめ火力自慢、ラウの国の『ゴラオン』。
城のような外見で優美な、ナの国の『グラン・ガラン』。
どこの国のもそれぞれ特色がある。
では、リの国の『ヨルムーンガント』は……一言で言えば地味。特に目立った特徴はない。アイロンのような外観も別に優雅ではないし、絶大な破壊力を持つ主砲もない。機動性も装甲も普通だ。
だけど1つぐらい自慢できるものがほしいでしょ。ならば、もはや機動母艦には定番の巨大浴場しかないわけで。
リの騎団の強さの秘訣はハイレベルな騎士にある。その能力を発揮させるためにも生活環境の充実は絶対に必要、とか理屈をでっちあげて華琳ちゃんを説得したよ。
機械の館主任の桂花には、「華琳ちゃんといっしょに入るお風呂なら、立派な物じゃないと駄目でしょ」そう言ったら納得してくれた。
「主砲の強化とかはないんか?」
「俺の知識じゃそっちは協力できないから」
実は聖戦士伝説の巨大戦艦の能力はどれも似たりよったり。武装的な強化はできないんじゃないかと思う。ゴラオンのオーラノヴァ砲だってイベントのみの発射だし。……油断はできないけどね。
「ゼラーナが、クリスタルの森に潜伏してる?」
巨大なクリスタルの柱が乱立する場所だっけ。身を隠すにはむいてそうだな。
「はい。麗羽軍が血眼になって探しています」
「ゼラーナか。北郷を地上に残してきたことだし、そろそろ愛紗も手に入れたいわね」
「ゼラーナの相手はしてくるから、華琳ちゃんは城にいてくれってば」
出産までは激しい運動は諦めてくれ。
「つまらないわね。ならば、ファンロンの森で麗羽軍を襲撃したという謎のオーラバトラー隊の調査を」
「そっちも俺たちがやってくるから。ファンロンの森はクリスタルの森に近いし」
「そう……近いということはこの2つは関係してるのね」
「ラウの部隊だったはずだけど、ゼラーナに補給してるのかな?」
聖戦士伝説ではそんな話はなかったけど、補給は必要だろう。
ゼラーナは多島海に秘密基地を造ったんだっけ?
「華琳さまが残るなら我らが護衛をする」
「うむ。身重の華琳さまを残して出撃はできない」
「ウチも巨大戦艦造んのに忙しいんやけど」
むう。せっかく人数が増えたというのに……まあ、理由があるので仕方がないか。となると、出撃メンバーは。
ナース(沙和)。ダンバイン(俺)、ブラウニー(季衣ちゃん)、ブラウニー(流琉ちゃん)、ブラウニー(凪)、バストール(斗詩)か。
搭載数の問題でバハムウトじゃなくてナースに。足が遅いけど斗詩を活躍させてあげないといけないからね。
斗詩はまた麗羽軍に復帰するかもしれないのでレベル上げはしていない。
このままずっといてくれればいいんだけどな。
まずはファンロンの森から行くことにした。
「いました! ボゾンと、見たことのない型がまじっています!」
「ボチューン、ラウの新型だ。機動性がいいから、注意してくれ」
ボチューンは聖戦士ダンバインでは反ドレイク陣営が使う量産機で、ラウとナが共同開発した機体だ。空戦を重視していて機動性が高い。
とはいえ、性能はうちのブラウニーの方が上だったようだ。
ブラウニーの手持ちの射撃武器はバストールのオーラランチャをコピーさせてもらった。ビランビーと同型のものなのでブラウニーで使う分にも問題はないし、弾もバストールにも供給しやすくなる。
「ずいぶん速いように見えましたが、みなさんの敵ではなかったようですね……」
斗詩から聞こえるのは呆れた声? むしろ、リの騎団の強さに絶句してるのかもしれない。
「残骸だけど、一応、ボチューン回収していこうか」
聖戦士伝説には無かったはずのブラウニーを開発した桂花と真桜たちならなんとかしてくれるかもしれない。
ナースできてるからまだ格納庫に余裕もあるからね。
残骸の回収を済ませ、ナースはそのままクリスタルの森に向かった。
「ここがクリスタルの森か。綺麗は綺麗なんだけど……」
「ここに隠れられると面倒そうじゃのう」
祭も俺と同意見のようだ。クリスタルの柱、でかすぎ! 視界悪すぎだよ、まったくもう。
そんなことを考えながら捜索していたら、ゼラーナ隊とは別のオーラバトラーと遭遇した。
「聖戦士さま?」
「その声は、猪々子?」
あ、バーン担当だからここにきたのか。乗ってるのレプラカーンだし。
レプラカーンは火力重視で内蔵兵器が多いオーラバトラー。その分、聖戦士伝説では移動力が低く設定されている微妙な機体だ。あと、股間のオーラキャノンが有名かな? 卑猥だって。
「ゼラーナ隊を探してて。見なかった?」
「いや、こっちもそうなんだけど、まだ見つけていない」
「そっかー。あいつらなら、斗詩がどうなったか知ってると思うんで、探すの手伝ってくれね、ませんか?」
最後、言い直したな。やっぱり丁寧な口調は慣れてないのか。それに、斗詩のことを探している?
敵前逃亡した斗詩を倒して、ゼラーナ隊に負け続けて下がった名誉を回復したいのか?
「あれ、麗羽殿から聞いてないのか? 斗詩はリの騎団で預かってると」
万が一にも斗詩が狙われないように教えておこう。
「なんすかそれ!?」
「ほら、敵前逃亡したって麗羽軍にお触れが出てるでしょ。だからそっちに戻ると殺されちゃう。でも、うちの騎士になったからもう狙わないでくれって、麗羽殿に連絡がいっているはずなんだけど」
「聞いてないですよ!」
わざと教えなかった? ……忘れていただけの気もしないでもないな。
「私は無事だから」
「斗詩ぃ!」
斗詩からの通信で、猪々子の声が急に明るくなった。
「あたい、斗詩が敵前逃亡したなんて、これっぽっちも信じてなかったから!」
「よかったな、斗詩」
「はい」
「さ、あたいと一緒に帰ろ!」
って、ちょっと待て。感動の再会に思わずほろりときちゃったけど、違うでしょ。
「ゼラーナはどうすんのさ?」
「あー、もういいよ、ゼラーナなんて。嫁が戻ってきてくれればあたいはそれで」
嫁? ……そういえばドラムロのお披露目の時もそんなことをいってたような。
「まだ私は帰れないよ」
「斗詩は今はリの騎士なの!」
麗羽のとこに帰るにしても手柄が必要でしょ。
「聖戦士さま? ……まさか、斗詩が行方不明になったのって……」
「うん、俺も一緒だったよ」
「やっぱ駆け落ちか! 聖戦士に斗詩を寝取られたー!」
「なんでそうなる?」
もしかして俺、アの国じゃそんな扱い? ……複数の女の子に手を出しちゃっているのはたしかだけどさあ。
「なら、あたいも行くぜ。あたいもそんな気がしてたんだ。一緒にゼラーナを叩くよ」
どんな気がしてたんだ? ついてくるのか。斗詩目当てっぽいな。まあ、悪い娘じゃないみたいだし、いいか。
多島海。名前の通り、小島が多数存在していて、ゼラーナが隠れられそうな場所は多そうだ。
「おったぞ、ゼラーナじゃ!」
祭は敵を見つけるのが早い。フェラリオがオーラ力に敏感なのと、俺と一緒に戦ってレベルカンスト超してるせいだろうか。
敵戦力はゼラーナとボゾン、フォウに……。
「なんじゃ、おらんはずのダンバインがおるぞ。北郷め、どうやって帰ってきたんじゃ?」
「いや、あれは……サーバインだ!」
OVA版の主役メカで聖戦士伝説にも強力なオーラバトラーとして登場している。
ただし、パイロットはヴァルキリアとなったガラリアのはずなのだが。
「斗詩」
「はい。なんでしょう?」
やっぱりガラリア担当の斗詩はいるよね。じゃあいったい誰が操縦している?
気になった俺はサーバインに向かっていった。
「誰だ?」
「お前がリの聖戦士コウイチか。私は仮面白馬!」
コクピットハッチを開けて名乗ってくれたけど……マジで誰?
聖戦士伝説に出てくる仮面の人は黒騎士、修羅、ヴァルキリアの3人。全員、正体がバレバレなんだけど、この仮面白馬と名乗ったやつの正体はまったくわからない。女性であることはわかるんだけど。
いったい何者だ?
悩みながら剣を交える俺と仮面白馬。そこへ、関羽のボゾンまでもがやってきた。
「一刀をどこへやった?」
北郷がどうなったのか知らないのか。そりゃそうか。
「北郷は地上へ帰った!」
「なっ!」
嘘ではないよね。北郷自身はバイストン・ウェルに戻りたいかもしれないけどさ。
「そんな……」
「おとなしく降伏してくれ。悪いようにはしない」
「できるわけがなかろう!」
北郷のことがショックだったみたいだから説得してみたけど見事に失敗。
季衣ちゃんたちのブラウニーもきてくれて数の有利もあったけど、謎の仮面白馬への戸惑いと、どうせならサーバインを捕獲したいと攻めあぐねていたら霧に紛れて撤退されてしまった。北郷がいないんで油断してたというのか。
致命的な母艦の足の速さの違いもあって追いつけない。ゼラーナとナースではね……。
「逃げられちまいました」
「深追いするのは危険か。……仮面白馬、いったい何者なんだ?」
「なーんか、どっかで会ったような気がするけど……まあいいや。それじゃあたいはラース・ワウに帰還します。斗詩、あたいからも麗羽さまに斗詩のことお願いしてみるから、すぐに帰れるようになっからな!」
それはどうだろう? あと、仮面白馬に会ったことがあるって方が気になるんだけど。
トルール城に戻って数日、俺は仮面白馬の正体を考えていた。
そこまで強かったわけじゃないけど、サーバインの性能は侮れない。聖戦士伝説ではプレイヤーが使える中でトップの性能だ。射撃武器が無く、武器は剣だけだが移動力も高いので弱点ではない。
操縦席は立ち乗りの特殊なのじゃなくて、ダンバインと同じになってたみたいだった。
「俺が乗りたかったな……」
いや、ダンバインも強いけどさ、聖戦士伝説と違って。
「仮面白馬ね。ゼラーナの新しいメンバーと見て間違いなさそうね」
「うん。北郷の代わりなのかな?」
まさか世界の修正力ってやつ?
それを確認するためにも、ゼラーナを撃沈するつもりで1度本気で戦った方がいいのかな?
でも、麗羽軍の戦力を適度に削ってくれてるしなあ。
「ゼラーナは麗羽軍の秘密工場を襲おうとしているようです」
明命が情報を持ってきてくれた。……まさかゼラーナの秘密基地に潜り込んだわけじゃないよね?
「それと、猪々子さんが麗羽の下から放逐されました」
「やはり、ね。負けがこんでいるのに、他国に寝返った敵前逃亡者を許せ、などと言われても麗羽の気性では無理でしょう」
バーン担当だもんなあ。あとで『黒騎士』となって返り咲くのかね? 北郷が麗羽軍に残っていたら、彼が『修羅』になって出番をくわれちゃうんだけどさ。
「それでですか。猪々子さんが訪ねてきています」
納得したように稟が追加情報をくれた。……バーン担当がきちゃうのか。聖戦士伝説ではトッドじゃなかったか?
「呼びなさい」
華琳ちゃんが許可したので謁見室に現れる猪々子。服や鎧はボロボロだが、表情は明るい。
「いやー、麗羽さまんとこクビんなっちまいました。こっちで雇ってくれませんかねー?」
「ふむ。2度と麗羽の下には戻れないわよ」
「斗詩がいるなら構いません!」
これならだいじょうぶかな?
でも、聖戦士伝説だと、黒騎士が仲間になっても結局裏切るしなあ。
「いいでしょう。騎団に入ることを認める」
まあ、そうだよね。戦力はほしいし、悪い子じゃなさそうだ。
「やった。これで斗詩と一緒にいられる!」
「斗詩もこれで、麗羽の下に戻る必要がなくなったわね」
「えっ、あの……」
「なんだよ、またあたいを置いていっちゃうのかよ……」
うわ、猪々子マジ泣き?
「……もう。これからは私も正式にリの騎士として働きます」
「うむ。華琳さまのために働くがよい」
「よかったね、いっちー」
「おう。よろしくな、きょっちー」
猪々子と季衣ちゃんって仲がよかったのか。
最後まで裏切らないでくれるといいなあ。
華琳ちゃんの命令で斗詩と猪々子の2人もレベルアップを行った。
「よかったの? また麗羽のとこにいかれたら厄介だよ」
「そうなるのが怖いのなら、2人をあなたのモノにしなさい」
「だから、なんでそうなるの?」
男女の関係になってたって、敵対するときはあると思うんだけど……。
「あたい、アニキならいいぜ。斗詩が一緒ならだけどー」
「え? あの……はい」
はいって、許可したってこと? 斗詩って猪々子には甘いなあ。あと猪々子、いつの間に「聖戦士さま」が「アニキ」になっちゃったわけ?
「ふふっ、この子が生まれたらそのあとはみんなで楽しみましょう」
愛おしそうにお腹をなでながら、なんつーことを言うんですか。……妊娠中は我慢してくれるだけマシか。
「流琉もボクといっしょにしようよー」
「稟ちゃんは風とですかねー」
季衣ちゃんと風まで?
……いいのかなぁ。