3話目を執筆中に読んでて暗いな、と思いたって2話目を新しく書き直しました。
信玄の人情味という面を出したくなったので…展開かえました。
「う…ここ…は?」
辺りを見回して、どうやら織田軍の負傷兵の天幕だとわかった。
善十坊はどこも痛むところが無いと確認し、兵士の治療用の天幕から出た。
「気がついたか。勝家様が起きたら連れてくるようにとの言伝てである」
そう、か。
俺はあそこで朝倉義景を討ち、織田の味方をしたのか…。
織田信奈の政策により、身分を問わず取り立ててるというしてるし、一先ず潜り込むには良いかもしれない。
そう考えたからの行動であったが、割と悪くないかもしれないな。
そこまで考えて、一先ず思考を中断した。
柴田勝家の部下が軍議の間に案内してくれるらしい。
暫く、陣中を歩くと本陣の天幕が見えてきた。
「例の者を連れて参りました」
「デアルカ。入りなさい」
その声は織田信奈のものだった。
案内してくれた柴田勝家の部下が目線で早く行け、と急かす。
そして俺は一呼吸置いて息を吐いた。
「お呼びと聞いて参りました」
出来るだけ、訛らないようにして言葉を発した。
顔を伏せ非礼に当たらない距離に腰を下ろし、さっと諸将を見回した。
織田信奈が上座に座り、左右に立ち並ぶ重臣達。
末席には…相良良晴の姿もあった。
「此度の件…大儀であった。面を上げて、楽にして」
どうやら、織田信奈は様子を見て俺を見極めることにしたようだ。
俺は考えてみた。確かに怪しい。
血塗れの衣服は変えたとはいえ、本陣近くにいて曲者に気付き敵の総大将を討ち取った。
そればかりか、足軽の格好なのに朝倉義景の顔を知っていて鉄砲を20歩ほどの距離とはいえ、眉間に当てる技量。
敵の多い織田家としては警戒しない筈がなかった。
だが、織田の知恵の働く武将達は疑問に思った。
朝倉義景の敵の間者であったとしても織田に味方をする必要はない。
今や織田家は敵を四方八方に抱えており、織田家は織田信奈の革新的な政策とカリスマ、優秀な家臣団によって成り立ってるといっても過言ではない。
そこまで考えたら、この兵士が織田の情報を流す間者であっても、どこの大名も織田信奈本人を殺したほうが利があるのである。
俺は間を置いて面を上げた。
「単刀直入にいいます。あなたは朝倉義景の身なりを知っていましたね?あなたは何者ですか?」
織田信奈の側に座ってる扇子を持った重臣。
恐らく丹羽長秀であろう。
いきなり核心をついてきたか…と、内心毒ずく。
さて…どう切り抜けるか。
「はっ。私は諸国を廻っておりまして、一乗谷に滞在していた際にお見かけしました」
こんな見え透いた嘘に騙されるほど丹羽長秀は、いや織田の重臣は甘くないだろう。
そこで長秀が追及しようとしたところで…今まで黙っていた意識を失う前にみた姫武将…柴田勝家が口を開いた。
「長秀っ!こいつは姫様を助けたんだ。誰も来ない中一人で。怪しかろうが、まるでこれでは尋問ではないかっ!姫様を助けた功績は褒められこそすれ、罰せられるものではないだろう。」
長秀は考えた。
勝家の論はあくまで感情論だ。
織田としてはこの者を警戒して、すぐに対処せねばならない。
だが同時に、人としては正しい。
それに…一人で乗り込む胆力、鉄砲の腕前、一太刀できれいに胴体と首を切り離した技量。
この者を味方に加えられれば人材が欲しい織田としては利もある。
「……勝家どの、四十点です。それは正しいかもしれませんが、怪しい者と考えるに褒美だけ与えて帰すのが無難ではないかと。ただ、この者の技量をみると将として抜擢するのも危険ですがありかと思います。姫、如何いたしますか?」
自分の意見を述べ、長秀はこの者の処遇を信奈に委ねた。
「…デアルカ。そうね。この者を将として取り立て、ひいてはこの中の誰かの与力として働きなさい。そういえば、名を聞いてなかったわね。名乗りなさい」
これは与力という体裁の監視も含めているのだろう。
「はっ。旅の武芸者、善と申します」
俺はもう、杉谷善十坊ではなく、ただの「善」であった。
俺は悪事に手を染める場合も自分が善いとした行いしかしない。
そう誓い、戒めるために「善」と名乗った。
「善を与力に与えるのは誰がいいかしら」
「姫様っ!あたしが善をもらう。男とはいえ、勇気ある行動、立派な槍働き。あたしが面倒を見て立派な武将に育てる」
「そう。面倒もみてやってね。貴方もそれでいいわね?」
「はっ!」
妙なことになったが概ね予定通りだ。
「さて…この間にも兵は休息出来ただろうし。皆、美濃の援軍にいくわよ!」
どうやら俺が来る前に軍議があったようで、斎藤道三に援軍として向かうようだ。
今の時刻とあちらでの開戦時間を考えると、戦が早く終わり浅井はともかく朝倉は当主も死にゆき兵も壊滅してるため、背後を気にせず向かえるだろう。
ここで、これまで一言も発言していなかった、相良良晴が発言をした。
「信奈。それなんだが……」
「歯切れが悪いわね。何よサル。」
「昼に言ったこと覚えてるよな?」
「援軍無用ってやつでしょ?それは織田家が窮地にたっていたからじゃない。もう朝倉は立ち上がれないんだから大丈夫でしょ!」
「爺さんは……いや、斎藤道三はもう長くないんだ。例え助けたとしても、肺の病で新年を越せるかもわからないんだ。……それでも、いくのか?」
信奈は軍議の最中にも良晴が乗り気ではないのが何故なのかと思っていたが…そういうことか。
蝮が死ぬ。その事が事実なのだと理解すると、瞳からぽつぽつと大粒の涙が溢れてきた。
だが…死ぬからといって見捨てられるものではない。
信奈にとっては蝮は死んだ父、信秀に次ぐもう一人の父親なのだから。
「たとえ…それが変わらない不変の事実なのだとしても、私は蝮を助ける。もしそれで、天下を落とすことになっても私は蝮を……父親を見捨てない!!」
相良良晴が、そうか、と一言呟いて出陣の下知がくだった。
一方、少し時を遡り美濃では。
岐阜城で滝川一益と斎藤道三が作戦について話し合っていた。
道三は武田の軍師山本勘助がどんな策にするにしろ、 絶対に同じたたらは踏まないと確信していた。
上杉謙信に川中島で見破られた啄木鳥の戦法の愚をおかさぬ筈だ。
つまり部隊を分けることはない。
「道三様っ!た、武田が長蛇の陣形で城下に向かっております」
「なんじゃと!?あり得ん!早すぎるっ。山本勘助が行う策とは思えん」
「どうするかえ!?お爺ちゃんっ」
道三はその圧倒的な知恵が詰まった頭で数秒にも満たない時間で知恵を巡らせた。
ここで武田を見過ごした場合、城下は焼き放たれる。
長蛇の陣ということは確実に後続がいる。
こちらにも気付かせない速度で尚且つ、霧に乗じてきているのだ。
城下も焼け落ち、包囲されつつ、他の支城をも落とされるやもしれん。
武田は騎馬が主流であるが、真田という優秀な忍びがいる限り小さい支城は落とされる。
かといって…ここで打ってでると、罠だった場合、確実に壊滅する。
だが信奈どのに任されたこの城を、城下を、民を失うわけにはいかん。
「でる……うってでる。出陣の下知を出せ。だがでる前に偽の合図をせい。合図を武田が目前に来たときに一度ならし、時をずらし後方の敵が側面にきたら本当の下知を下せ」
「はっ!組頭以上の者にきつく厳命致します」
「一益どのは、高い場所から鉄砲で威嚇して、馬をびびらせてくだされ。ジョバンナどのは乱戦に入ったら一人でも多く敵を葬ってくれ」
「了解したのじゃ。お爺ちゃん!」
これでいい。このまま長引けば、信奈どのは来てしまうだろうが……。
だが、城下を焼かれ、民を殺られ、儂が死ねば信奈どのは武田を生涯憎み、一兵になっても戦ってしまうだろう。
それは…ならん。天下をとれなくなる。
儂は全てを護らねばならんのじゃ!!
信奈率いる強行軍は美濃入りして…岐阜城へと向かった。
すると、滝川一益が兵を連れて出迎えた。
「大丈夫だったの!?武田は?」
「お爺ちゃんが凄い用兵であしらってたら、上杉が川中島に向かって来たからかえっていったのじゃ♪」
「蝮は?大丈夫なの?」
「今は寝ているのじゃ。信奈ちゃんがきたら起こして欲しいともいっていたな」
信奈はそれを聞いて馬をとばし岐阜城の屋敷の中へと姿を消した。
家臣もそれぞれの反応であったが、皆一様にほっと安堵していた。
善はこれからの自分がどう身わふればいいか考えていた。
そこに勝家が話し掛けてきた。
「なぁ、善。あたしは男が嫌いだ。粗雑で下品でどうしょうもない。だけど、お前は…なんか…こう、違うと思うんだ。それに…これからは戦も多くなるだろう。姫様を助けたみたいな槍働き期待しているぞ!」
そう言った勝家はどこか遠くをみていて、善は何をその目に映しているのかきになった。
善はずっと、孤独であった。
忍びや暗殺者は駒に過ぎず、任務は確実に成功しないとダメだった。
そのため、期待何てものはされた覚えが無く、不思議と暖かい気持ちになった。
その時…善の瞳は濁っている光はあったが、同時に希望をみる様な光もまた存在していた。
自分は文章力足りないので、どこか直すところや問題点など知らせて頂きたいです。
尚、これからは全く暗い展開にならないと思います。
お粗末な文章ですが読んで頂いたかたありがとうございました。