少しでも面白いと思っていただける話が書ければ…と思います。
暦の上では既に秋となっているというのに、まだまだ暑さ残る八月の終わり…
ここ、舞浜鎮守府の司令室では提督の十文字 鐸玻(じゅうもんじ たくは)と秘書艦の吹雪が書類作成の仕事をしていた。
「吹雪ちゃん、こっちはもう終わるけど…手伝おうか?」
提督は顔を上げ、吹雪に尋ねた。
「いえ、こっちももう少しですから…」
吹雪はそう言ってカリカリとペンを動かした。
数分後、吹雪は全ての書類を書き上げると席を立って書き上げた書類の束を提督に手渡した。
提督は書類を受け取ると笑みを浮かべながら、お礼を言った。
「いつもありがとね、吹雪ちゃん」
「そんな、お礼なんて…秘書艦として当然の事ですよ」
吹雪は提督に笑顔を返しながら、改めて提督の姿を見た。
凛とした顔つきに肩より長く伸びた艶のある黒髪を持ち、声は高く、体つきはとても華奢な感じで…吹雪の理想とする女性像そのものだ。
…だからこそ、思ってしまう事がある。
「…やっぱり、今でも信じられませんね。司令官が…男…だなんて」
吹雪の言葉に提督は苦笑いした。
十文字提督は性別上男なのだが、見た目・声色・仕草までどこをとっても女性にしか見えない、いわゆる『男の娘』だ。
また、趣味は料理やお菓子作り、裁縫など女子力も異様に高い。
その為、着任したばかりの艦娘はまず提督が男性だとは気がつかない。
しばらくしてから真実を知らされるのだが…その事実を特に気にしない者もいれば、驚愕して何も言えなくなる者、逆にその事実に喜ぶ者…と様々な反応をみせるのがこの鎮守府の恒例となっている。
仕事を終えた提督と吹雪が談笑をしていると、司令室の扉がノックされ、睦月、如月、文月、三日月の四人が入って来た。
「あっ、睦月ちゃん達お帰り。遠征任務ご苦労さま。…首尾はどう?」
「大成功なのね〜! 司令官、褒めて褒めて〜!」
報告もそこそこに、睦月は提督に抱きついた。
「よしよし、よく頑張ったね」
提督はそう言いながら、睦月の頭を優しく撫でた。
「えへへ…睦月、感激ぃ…!」
「ちょっと! 睦月ちゃんばっかりずるいわ!」
「しれーかーん、あたしもなでなでして欲しいよぉ…」
「…あの…もし良ければ私も…」
上から如月、文月、三日月の順でそれぞれが口々に言った。
「はいはい、順番にね…」
そうして提督は一人一人にねぎらいの言葉をかけながら優しく頭を撫でてあげた。
提督に褒められて嬉しそうな睦月達を横目に…吹雪はなんとなく面白くなく感じた。
「(…私だって…いっぱい撫でてもらったもん…)」
吹雪がそう思いながら、少し恨めしげな視線を送っていると、不意に睦月と目が合った。
すると、睦月はニヤリと笑った。
「(フッフッフ…吹雪ちゃんには負けないのね〜)」
その時、二人の間で火花が散っていた事は言うまでもない。
「何で、吹雪ちゃんと睦月ちゃんはにらみ合っているの…?」
「司令官は気にしなくていいのよ…。それより司令官、さっき私だけ撫でる時間が短くなかったかしら…?」
そう言いながら、如月は不満そうに唇を尖らせた。
「え? そうだった? ごめんね、如月ちゃん」
提督が謝ると如月は腹に一物あるような笑みを浮かべた。
「謝るだけじゃあダメね…今夜、司令官のベッドで一緒に…」
「如月ちゃーん、何言ってるのかにゃーん?」
「如月ちゃん! 抜け駆けはダメですよ!?」
如月の言葉を遮って、吹雪と睦月が引き攣った笑いを浮かべて言った。
しかし、如月は飄々とした様子で言い返した。
「抜け駆け? ふふ…こういうのは早い者勝ちというのよ…うふふ…」
如月達の話についていけなくなった提督は、ふと壁に掛けてある時計を見た。
「…あっ、もうこんな時間? そろそろ夕飯の準備をしなきゃ…」
「司令官、私もお手伝います!」
提督がそう言うと、三日月が積極的に手伝いを申し入れた。
「あたしも、お手伝いする〜」
「「「私も手伝います!」」」
それに続いて、その場にいた全員が口をそろえてそう言った。
「ありがとね、みんな。…今日はみんなの好きなハンバーグにしようかな…」
それを聞いて大喜びする吹雪達を連れて、提督は食堂の方に向かった。
こんな感じで進めていきます。
次回がいつになるかはわかりませんが、気長に待って頂けると嬉しいです。
それでは、次回をお楽しみに…