時間のない中で製作したので、細部が適当になっている可能性があります…
それでも、なんとか仕上げたので生暖かい目で見てやってください。
2月13日、深夜。
みんなが寝静まったのを見計らって、私はそっと部屋から抜け出した。
私が向かっているのは…食堂。だけど、何かを食べるのが目的じゃない。
目的はただ一つ…バレンタインデーのお菓子を作ることだ。
もちろん、司令官や友達、姉妹達に配るお菓子は昼間に作り終えている。
…たった一人を除いては
食堂にたどり着くと厨房には既に明かりが灯っており、お菓子作りの準備をする司令官の姿があった。
司令官は私に気がつくといつもと同じ笑顔で声をかけてくれた。
「待ってたよ、睦月ちゃん。そこにエプロンを置いておいたからそれを着て来てくれる?」
私はゆっくり頷き、司令官が用意してくれたエプロンを身に付けて厨房に入った。
お菓子作りを始める前に私は司令官に小さくこう尋ねた。
「あ、あの…司令官、如月ちゃんは…喜んでくれるでしょうか…?」
「うーん…睦月ちゃん次第、かな? 睦月ちゃんが一生懸命やってくれれば、きっと喜んでくれるよ」
それを聞いて俄然やる気が湧いた。
私は…如月ちゃんを喜ばせたい。そして…私の思いを伝えたい。
…そのためには
「よ〜し! 睦月、一生懸命頑張ります!」
如月ちゃんは私とほぼ同時にここに着任し、それからずっと一緒に頑張ってきた。
出撃する時も、遠征に行く時も…プライベートな時間だっていつも如月ちゃんが近くにいた。
その時から、私は如月ちゃんのことが大好きだった。もちろん、『妹』として。
その気持ちに変化が現れたのは数ヶ月前のことだった。
その日、私達はいつものように遠征任務を成功させて、意気揚々と帰路についていた。
もう何度も通ったことがある、通り慣れた帰り道。
私達は全く警戒などしていなかった。
…慢心していた。通り慣れているとはいえ、必ずしも安全とは限らないのに、日頃の『慣れ』から私達は索敵を行わなかった。
だから気がつかなかった…私達に近づく潜水艦の存在に…
完全に油断しきっていた私達に向かって放たれた敵潜水艦の魚雷は、私の隣を航行していた如月ちゃんに命中してしまった。
幸いにも敵は一体のみですぐに撃退でき、如月ちゃんも小破程度の損傷で済んだ。
…でも、私は気が気じゃなかった。
如月ちゃんに魚雷が命中した瞬間、私は目の前が真っ白になりかけた。
『如月ちゃんが死んじゃう』…そんなことを考えただけで、胸が張り裂けそうなほど苦しくなった。
敵を撃退した後、私は如月ちゃんのもとに駆け寄り、泣きながら謝った。
そんな私を如月ちゃんは優しく抱きしめ、笑って許してくれた。
…その時に如月ちゃんがあんな風に笑わなければ、今のこの感情には気づかなかったかもしれない。
いつの間にか、私は如月ちゃんを『妹以上に大切な存在』として認識していた。
ふと気がつくと、無意識に如月ちゃんの姿を目で追い、如月ちゃんと一緒にいるだけで胸がドキドキと音を立て、顔が赤くなるほど熱くなった。
…だけど、この思いは決して打ち明けられなかった。
打ち明けて嫌われたらどうしよう、口をきいてもらえなくなったらどうしよう…と不安ばかりが募り、ずっと押し殺してきた。
そんな時、司令官に声をかけられた。
「睦月ちゃん、どうかしたの? ちょっと思い詰めた表情してるけど…なにか悩み事?」
…なんで、わかっちゃうのかな?
誰にも気づかれないよう、いつも気をつけていたのに…やっぱり司令官に隠し事はできなさそうだ。
私は司令官にずっと抱え込んできた思いを打ち明けた。
「…なるほど…ね。…私から訊いておいてなんだけど、こればっかりはあまり多くは言えないかな…でも、睦月ちゃんが本当に如月ちゃんの事を思っているなら、それは伝えた方がいいと思うよ?」
「…で、でも…それで如月ちゃんに嫌われちゃったら…私…」
「睦月ちゃん、貴女と如月ちゃんの繋がりはそんな簡単に壊れるようなものじゃないはずだよ。…それでも、すぐには決められないよね。私でよければいつでも協力するから、ゆっくり考えなさい」
そう言って司令官は頭を撫でてくれた。
その手の温もりを感じながらゆっくりと頷き、どうするべきかを考え始めた。
…そして、バレンタインデーを目前にして、遂に決心した。
やっぱり、このままなんて嫌だ…! これ以上、自分の気持ちをごまかすことなんてできない!
私は…如月ちゃんともっと仲良くなりたい!
私はすぐに司令官に協力を求めた。
今度のバレンタインは絶対に失敗できない…その思いが伝わったのか、司令官は二つ返事で私のお願いを聞いてくれた。
そして…今に至る…
私達は、早速お菓子作りを始めた。
今回作るのは…チョコレートマカロン。
司令官の得意料理の一つでもあり、なおかつ、ちょっと前に如月ちゃんが食べたいと言っていたから、私は迷わずこれを選んだ。
司令官の指示に従って、最初に砂糖、アーモンドパウダー、ココアパウダーを混ぜ合わせ、振るいにかける。
次に卵白をかき混ぜ、メレンゲ作りを開始する。
泡だて器でかき混ぜながら、途中三回に分けて砂糖を加え、さらにかき混ぜる。
メレンゲが出来上がったら、さっき振るいにかけた粉を二回に分けて混ぜ合わせる。
「粉っぽくなくなったら、ヘラで押し付けるように混ぜた方がやりやすいよ。もう少ししたら、生地がトロッとしてくると思うんだけど…」
アドバイスを聞きながら混ぜ続けると、司令官の言う通り、トロトロとした半液体状の生地ができた。
その生地をしぼり袋の中に入れ、次の作業に入る。
「さて…これからしぼりの作業なんだけど、最初は難しいだろうから一緒にやってみよっか」
司令官は私にしぼり袋を持たせると、後ろから手を添えながら、クッキングシートの上にゆっくりと生地をしぼり出した。
「上手に円を作るには、離す時に袋を横にして真っ直ぐ上にあげることだね」
司令官に手伝ってもらいながら、なんとかしぼりの作業を終える。
少し不格好なものもあるが…そこは御愛嬌。
「よし、出来たね。少し乾かしてから焼き始めるよ」
少し時間をおいてから、あらかじめ予熱しておいたオーブンに生地を入れ、焼き上がりを待つ。
「…この間にマカロンに挟むクリームを作っちゃおうっか」
司令官にそう言われ、焼き上がりを待つ間にクリーム作りを始める。
レンジで温めた生クリームにチョコレートを加え、冷ましながらゆっくりと混ぜ合わせる。
クリームが出来上がったのと同時にマカロンの生地も焼き上がった。
生地を冷ましてから、しぼり袋に入れたクリームを片方の生地の上にしぼり出し、もう一つの生地を重ね合わせる。
「…出来た…!」
「おめでとう、睦月ちゃん。凄く上手だったよ」
「えへへ…司令官のおかげにゃしぃ…ありがとうございました!」
司令官にお礼を言い、出来上がったマカロンを包装する。
これで準備は万端。あとは…私自身の問題だ。
「…うまく…いくかなぁ…」
ただの独り言のつもりだったが、司令官には聞こえたようで、微笑みを浮かべながらこう言った。
「きっとうまくいくよ…きっと、ね」
司令官と別れ、物音を立てないようにゆっくり部屋に戻った私は明日(もう今日かもしれない)に思いを馳せながら眠りについた。
翌朝、私は耳元で囁くような声でめを覚ました。
まだぼんやりとする頭で辺りを見回すとベッドのすぐ脇に如月ちゃんが立っていた。
私がびっくりして声を上げようとすると、如月ちゃんは自分の口に人差し指を当てた。…静かに、といったところだろうか。
「…ごめんね、睦月ちゃん。実は、今から司令官にチョコレートを渡しに行こうと思ったんだけど…一人で行くのは心細いから、ついて来てくれないかな…?」
その瞬間、私はしめたと思った。
姉妹たちの前で告白するのは、とてもじゃないが恥ずかしくて出来ない。なんとか二人っきりの時に告白しようと思っていたところでこの誘いである。
…これは、又と無い絶好のチャンスだ。
「…うん、いいよ。ちょっと待ってて。今準備するから…」
他の子達を起こさないよう、静かに着替えを済ませ、二つのチョコを持って如月ちゃんと一緒に部屋を出た。
廊下の窓から外を見ると、空は薄青に染まってとても綺麗だった。
私は如月ちゃんの隣を歩きながら、いつ言い出そうかとタイミングを伺っていた。
そして、司令室まであと半分といったところで私は決断した。
…今しかない!
私は勇気を振り絞って如月ちゃんに声をかけた。
「「…あの!」」
…一瞬、何が起こったかわからなかった。
まさか、如月ちゃんの方から話しかけてくるなんて想像もしていなかった。
「ご、ごめん! 如月ちゃんから先にどうぞ!」
「…う、ううん…睦月ちゃんの方から…」
そう言って、如月ちゃんは真っ直ぐこちらを見つめてきた。
如月ちゃんに見つめられ、ドキドキと音を立てる心臓をなんとか押さえつけ、私は包みを差し出した。
「これ…如月ちゃんに!」
「…私に…? あ、ありがとう、睦月ちゃん…とっても嬉しい…!」
…ひとまず、喜んでもらえたようだ。そのことに、ホッと胸をなで下ろす。
すると、またしても予想外のことが起こった。
「それじゃあ、私も。…どうぞ」
如月ちゃんも私に包を差し出してきた。
それを受け取り、中を見てみると、美味しそうなカップケーキが入っていた。
「す、淒い…凄いよ、如月ちゃん! ありがとう!」
そう言うと、如月ちゃんは小さく頷くと、すぐに顔を伏せてしまった。
「…如月ちゃん?」
「睦月ちゃん…ちょっと、聞いてもらえるかな…?」
如月ちゃんのいつもとちょっと違った雰囲気に私は無意識のうちに首を縦に振っていた。
如月ちゃんはそれを確認し、胸に手を当て、一呼吸おいてから口を開いた。
「私…ね、ずっと前から…睦月ちゃんのことが好き…大好きなの…!」
「…ふぇ!?」
突然の出来事に私の頭はパニック状態。
如月ちゃんは私が好きで、私は如月ちゃんが好きで…これって両想いってこと…?
そんなことを考えていると、私が何も言わないのを不安に思ったのか、如月ちゃんは少し怯えた様子でポツリと呟いた。
「…やっぱりおかしいわよね…姉妹同士で愛し合うなんて…」
「っ! そんなことない!」
そう言うのと同時に、私は如月ちゃんをギュッと抱きしめた。
「む、睦月ちゃん…?」
「そんなこと言わないでよ…私だって、如月ちゃんのことが大好きなんだから…」
「…本当に…?」
鼻にかかった声…多分、いや、絶対に泣いてる。
…私だって涙が止まらないんだもん。如月ちゃんだって同じはずだ。
「本当だよ…私だって、ずっと如月ちゃんのことを思ってきたんだから!」
それから私達は気持ちが落ち着くまでの間、ずっとお互いの体を抱きしめていた。
しばらく経って、ようやく気持ちが落ち着いた。
お互いに一旦離れ、顔を見合わせるとどちらからともなく笑みが零れた。
「それじゃ…二人で司令官にチョコを渡しに行きましょうか」
「…うん、行こう!」
忘れかけていた当初の目的を果たしに、また二人で歩き始める。
無意識のうちに繋がれた二人の手は、指と指を絡め、固くしっかりと握られていた。
〜司令室〜
睦月・如月「司令官、バレンタインのチョコです!」
提督「ありがとう…ふふっ、その様子だと上手くいったみたいだね」
睦月・如月「うん(はい)! 司令官のおかげにゃしぃ(です)! …え?」
提督「…本当に二人はお似合いだね♪」
次回はホワイトデー編の予定なのですが…間に合うかどうかわかりません(間に合わなかった時は堪忍してつかぁさい…)
では、次回をお楽しみに…