知徳の世界花・ブロッサムヒル。その都市部から南西へと進むと、フォス丘陵地が広がっている。
その広大な土地を南北に分かつように伸びるフォス街道。日中夜を問わず人が往来するため、ほぼ常に花騎士が巡回している。
そのため、害虫の被害も少なく、初任務の地としては無難である。
「タイプ・フライ二体、二時の方向!」
「見せてやるんだから!! エイミングスタンス!!」
「いっきますよ~!」
進行方向やや右手から出現した蝿型の害虫、ゲームでいうならヨワ虫だろうか。二体現れたものの、花騎士の剣技を受けて早々に散っていった。
「んふふ。だーい勝利ですよ~。ぼんやりしてなかったですもんねぇ」
セントポーリアとアブラナを前衛に、ロイヤルプリンセスを中衛に、ワレモコウを後衛に据えている。なお、ギンランは遊撃兼俺とナズナの護衛となっている。俺も自衛くらい出来ればいいのだが……。
「ご主人、断じて九時の方向に敵影?」
ワレモコウの報告……分かりづらい。
「詠唱開始? ソウルウェーブ!」
普段はふわふわした物言いだが、スキル発動時だけは凛とした雰囲気を漂わせるワレモコウ。まだ遠くにいた害虫も、術をまともにくらって霧散していった。ソーラーリングにも力が溜ってきたな。
「よし、進もうか」
一本道の街道を進み始めてそれなりに時間も経ち、ブロッサムヒルの市街地は見えなくなりつつあった。
「なんかさぁ、敵は弱いし道は一本だし、物足りないのよねぇ」
「そう言われましても……」
「モコウたちはまだ駆け出し。訓練だと思えば――」
「誰が駆け出し新米ひよっこ騎士よ!?」
「断じて、そこまで言ってないです?」
「あ、あはは……」
確かに、敵も弱いし道は一本。アブラナがそう言いたくなるのも分かるが、ワレモコウとロイヤルプリンセスに当たってもしょうがないでしょうに。
「みなさん、森に入りますので敵が強くなるかもしれません。ちゃんと警戒してくださいね!」
「私もそろそろ動きたいですわ」
前衛がしっかりしているため、まだギンランやロイヤルプリンセスが戦闘に加わったケースはない。
「そういえば、剣士三人は常に武器を構えているけど、ギンランはどうしているんだ? 素手で戦闘はしないよな?」
あと、ロイヤルプリンセスやセントポーリアは剣の鞘を持っていないように見えるし、いつの間にか剣持ってるし……謎だな。
「私たち花騎士の武器は世界花から借りているようなもの。願いに応じて姿を現すのです」
「なるほど……」
「まぁ、アブラナみたいに常に帯剣していないと落ち着かない花騎士もいますが」
「ちょっと! また何か言った!?」
「いいえ! 何でも無いですよ!」
「あの、お二人とも、森の中で大声は……。あぁ、もう」
ナズナの注意も虚しく、2時の方向と10時の方向から2体ずつ計4体の蟷螂型の害虫が現れた。
「あれは~わたしの苦手なタイプですねぇ」
「えぇ。タイプ・マンティスは斬撃を通し難いです」
ゲームと違って、害虫の弱点は型ごとに異なる。しかも、ゲームと違って特定の属性には耐性を持っているのだ。蟷螂型は斬撃に強く貫通に弱い。蝿型は耐性がなく魔法が弱点。蟻型は貫通に強く打撃に弱い、などが主な例だ。
「あたしの出番ね! ワレモコウ、援護しなさい!」
「りょ、了解です?」
「ギンラン、あんたはあっち!」
「分かりました。行きますよ!」
ギンランの手元が光ったと思いきや、そこには既に見覚えのあるナックルがあった。さっき言っていたように、これが世界花から力を借りるということなのか。
「アブラナちゃん、とっても的確に指示を出すんですよ~」
「努力家、なのでしょうね」
さっきまで前衛にいたセントポーリアはギンランのいた場所、俺とナズナの近くまでやってきた。ロイヤルプリンセスもやや後退してくる。そんな二人と、戦闘の状況を見た。アブラナは鎌の攻撃をいなしながら害虫の目や背中を刺していく。そこにワレモコウの術も加わり、一体は仕留めた。もう一体にも、無数の突きが刺さり霧散する。ギンランの方は……
「ふ! せい!」
蟷螂型害虫の攻撃を全て回避し、拳を突き立てていく。一撃が重いのか、ふらつく害虫。その隙を見逃すことなく、的確に拳を振るう。回避といい鋭い拳といい演武を見ているような感覚になる。
「ふぅ、こちらも片付きました。進みましょう」
流石、ナズナが優秀だと太鼓判を押すだけのことはある。ソーラーリングに溜った陽力はおよそ30%。それにしても…ノヴァーリスはどこにいるのやら。
今回、オリジナルの設定が多々ありますが、武器に関しては個人的趣味。
弱点や耐性については、イベントの『大討伐作戦に参加せよ』を見据えての設定です。
あと、回避スキルを持っていなくても普通に回避します。ご了承ください。
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