「軍隊即時解散!世界に誇る国づくり!」
退役陸軍軍人の私にはなんとも耳に残るセリフが飛んできた。学生運動か。永田町にはあまり近づきたくない。つい数十年前までこの国は戦争をしていたのになんとも都合のいい国民だ。もし私が憲兵の腕章を巻いていたらなんとかして解散させるレベルだ。
ある衛兵が私のことに気付いたのか敬礼をしてきた。私服なのによくわかるものである。あ、いや今日は久しぶりに勤務服に袖を通したのであった。勤務服に慣れすぎて逆に忘れていた…
「司令官…あの、こちらに甘いお菓子をご用意しました。良かったら、召し上がって?」
国防省で大臣を待っていると懐かしい部下が1人やってきた。もう司令ではないと苦笑すると、白雪と呼んでいる少女は慌てた様子で謝罪を述べた。
さあ、君も食べなさいと私は言うと遠慮しがちに彼女は座って、私の最近の状況を聞いてきた。
あまり自分のことを話さなかった私は娘の話をしてみた。
「お父さま、私も海軍に入隊したい。」
娘の成長ぶりにはよく驚くことがある。例えば急に娘が海軍に入隊すると言い出したのだ。私のあとを継ぐなら陸軍なのにというツッコミは置いておいてだ。海軍の娘は嫁に行きにくいとかなんとか言うが、やはり意思を尊重したかった。嫁も海軍だし貰い手は幾らでもいる。本音は嫁になんて行って欲しくない…が、しかし、このご時世国のために尽くそうとする娘の姿に関心した。やはり軍人の血というやつなのであろう。
と、話すと白雪は"私が先輩なんですか?!"と騒ぎ出したので、私は笑いながら、そうだなと返すと顔を真っ赤にして何処かへ消えてしまった。相変わらず予想のしにくい子である。まあ、それが可愛いのだが…なんて思っていると最愛の嫁がやってくる。
私は大分前…いや、私の中ではつい先日まで四国にある陸軍初の鎮守府である宿毛湾鎮守府の司令官だった。陸軍が船舶を持つ。1940年代にだれが考えただろうか。確かに大東亜戦争では暁部隊と呼ばれる陸軍船舶部隊が存在したが、勝手が違う。100を超える戦闘艦。それを指揮する陸軍の佐官。冷静に考えればありえないことの連続だったが、それは事実であり、すべてである。
突如襲いかかってきた深海生物とそれに立ち向かう船とあまり好きな言い方ではないが一体化した艦娘との戦いは壮絶であった。私はある意味その戦いの生き証人の1人なのだろう。
「気になる所ございますか?」
国防省の接待室に現れた嫁はいつも通り勤務服であった。嫁は海軍の軍人である。部下というか上司というか先任というか、訳のわからない間柄だった彼女もいまは一児の母であり私の嫁である。名前は「高雄」といった。いまは国防省で陸軍との連絡武官を勤めている。私の現役時代はよく連絡を任されたものだ。
彼女と共に戦った戦いこそ「深海戦争」であったし、私の遅咲きの青春であったのは私と彼女にしかわからないーー