真剣で帝王に恋しなさい(イチゴ味)   作:yua

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めちゃくちゃ遅くなりましたが、クリスマス記念です。


14帝王のメリークリスマス

「フハハハハハ、ジングルベール!」

「違うわ、天さん。メリークリスマスよ!」

「フハハハハハ、メリークリスマス!」

 

クラッカーをパァン、と鳴らしながら七面鳥とケーキを前に赤いサンタ帽を頭に乗せた聖帝笑顔が今日もハッスルクリスマス川神院である。

 

「そっちのクラッカー取ってー」

「飲み物全員持ったかー?」

「つうか天さん、クラッカーはまだ早いよ」

 

川神院の修行僧に混じり、風間ファミリーの面々もクリスマスパーティーの飾り付けを手伝って今日は楽しいクリスマス。

そんな中で我らが聖帝様は

 

「……?」

「おいぃぃぃ!天さんがクリスマスケーキを凝視してんぞっ!?」

「(グウゥゥゥ……)」

ショーウィンドウ越しにトランペットを夢見る少年の様な瞳で、涎を流しながら腹を鳴らしていた。

 

「チキンより先にケーキを食う気満々じゃねぇか!?誰か止めろよっ!」

「ちょっ、百代姉さんこっち来てー!」

「呼ばれて飛び出て川神流・天からの鉄槌!」

「ごむっ!?」

 

頭頂部に打ち下ろしの鉄拳を食らって悶絶するのだった。

 

「メリークリスマス!」

パンパンパァン、とクラッカーが鳴り響きジュースの入ったコップがぶつかり合う。

ドガっ、バキッ、メシャア……と、ガラスのコップでは鳴ってはいけない接触音がするが、ここは武の総本山・川神院。

水を入れたコップを逆さにしても溢れない修行位は朝飯前である。

 

「……今、川神院の恐ろしさを身近に感じたよ」

「あの乾杯だけで僕達、死ねるよね」

一般人である風間ファミリーが戦々恐々とするのはやむを得ないだろう。

 

「(モグモグ)……?」

「ああっ、天さんがチキンの骨にこびりついた肉が上手く取れなくて困っているわっ!?」

「意外とみみっちいな聖帝!!」

 

暫く悪戦苦闘していた天はイライラとした顔になり、やがて

 

「フヌハァッ!」

「ああっ、チキンが手刀で真っ二つに!?」

「南斗鳳凰拳をお気軽に使いすぎだろっ!?」

 

真っ二つになり真ん中辺りにへばりついた肉をペローリと舌で舐めとる天。

「すっげぇ悪役顔してんな天さん」

「天さんの前の皿に積んであるチキンの骨、磨いたみたいにピカピカだぜ」

「お残しは許しまへん、って感じだな」

「残したらジジィに毘沙門天喰らうからな」

食事一つにも命懸け、世紀末臭漂う川神院であった。

 

さて、七面鳥も粗方食べ尽くされプレゼント交換のお時間である。

聖帝タンクトップを全員にプレゼントしようとした天の目論みは小雪の蹴り技により、打ち破られた訳で無難に聖帝イラストカードとブロマイド、ついでに南斗百八派の集まりで中国に赴いた際に死闘を経て手にした鳳凰の羽根が一枚。

 

「ふむ、少々詰め込み過ぎたかな」

パンパンに膨らんだ包装紙の九割がイラストカードとブロマイドである。鳳凰の羽根は端っこで押し潰され変型していた。

 

「おーい、天ー。ちょっとこっち来い」

百代の呼ぶ声にパンパンのプレゼント片手に歩み寄る聖帝。

「何だ百代、プレゼントは一つしかないぞ」

「奪うつもりはないからな。いや、それよりコレに心当たりあるか?」

綺麗に飾り付けられた壁を指差す百代に

 

「ふむ、飾り付けは下僕共がやって……」

壁を見上げれば特大のリボンがついた蓋がついていた。

「……でかい!」

怯える様に後ずさる帝王。

 

「あ、お前でもないか。いつの間にか置いてあったんだよコレ」

「こんなデカイもん運び込まれたら気付くだろう。警備的に大丈夫か、川神院」

悠に4メートルはある綺麗にラッピングされた箱を見上げる二人。

 

ダララララララ

 

何処からかドラムの叩く音が響き始め、会場内の電気が消えライトが目まぐるしく動く。

 

「な、何だ!?確定演出か!?」

「天さん、パチンコ北斗の話はちょっと……」

 

会場を巡るライトが百代と天の見ていた箱を一点に照らし出す。

 

ジャジャーン

 

「南斗獄屠脚ー!」

 

バリバリー、と飛び蹴りで箱を突き破り出てきたのは赤いサンタコスに身を包んだ真っ白な髪と肌の赤目の少女、小雪。

その飛び蹴りは、AC北斗の拳において数多の強豪プレイヤーを狩った屈指の南斗孤鷲拳キャラの使い手の如く鋭く予想外のタイミング。

 

「ゴハッ!?」

つまり、一番近くにいた聖帝におもっくそぶち当たった。吹き飛ぶ天、しかし

 

「何の、リカバリーはまだ効くレベルよっ!」

空中で受身を取り、一回転して態勢を立て直す天。

 

「あっ、行き過ぎちゃった。阪急往復拳、南斗獄屠脚!」

「ブルフォッ!」

小雪の空中受身狩りにより北斗七星はクリスマスの夜空に輝く!

 

「南斗こしゅ~けん、奥義!」

「ふん、間合いが甘いわ小雪!」

壁に跳ね返った天を垂直に近い角度で真上に蹴り上げようとする一撃を軽やかに回避する天。

 

「あー、避けられたー!?」

「フハハハハハ、まだまだ修行が足りんぞ小雪よ!」

調子に乗って両手を横に伸ばした態勢で飛び回る。

そこに、

「お邪魔しま~す」

「おう、クリスマスやってんならウチらも混ぜろやっ!」

ドカドカと乗り込んで来るのは板垣一家。その目前では狭い室内で飛び回る天とその下に広がる阿鼻叫喚のメリークリスマス。

 

「フハハハハハ!」

「季節外れのヤブ蚊が飛んでるねぇ。辰、竜、天使!」

「は~い」「応!」「OK!」

フッ、と亜巳の姿がかき消えたと思ったら帝王より高く跳んだ亜巳が鋭い蹴りで天を叩き落とす。

 

「なにぃ!」

「カマ~ン!」

空中から背中を蹴られ、仰け反りながら落ちる天を天使がゴルフクラブの先端を揺らしながら、大きく振りかぶ待ち構える。

「オラァッ、満塁ホームラン打法!」

「カキーン!」

パワフルプロ野球なスタート音を出し、弾丸ライナーと化す天を竜兵がレスリング選手の様な中腰前屈みで手を広げて待ち構える。

「飛べウリャッ!」

「フンヌルイッ!」

天の服を掴み、勢いを殺さず一回転しながら加速して投げ飛ばす竜兵。

その早さ、超電磁砲(レールガン)の如し!

「は~い、いらっしゃ~い」

そして、両手を広げ全てを包み込む様な笑みを浮かべる辰子が天の先に居た。

必死に首を振り、涙目でイヤイヤする天だが、アイザック・ニュートンの慣性の法則は彼を逃がさない。

 

速さ×腕力×体重×気=包容力(破壊力な意味で)

 

バキメシャア!

 

車が法定速度をぶっちぎったスピードで鋼鉄の壁に突っ込んだらこんな音がするだろう、そんな音を全身から鳴らして天は白目を剥いて辰子の腕の中で息絶えるのだった。

 

き~よ~し~、こ~のよ~る~……

 

クリスマスの夜空の下、川神院で南斗と北斗の垣根なく、きよしこの夜が歌われる。

ささやかなプレゼントの交換に一喜一憂する中で、鳳凰の羽根を受け取ったのが誰かは静かに降り始めた白い雪だけが知っていた。




フラグ管理が立ちました。
エンディング時のルート分岐になります。

本作、この真剣で帝王に恋しなさい、はマルチエンディングを予定しております。
フラグイベントはエンディング後に更新されるかもしれない。

キーアイテム・鳳凰の羽根


クリスマスに投稿する予定でしたが、ラブい部分に悩んで結局カットしました。
今年最後の更新になります。皆様、よいお年を。

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