オーバーロード 破壊の魔獣   作:源八

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旧版の序章から二話の最初までを見やすいように纏めました。
見直すと変だった部分をかなり修正しています。


一巻目
転移


はくたくはコンソールに積もった埃を払い体の端子と直結する。最終アップデートを済ませると急いでログインする。パスワードは体が覚えていた。意識がゲーム世界に投入されるまでの間に一言呟く。

 

「ユグドラシルは一年ぶりか…別ゲーのアップデートで忙しかったからな…」

 

DMMO-RPG 『YGGDRASIL』(ユグドラシル)

サイバー技術とナノナノテクノロジーによって実現した、仮想世界に現実にいるかのごとく遊べるゲーム。ユグドラシルはその技術を用いたMMORPGの金字塔だ。自分、プレイヤーネームはくたくはその中でも「社会人かつ異形種」である事が加入条件のギルド「アインズ・ウール・ゴウン」に所属している。

当初はギルドには入らずソロで冒険を楽しむつもりだったが、PKペナルティが無い異形種狩りと偶然見つけた隠し種族の特性の組み合わせの結果、かなりの数のプレイヤーから討伐対象とみなされてしまった。そこをナザリックのギルドメンバーに助けられ、成り行きでそのままギルドに加入した。ギルドではソロプレイヤーでは体験できなかっただろう素晴らしい日々を過ごした。ネットゲームでソロを貫いてきたはくたくにとってそれは新鮮な体験だった。

 

だが楽しい事には終わりがある。社会人という制約のせいか、様々な事情でだんだんとギルドメンバーは集まらなくなり、ぽつぽつと引退者も出始めた。ギルド拠点は段々と寂しくなっていく。そういうはくたく自身も段々と別の新作ゲームに時間を取られていき、ここ一年は別ゲーに入れ込みユグドラシルにログインしていない。そしてギルドマスターからのメールで今日がユグドラシルのサービス終了日だと知る。いかに大作とはいえ12年の歳月には勝てなかったということだ。

 

ログインするとギルドメンバーが自動転移される場所である、ギルド拠点ナザリック地下大墳墓9階層円卓(ラウンドテーブル)にはくたくは現れる。そこには既にギルドマスターであるモモンガが待っていた。

 

「お久しぶりですモモンガさん。一年ぶりですね」

「はくたくさん!今日は来てくださりありがとうございます」

「ほとんどログインしなくなって済みません・・・」

「社会人ギルドですから。仕方ないですよ」

 

モモンガは一年ぶりにログインしたはくたくを責めることなく許す。

 

「そういっていただけると有難いです。今日が最終日なんですよね」

「はい・・・」

「最後ですし、いろいろと思い出話でもしましょうモモンガさん」

「そうですね!最後ですししみったれたのはやめましょう」

 

 

 

 

 

その後モモンガとはくたくの間でギルドの栄光の時代の思い出話が弾む。訪れに来る数少ない引退していないギルドメンバー達とも最後の時間を楽しむ。そしてサーバーダウンの時間が近づく中、円卓の椅子に座る者はわずか三人。

 

「そろそろ睡魔がやばいので…次に会うのはユグドラシルⅡとかだと良いですね。今日は本当にお会いできて嬉しかったです。本当にギルドの維持お疲れさまでした。では失礼します」

 

上位スライム種古き漆黒の粘体(エルダー・ブラック。ウーズ)のギルドメンバーへろへろがログアウトしギルメンが集まる円卓に残るのは二人だけにだけだ。一方に座るは豪奢なアカデミックガウンを羽織る死者の大魔法使い(エルダーリッチ)の最上位種死の支配者(オーバーロード)。邪悪な造形の白骨化した骸骨は黒いオーラを纏い、眼窩には赤い光が灯る。ギルドマスターであるモモンガだ。もう一方は魔獣(マジック・ビースト)の特殊条件を満たす事でなれる、サーバーで彼だけが発見した隠し魔獣種原始の獣(タラスク)。鋼青色の強靭な鱗、猛禽類のような手足、しなやかな棘付きの尾、光沢を持つ棘の付いた鋼青色の頑強な甲殻、地龍を思わせる頭部に二本の角、鋭い大量の歯、ドラゴンを想起させる暗緑色の目と舌。凶悪な外見をもつ魔獣で、今は防具の類は纏わず指輪を4つ付けるのみ。ログアウトせず最後まで残ったギルドメンバーのはくたくだ。

 

「とうとう二人だけにだけになりましたね」

 

静寂に耐え切れなくなったはくたくはモモンガに話しかける。

 

「そうですね。ここに残ったは私たちだけです」

 

そう返すモモンガの言葉から寂しさが滲む。理由は明らかだ。彼は誰よりもギルド維持に努めてきたというのに、今この場に残るのが自分含め二人だけだからだろう。だがモモンガはそれに不満こそあれギルドメンバーを恨んではいないだろう。社会人ギルドという性質上リアルを優先するのは仕方がないのだ。間を持たす為にはくたくは話を続ける。

 

「私は別に最後までここでもいいですがモモンガさんは何か考えでもありますか?」

「アインズ・ウール・ゴウンの最期は玉座の間で迎えたいと思っています」

「それはいいですね。もう時間も押してますし行きましょう」

 

待ってれば誰かが新たに来るのではないか?そういう疑問は二人とも発しなかった。二人とも言葉にはしないが理解している。この場にもう新たに訪れるものなどいないという事を。二人は席を立ちコンソールを開いて玉座の間に相応しい格好へと装備を変更していく。モモンガはブーツ、上着、小手、マント、各種アクセサリを全てを神話級(ゴッズ)の物へ。はくたくも装備可能な手甲、足甲、面頬、指輪、ネックレスを同じく神話級(ゴッズ)のものに着替え、巨大な斧(グレートアックス)を装備する。着替え終えたはくたくがモモンガを見やると、彼の目線はアレへに向かっていた。

スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン。ゲーム内で最強の一角を担う杖であり、ギルドの象徴であるギルド武器。所持を許されているギルドマスターでありながらワンマンを嫌いあくまで皆の調整役に専念していたモモンガが杖を持っている所をはくたくは見た事が無い。律義な彼の事だ、最後の日になってもこれを自分が持っていいのかどうか迷っているのだろう。そう思ったはくたくは彼の背中を押す。

 

「ギルドを支え続けたモモンガさんにはその杖を持つ資格があると思います。それに最後の最後までお飾りなんてそいつも嫌でしょう?」

「いや、しかし…そうですか。そうですね、ありがとうございます。」

 

モモンガはためらいながらも杖に手を向け、暫くしたのち決心したのか杖を掴もうとする。その手に自動的に杖は吸い付き、どす黒い赤色のオーラを発する。

 

「似合っていますよ。モモンガさん」

「ありがとうございます。…作りこみこだわり過ぎですよ皆さん」

 

二人とはいえユグドラシルプレイヤーでも所持するものが少ない神話級(ゴッズ)アイテムに身を包んだ二人の威容は往時のギルドを想起させるには十分だ。

 

「では行きましょうか、はくたくさん。ギルドの最後を玉座で飾るために。」

 

モモンガの言葉は若干気障な感じがするが、それくらいの感傷に今日は浸ってもいいだろう。はくたくは黙って頷き、モモンガとともに円卓(ラウンドテーブル)を後にした。

 

 

 

 

 

二人が階段を降りナザリック大墳墓10階層に到達すると、複数の人影に遭遇する。ナザリックの執事であり家令の仕事も行うという設定の白髪の老紳士セバスと配下の六人の武装メイドチーム、プレアデスだ。モモンガはセバスの設定を確認するためにコンソールを開き、しばらく瞑目したのちにはくたくに問う。

 

「彼らも玉座の間に連れて行きませんか?多少の賑やかしにはなります」

「まあ最後の最後ですし配置換えしてもいいかもしれませんね」

「ええそれでは、『付き従え』」

 

モモンガが発したコマンドワードを受けて二人の後ろに七人は突き従う。暫く進むと玉座前の大広間に到着する。ここは防衛用のゴーレムと攻撃クリスタルが設置されたソロモンの小さな鍵(レメゲトン)。そこを通り過ぎ5メートルはある彫刻の施された巨大な扉を開ける。そこがギルド拠点最深部、玉座の間。ユグドラシルでもトップクラスの美しさを持つ玉座の間だ。いたずら好きのギルドメンバーだったるし★ふぁーの罠がないか若干警戒しながら二人は巨大な玉座の位置まで移動する。

そこには異形の美女がいた。

このNPC名はアルべド。ナザリック地下大墳墓階層守護者統括であり、ここナザリックにおいて無数にいるNPC達の頂点に立つキャラクターである。製作者はタブラ・スマラグディナ。病的なほどの設定魔で知られていた。はくたくは彼女が持つ物に目をやり驚く。彼女が持つ奇怪な短杖、それはユグドラシルで最も貴重なアイテムの一つだからだ。

 

(設定魔とはいえ勝手にワールドアイテムまでNPCに渡していたとは)

 

「モモンガさん、これってアレですよね?」

「ワールドアイテムの無断移動はルール違反ですが…まあ最後です、別にいいでしょう」

 

モモンガは玉座に座り連れてきたセバスとプレアデス待機していたアルべドを跪かせると、コンソールを開いてアルべドの設定欄を閲覧し始める。はくたくはその隣に立ち玉座の間に掲げられたギルドメンバー達の旗を眺め、かつていた仲間達と過ごしたギルドの全盛期を思い出す。世界を冒険し、敵対ギルドの拠点を叩き潰し、1500人からなるナザリック討伐隊をも撃退した、栄光の時代を。視界の端で何かモモンガさんが「ビッチとかないわー」とか呟いているが気にしない。ギャップ萌えのタブラさんの事だからそれくらいの設定は盛り込んでいて当然だろう。旗をすべて眺め終え時計を見る。あと五分でサーバーダウンだ。

はくたくはこれが最後だと思いモモンガに声を掛ける。

 

「モモンガさん」

「は、はい!」

 

何故か慌ててアルベドの設定コンソールを閉じてからモモンガはこちらを向いた。はくたく手を差し伸べながら言う。

 

「モモンガさん、このギルドのおかげで私はこのユグドラシルで最高の体験をする事が出来ました。それもモモンガさんがずっとこのギルドを支えてくれていたお陰です。本当に有難う御座いました。そしてお疲れさまです」

 

差し出された手を握り返してモモンガは短く答える。

 

「こちらこそ最期まで付き合って貰いありがとうございます」

 

双方に様々な思いが二人の中に湧き起こるが決して口には出さない。長い握手を終えた二人は手を放し前を向く。時間を確認すれば、あと三十秒でサーバーダウンの時間だった。

はくはく目を閉じサーバーダウンに備える。

10、9、8、7、6、5、4、3、2、1…0。

だが、予定された時間を過ぎてもサーバーダウンは起こらなかった。

 

 

 

 

 

「ん…?」

「あれ…?」

 

二人が疑問の声を上げる。おかしい、時刻が来たのにサーバーダウンで強制排出されない。はくたくは時計を見る。時刻は0時00分37秒。サーバーダウンの延期?そう思いコンソールを開こうとし、開けない事に気付く。あらゆるコマンドを試してみたがログアウトはできない。異常事態だ。隣を見るとモモンガも自分と似た事を試して失敗しているようだった。

 

「モモンガさんこれは一体?」

「ログアウトできませんね。コンソールも開けずコマンドも効かない。GMコールも駄目です」

「最終日にトラブルですかね?せめて有終の美を…あっ」

 

はくたくは思わず言葉に詰まる。ある事に気がついたからだ。モモンガの口が動いている。モモンガも同じ事に気づいたようだ。

 

「口が動いていますよはくたくさん。それに表情も」

「そっちも口がカクカク動いてますね。まさか新規実装?」

 

はくたくは口には出したがそれはありえないと考える。無断のアップデートやログアウトの禁止は電脳法違反だ。精神をゲームから離脱させる手段を奪うのは場合によっては監禁や誘拐が適応される程の重罪なのだ。

 

「一体何が起こっているんでしょう?」

「さっぱりわかりません。どうにか外部と連絡を取らないと」

 

ここで二人の会話に第三者が割り込む。

 

「はくたく様!久方ぶりのご帰還を守護者を代表してお祝い申し上げます!」

 

NPCであるアルべドが進み出ていきなり喋り出したのだ。それもプログラムにないような事を。はくたくの脳内では連続で起こる事態にパニックが生じようとしていた。それをどうにか気合でねじ伏せ、アルべドに返答する。

 

「うむ、お前も相変わらず元気そうで何よりだ。私はモモンガと話があるので少し下がっていろ」

「はっ」

 

短く返事をしたアルべドは少し後ろに下がり跪いて待機する。

 

(何言ってんだ俺。NPCに対するおままごとをする年齢じゃないぞ)

 

だが今の会話をはくたくは、現実に生きているものと交わしていたと直感してしまった。

 

(ゲームが現実になりNPCは生きている?訳が分からない。とりあえずモモンガさんと善後策を話し合おう)

 

「モモンガさんこれからどうします?」

「とりあえず現状の情報が全く足りませんね。さっきのはくたくさんとアルべドとの会話、本当に生きている人間と話しているようでした」

「それもアップデートの可能性は?」

「ありえないですね。コンピュータ技術が幾ら進歩してるとはいえ、そこまでのディティールをゲームで再現することは不可能です」

 

最新の量子コンピュータとナノマシンを用いたゲームとだろうと今の現状を再現できるような性能は無い。

 

「ゲームではない?モモンガさんもこれがゲームではないと考えているのですか?」

「ええ。はくたくさんも感じませんか?これが現実であると」

 

確かにこのリアル感はゲームで無いと直感できる。だが今自分は魔獣になっているのだが。自分が突然人間から化け物になったとなどそうそう信じられない。だが人間でない体にも関わらずそれに違和感を感じないという事がそれが事実だと告げている。モモンガが言葉を続ける。

 

「ナザリックの外がどうなっているか調査する必要がありますが、自分たちが行くのはリスキーですね」

「ならば誰かを調査に出すと?」

「ええ。ついでに幾つか検証もしてみましょう」

 

モモンガさんはセバスの方を向くと普段からは想像できない威圧的な声で命じた。

 

「セバス、大墳墓の外に出て周辺を調査しろ。友好的な知的生物がいたら交渉して連れて来い。調査範囲は周辺一キロ。戦闘行為は極力するな。あとプレアデスの一人を連れて行き、万が一お前が戦闘になったら撤退させ把握した情報を持ってこさせろ」

「はっ」

 

セバスが跪拝しプレアデスの一人を連れて玉座の間を退出する。

 

「残りのプレアデスは九階層で侵入者に備えろ」

「畏まりました、モモンガ様」

 

残りのプレアデスも同じく跪拝し玉座の間を出て行く。玉座の間に残るのははくたく、モモンガ、アルべドだけだ。アルべドが当然訪ねてくる。

 

「ではモモンガ様、はくたく様、私はいかがいたしましょう?」

 

冷静な指示にはくたくが流石はギルドマスターと思っていると、モモンガはアルべドにも続いて指示を出す。

耳を疑う指示を

 

「ではアルべドよ我が元に来い。む、胸を揉む」

 

(えっ何言ってんだこの人)

 

「モモンガさん一体何を!?」

「いやこうすれば風営法に引っ掛かってGM飛んでこないかなって」

 

しどろもどろにモモンガが答える。

 

(まあ一理あるけどその方法でいいの?)

 

「一理ありますが…アルべド怒るんじゃな」

「どうぞモモンガ様!!好きなだけ触ってください!!」

 

はくたくの言葉を遮ってアルべドがモモンガに喜色満面で胸を突き出した。

 

(・・・アルべドがいいならまあいいか)

 

「じゃあ自分は後ろ向いていますからモモンガさんどうぞ」

「あっはいすみません」

 

はくたくは後ろを向いている間背後から聞こえる、あっ…とかあん…ふわぁとかアルべドが上げる妖艶なあえぎ声を聞き流す。はくたくはモモンガがアルべドの設定欄を見た時にアルべドがビッチだと言っていたのを思い出す。

 

(なるほどアルべドはビッチね。そこまで考えてモモンガさん胸揉もうと考えていたのか)

 

しばらくするとモモンガから声がかかったので振り向く。モモンガは妙に落ち着いている。

 

(なぜ賢者モードになってるんだ?)

 

一方アルべドは目を濡らし顔が紅潮している。

 

(こっちは発情モードだこれ!)

 

「すまなかったなアルべド」

 

モモンガがアルべドに詫びる。大きく息を吸い込んだアルべドからはくたく本日二度目の驚愕発言を聞く。

 

「モモンガ様、ここで私は初めてを迎えるのですね?」

 

(タブラさんビッチと言っても限度がありますよおおおお!)

 

服はどうするだのはくたくに見てもらうか否だのとマシンガンのように捲し立てるアルべドをどうにかモモンガは押しとどめる。

 

「よせ、よせ。アルべド。」

「え?畏まりました」

「今は緊急事態。そのような時間はない」

「も、申し訳ありません!緊急事態に己の欲望を暴走させてしまいました」

 

モモンガはひれ伏そうとするアルべドを手で押さえた後、はくたくに向き直る。

 

「NPCは私の指示に従っているみたいです。風営法にひっかかかる行為も大量にやってみましたが何も起きませんでした」

「そうですか。じゃあこれがゲームじゃなく現実と仮定して今からどうします?」

「早急の問題としてNPCの忠誠を確認する必要がありますね」

「何処かに集めて確認しますか?」

「六階層のアンフィテアトルムにしましょう。いざという時にあそこならはくたくさんも本来のサイズで戦えます」

「そうですね。あそこなら自分も本気を出せます」

 

モモンガはアルべドに振り向き、今から一時間後に第六階層の闘技場(アンフィテアトルム)に階層守護者を集めるように指示を出している。アルべドが玉座の間を出ていき玉座の間にははくたくとモモンガだけが残される。今まで張りつめていた緊張の糸が切れた。

 

「あ~疲れた」

「モモンガさんがいきなりアルベドの胸を揉むからびっくりしましたよ!」

「すみません。混乱していてあれが最適解だと」

「モモンガさんにもですがアルベドの反応にもびっくりしましたよ。モモンガさん、コンソールでアルべドがビッチって確認してたからああ言ったんですよね?」

「えっ…ええ」

 

軽い冗談を幾つか交わした後二人は気を引き締めて次の行動に移った。はくたくはモモンガのアルべドに関するへの歯切れが悪かったことが引っかかっていたが、気にしている暇はない。出来る限りの現状確認をして一時間後には階層守護者と対面しなければならないのだから。

 

 

 

 

二人が階層守護者との接触の前の準備としてまず最初に確認したのは、玉座の間の前にあるレメゲトンの防衛機構の確認だった。ゴーレムと天井のクリスタルが二人の制御化にある事を確認すると二人は安堵する。これでナザリック守護者全員が反逆してもここで防衛線を張ればまず負けることはない。

緊急時にははくたくが前衛を務めモモンガが後衛兼レメゲトン制御をする手筈だがモモンガははくたくにもレメゲトンのゴーレムとクリスタルの命令権を与える。これは信頼してるぞというアピールだろう。はくたくにモモンガを裏切る気は毛頭もないが改めてそう示してくれると安心できる。

 

「さて次はどうしますか?モモンガさん」

「第六階層に行って魔法やスキルが問題なく使えるか確認しましょう」

「あそこへは徒歩で?」

「いや、まずはこのリングの力から検証しましょう」

 

二人とも強力なエンチャントが施された指輪を複数装備しているが、前衛職のはくたくと後衛職のモモンガでは装備している指輪の種類は全く違う。だが二人が共通して装備している指輪がある。リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン。ギルドの紋章と同じ意匠が象られたこの指輪は、ナザリック内地下大墳墓内で名前が付いている場所であれば無制限に転移が出来る。外部から内部へも同様に可能だ。防衛上の理由で特定個所以外で転移魔法を阻害している大墳墓では、このギルドメンバーにだけ配布されているこの指輪を所持する者のみがナザリック内で自由に転移をする事が出来る。

はくたくは種族ペナルティにより通常課金なしで2つ、課金拡張で10個装備できる指輪を課金で拡張していても4つしか装備する事が出来ない。それでも枠の一つをギルドメンバーの証であるこの指輪に当然使っていた。

 

「はくたくさんコレの使い方はー」

「ええ、なんとなく分かります」

「それではやってみましょう」

 

本能的に指輪の力の行使方法を理解した二人は指輪の力を解放する。はくたくは一瞬視界が真っ暗になり、次の瞬間少し暗い通路にいる事に気付く。ユグドラシルでの転移と同じだ。

 

「成功しましたね」

「ええ。これで何があっても直ぐにレメゲトンに退却できます」

 

成功に若干浮かれていたはくたくはモモンガの言葉に気を引き締める。これから異変後に初めて第六階層の守護者に合うのだから。




最初のほうは深夜の勢いで書いていたから改めて見ると修正箇所山盛りだった…
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