オーバーロード 破壊の魔獣   作:源八

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初依頼

エランテルに来てから二日目の明朝。冒険者組合のボードに貼りだされた依頼の前で、冒険者のモモン、ハク、ナーベの三人が立ち尽くしていた。

 

((文字が読めない・・・))

 

言葉はこの世界にある謎の法則でどうにかなったが、それも文字まではフォローしてくれない。文字解読が出来るアイテムはそれが必要になるであろうセバスに渡してしまった。二人はこれをどう突破するべきか<伝言>で話し合う。

 

『どうしますモモンガさん?自分たちは遠くからやって来た事になってるので、文字が読めないのを理由に代読を依頼しても不自然ではないと思いますが』

 

自分たちは遠くの国から冒険者を志願してこの地まで旅してきた事になっている。この辺りの文字が読めなくても不審には思われない筈だ。

 

『私たちが文字が読めないとばれると、騙そうとする輩が出が出てきそうなのでそれは最後の手段にしたいです』

『ああ、その手のトラブルはなるべく避けたいですね』

 

文字が読めないのを良い事に自分たちを騙そうとする輩に付きまとわれるのは嫌だ。仕事の契約書だと思ったら奴隷契約書だった、なんて勘弁だ。

 

『文字解読のスクロールを持ってくるのを忘れた自分の責任です。どうにかするんではくたくさんとナーベラルは付いて来てもらえますか?』

『何か良い考えが?』

『ええ。元営業的にはあまりやりたくありませんがね・・・・』

 

アインズは張り出された依頼書から一番上の一枚をひったくるとカウンターの受付嬢に付き出す。

 

「この依頼を受けたいんだが?」

「これはオリハルコンプレート以上のの冒険者が対象の依頼ですので・・・」

「知っている。問題はない」

「すみませんが規則ですので」

「つまらん規則だな。我々に昇格試験を受けて昇格するまでカッパーの仕事を受けろと?」

「クラス分けは多くの人々の安全の為にある規則です」

 

(元営業ならやりたくはないっていうのはこういう事か)

 

はくたくはアインズのやろうとしている事を理解した。アインズは上位クラスの任務を無理やり受けようとし、ある程度無理を言って押した所でサッと引き下がる。そうする事で自分たちに都合のいいカッパークラスの依頼を受付嬢に持ってこさせるように誘導する腹積もりだ。アインズは営業マン時代に嫌だった客を自ら演じているのだからかなり辛いだろう。

 

「・・・言っておくが私の連れのナーベは第三位階の魔法を使える」

 

アインズが無理を言う為に自分たちの実力をアピールする。第三位階の魔法が一般的な魔法使いの限界というのは捕虜から確認済みだ。周囲の冒険者のアインズを見る目が発言で変わった。駆け出しの傲慢な冒険者を馬鹿にする目から、言い放つ実力が真偽か確かめようとする目に。アインズはさらに追い打ちを掛ける。

 

「私の友人の魔獣の強さは、組合が言う所の難度に換算すると120相当だ」

 

ナーベラルに向いていた視線が全てはくたくに向かう。「嘘だろ」「本当かよ」といった囁きが聞こえる。今ここにいるのは最高ランクでもミスリルプレートの冒険者だ。アインズの言葉が正しければ、どうひっくり返ってもモモンが連れている魔獣に自分たちは勝てない。全員でかかって足止めがやっとだろう。

 

「そして私もこの二人に匹敵するだけの戦士。オリハルコンはおろかアダマンタイトの難易度でもこなせると自負している」

 

最初の頃と冒険者達の放つ雰囲気がガラリと変わる。冒険者は実力主義だ。今の発言が真実であればアインズ達にカッパーの依頼が見合ってないというのは当然だ。

 

「それでも規則ですので。申し訳ございません」

「そうか。無理を言って悪かったな」

 

頭を下げた受付嬢に合わせてアインズも頭を下げる。だがアインズとはくたくは内心ガッツポーズ取っていた。

 

((ここまでくればあと一息))

 

「そうであればカッパーの難易度でいいから一番難しいのを見繕ってくれ。張り出されているのは依頼の期日が押しているものだろう?少しなら日が離れている貼られていない依頼でも構わない」

「畏まりました」

 

((よし!))

 

完璧な誘導だった。<伝言>でアインズがはくたくに自慢してくるのも当然だろう。

 

『はくたくさん、これが営業の力です』

『受付を誘導しつつ我々の実力もアピール。さすがです』

『その場の勢いで適当にはくたくさんの難度を言っちゃいました』

 

冒険者たちがモンスターの強さの指標として難度という尺度を使っている。はくたくが組合で説明されたモンスターと難度の関係は、感覚的にユグドラシルのモンスターのレベルを三倍した感じだった。はくたくを難度120とするとユグドラシル換算ではくたくは約レベル40の強さという事になるだろう。

 

『王国戦士長がレベル30代ですしまあ妥当な範囲だと思いますよ』

 

国家最高の剣士なのだから、現地の強者の基準としてガゼフは適当だろう。

 

『さて、どんな仕事が来ますかね』

 

二人がいい気分で受付嬢がカウンターの後ろにある羊皮紙の束から依頼書を取りだすのを待っていると、

 

「カッパー以上の仕事を探しているのなら、私たちの仕事を手伝いませんか?」

「あん?」「うん?」

 

後ろからシルバープレートを付けた男に声を掛けられた。

 

 

 

 

 

ごねたとはいえ所詮受けられるのはカッパーの依頼。シルバープレートを付けた冒険者から仕事を持ち掛けられたのならば、それに乗ったほうがいい。そう判断したアインズとはくたくは彼らの提案に乗る事にした。組合の一室で彼らから仕事の内容の説明を受ける。

 

「まずは自己紹介から始めましょう。私が『漆黒の剣』のリーダーのペテル・モーグです」

 

先程自分たちに声を掛けた男がリーダーのようだ。このあたりでは一般的な金髪碧眼に特徴のない整った顔をしている。皮と鎖帷子を金属の帯で補強した帯鎧(バンデットアーマー)を着こんでいる。

 

「次にメンバーを紹介します。あちらがチームの目と耳を担当する野伏(レンジャー)のルクルット・ボルブ」

 

痩せ気味の金髪の男が軽く頭を下げる。来ている皮鎧はレンジャーらしく防御よりも動きと静音性を重視している。

 

「彼は森司祭(ドルイド)のダイン・ウッドワンダー。治癒魔法と自然を操る魔法と薬草知識に長けていますので何かあったら彼に相談をしてください」

「よろしくお願いする」

 

褪せた草色の皮鎧を着た恰幅のいい男が重々しく口を開いた。はくたくの嗅覚へ先程から彼の下げた袋から刺激臭がやって来ている。

 

「最後に、魔法詠唱者(マジック・キャスター)でチームの頭脳のニニャ・ザ・詠唱者(スペルキャスター)

 

最後に紹介された彼女は茶色の短髪に碧眼で中性的な美しさが印象的だ。顔に微笑を浮かべているが若干堅さを感じる。魔法詠唱者らしく皮の服にベルトでこまごました物をぶら下げている。アインズは一発で魔力系魔法詠唱者と判断したが、はくたくには判断できなかったので質問する。

 

「ペテルさん質問してもいいかな?」

「ええ、どうぞ」

「彼女は魔力系魔法詠唱者ですか?」

 

誰の事を指しているのか分からなかったペテルが首をかしげる。はくたくの言葉を受け、一瞬ニニャの表情が仮面の微笑から驚きの表情に崩れ、再び元の表情に戻るとはくたくに指摘する。

 

「僕は男ですよ?」

「?・・・ああ!どうも人間の性別を見極めるのが難しいので。とんだ失礼を」

「構いませんよ。女と間違われる事もありますしね。質問ですが、私は魔力系魔法詠唱者です」

「了解しました」

 

『はくたくさん、ニニャは男じゃないんですか?』

『ええ。匂いで分かりました。何やら事情がありそうですし触れないほうがよさそうです』

 

(この世界であの年の女性が一人身となると、隠しておかなければトラブルもあるのだろう)

 

ニニャはペテルの方に恥ずかしそうに振り返る。

 

「ペテル、その二つ名止めませんか?あなたがそれを誰かに言う度にこっちは恥ずかしいんですよ?」

「え?良いじゃないですか。名前負けしない生まれながらの異能(タレント)持ちなんですから」

「彼は生まれながらの異能を持っているので?」

 

はくたくはニニャが生まれながらの異能を持っている事に食い付く。同じくアインズも身を乗り出す。陽光聖典の捕虜から生まれながらの異能というユグドラシルには無い能力がこの世界にある事を聞き出していた。例えば隊長のニグンは「召喚モンスターの強力化」という生まれながらの異能を持っていた。

 

「ニニャは魔法適正という生まれながらの異能で魔法の習熟に八年かかる所を四年で終わらせたんだっけ?ニニャは彼の師匠の弟子たちの中で、最年少で独り立ち出来る許可を貰ったこの街の有名人です」

「ほぉ・・・」

 

はくたくはアインズの反応が気になる。武技と同じく現地特有の能力を欲しいのだろうが、迂闊な行動をしてもらっては困る。はくたくはテーブルの下で隣のアインズの足を軽く小突く。

 

『ニニャさんをなんかしようとか考えてません?』

『<星に願いを(ウィッシュ・アポン・スター)>で生まれながらの異能を剥がせないかなと』

『まだ現地勢力について把握してませんし警戒されるような事は止めましょう』

 

<星に願いを>は経験値を消費して自信に有利な願いをかなえる超位魔法だ。それであれば生まれながらの異能を奪取できる可能性もある。だが現状では敵対や警戒されかねない事は極力するべきではないだろう。

 

「生まれながらの異能なら、わたしより有名な人がいますけどね」

「バレアレ氏であるな!」

 

ダインの上げた姓をはくたくは聞いた事がある

 

(バレアレ、確かブリダがポーションの鑑定してもらった薬師と同じ姓だ)

 

「その人はどのような生まれながらの異能も持っているのですか?」

 

はくたくの問いに四人が顔を見合わせる。反応から見るに、知っていて当然の情報だったようだ。

 

「私たちは旅をしてここに来たのでこのあたりの事には詳しくないのです。実は昨日ここにきたばかりなんですよ。良ければ教えてくれませんか?」

 

アインズがはくたくの質問をフォローする。その言葉に四人は納得したようだ。ペテルが代表して話しを続ける。

 

「なるほど。目立つ三人なのにあなた方の噂を聞いた事が無かったのは、このあたりの人ではないからですか」

「ええ」

「名前はンフィーレア・バレアレ。名の知れた薬師の孫に当たる人物で、彼の持つ生まれながらの異能は「ありとあらゆるマジックアイテムを使用可能」です。話によると系の違う巻物(スクロール)どころか、血筋や能力、種族で制限されるアイテムでも使用可能とのことです」

「なるほど・・・」

 

はくたくは相槌を返しながら内心ほくそ笑む。どうやら現地の薬師のユグドラシルのポーションの反応を確かめるついでに、優秀な生まれながらの異能持ちと接触できる機会を得る事が出来ていたようだ。これはうれしい誤算だ。

 

『モモンガさん、じきにリイジーから接触してくるでしょうが、薬師よりもその孫の方が要注意人物ですね』

『ええ。ですが関係を持っておけば我々に有利に働きます』

「どうかされましたか?」

 

二人の反応を不審に思ったペテルが尋ねてくる。慌てて二人は意識を四人に戻す。

 

「いえ、気にしないでください。そちらの紹介は終わりましたし、私たちの番ですね。彼は友人のハクで、こちらはナーベ。そして私がモモンです。私が戦士で、ナーベは魔法詠唱者です。ハクは斧を使う戦士ですが感知系のスキルも使えます。よろしくお願いします」

「「よろしくお願いします」」

 

アインズに合わせてはくたくとナーベラルも軽く頭を下げる。

 

「こちらこそよろしくお願いします。モモンさんたちが私たちを呼ぶ時は名前で読んでいただいて結構ですよ」

「そうですか?では有難くそうさせてもらいます。では自己紹介も済みましたし、仕事の話に移りましょう」

 

 

 

 

 

ペテルの説明を要約すると彼らがやるのはモンスター討伐だ。特に依頼主がいる訳ではないが、街道沿いのモンスターを狩ると強さに応じて組合から報奨金が出る。その報奨金を報酬として二チームで折半するという訳だ。折半とは新人のカッパー冒険者相手に随分気前がいいが、我々の実力を確かめるという目的もあるからだろう。彼らと行動を共にする事で得られる事が多いと判断したアインズとはくたくは依頼を受ける事にする。

 

「あなた方の仕事に協力させていただきたい。それでは共に仕事を行いますし、顔をお見せします」

 

アインズがそう言うとヘルムを外す。もちろんむき出し骸骨ではなく事前に幻術で作りだしている顔を見せる。幻術の顔は宿屋を出る前にはくたくが監修し、アインズが作った最初の顔よりも美系に修正した。アインズは乗り気ではなかったが、はくたくはイケメンが得をする事を。元いた世界で嫌というほど知っているのでアインズをどうにか説得した。

 

「ナーベさんと同じ黒髪黒眼という事は南方の出身ですか?あちらではモモンさんと似た顔立ちが一般的らしいですが」

「ええ。かなり遠方から来たんですよ」

 

嘘は言っていない。遠方だが次元も違う彼方から来たとは言わないだけだ。

 

「意外と年行ってるな」「ルクルットより格好いいですけどね」「第三位階の使い手と同格ですからそれぐらいの年齢になりますよ」「ナーベ女史のような美女を連れているのも納得である」

 

モモンガの顔についての感想が四人から聞こえてくる。

 

『モモンガさん顔を美系にしといて正解でしたね』

『そのままの顔でも良かったと思うんですけど?』

『この世界何故か美系ばかりですから、あのままだと下から数えた方が早かったですよ?』

 

この世界は街を行く人はおろか、カルネ村の村人までもが顔が整っていた。この世界は美人が多いというより不細工が少ないのだ。アインズが最初に作った顔ではこの世界では平均点行くか行かないかといった感じだった。

 

『そう言うはくたくさんはどうなんです?』

『自分は魔獣なんで人の尺度は当てはまりません』

 

はくたくはアインズの攻撃をかわす。アインズが睨んでいる気がするが気にしない。

 

「さて、顔見せは終わりましたし隠させていただきます。三人が全員異邦人だと知られると厄介事に巻き込まれるかもしれませんのでね」

 

アインズはヘルムを被り直し話を進める。

 

「さて、これから共に仕事を行いますし疑問があれば今解決しておきましょう。我々に質問はありませんか?」

「はい!」

 

アインズの問いにビシィと音が聞こえそうな勢いで手が一本付き出る。ルクルットの手だ

 

「どうぞ?ルクルットさん」

「モモンさんとナーベさんはどのような御関係ですか?」

 

『これどういう意味で言ってるんでしょう?』

『分かりません』

 

「私とナーベは冒険者仲間ですが」

 

ルクルットはナーベラルに手を差しのべながら言い放つ。

 

「惚れました!一目惚れです!つきあってください!」

 

(はあ?!)

 

思いがけない発言にはくたくは戸惑う。全員の目線がルクルットに向かい、冗談ではないという事を理解すると今度はナーベラルに向かう。ナーベラルは溜息をつくと、ゴミを見るような目線でルクルットに告白の返答をした。

 

「黙れ、下等生物(ナメクジ)。身の程をわきまえなさい。舌を引き抜いて欲しいの?」

 

(あれ?ナーベラルさん?)

 

麻痺した思考をどうにか動かして何か言う前にルクルットがナーベラルに返答する。

 

「厳しいお断りの言葉ありがとうございます!では友達からお願いします!」

「死ね、下等生物(ウジムシ)。お前が私の友人?そのいやらしい目をスプーンでくりぬいてさしあげましょうか?」

 

(人間に失礼なことされても抑えてって言ったのに・・・)

 

はくたくが頭を抱えているうちにモモンとペテルがこれ以上傷を広げないうちに話を纏めにかかる。

 

「・・・仲間がそちらにご迷惑を」

「いえこちらこそ。ルクルット!」

「いやー、ナーベちゃんは照れてるだけブフォッ」

 

ルクルットが余計な事を言う前にペテルが肘鉄を叩きこんだ。

 

「本当にすみません!我々の準備は終わっているので、モモンさん達の準備が終わり次第出立するという事でいいですか?」

 

最低限必要な物は宿屋で調達している。食糧は用意していないが、ははくたくは現地で食糧を調達できるので、あとはアインズとナーベラルが怪しまれない分の食糧があればいい。

 

「我々も食糧の調達が終わればすぐに立てます」

「ここに来たばかりですし、店にこだわりが無ければ組合のカウンターですぐに準備して貰えますよ?」

「そうですか。ならそれが良いでしょう。時間を掛けたくありませんから」

「では行きますか」

 

全員が立ち上がろうとするとドアがノックされる。ナーベラルがドアを開けるとそこには驚きの表情を浮かべる受付嬢がいた。いきなり戦闘態勢に移行したナーベラルは腰の剣に手を伸ばし―――何かやらかす前にナーベラルの頭にアインズとはくたくのチョップが叩きつけられる。「?」といった表情を浮かべるナーベラルを無視してアインズが受付嬢に問う。

 

「どうしましたか?」

「モモン様にご指名の依頼が入っております」

 

 

 

 

 

 

「僕が依頼させてもらいました」

 

受付嬢の後ろから部屋に少年が入ってくる。アインズ達と漆黒の剣の皆に軽く礼をする。

 

「始めまして。ンフィーレア・バレアレです。それでは依頼を、と言いたいところですが何かありましたか?」

 

一同の雰囲気でンフィーレアは自身が依頼を出すのが遅かったと察した。アインズが一同を代表して答える。

 

「ええ。実は今先程漆黒の剣の皆さんと仕事をする契約を交わしたのです。済まないが君の依頼は後日か別の冒険者に頼むという事で」

「モモンさん!名指しの依頼ですよ」

「ですが、一度受けた依頼を保護にするというのは余り良い事ではないですよね」

「しかし・・・」

 

(これはモモンガさんが正しいな。短期的な利益を優先しないほうがいい)

 

はくたくはアインズの判断を支持する。名指しの以来というのが冒険者的には重要そうではあるが、先に決めてしまった依頼を蹴る事は余り褒められた事ではないだろう。ペテルがもごもごと何か言っているが、要するに我々の仕事とは価値も稼ぎも違うから約束を反故にしても構わないという事だ。依頼を反故にするのはやはり冒険者の道義に反するのだ。それに、ンフィーレアの依頼はリィジーの件だろう。向こう側は多少の時間なら自分たちを待つだろうとはくたくは踏んでいた。

 

『はくたくさん、私にいい考えがあるので任せてもらえますか?』

『仕事の交渉事はモモンガさんの方が慣れていますしお任せます』

 

アインズが提案する。

 

「ではこうしましょう、ペテルさん。バレアレさんから契約内容や報酬期日を聞いてから考えるという事で」

「我々は構いません。我々の件は特に期日が決まっている訳でもありませんしね」

「ではこのまま漆黒の皆さんが立ち会ったまま話し合いましょう。そのうえで折り合いがつかなければ漆黒の皆さんの依頼を優先させていただきます」

「私たちも同席しても良いのですか?」

「私たちは冒険者としては掛け出しですし、皆さんの意見を参考にしたいです」

 

全員がンフィーレアを上座に座り直すと、依頼者の少年が依頼内容を話し始めた。

 

 

 

 

 

フィーレアの依頼は、森での薬草採取と森までの街道を往復する間の護衛だった。アインズ達だけでも依頼をこなす事は可能だが、全員の顔を立てつつ情報収集と言う目的のためにそうはしない。漆黒の剣もンフィーレアの依頼に噛ませ、ンフィーレアから報酬は全員で頭割、道中のモンスターの報奨金は二チームで折半するという事でアインズが上手く纏める。出発までの準備に関しても抜かりなく進んでいく。

 

(さすがは営業マン、こういう事はお手の物だな。さて、少年に聞いておく事があるな)

 

「幾つか質問しても良いかな?」

 

ンフィーレアは自身が入ってきてから一言も言葉を喋らなかった魔獣が言葉を話す事に一瞬たじろぐも、すぐに笑顔になりどうぞと進めてくる。有名人なだけあって知らない事に直面する事には耐性があるのだろう。

 

「私たちがここにきてまだ二日と経っていません。それなのにどうして知名度もコネもないモモンを指名したのですか?それにこの依頼は突発的な物ではないですし、毎回頼んでいた冒険者が別にいたのではないでしょうか?彼らではなく我々を指名したのはどうしてですか?」

 

自分たちを指名したのは十中八九例のポーションの件があったからだろうが、一応腹を探っておいた方がいい。少年の目は長い髪に隠れており何を考えているのかは読みにくい。

 

「まず毎回雇っていた方ですが、彼らはエ・ランテルから別の街に拠点を移してしまったんです。それで新しい方を探していたのですが、うちに来た方から幾つか噂を聞きましてね」

「噂?」

「一つ目は立派な鎧を着た戦士が魔獣と美女を連れて冒険者になりに来たという噂。二つ目はその戦士がランクの上の冒険者を吹っ飛ばしたという噂。三つ目は鍛冶屋街でやっていたミスリル製鎧の試し切りの見せ物で、その戦士の連れていた魔獣が鎧を真っ二つにしたという噂。先程受付で尋ねたのですが、ここ数日で冒険者登録を行ったのはモモンさん達だけでした。という事は今街で噂の有名人はモモンさんだと予想して、その有名人をこの機会に雇ってみようと思ったんです」

「色々と調べているようで感心します。確かに噂の冒険者というのは私達ですし、噂の内容もほぼ事実です」

 

(客と言うのはブリダの事だろう。鍛冶屋の件も調べている。本当の事を言っていないが、嘘も言ってはいない。なかなか面白いじゃないか)

 

「それにカッパーという事はお安いでしょ?長くお付き合いできればと思いまして」

「確かに。我々はカッパーですから実力の割にお買い得ですね」

 

はくたくは自分が聞くべきことは終わったので質問権を皆に返すと噂の件で幾つか質問が飛んでくるのでアインズが答える。暫くすると仕事の件や噂の件の質問も出尽くしたと判断したンフィーレアが締めくくった。

 

「では準備を整えたら出発しましょう!」

 

全員は立ち上がり、昨日と同じく冒険者たちの視線を集めながら街へと出て行った。




ニニャは原作と展開を変えようかなと思っています
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