オーバーロード 破壊の魔獣   作:源八

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野営

日没まで時間はあるが一行は野営の準備を開始する。明りが無いため夜になるとまともに作業が出来ないからだ。アインズは野営地を囲むように、棒と紐と鈴を利用した鳴子による警戒網を作成し、はくたくは近くの森で薪を集めている。

 

(これだけあれば朝まで持つだろう)

 

薪を十分に集めたと判断したはくたくは薪を小脇に抱えて野営地に帰る。薪集めなど雑用もいい所だがはくたくは存外この作業を楽しんでいる。キャンプをするという事が初体験で新鮮な体験だからだ。屋外でキャンプを張るというような行為を含む、アウトドアの概念は元いた世界では廃れて久しい。流行などの問題ではなく環境汚染でアウトドア全般が物理的に不可能になってしまった。肺が腐る空気と酸性雨の中での野営など自殺にしかならない。

そして、はくたくはナザリックでの贅沢と同じくらいにこの世界の自然にも惹かれている。生まれてからずっと灰色の世界で過ごしてきた身にこの世界は美しすぎる。

 

(この世界におけるナザリックの立ち位置が安定したら、一人で未開の自然を旅しよう。いや、モモンガさんも誘ってみるか)

 

はくたくとアインズはこの世界をどうこうする気はない。火の粉がかかれば当然払うが。ナザリック周辺の自治さえ認めてもらえれば、それ以上の事を周辺国家に要求する気はない。ナザリックの安定さえ確保すれば守護者に留守を任せて暫く放浪するくらいは可能だろう。

また人類を救うとか滅ぼすとかそういう事も無駄に背負う気はない。面倒は嫌いだ。だが、人間が増え過ぎれば何か対策をする可能性はある。人が世界に満ちるとどうなるか結果はすでに知っている。

 

(人口増加による環境破壊は再現したくない。今くらいの文明レベルで緩ーく繁栄していれば何も干渉する気はないけど)

 

薪を小脇に抱えながら鳴子を避けて野営地の中に進む。ニニャとアインズ、ナーベラルはキャンプから離れた場所で会話をしている。同じ魔法詠唱者という事で聞きたいことが山ほどあるのだろう。はくたくは即席の竈を作っているルクルットの所までたどり着くと彼の横に薪を置く。

 

「薪の準備ご苦労様っす」

「どうも。今日の晩飯は何を作るんですか?」

「固焼きパンに乾燥イチジク、ナッツ類。そして俺がこの竈で作るシチュー。結構料理に自信はあるけど、あんたの口に合うかは分からないぜ」

「人間の料理でも問題はないですよ。よければ、そのシチューのレシピを教えてもらえませんか?」

 

ルクルットが快く教えてくれたレシピをはくたくはメモする。干し肉、ニンニク、根菜、小麦を香草、塩、胡椒で煮た簡素なシチューだ。

 

(何か足りない気がする・・・メモをナザリックの料理長に渡して意見を聞いてみるか)

 

「ハクさんって生肉とかをガツガツ食べるのかと思ってたけど意外とグルメなんだな」

「まあそういうのでも構わないですが・・・調理した物の方が美味しいですし」

「へぇー」

 

はくたくとルクルットが食について意見を交わしているとアインズとナーベラルとニニャがこちらに帰って来る。<警報(アラーム)>とかいう警戒用の魔法を掛け終わったのだろう。向こうで彼らが生まれながらの異能について話していたのはここからでも耳に入って来ていた。

 

「・・・という事ですので私に弟子入りは申し訳ないですがお断りさせていただきます。やる事がありますので」

 

はくたくはアインズがニニャを師匠に出来ないか聞いた時のニニャの態度に興味を引かれる。ルクルットとの会話を切りあげニニャに尋ねる。

 

「そのやる事について教えてもらえませんか?言いたくなければ別に構いませんが」

 

近くにいたルクルットがふざけた表情を止めてこちらを見ている。

 

(あっ、聞いたら不味い話題だったかな?)

 

先程からニニャの顔が暗い。顔に表れているのは敵意と憎しみが混ざり合ったものだ。

 

「済みませんが、チームとは関係のない事なので…」

「そうですか?モモンが色々と教えてもらっているようですし、それへのお返しに我々がそれについて何かできるかもしれません」

 

本来話を聞いただけでそこまでする必要性はない。自分たちが生まれながらの異能持ちに少し恩を売っておきたいだけだ。

 

「あなた方になら話してもいいかもしれないですね。…私のやる事、というのは姉を助けることなんです」

「・・・その感じだと単純な借金とかそういう物ではないようですね」

 

(ニニャの態度から考えるに・・・復讐?)

 

「ええ。貴族を姉を攫われたんです」

 

ニニャから聞いた話は中々に悲惨な話だった。

 

(会話に貴族のことが出てくるたびに態度が変わるのはそういうことだったのか)

 

ニニャは貧しい村に生まれ親を早くに亡くすも姉、ツアレニーニャ・ベイロンと二人で慎ましく暮らしていた。そこに貴族が現れて姉を攫ったのだ。数年後偶然魔法詠唱者に才能を見いだされ拾われ、修行を経て一人立ちし冒険者になるも姉は、とっくの昔に貴族が王都の娼館に売り飛ばしておりそこからは行方知れず。というものだった。横で聞いたいたアインズが思わず言葉を漏らす。

 

「それは…酷いですね」

「この国で貴族はやりたい放題です。どんな横暴も許されているのが現状ですよ」

 

アインズがはくたくに問う。

 

『はくたくさん、何か助けられるかもって言いましたけどどうしますか?』

『セバスとソリュシャンがシャルティアの得物を引っ掛け次第王都に向かいますよね?セバスに任務の一環として探らせてみようかと』

『あともう一人当てに出来る人物がいますね。カルネ村で恩を売った王国戦士長が』

『そういえばそうですね。…やっぱりその手の事で頭の周りはモモンガさんには勝てないようです』

『そう思っているのなら、後は上手く纏めるんで任せてもらいますか?』

『ええ』

 

アインズがニニャに約束する。

 

「ニニャさん我々は実はエ・ランテルに来るまでに、名は明かせませんが…王都の有力な人物と偶然知り合いになっているんです。王都に行く機会があればその人にあなたの姉について調べてもらいましょう」

「本当に・・・いいんですか?」

 

ニニャの顔には期待と不安が入り混じっている。

 

「ええ。その人ならば快く協力してくれるでしょう」

「ありがとうございます!どうかお願いします!」

 

ニニャがアインズの手を握理ながら何度も頭を下げる。藁にもすがる思いなのだろう。その頃はくたくは馬車に乗せていた無限の背負い袋を探っていた。

 

(自分から言った手前、何もしないというのはね。・・・おっ)

 

はくたくは袋の隅に押し込まれていた物を取り出す。質素な木彫りの狐をぶら下げているペンダントだ。

 

(これなら使い捨てで機能的にもいい感じだな。ニニャがこれを売ったり奪われても問題にならない)

 

はくたくはニニャにそのペンダントを放る。

 

「ハクさん、これはなんですか?」

「それを身に付けていれば危機に陥った時にちょっとした助けになるでしょう。モモンのように情報を渡せない代わりに私からはそれを差し上げます」

「高価なものなんですよね?情報だけではなくこのようなマジックアイテムまで、貰うわけには」

 

受け取りを拒むのを予測していたはくたくはニニャを説得する。

 

「あなたの姉について調べても何も分からない可能性もありますからね。それに貴方の姉の失踪にはろくでもない輩が関わっていると思います。そういう時にそれがあれば役に立つと思いますよ」

「それでも何の対価もなしに受け取るのは」

「それは自分には何の価値もなくなった物なのでね。手元で腐らせるよりかは危機に陥りそうな人に渡したほうが、それの有効活用出来ますから気にしないでください」

「では、有難く貰っておきます。モモンさんとハクさんが私を必要とするときにはぜひ協力させてください」

 

ニニャがペンダントを首に掛ける。それをはくたく先程までの優しい声とは裏腹に打算の目で見ていた。そのペンダントが発動するような状況を考えているからだ。

 

(それを着けていれば、確かに死の危険を回避できる確率は高くなる。その結果生き残れば自分たちに彼女は恩を感じるだろう。・・・だが生き残った時にそれが幸せかどうかまでは保証していないからな)

 

「辛気臭い話はそれまで。飯の準備ができたぜ。あっちの三人を呼んでくれないか?あ、ナーベちゃんは俺と一緒に準備しようぜ。一緒に愛の共同作業しない?」

「死ね、下等生物(ゲジゲジ)。その舌を切り落としますよ?…私が三人を呼んで来ます」

 

ルクルットの軽口とナーベラルの毒舌も雰囲気を変えるときには役に立つ。

 

「では私たちで食事の準備をしてしまいましょう」

 

ナーベラルが武器の手入れをするペテルとダイン、馬の世話をしているンフィーレアの三人を呼んでくるまでに食事の準備を終わらせてしまおう。

 

 

 

 

 

日が沈み世界が闇に包まれる直前の薄暗い中、一行は薪の爆ぜる音を囲んで食事を始める。メニューは先程聞いた通りだが、ルクルット特製シチューは材料の割に出来がよさそうだ。はくたくはシチューを受け取りながら、少し後悔していた。

 

(こういう事になるなら料理系の職業とっとけばよかったな)

 

ナザリックで料理を試してみたが料理ができる職業レベルをとっていなかった結果、肉をフライパンで焼けば炭の塊を、鍋を使えば焦げ付かせ炭の混じった謎の物体しか作ることができなかった。ユグドラシル時代でソロの時はその辺の石でも拾って食えばそれで済んでいたし、ギルド加入後はコックのメンバーがいたから職業レベルを振る必要がなかったのだ。

 

(ユグドラシルの食材を使ったバフ効果のある料理は無理だったが、現地の食材でも同様に無理かどうかは検証する必要があるな)

 

はくたくは現地食材を使った調理検証を頭の中の予定表に書き込むと、シチューの椀を受け取って固まっているアインズを見る。

 

(そして、モモンガさんにどうやってこの状況をやり過ごさせよう)

 

自分とナーベラルは食べても問題ないがアインズは幻術で体があるように誤魔化しているだけで飲食は不可能だ。無理やり食べたとしても食べた先から食ったものをダダ漏れにしてしまうだろう。ルクルットがシチューに手を付けようとしないアインズを不思議に思ったのか問いかけてくる。

 

「もしかして何か食べられないものとか、嫌いなものでも入ってた?」

「いえ、そういうわけではないのですが。ちょっとした理由がありまして」

「ちょっとした理由?」

「ええ。私の故郷の戒律では、命を奪った日は4人以上で食事をしてはいけないというものがありましてね」

 

(上手い理由だ。民族や宗教的な理由という事であれば突っ込みにくい)

 

「ほう・・・この辺りでは聞かない教えであるな。とはいえ世界は広い。遠い地ではそういう教えもあるのであろう。ナーベ女史やハク氏も同じ教えを信じているのであるか?」

 

はくたくは少し考えてから答える。

 

「ナーベはそうですが、私は違います。ヒトが信じる類のモノは何も信じていませんよ」

 

魔獣が人間と同じ宗教というのもおかしいだろう。彼らの不審者を見るような視線が和らいだところでアインズが話を変える。

 

「ところで皆さんのチーム名は漆黒の剣ですが、誰も漆黒の剣はもっていませんが何か理由でもあるのですか?」

 

それを切欠に道中と同じように彼らから情報を聞き出していく。二人が知らない事について振られた時は、はくたくが人間の世界について詳しくないという事で逆に教えてもらう方向でうまく誤魔化す。

 

『交渉となるとモモンガさんに負けますが、こういう会話だと自分の立場が役に立ちますね』

『はくたくさんがいなければボロを出さないためにここまで会話に入ることはできませんでした』

『そうですか?モモンガさん一人でもうまくやれると思いますけど』

『そんなことはないですよ。それにしてもあのチームを見ていると昔の自分たちを思い出します』

『ほぉ?モモンガさんも昔はあんな感じでしたか』

 

モモンガの言う昔はアインズ・ウール・ゴウンを結成する前の初期メンバーの集まりの頃だろう。はくたくはギルドの中ではナザリック占拠後に加入した後発組なのでそういうチーム立ち上げの時代はあまり知らない。<伝言>の内輪話がそういう方向に向かっていると、うまく会話に混ざっているンフィーレアが漆黒の剣に似た感想を抱いたのだろう、漆黒の剣の面々に質問する。

 

「皆さん仲がいいですね。冒険者の皆さんてこういう風に仲が良いのが普通なんですか?」

 

リーダーのペテルが答える。

 

「互いの命を預けますからね。互いを良く理解していなければ、いざというときにチーム全体を危機に晒しますから。仲が悪いってほうが珍しいと思いますね」

 

ルクルットが同意する。

 

「冒険者チームは仲が良いのが普通だな。偶にチーム内に女がいて揉めるってのがあるけどうちにはいないしな」

 

ルクルットの言葉にニニャは微妙な顔をしている。

 

「・・・そうですね。チームに女がいればルクルットが問題を起こしそうです」

「おい!ニニャその言い草はないぜ」

「ニニャの言うとおりである」

「ダインまで!」

 

はくたくはニニャの反応と残りの三人の反応から、自分たちに隠しているのではなく彼らもニニャを女と知らないことを確信する。

 

(彼らもニニャが女と気づいていないのか。まあ隠しているなら明かさないほうがいいな。…ルクルットの事を考えると)

 

ニニャを改めて観察すると、髪を伸ばし身だしなみを整えればそれなりの見た目になりそうだ。綺麗というよりは可愛いといった感じの女の子になるだろう。

 

「それに、私たちのチームは全員の目標が統一されているってのも大きいと思います」

 

彼らの目標はチーム名の由来になっている4本の伝説の剣―――既に一本は国内の「蒼の薔薇」が持っていることが判明した―――を手に入れることだ。ギルドマスターとしてニニャの言葉に共感したのかアインズが同意する。

 

「ニニャさんの言う通りです。皆の目標を統一されてるか否かはチームの質を大きく左右します」

 

ンフィーレアはアインズのその言葉を不思議に思ったようだ。

 

「モモンさんはもはチームを組んでいたんですか?今は二人組、いや三人組のようですが、冒険者のチームは四人から五人が普通と聞きますが」

「それは・・・」

 

アインズは言葉に詰まる。自分たちのギルドの顛末をうまく言葉にできないのだろう。はくたくはアインズほどユグドラシルに入れ込んではいないが、アインズがギルドが過疎ってからもほぼ毎日ログインしていたことは知っている。そんなアインズがギルドついて上手く誤魔化しながら話すのは難しいだろう。

 

(ここは自分が代わりに上手く言い換えるか)

 

「モモンの代わりに説明しましょう。モモンは昔もっと大きい冒険者チームのようなものを率いていました。自分もそれに加わった一人です」

 

面々がへぇ―といった声を上げる。

 

「自分はこういうなりなので、特に敵対する訳でもないのに人間に追われましてね。追い詰められた所を偶然モモンのチームに助けてもらったんですよ。私が加入した時は20人位のチームでその後も人数が増えて一番多い時は41人でした」

「今三人組なのはどうしてですか?」

 

ペテルたちなら絶対に問わない事をンフィーレアは聞く。冒険者チームが人数を減らした理由がいい事である確率は低い。

 

「様々な理由ですね。冒険者と兼業していた稼業が忙しくなった人、結婚で身を固める人、有名な所に仕官が通った人。色々ありましたが彼らが死んだからいなくなった訳ではないですよ」

「ええ。彼らは最高の友人です。今は彼らと共に冒険はできませんが、彼らと過ごした日々は忘れられません」

 

アインズがようやく口を開く。頭の中で上手く整理がついたのだろう。ふと気が付くと手の中のシチューの椀が冷め始めている。

 

「少し長話してしまいましたね、美味しそうなのに冷めては勿体無い。それでは我々は向こうで食べますので。モモン、ナーベ行こう」

 

三人は立ち上がり、食事を抱えて少し離れたところに移動を始めた。

 

 

 

 

 

「どうです?近接職をやった感想は」

「見よう見まねですから正直上手くやれているか」

「傍から見る分にはモモンガさんは筋は良いですね。ある程度場数を踏めばいい戦士になれますよ」

「今彼らは私達の事をどういう風に言ってますか?」

「・・・「モモン」の腕前は中々高評価みたいですよ。王国戦士長並みだとか」

 

はくたくは向こうから聞えてくる内容をシチューを食べながらアインズに伝える。シチューの味は素朴だが悪くない。

 

「そうですか?はくたくさんの方が凄いと思うんですが」

「普通はグレートソード二刀流なんてしませんから、モモンガさんはインパクトあるんですよ」

「…え?」

 

(知らなかったの?)

 

「剣は専門外ですけど二刀流にするのは手数を増やす為ですから、長物でかつ重量で叩き斬るグレートソードは二刀流に不向きですね。普通は長物でも片手半剣(ハンド・アンド・ア・ハーフ)位までしか二刀流にしないですよ」

「どうして最初にそう指摘してくれなかったんですか?」

「どうしてって・・・てっきり目立つためのアピールかと」

 

(それにウキウキしながらドヤ顔ダブルソードしてたし…)

 

この冒険者はモモンガの気分転換を兼ねているので、水を差すような事は言いたくなかった。

 

「はあ…今更戦闘スタイル変える訳にもいきませんしこれで行きますよ。目立つようですしね。はい、これも食べてください」

 

アインズからアインズとナーベラルの分のシチューとパンを押し付けられる。ナーベラルは飲食不要のアイテムを身に付けているので食事は必要ない。はくたくは自分の分をすでに食べ終わっているので快く受け取る。一息でシチューを食べ終わると両手にパンをもって立ち上がる。

 

「ちょっと外の空気を吸ってきます。モモンガさん器をあっちに返してくれますか?」

「分かりました。でも余り遠くには行かないでくださいね」

 

はくたくは鳴子をかわし野営地からこちらが見えなくなる程度の距離進む。灯りが無い為真っ暗だが<夜目>のスキルがあるため移動に問題はない。一見すると何も内容に見えるがはくたくは複数ののモンスターを感知している。焚火の灯りという物は存外遠くまで見えるためモンスターを引きつける。モンスターが襲ってこないのはこちらが警戒しているからだ。

 

「ふむ…近場にいるのは(ウルフ)だけだが、夜来られても面倒だな」

 

はくたくは<畏怖すべき存在>のオーラを最大レベルで発動する。そのままパンを食べながら野営地を大きくぐるりと周る。こちらを見ている生物を十分脅したと判断したはくたくはオーラを切る。すると周辺の平原や森からザワザワといった音が一斉に聞こえた後に、何も聞こえなくなった。

 

「ハクさん一体何をしたんだ?」

 

野営地に戻ると少し不安な顔をしたルクルットが不安な顔で尋ねてくる。周辺のざわめきを感知したのだろう

 

「こちらが寝ている間に野生生物に襲われないように、あいつらをちょっと脅かしただけですよ」

「そうだったのか。てっきり何かヤバイのがこっちにくるのかと思ったよ。そうだ!ハクさんから少年に別種族の視点から恋のアドバイスをしてもらおうぜ」

「ちょっと、その話はもう終わったのに蒸し返さないでください!」

 

 

食事を終えた一同は明日の行動に差し支えが無い時間まで歓談した。

 

 

 

 

 

それと同時刻、エ・ランテル墓地に隠された地下神殿。そこで金髪の女と禿頭の男が言葉を交わしている。禿頭の足元には新鮮な死体。

 

「<不死者創造(クリエイト・アンデット)>」

 

死体が動死体(ゾンビ)となってムクリと起き上がり奥の死体保管場所へと向かっていく。

 

「ンフィーレアちゃんを攫おうとしたけどいませんでしたー」

「…この死体がそれの替わりとでも?無意味に人を殺すのは止めろ。何者かにここを勘づかれるとも限らん」

「えー私の趣味だしー」

 

アンデットを扱う死霊系魔法詠唱者の秘密結社ズーラーノーン。彼らはその幹部高弟十二人、その内の二人だ。死霊術師風の格好をした禿頭の男はカジット。もう一人の女はクレマンティーヌ。外套に隠されクレマンティーヌの格好は分からない。

 

「お前だって風花聖典にここを嗅ぎつけられたくはなかろう?」

「・・・りょーかーい。外でアタシが仕入れてきた情報知りたい?」

 

カジットは無言で頭をしゃくる。

 

「あの薬師の孫は薬草取りに出かけたから帰ってくるのは二日後の夕方。護衛に雇ったのは銀プレートのチームと今街で噂になってる新人さんだってー」

「新人と言うとあの戦士と魔法詠唱者と魔獣の三人組か?攫う時に鉢合わせしても大丈夫なのか?クレマンティーヌ」

 

カジットは街に行かせている弟子からその新人についてある程度知らされていた。なんでも将来有望な冒険者チームらしい。

 

「…カジッちゃん舐めないでよねー。戦士に魔法詠唱者に魔獣でしょー?新人なら何時も通りアタシがスッといってドスッ!で終わりじゃん」

「・・・その呼び方は止めろといっただろうが。まったく」

「あー早く帰ってこないかな―?この街の何もかもぶっ壊したくて堪んないんだよね!」

 

女は笑う。これから自分たちが引き起こす惨劇を想像して。




主人公が渡したアイテムのネタばらしは数話後です。
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