オーバーロード 破壊の魔獣   作:源八

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凱旋

一行は早朝にカルネ村を出発しモンスターと遭遇する事もなく、夕暮れ時にはエ・ランテルに帰還した。一行が行くエ・ランテルの大通りは<永続光>に照らし出され昼とは違った様相を呈している。通りから女子供が消え替わりに仕事帰りの男達が行きかい、店からは帰宅する前に一杯ひっかけている男たちの陽気な声が灯りと共に通りに漏れ出していた。一行は通りのど真ん中を通行しているが、邪魔する者はいない。通行人はこちらを目にした途端道を開け、一行の中のある人物を見ながら近くの者と放し始めるからだ。通りだけでなく店の窓からも多くの客が一行の中のある人物を見物し、見た物を客同士でそれについて話し合っている。

はくたくは注目の元となっている巨大ハムスターに乗り猫背で俯いている全身鎧の男に声を掛ける。

 

「凱旋なんだから顔を上げろよモモン」

「・・・恥ずかしいんだが・・・」

「ハクさんの言うとおりです。モモンさんが謙遜する必要はありませんよ」

 

ニニャがはくたくに同意する。ハムスケに乗ってエ・ランテルに凱旋したアインズは周囲の耳目を集める事に成功した。目撃者の会話に耳を傾ければ、誰もがモモンへの驚きと賞賛、森の賢王への若干の畏怖を口にしている。英雄モモンの宣伝としてこれ程効果的な物はそうそう無いだろう。問題は、アインズにとっては巨大ハムスターに乗せられての市中引き回しは羞恥プレイにしかならないという事だが。

 

『もう耐えられません…降りてもいいですか?』

『冒険者組合までは我慢しましょう』

『うう・・・』

 

「街に着いたので依頼は完了ですね」

 

アインズが苦悩しそれをはくたくが楽しんでいる間、ペテルとンフィーレアが報酬について話し合っている。森の賢王の協力で珍しい薬草や素材を大量に集める事が出来たため、ンフィーレアは自分たちに追加報酬を払うようだ。

 

「それでは我々はこのままンフィーレアさんの所で荷降ろし、モモンさん達は組合で登録が終わり次第こちらに来るという事で」

 

アインズ達も漆黒の剣と荷降ろしを手伝うという提案はペテル達から戦闘でこちら任せきりだったお返しという事で丁重に断られた。

 

「それではお言葉に甘えて我々はコイツを組合に登録してきます」

「トロールを倒した報酬は明日組合から支払われますから、明日、我々が初めてあった時と同じくらいの時間に来ていただけますか?」

「了解しました。では明日という事で」

 

アインズ達はンフィーレアと漆黒の剣に別れると組合へと向かう。取り巻きがいなくなった分、戦士と美女と魔獣二体は余計に目立つ。ンフィーレア達が見えなくなるとナーベラルが疑問の声を投げかけてきた。

 

「彼らに討伐報酬を持ち逃げされるかもしれませんが、よろしいのですか?」

 

羞恥プレイに耐えているアインズの替わりにはくたくが答える。

 

「持ち逃げされても報酬に固執しなければ金に汚くない所を見せられるから構わん。例の見せ物で稼いだ金貨とンフィーレアからの報酬があれば暫くは金に困らんしな」

 

金貨十枚で自分とハムスケの食事を考慮しても数カ月は食いつなげる。それにランクは最低だが今回の件で仕事が舞い込んでくるだろうから、はした金を持ち逃げされても運転資金に困る事はない。

 

「確かに・・・流石は至高の御方であられます。はくた―――」

 

ナーベラルの頭に軽いチョップが落とされる。

 

「ハクだ。気をつけろ」

「失礼しました。…ハクさんやモモンさんがその程度の金に固執するというのもおかしいですね」

「それにだなナーベよ、お前には彼らがその程度の金の為に長期的な信用を損なうような人間に見えたのか?自分はそうは思えないのだが。お前はもう少し人間について考えろ」

「はっ」

 

ナーベラルが少し考えた後、彼女なりに彼らが持ち逃げしない理由を述べた。

 

「そういえば、あの下等生物(ガガンボ)共はモモンさんやハクさんの圧倒的な力にひれ伏していましたね。あの態度を考えれば報酬を持ち逃げして怒りを買うという行為には及ぶはずはない。そういうことですね。流石は至高の御方。そこまでお考えになれれているとは」

「まあ・・・そういう考え方もあるな、うん」

 

(人間社会の信用とか信頼について考えて欲しいって意味だったんだけどな…)

 

アインズはハムスター騎乗羞恥プレイに、はくたくはナーベラルのナザリック脳に悩ませながら冒険者組合へと向かって行った。

 

 

 

 

 

一方その頃、ンフィーレアと漆黒の剣は積荷を運び終えた所だった。

 

「皆さんお疲れ様です!モモンさん達が来るまで家でゆっくりしてください。母屋に冷やした果実水があります」

「そいつはありがてぇ」

 

汗をにじませたルクルットの声に他のメンバーも同意として頷く。

 

「それではこちらに」

 

ンフィーレアが母屋へ案内しようと向かうと、母屋への扉が向こう側から開かれた。

 

「お帰りなさーい。待ってたよー。やっと帰って来たね。君に用があるから心配してたんだよ?今日帰ってくるのは知ってたけどこんなに遅くなるとは知らなかったからずーっと待ってたんだからぁー」

 

母屋から出てきたのは可愛いが、何処か破綻した雰囲気を漂わせる金髪の女だ。

 

「ど、どなたですか?」

 

面喰らっていた漆黒の剣の一同はンフィーレアが彼女を知らないと言った瞬間、ンフィーレアを女から引き離し警戒態勢を取る。そうするだけの雰囲気が女にはあった。

 

「ひっどぉーい!まだ何の用か聞いてないのにその態度は無いでしょー?まあ君を攫いに来たから正解なんだけどさー。アンデットの大群を召喚する<不死の軍勢(アンデス・アーミー)>って魔法を君に使ってもらうために来たんだよね」

 

その女はその後もペテル達とンフィーレアにベラベラと自分たちが何をするかを説明する・

 

「ニニャ、ンフィーレアさんを連れて冒険者組合へ行け!モモンさんを呼ぶんだ!」

 

彼女がそうするのは彼らを逃がさない自身があるからだ。そう判断したペテルは覚悟を決めると指示を飛ばしつつ武器を構え、後ろに下がるニニャとンフィーレアの前に壁を作る。ダインとルクルットも同じく壁に加わる。彼らを見捨てろと指示されたニニャは迷う。

 

「ですが・・・」

「我々も死ぬ気はありません。時間稼ぎをするだけです」

「そういう事である!ニニャ早く逃げるのである!」

「早くモモンさんとナーベちゃんを呼んでこい!」

「みんな…」

「んー。お涙ちょうだいだねー、うん。でも誰も逃がさないよー。逃げられると困っちゃうからねー」

 

彼らの言葉が嘘ということはニニャも分かっている。だからこそ彼らの覚悟を無駄にする訳にはいかない。ニニャがンフィーレアの手を引き入口に向かう為に後ろを振り返ると、

 

「……遊び過ぎだ。例の新人が帰ってくる前に終わらせるぞ」

 

禿げ頭のアンデットのような男が入り口から入って来きた。退路を塞がれてしまった。

 

「でもー、カジッちゃんが悲鳴漏れないように準備してくれてるし一人くらい遊ぶ時間はあるでしょ?」

「ふん、好きにしろ。あとその呼び方は止めろ」

 

スティレットを取り出しながら、ニンマリと歯をむき出して笑う女の目がニニャへ向けられる。ニニャは思わずはくたくに貰ったペンダントを握りしめる。

 

「退路は断った事だしやりましょうかね!君たちに教えてあげる・・・私が遊ぶのはそのニニャって子だから」

「―――っ」

 

ペテルの盾と剣を持つ手に力が籠る。戦闘開始を宣言した女は、ペテルが反応できない速度で間合いを詰めスティレットを額へ突きだす。ペテルは急いで盾を持ちあげようとするがそれよりも速くスティレットが迫り―――そこでペテルの意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

ハムスケの登録には一時間ほど掛った。はくたくの登録で写生を経験済みなので以前より30分ほど短縮されてはいるが。金を払って魔法を使えば一瞬で終わるが、アインズがはくたくの登録時に『絵画に興味がある』という言い訳を使った手前そうすることは出来なかった。

 

「さて登録は済ませたし、ンフィーレアの所に向かうか」

 

アインズは颯爽とハムスケに飛び乗る。身体能力を生かした優雅な動きに周辺から驚嘆の声が上がる。女性からの黄色い声や冒険者からの熱い視線にもアインズは平然としている。はくたくはそんなアインズの態度に少し興を削がれる。

 

「どうしたモモン。さっきはあんなに恥ずかしがってたのに」

「もう慣れた。メリーゴーランドにおっさんが乗って何が悪い」

 

(慣れたというよりやけっぱちだな)

 

「おぬしら、もしやわしの孫と薬草の採集に行った者じゃないか?」

 

出発しようとしたアインズとはくたくは老婆に呼びとめられる。その老婆が誰かは見当が付いている。

 

「誰だ?」

 

はくたくに問いかけられて一瞬驚くも老婆は答えた。

 

「リイジー・バレアレ。ンフィーレアの祖母じゃよ」

「やはりそうでしたか。あなたの言うとおり我々がンフィーレアさんをカルネ村まで護衛した冒険者です。私がハク、森の賢王に乗っているのがモモン、こちらはナーベです」

 

三人が頭を下げる。

 

「その魔獣を森の賢王と言ったが」

「ハムスケでござる!以後よろしくお願いするでござるよ!」

「なんと、この精強な魔獣がかの伝説の森の賢王!」

 

リィジーの大声でハムスケの正体をしった冒険者たちが一層驚愕の表情を浮かべ「フフン」とハムスケがドヤ顔をする。それを見たはくたくは再び若干の敗北感を感じた。モモンがリイジーに答える。

 

「ええ。組合にはコイツの登録に来てたんです。お孫さんは薬草を持って先に帰宅しました。私たちもこれから報酬を受け取りにお宅に向かう所です」

「そうか。わしも家に帰る所だったんでな。ご一緒しても良いかな?」

 

リイジーの目には自分たちへの興味の色が見える。

 

「ええ。歩きながら今回のお孫さんとの冒険についてお話しましょう」

 

 

 

 

 

「ンフィーレアもいっぱしの男になって来たようで嬉しいよ」」

 

店への道中で今回の冒険についてアインズとはくたくはリイジーに掻い摘んで説明した。ンフィーレアが自分たちの仲間になりたいという申し出た事を聞いたリイジーは孫の成長を知って喜んでいる。店が見えてきた所ではくたくは異変に気付く。遅れてアインズも気付いたようだ。はくたくはリイジーに問う。

 

「リィジーさん、あなたの所では死体やそれに準ずる物を扱いますか?」

「いや、そんな物は扱っていないが…死霊術師じゃあるまいし」

 

少し考えた後、リィジーに告げる。

 

「あなたの店から新しい死体の匂いがします。それも複数」

「なんじゃと!」

「何があったか分かりませんが急いだ方がいいですね」

 

全員が店まで駆ける。アインズが店の前で簡単な指示を出す。

 

「ハクが先頭、その後ろが私。リイジーさんは私の後ろについてきてください。ナーベはリイジーさんを護衛しろ。ハムスケは裏口を見張れ」

 

ハムスケが裏口に行ってから、はくたくは店の扉を開ける。鍵は開いたままだ。屋内で長物は扱いにくいためはくたくはフランキスカを右手に持つ。店の奥の扉間を勢いよく開き、出た通路を右に曲がる。進むほど血の匂いが強くなる。通路奥の扉前で止まる。

 

「この扉の奥には何がある?」

「や、薬草の保管庫で裏口に通じる扉があるんじゃが」

 

はくたくは勢いよく扉を開け中に踏み込む。そこにあったのは4つの死体―――いや奥の一人は辛うじて息がある。死体は漆黒の剣のペテル、ルクルット、ダイン。瀕死はニニャ。

 

「こ、これはいったい・・・」

 

はくたくに続いて部屋に入ろうとするリイジーをアインズが止める。突然、ペテルの死体がぎくしゃくと動き起き上がろうとする。だがそれが立ち上がる前にフランキスカがペテルの首を断つ。同様に動き出したルクルットの首も断つ。はくたくがそうする間にダインが立ちあがる。ダインの額には致命傷であろう刺突武器で空けられた穴が開いている。ダインの顔は青白く目は濁り切っている。死者が自然の理を無視して動く、それを人は不死者(アンデット)と呼ぶ。

 

動死体(ゾンビ)!」

 

ダインがこちらに詰めよる前に飛来したフランキスカがダインの首に突き刺さる。首を半ば断たれたダインが倒れ伏す。ここで何が起こったかを理解したリイジーが孫の名前を叫びながら外へ駆け出した。アインズがナーベラルにリイジーを守るように命令を下している間に、はくたくはニニャを調べる。まずはトラップが仕掛けられていないかを調べる。自分たちがPKをする際によくプレイヤーの死体や瀕死のプレイヤーに罠を仕掛けていたからだ。トラップが無いとこを確かめると、はくたくはニニャの体を横たえ、身に付けていたペンダントを引っぱり出す。木彫りの狐は真っ二つに割れていた。

 

「存外早く役に立ったな」

 

そのペンダントは<疑死の首飾り(ペンダント・オブ・フォックス・スリープ)>。装着者が瀕死になった時に自動的に<疑死(フォックス・スリープ)>と簡単な妨害魔法を装着者に掛ける。はくたくがソロ時代にモンスターから逃げる際に使う為に大量に買い込んでいた最後の一個。ニニャに渡したのは危険なモンスターでパーティが全滅の憂き目にあっても、彼女だけは生き残れるようにするためだった。ここでニニャを拷問した誰かは彼女が死んだと判断して放置したのだろう。仲間のゾンビに喰われなかったのも妨害魔法のおかげだ。死体を片付けて布をかけたアインズがはくたくの後ろからニニャを覗き込む。

 

「はくたくさん、彼女を治療します」

「ちょっと待ってください」

 

アインズがインベントリから<大治癒(ヒール)>のスクロールを取り出し使用しようとするのをはくたくは制止する。

 

「これも使わないと駄目ですよ。多分ショックを受けているでしょうから」

「ああ。そうですね」

 

はくたくは一本のポーションを取りだす。ポーションには<恐怖除去(リムーヴ・フィアー)>の魔法が込められている。

 

「ではお願いします」

 

アインズがスクロールに込められた大治癒をニニャに発動させる。スクロールが燃えあがると、ニニャの砕かれた全身の骨や裂けていた肉がみるみる元に戻っていく。完全に治癒したニニャが目を開けると、意識を失う前の恐怖を思い出たのだろう、必死の形相で暴れようとする。はくたくはそれを抑えつけ、口にポーションを流し込む。ポーションの効果はすぐに現れた。恐怖の表情があっという間に消え、正気を取り戻したニニャの目がはくたくとアインズを見た。

 

「…ハクさん?それにモモンさん…」

「済まないが薬で強制的に鎮静させてもらった。簡潔に何があったのか教えてほしい」

 

ニニャがゆっくりと起き上がる。

 

「は、はい。…皆さんと分かれた後ここで積み荷を運び終えたら、女の戦士と禿げ頭の男の魔術師が現れてンフィーレアさんを攫いに来たんですそれで…ペテルたちはンフィーレアさんと私を逃がそうとしたんですが…」

 

ンフィーレアの視線が布をかぶせられた三人に向かう。

 

「そいつらは攫う目的について何か言ってなかったか?」

 

ニニャが記憶を辿る。

 

「確か・・・ンフィーレアさんの生まれながらの異能を使って叡者の額冠というアイテムをを無理やり使わせると言っていました」

 

(自分たちと似たような事を考える奴は当然いるわな)

 

「そのアイテムの効果は?」

「分かりません・・・そのアイテムを使うとアンデットの軍隊を呼びだす第七位階魔法<不死の軍勢(アンデス・アーミー)>が使えるようになるとしか」

「モモンはその魔法を知っているか?」

 

アインズは首を横に振る。

 

(この世界独自の魔法か…第七位階だから大したことはないか?)

 

「奴らは何処へ?」

「エ・ランテルの墓地区画です。あの血文字は…ブラフです」

「よし、何が起こったかは大体分かった。少し休め」

「ンフィーレアが!わしの孫がどこにもおらん!」

 

帰って来たリイジーにアインズが冷静に応える。

 

「ニニャを治療して事情を聞きました。ンフィーレアは生まれながらの異能目当ての者に攫われたようです」

「なんと!それでこの者たちは?」

「我々と一緒にお孫さんの依頼を受けた冒険者チームです。私たちをこの店で待っている筈でした」

「そうか…それでンフィーレアを攫った理由はなんじゃ?」

「アンデットの大群を召喚するマジックアイテムを無理やり使わせるようです」

「そんなものを使って孫は大丈夫なのか?」

「それは分かりません。ですが、この様相を見る限り…」

 

ンフィーレアの運命を考えたリイジーの顔が青くなる。アインズはリイジーに持ちかける。

 

「我々に依頼したらどうだ?まさに冒険者が解決すべき案件だろう?アレを調べたお前なら、我々がこの街で一番この事件を解決する公算が高い事も分かっているはずだ」

 

リイジーは驚愕の表情を浮かべる。

 

「まさか…おぬしら、最初から」

「そう言う事だ。さあ、雇うのか雇わないのかどっちだ?…言っておくが、高いぞ」

 

リイジーが覚悟を決めたようだ。

 

「いかほどなら満足する?」

「―――全てだ」

「なに?」

「お前の持つ全てだ」

「おぬし…」

 

リイジーが後ずさる。ここに来てから最も驚いたようだ。

 

「ンフィーレアを無事に連れ帰って来たのならば、全てを差し出せ」

「おぬしらは・・・人の魂と引き換えに願いを叶える悪魔では無いだろうな?」

 

はくたくが口を挟む。

 

「悪魔は魂を代価にする上、その願いを歪めて叶える。願いをキッチリ叶える我々を悪魔とは心外だな。それで雇うのか?」

「雇う!雇うとも!わしの持つ全てを差し出す。孫を救ってくれ」

 

アインズが頷く。

 

「契約成立だな。では早速街の地図を持ってきてくれ」

 

リイジーが直ぐに地図を持ってくる。

 

「今からンフィーレアの正確な場所を探る。あいつらが嘘をついた可能性もあるからな。その間リイジーとニニャは他の部屋で何か証拠になる者を探して欲しい」

「わかった」「分かりました」

 

アインズは適当な理由を付けて二人を追い出す。彼らがいなくなってから、はくたくがアインズに聞く。

 

「何か証拠でもありましたか?」

「それは―――」

 

アインズが<伝言>で誰かと短く会話する。

 

「誰ですか?」

「エントマです。後から掛け直します。奴ら、ペテル達の冒険者プレートを持ち去っている。そこから探知します」

狩猟戦利品(ハンティング・トロフィー)?奴ら馬鹿なんですかね」

 

はくたくはアインズがナーベラルに『誰でも楽々PK術』を教えている間、ペテル達の死体を検分する。

 

(三人とも刺突剣で急所を一撃だな…苦しまなかったのがせめてもの救いか。彼らが死んでも何も感じないが、関わった手前敵が取れるなら取ってやろう)

 

「はくたくさん、彼の居場所が分かりました」

 

はくたくは<水晶の画面(クリスタル・モニター)>で浮かび上がる映像を見る。そこには墓地で無数のアンデットに囲まれたンフィーレアがいた。何故かスケスケ衣装に着替えさせられている。

 

「墓地で確定ですか。第七位階でこの軍勢…コストパフォーマンスはよさそうですね」

「どうなさいますか?低級アンデットの大軍など転移か飛行で回避すればよろしいと思いますが」

「馬鹿を言うなナーベラル。それでは事件が大事にならない」

 

?マークを浮かべるナーベラルにはくたくが説明する。

 

「これを呼び出した奴はこれで何かやらかすつもりだろう。ンフィーレア救出のついでにそれも解決すれば我々の名声も広がって一石二鳥という訳だ」

「なるほど・・・流石は至高の御方。我々では思い付きもしない深謀遠慮でございます。それではこれからは隠密能力に長けたシモベを墓地に送り込み、事態が大きく動くまで高みの見物をされ、最高のタイミングで打って出るのですね?」

 

はくたくはナーベラルの提案に感心する。

 

(それは思い付きもしなかったな。いや、待てよ)

 

「ナーベラル、それは最適解ではないぞ。確かに最高のタイミングで事件を解決というのは一見理想的だ。だが今の我々に限っては違う」

「というと?」

「森の賢王だ。カッパーのルーキーが森の賢王をねじ伏せる。これだけでも偉業なのに更に帰還した当日にアンデットの大軍を撃破するのは不自然すぎる。たとえそれが事実としてもな。我々に対して邪推する輩が出てくるだろう。痛くもない腹を探られるのはうっとおしい。だから完璧なタイミングではあえて出ない、が正解という訳だ」

「人間の心理まで精通なされるとはさすがでございます・・・私の浅慮をお許しくださいはくたく様」

「謝る必要はない。これからも恐れずに提言するといい」

 

アインズがドアへ向かいながら確認する。

 

「それでは我々はこのまま墓地へ向かい適当にアンデットを蹴散らしてからンフィーレアを救出、というここですね?」

「ええ。それでいいと思います」

 

アインズはドアを開け放ち声を張り上げる。

 

「ンフィーレアの居場所が分かった!我々は今から墓地へと向かう!」

 

廊下をリイジーとニニャが走ってくる。

 

「奴らの居場所が分かったんじゃな?」

「ええ。ニニャの言うと通り墓地にいます。数千のアンデットのオマケつきで」

「なっ」

 

(ちょっと吹かし過ぎじゃないかな?)

 

「大丈夫だ、私たちならば突破できる。問題は墓地からアンデットが溢れる可能性があるという事だ。リイジーは多くの人間にこの事態を伝えてほしい。お前なら耳を貸す人間もいるだろう。ニニャは冒険者組合にこの事を伝えろ。冒険者が大量に必要になるだろうからな」

 

ニニャが頷く。

 

「分かりました。冒険者組合にこの件を伝え次第皆さんに合流します」

「いや、それは必要ない」

 

はくたくはニニャの提案を拒否する。

 

「今はポーションが効いているが、効果が切れたらある程度ショックがぶり返すだろう。ニニャは冒険者組合で待機しろ」

「ですが…私も皆の敵を討ちたいです!」

「敵は強い。お前まで死なせたらペテル達に顔向けができんからな。安心しろ敵は討ってやる」

「つっ…分かりました」

 

ニニャが涙を浮かべて頷く。アインズ達はアインズを先頭に店の出口へ向かう。

 

「話しは終わったな?時間が差し迫っているので早速向かう」

「アンデットの軍勢を突破できる手段はあるのか!?」

 

アインズとはくたくはリイジーを振り返る。アインズは背負ったグレートソードを、はくたくは自身の肉体を指差す。

 

「「ここにあるだろ?」」




という事でオリジナルアイテムのネタばらしでした。<疑死>だけだとゾンビになったペテル達に食べられちゃうので探知妨害の魔法も発動するようにしました。

ニニャが生き残ったのはカジットがアインズ一行を警戒してクレマンティーヌに撤退をせかしたことも関わっています。撤退を急かすカジットのせいでクレマンティーヌはニニャの死亡をきちんと確認しなかった、という訳です。

はくたくで一回写生をしたおかげで登録時間を短縮できたのも大きいです。原作通り90分掛ったらせっかく生き残っても衰弱死コースでしたね。
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