オーバーロード 破壊の魔獣   作:源八

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事件の顛末

はくたくはクレマンティーヌの死体を見下ろす。胸には漆黒の剣の短剣が深々と突き刺さり心臓を貫いている。

 

(これで敵討ちは出来たってことでいいかな)

 

はくたくは短剣を引き抜きインベントリにしまう。無限の水差しで先ほどの戦闘やアンデットを蹴散らしたときに付着した血やその他もろもろを洗い流す。死後硬直が始まる前にどうにかクレマンティーヌの死に顔を整えていると、アインズ、ナーベラル、ハムスケがこちらに来た。あらかじめ教えていたからかアインズ本来の姿でもハムスケがは同様してない。クレマンティーヌの死体を見下ろしながらアインズが確認する。

 

「死んでいますか?」

「ええ。トドメはきちんとこの短剣で刺しましたよ」

 

はくたくはクレマンティーヌを貫いた短剣をアインズに返す。

 

「それではンフィーレアを助けに行きましょう。ナーベラルとハムスケは死体と周辺のアイテムを回収しておけ」

「畏まりましたアインズ様」

「了解したでござるよ」

 

 

 

 

 

霊廟の中にンフィーレアは立っていた。男だというのに変なスケスケ衣装を着せられ、頭にはサークレットを付けられている。それに加え目を剣で潰されていた。ンフィーレアは何らかの精神支配を受けており二人に反応する様子は無い。はくたくがアインズにンフィーレアを任せて霊廟内を探索しているとアインズがンフィーレアの精神支配の原因を突きとめたようだ。

 

「原因が分かりました」

 

はくたくがアインズの横に立つとアインズがンフィーレアが被っているサークレットを指差す。

 

「この叡者の額冠というアイテム――ニニャが言っていた奴ですね、これがンフィーレアをこの状態にしています」

 

アインズははくたくが叡者の額冠を手に無造作に取ろうとするのを手で押さえる。

 

「外せば発狂します」

 

アインズが叡者額冠の説明をする。このマジックアイテムは装着者の自我を封じる事と引き換えに装着者そのものを高位階魔法を吐き出すアイテムにするようだ。ンフィーレアの精神を壊さずに外すにはアイテムを破壊するしかない。

 

「破壊しましょう。少々レアですが性能自体は大したことありませんし」

「そうですね。クエストをわざと失敗なんて嫌です。<上級道具破壊(グレーター・ブレイク・アイテム)>」

 

崩れ落ちるンフィーレアをはくたくは抱える。

 

「目の治療はこちらでやっておきますからアインズさんはアイテム回収して見た目を元に戻しといてください」

「わかりました。それにしてもPKしたら全取りってのはいいですね」

 

二人はユグドラシル時代とは違いアイテムを全て奪える事実にPKプレイヤーとして暗い笑みを浮かべたあと、それぞれの仕事に取り掛かった。はくたくは霊廟内にある台座の一つにンフィーレアを横たえ、治療薬(ヒーリング・ポーション)を取りだす。

 

「レベルは低いから下級治療薬でもいいだろうが念の為」

 

ポーションの栓を抜くとゆっくりとンフィーレアに飲ませる。顔に走る一直線の傷が時間を逆行させるように癒えていく。精神支配から解放され傷も癒えたがンフィーレアは目覚めない。精神的な負担が大きいのだろう。はくたくはインベントリから取り出した毛布でンフィーレアを簀巻きにして担ぐと霊廟を出た。

 

 

 

 

 

霊廟の外では鎧と剣を再構成したアインズとナーベラルとハムスケがはくたくを待っていた。

 

「これ面白いですよ」

 

はくたくはンフィーレアと交換でアインズから黒い不格好なオーブを渡される。

 

「この石ころの何処が面白いんです?」

「効果は微妙ですがこのオーブ、死の宝珠は喋るんです。知性あるアイテム(インテリジェンス・アイテム)ですよ」

 

ユグドラシルには無かった種類のアイテムだ。はくたくがオーブをしげしげと眺めていると頭に声が響いた。

 

 

―――お初にお目にかかります、偉大なる『破壊の王』よ

「頭の中に声が聞こえますね。死の宝珠よ、何故私を『破壊の王』と呼ぶ?」

―――私が召喚したアンデットを造作もなく屠られた故

 

(なかなか力関係ってのを理解しているじゃないか)

 

「そうか。物分かりがいい奴は嫌いではないぞ」

―――偉大なる『死の王』と『破壊の王』に敬意と崇拝を捧げます

 

(死の王ってのはモモンガさんの事か)

 

はくたくはアインズに尋ねる。

 

「コレどうするんですか?」

「ハムスケに使わせて様子を見ます」

「分かりました。ハムスケ受け取れ」

 

はくたくはハムスケに死の宝珠を放る。ハムスケはそれを素早くキャッチした。

 

「使えるか?」

「使えそうでござるよはくたく殿!・・・これ五月蠅いでござる!アインズ殿の元に戻りたいと五月蠅いでござるよ」

 

はむすけは死の宝珠を頬に仕舞った。オーブをモゴモゴと口の中で転がしているようだ。はくたくがアインズに提案する。

 

「回収作業も終わったようですし帰りませんか?」

「そうですね。ではンフィーレアを連れて凱旋しましょう」

 

大きくマントをはためかせながらアインズが締めくくった。

 

 

 

 

 

「あー疲れた」

 

アンデット騒動の次の日の朝、宿屋内。先日泊まった部屋に入るなりはくたくはベッドに腰掛ける。疲れというのは肉体的な物ではなく精神的なものだ。

 

「はくたくさんが墓地ではしゃぎすぎたからですよ」

「すみません…」

 

ンフィーレアをリイジーの元へ連れ帰る、そこまでは良かった。リイジーは涙をこぼしながら何度も頭を下げ、必ず報酬を支払うと約束した。問題はその後の組合での聴取だ。証言者としてミスリル冒険者を連れた組合長に長時間拘束されたのだ。はくたくは昨日の聴取を思い出す。

 

 

 

 

 

上級冒険者用の会議室で聴取は行われた。会議室にいるのは組合長であるブルトン・アインザック、冒険者チーム「天狼」のリーダーベロテ、そしてアインズ一行だ。

 

「昨晩に起こった事の大体の経緯は分かった。最後に聞きたい事がある」

 

アインズが事件について話しても構わない範囲で組合長に説明した。長い説明を聞き終えた組長が緊張した趣ではくたくの方を向き尋ねる。ベロテの表情も硬い。

 

「城壁の衛兵と複数の冒険者チームからの報告なのだが、昨晩の墓地でアンデットの大軍とは別に巨大な魔獣が暴れまわっていたという目撃証言がある」

「それは私の事ですね」

 

はくたくは自身の事だとあっさり認める。元々そこまで隠す気は無かった事だ。はくたくの言葉を受けて経験豊富な冒険者であるアインザックは表情にこそ出さなかったが目には驚きの色がはっきりと出ている。

 

「・・・本当かね?」

「今から外に出て実演してもかまいませんよ?」

「組合長、彼の言っている事は本当です。あの姿を見間違う筈がない」

 

アインザックにベロテが証言する。はくたくは昨晩墓地から追い出した冒険者の中にベロテがいた事を思い出した。

 

「あなたとは昨晩会いましたね」

「ええ・・・」

 

ベロテがはくたくを見ている。その表情は恐れと畏怖が半々といった所か。頭の中で整理を付けたアインザックが口を開く。

 

「その事について何故組合に申告していなかったのかね?」

「誰にも聞かれなかったので」

「それもそうか。しかし今でも信じられないよ。君のような存在について我々の記録には無かったからな」

「でしょうね。特にPRして回っている訳でもないですし」

 

はくたくは肩を竦める。

 

「ハク君、組合からの要請としてエ・ランテル内では必要でない限りその…支障が無ければそのサイズのままでいてもらいたいのだが」

「分かりました。特に問題はありませんよ」

「よろしく頼むよ」

 

組合長とベロテの気が緩む。彼らが緊張していたのはこの件についてだったのだろう。

 

「事件で疲れているだろうに長時間拘束して済まなかったなモモン君」

「いえいえ。組合長も組合として必要な事をやっているだけです。謝る必要はありません」

「では私はこれからこの事を魔術師組合や都市長に伝えなければならないので失礼させてもらう。だがその前に」

 

アインザックはモモンとナーベに加えはくたくにミスリルの冒険者プレートを渡す。

 

「私としてはアダマンタイトのプレートを渡したいのだが、何分前例のない事だからな。とりあえずはそれで我慢して欲しい」

「特例として昇格を認めてもらえただけで満足です」

「では、改めてこの街の者として街を救ってくれた事に感謝する」

 

アインザックとアインズ達は固く握手を交わした後に解散した。

 

 

 

 

 

はくたくは昨晩の事を思い出したついでにある事を思い出す。

 

「そういえばエントマから何か話があったんじゃないですか」

「ええ。今からアルベドに確認します」

 

アインズが<伝言>でアルベドと会話を始める。アルベドと会話しているアインズが言葉を洩らす。

 

「・・・何だと?」

「どうかしましたか?」

 

はくたくはアインズに尋ねる。声の調子には信じられないという雰囲気がある。アルべドとの会話を終えたアインズははくたくに告げる。

 

「シャルティアが我々に反旗を翻しました」

「は?・・・・ええええええ!」

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