複数ヶ所を修正しています。
カルネ村からナザリックに帰還しはくたくは、自室の風呂で汚れを落としてから従業員食堂へ向かう。
「部下がどのような食事をしているかを把握するのは大切な事だ」
お付きのメイドにそこに行く理由を聞かれてはくたくはこう答えた。
(まあ本当は食堂の飯が食べてみたかっただけなんだけど)
こちらに来てからナザリックの飯に味を占めたはくたくは、従業員食堂の飯が気になっていた。それに自分の食事とあまりにグレードが違えば少し考える必要があるというのもあった。自分だけ贅沢をするというのは気が引ける。
メイド達の食事の時間に合わせ
(なんか自分が邪魔をしたようだ・・楽にしてていいのに)
「はくたく様、ここには何の御用で?」
これをどうしたものかとはくたくが入り口で考えていると、メイド達を代表し、プレアデスのユリがはくたくの前に進み出て訪ねる。助け舟を出されたはくたくはお付きのメイドに言ったことをユリに繰り返した。
「お前たちがどのような食事を取っているのか少し気になったのでな、ここの晩飯を食いに来た。部下の福利厚生を確認するのは上に立つものに取って重要だからな。お前たちは私を気にせず食事に戻ってほしい」
はくたくは全員が席に着き食事を再開したのを確認してからユリに指示を出す。
「プレアデスは全員ここにいるか?」
「はい」
アインズと話し合った時にプレアデスに人間と接触する任務を与えることを決めていた。これを機に食事中に軽く会話をして、その任務の適任者を選んでおこう。
「どこかに席を確保してもらえないか?あとプレアデス達も集めてほしい。食事をしながら少々聞きたいことがあるのでな」
「畏まりました」
はくたくはビッフェ台に向かう。おかわりを取りに並んでいるメイド達が列を譲ろうとするのを手で押さえ列に並ぶ。出されている料理は数は多くないがどれも旨そうだ。ビッフェ台を見回し何を取るかはくたくは決めた。
前菜にシーザーサラダ。スープはクラムチャウダースープ。
メインに茄子とペンネのアラビアータとローストビーフ。
ドリンクにウーロン茶、デザートにアップルパイ。
複数の皿に盛ったそれらを器用に持つとはくたくはユリが確保している席に向かった。テーブルの端にはくたくの席がありそこを上座に左右にに三人づつプレアデスが分かれてはくたくを待っていた。左手にソリュシャン、シズ、ナーベラル、右手にユリ、ルプスレギナ、エントマ。はくたくが席に着くとプレアデス達も座る。はくたくが手を合わせ食事を始めてから彼女たちも食べ始める。最初に口を開いたのは先程と同じくユリだ。
「それではくたく様が我々に聞きたい事とは?」
「ああ、アインズと話し合って決めたのだが、お前たちから何人か選んでナザリックの外で任務を与えようと思っていてな。それに関することでいくつか質問したいことがあったのだ」
ナザリックの外で特別任務を与えられると聞いてプレアデス達に緊張が走る。自分がその任務に選ばれるためにはくたくの言葉を一言も逃さないようにする。はくたくがスライス前のローストビーフをナイフで切りながら話しかける。
「そうかしこまるな。もっと砕けた感じでいいぞ・・・それにしても旨いな。いつもの食事もこんな感じか?」
口に入れたローストビーフから肉汁があふれる。肉の質、焼き加減、グレイビーソース、すべて完璧だ。
「そーっすね。晩飯はちょっと豪華だけどいつもこんな感じっす」
「ルプスレギナ!はくたく様になんて口の利き方を」
「ユリ姉、はくたく様砕けた感じでいいって言ってるっすよ?」
「ナザリックの外でかしこまった口調で話しかけられると怪しまれるからな。砕けた感じで話せるかは大事だ」
ルプスレギナを注意するユリを窘める。
「部下がきちんとした食事をとれているようで何よりだ。ん…?」
はくたくはシズとエントマが食べているものが皆と違うことに気付く。シズは何かよく分からない不明半透明の飲物で、エントマは飲物は皆と同じだが、緑色の固形物を食べている。
「シズとエントマは皆と違う食事を取っているようだが?」
ナーベラルが答える。
「シズは
「そうなのか?じゃあスライムのソリュシャンはどうなんだ?」
「私は生きた人間が好みですが、普通の食事でも大丈夫ですわ」
(外部で普通の食事を取れないエントマとシズは外に出すことができないな。ユリはナザリックの仕事を任せなければいけないから…)
となると、外に出す事が出来るのはナーベラル、ルプスレギナ、ソリュシャンの三人だ。彼女たちが人間をどう思っているのか聞いてみる事にする。
「ナーベラル、ルプルレギナ、ソリュシャンに聞くが・・・その、人間をどう思う?」
ナーベラル
「下等生物です」
ルプスレギナ
「おもちゃっす」
ソリュシャン
「溶かすといい声をあげますね」
(どーしてそーなるの!?)
三者三様の答えだがどれも人が居る場所に派遣するにはかなり不安になる内容だ。今考えている派遣先は、
冒険者としてエランテルに行く
アインズとはくたくのお付き
カルネ村の監視と護衛
セバスと組んで商家の娘と執事として王都で情報収集
以上のの三つで、下に行くほど難易度が高い。はくたくは別の質問をしてみる。
「人間に危害を加えてはいけないという命令を守れるか?例えば…酒場で尻を知らない酔っぱらいの男に触られても我慢出来るか?」
ナーベラル
「御命令とあれば腕を折るだけで許します」
ルプスレギナ
「命令なら仕方ないっすねー。でも許可が降りればセクハラの仕返しするっす!」
ソリュシャン
「それが任務の為であれば如何様にでも我慢します」
(ナーベラル、アウト!!)
「ふむ…アインズとの話し合い次第だがお前たち三人に後々外で働いてもらう事になる。残りの三人はすまないがナザリック内、もしくは人間の前には出ない任務を頼む事になるな」
はくたくはい残り組の顔をうかがう。
「私たちは至高の御方のご意向に従います」
「ユリ姉さまと同じですぅ」
「・・・了解」
「そうか。ではナザリックを出る者も出ない者もこれまで通り忠義に励め」
「「「はっ」」」
(居残り組と出張組で喧嘩しそうになくてよかった・・・)
はくたくは話すべき事は終わったので食事に戻った。食べながら会話の内容を元に頭の中で三人に任務を割り振っていく。
(一人は不安だからナーベラルは自分たちの手元に置ける冒険者。人当たりの良さそうなルプスレギナは村の監視。一番融通効きそうなソリュシャンが王都で情報収集だな。)
食事を終えたはくたくは食器を返却しようとするがユリが替わりにやると言ってきかないので片づけを任せ、自室に
自室に戻ったはくたくは書斎で本を読みながらまた酒を飲んでいた。ユグドラシルには著作権切れの本が大量にアイテムとして存在しているため、古典が好きなら読む本には困らない。今日開けた酒はアルフヘイム産ブランデー。葡萄の香味とほのかな樽香が素晴らしく、度数は40度だが口当たりもいい。最初はグラスでちびちび飲んでいたが、途中からロックと水割りも試す。デバフの酩酊効果は無効化されるのでペースはかなり早い。本を読み終わる頃には一瓶空にしてしまった。
(度数40を一瓶…人間時代ならとっくの昔に病院送りの量だな)
美酒に囲まれながらアル中にならない体に感謝しつつ、大きく伸びをしてから本を棚に戻す。読んでいたのは「ガリア戦記」。なんとなく本棚に突っ込んでいたこの本を選んだ理由は、古代の英雄であるカエサルから今の状況へのヒントが得られないかと考えたのだ。ギルドの策士だったぷにっと萌えほど頭が回らないことは自覚しているが、はくたくなりに本から幾つかの教訓を得た。
まず、戦争というものは勝つべくして勝つという事だ。戦争では戦術と戦略を駆使し、戦闘に持ちこまれた時点で既に勝ちが確定しているような戦い方をしなければならない。ナザリックがこの世界に出て行けば、どこかの勢力と闘争状態になる可能性は非常に高いのだ。
「もう法国の部隊と戦闘したしな・・・・」
はくたくは呟く。あれはかなりの賭けだった。結果として法国と敵対する可能性を抑えつつ、王国の有力者と良好な関係を結べたものの、陽光聖典の実力次第では、はくたく達は返り討ちに合い、ガゼフは死にナザリックは法国と敵対。このようになる可能性もあった。そうならなかったのは単に運が良かっただけだ。
とはいえ失敗を恐れて慎重になり過ぎてもこれは不味い。手を考えるうちに詰みでは意味が無い。
(となると失敗はこれからも山ほどするだろう)
アインズもはくたくも一般人がいきなりナザリックを与えられて異世界に放り出されたのだ。全てが上手く行く訳が無い。だが、はくたくは失敗を犯す事自体にはそこまで深刻に考えていない
(致命的な取り返しのつかない失敗をしなければいい。最後に勝者になれていればそれでいい)
二つ目の教訓は、致命的な失敗以外を恐れる必要はないという事だ。偉大な英雄カエサルとはいえ、その人生で全く失敗をしなかった訳ではない。失敗はその後に上手く挽回できればそれでいいのだ。致命的な失敗、ナザリックの陥落や自身の死のような事態にさえならなければ失敗は問題ではない。これまで指導者とは完全無欠な存在であるべきと思っていたはくたくは肩の荷が下りた。
最後に情報の重要性。カエサルが戦争や征服、その後の統治で成功し失敗も挽回出来たのは現地の情報に精通し常に適切な手を打てたからだ。ならばはくたく達はアインズと決めた通り、冒険者を装い現地で情報を集めなければならない。ナザリックの者に集めさせてもいいが、ナザリックの者特有のバイアスがかかる為、ある程度は実際に自身の手で現地を見る必要がある。
情報という事ではくたく一つ思い出した。拘束した陽光聖典だ。第五階層の氷結牢獄に入れた後は帰還したアインズに任せたため、今彼らには尋問が行われているはずだ。彼らの供述された情報が気になるが、今から行っても纏まった情報は得られないだろう。
(明日全員の尋問が終わった後に整理された情報を受け取ったほうがいいかな)
アインズに現況を聞いてもいいが、アインズの手を患わせるのも悪い。そう結論付けるとはくたくは書斎から寝室に向かった。
目覚めたはくたくは朝食を手早く済ませアインズの部屋へと向かう。アインズの部屋の扉をノックし、出てきたメイドに用件を伝える。案内された執務室にはアインズとアルベドが二人きり。
「おはようアインズさん、アルベド」
「おはよう」
「おはようございます、はくたく様」
執務机の手前に置かれたソファと机には幾つかの物品と数枚の紙が置かれている。
「ただ今アインズ様に拘束したスレイン法国の特殊部隊、陽光聖典についての報告を済ませた所です。わざわざここに赴かれなくても、今からはくたく様の所に報告に参る予定でしたのに」
「それは二度手間だろう?お前の手をこんな事で煩わせたくは無い」
はくたくはアルベドの礼を手で制しながらソファに腰掛ける。報告書から読むかと思ったが、物品の方が気になるのでそちらから手に取る。
「奴らの装備していた物です。パンドラの鑑定によれば大したものは無いとのことですが」
隣に移動してきたアルベドが報告書の一枚を取りはくたくに渡す。物品のリストとそれに対するパンドラの評価が記載された目録だ。パンドラズ・アクター、モモンガの創造したNPCで歩く黒歴史のナザリック出納係。アイテムフェチで鑑定能力のある彼の鑑定ならば信頼出来るだろう。はくたくはもったいつけた筆跡で書かれた目録に目を通していく。
鹵獲品鑑定目録 鑑定者 パンドラズ・アクター
①金属糸で編まれエンチャントされた衣服鎧―――素材、エンチャント内容ともに低品質。
②エンチャント済みマント―――同上。
③騎士の防具と剣―――同上。
④ニグンの所持していた魔封じの水晶。―――使用済み、再チャージ可能。
⑤背嚢―――エンチャント<内部拡張><軽量化>。制限重量120キログラム。
⑥旅に必要な品々―――割愛。
⑦ポーション瓶―――効能は低級の治癒効果。時間劣化あり。エンチャント<保存>。
未知の色と劣化についてアインズ様の判断をお願いします。
どの物品もナザリックの基準に照らせば大したことはない。だが最後のポーションの項目が気になる。はくたくは机に置かれているそのポーションを手に取った。ユグドラシルでは治癒のポーションは赤いが、このポーションは青い。
「この青いポーションについて何か分かりましたか?」
「ポーション製作係に見せましたが何も。我々の知っている製造方法や素材を使っていないという事だけしか」
「戦士長の使った技、エンチャント、魔法と来てこのポーション。この世界には我々の知らない事だらけのようですね」
はくたくは情報を手に入れなければという思いを改めて強くする。ポーションを置き、残りの羊皮紙を手に取るとアルベドがそれについての説明をする。
「こちらは陽光聖典の隊員を尋問して得られた内容です」
(それにしては薄っぺらいな。どういう事だ?)
一抹の不安を感じながらはくたくは調書を読んだ。
陽光聖典尋問調書 作成者 ニューロニスト・ペインキル
陽光聖典隊長 ニグン・グリッド・ルーイン
低強度の拷問では口を割らず。中強度でも同様。高強度は精神崩壊のリスクを避けるため、治癒した後に応援人員に<
①作戦内容―――王国戦士長ガゼフ・ストロノーフの暗殺
②作戦期間―――三ヶ月
③部隊規模―――陽光聖典、王国内部協力者のみ。風花聖典以下六色聖典の支援なし
この後、六色聖典について質問し、ニグンが答えようとするとニグンが死亡。死因は不明。
何らかの魔法を警戒しアルベド様に連絡を取るも警戒網に感知無し。
数人の陽光聖典部下を用いた聴取でも、同様に意に反する質問に三回以上答えた場合死亡した。
隊員からの聴取内容を以下に記述。重複は割愛済み。
①隊員が使えるの魔法は第三位階、体長は第四位階まで
②我々の本来の任務は亜人狩りであり今回は特殊だった
③
④法国は人間至上主義を掲げ亜人を弾圧している
⑤今回の作戦に王国貴族の内通者を協力させた
⑥アインズ様、はくたく様のような存在は知らない
捕虜の損耗を考慮し尋問を中止。
尋問の方針について上層部の判断を仰ぎたい。
「・・・・・・・・・・」
読み終わった報告書を机に投げ出しはくたくは両手で顔を覆った。
(失敗する事もあるかなって思った矢先にこれか…)
「はくたく様?」
「はくたくさん?」
二人が話しかけるがはくたくは答えない。暫くした後、大きく息を吐いてからアルベドに指示をする。
「アルベド、メイドを連れて部屋外に出てくれ。アインズさんと話がある」
不安な表情でアルベドが伺う。
「…我々何か失敗をしたのでしょうか?」
「いやそういう問題ではない。再び呼ぶまで入ってくるな」
「・・・畏まりました」
アルベドがメイドを連れ一礼をしてから部屋を出る。それを確認してからアインズがはくたくと向いのソファに座った。
「やっぱり不味かったですかそれ?」
「不味いってレベルじゃないですよモモンガさん!なんでいきなり拷問しちゃってるんです?」
「アルベドがニューロニストに尋問させるか聞いてきたので」
「そのままGOサイン出したらこの調書が上がってきたと?」
「はい・・・」
「そういう事でしたか。きちんと指示しなかった我々の失敗ですね・・・」
はくたくは大きくため息をつく。予定では隊長以下陽光聖典の捕虜は、第六階層で軽労働に従事させつつ懐柔策を行って情報を引き出すつもりだった。懐柔が上手く行けば、隊長と部下数人を魔法による監視を付けた上で解放する選択肢もあった。ニグンをパイプ役として仕立て上げ、法国との対立を回避する為に。
魔法の実験と拷問や魔法を使った情報収集は最後の手段と考えていた。彼らを拷問に掛け、しかも隊長を死亡させてしまったのは最悪だ。ニグンはこちらに協力しなくても人質として丁重に軟禁しておくべき人間だった。はくたくの頭の中で立てていた計画が音を立てて崩れていった。
「・・・隊員はともかく隊長を蘇生できませんか?」
「それは考えましたけど」
「どうしてやらないんで…ああ」
「そうです。ホームポイントでリスポーンする可能性があります」
ユグドラシルでは死亡時に蘇生魔法をかけられた場合、二つの選択肢がある。一つ目はその場での蘇生。二つ目は指定した拠点でのリスポーン。この世界でもユグドラシルの仕様そのままだった場合、その場復活ならいいが、指定したホームポイントを選ばれると逃げられてしまう。ニグンが復活地点を選べるなら、拷問され、魔法をかけられ死亡したここで復活する訳が無い。
「はあ…終わった話をしても仕方が無いです。今後の話をしましょうモモンガさん」
「そうですね。残りの捕虜はどうします?」
「あの中で生かす価値があったのは隊長だけです。こうなっては解放するわけにもいかない。彼らには可哀そうですが有効活用してしまいましょう」
「自分たちだけで効率よく出来ますかね?部下に任したほうがいいかもしれません」
「うーん・・・そうだ!デミウルゴスに任せたらどうです?」
「はくたくさんナイスアイデアですよ。賢い彼なら私たちよりもいい感じに彼らを扱ってくれそうですね。」
「そうと決まれば、まずはアルベド達を呼び戻しましょう」
幾つか打ち合わせをした後にはくたくは扉を開け、廊下で待機させていたアルベドとメイド達を呼び戻す。
「話し合いは終わった。皆入ってもいいぞ」
部屋に入ってきたアルベドは堅い表情で二人に尋ねる。
「それでいかようなご処分を?」
「そういう話ではないと先程もいったろう?多少の認識の齟齬があっただけだ。確認しなかった我々の失態だよ。お前たちに落ち度はない」
「アインズ様、そうだとしても…」
「指示を正しく解釈出来なかったお前たちの責任だと言いたいのだろう?それは違う、我々の責任だ。それに程度幾らでも挽回出来る範囲だ。問題は無い。それに以前も言ったがアルベド、お前には笑顔が似合う。必要もないのにそのような顔をするな」
「くふー!…了解しましたアインズ様…くふふふ」
はくたくは厄介なことになる前にパンと手を叩きアルベドを正気に戻す。
「その件についてはもういいな?それではアルベド、デミウルゴスをここに呼んでくるよう手隙のプレアデスに伝えてくれ」
「失礼します」
優雅な仕草と共にデミウルゴスが執務室に入ってくる。はくたくが腰掛けるソファーの手前で止まり、そこにいるはくたくと奥の執務机に座るアインズにこれまた優雅な仕草で礼をする。
(何処でこんな作法を習ったんだろう…)
「デミウルゴス、只今参りました」
座ったままアインズとはくたくは返事を返す。
「来るのが早いなデミウルゴス」
「至高の御方のお呼びとあれば、出来る限りの力を持って馳せ参ずるのは当然です」
「そうか。嬉しく思うぞ。あと私はこれからはアインズ・ウール・ゴウンと名乗る。後で皆にを集めてそう伝えるつもりだ」
「なるほど…承知いたしましたアインズ様」
「話すのに立ったままも難儀だ。ここに座れ」
「ありがとうございます、はくたく様」
はくたくに勧められデミウルゴスは先程までアインズが座っていたソファに腰掛ける。
「まずはこれを読んでもらおう」
はくたくから手渡された尋問調書をデミウルゴスは読んでいく。読むスピードははくたくよりかなり速い。読み終わった頃を見計らってはくたくが声を掛ける。
「なかなか厄介だろう?」
「彼らの死因について何かお二方は御存じで?」
「魔法は私の管轄外だ。アインズさんは?」
はくたくは事前に打ち合わせた通りにアインズに話題を振る。
「知らないですね。この世界の我々の知らない何かだと思います。そこでデミウルゴスお前の出番という訳だ」
アインズの言葉をはくたくが引き継ぐ。
「捕虜からの情報収集と魔法の実験を並行して行ってもらう。必要とあれば捕虜を使い潰しても構わん」
「この三回の自白による死までに重要な情報を引き出すのに私が最適と」
「それが無ければそのままニューロニストに任せていた。…やれるかデミウルゴス?」
アインズとはくたくはデミウルゴスを祈るように見る。やってもらうと言ってくれなければ少々不味い事になる。デミウルゴスは自身に満ちた顔で答えた。
「彼らから至高の御方の期待に恥じない情報を引き出して見せましょう」
「そうか。アルベド、ニューロニストの調書を」
アルベドがデミウルゴスから調書を受け取り、アインズに渡す。アインズがそれに数行を書き足しアルベドに渡し、再びデミウルゴスに渡す。調書には陽光聖典の捕虜たちの管轄をデミウルゴスに引き継ぐ事と、これからの捕虜尋問で拷問及び魔法の使用はアインズに許可を得てからという旨が書き足されていた。
「では現時点を持って陽光聖典捕虜の管理をデミウルゴスに受け継ぐ。捕虜を引き取る際にニューロニストへそれを渡しておけ」
「了解しましたアインズ様。では失礼いたします」
アインズとはくたくに礼をした後デミウルゴスは部屋を出て行った。同じく決めていた通りに、アインズがアルベドに指示を出す。
「先程デミウルゴスに言ったが、私の改名を皆に伝える。皆を玉座の間に集めよ」
「承知致しました」
アルベドも準備の為に部屋を出て行く。
「皆が集まるまで私とアインズで内密に話し合うから、メイドもここから出て行くように」
はくたくがメイドを追い出し、再び部屋に二人だけとなった。
「モモンガさん、何とかリカバリー出来ましたね」
「デミウルゴスが優秀で助かりましたよ」
「法国にはこれから気を付けて当たらないといけませんね…」
「とりあえず法国が調査する可能性の高いカルネ村には現在シャドウデーモンを複数配置しています。追加でプレアデスも一人派遣しようかと思っています」
「それについてですが、食堂で…」
二人は短い時間の間に幾つかの事を話し合っていった。
皆を集めた玉座で何を言うべきかについても。