ポケットモンスターBW【主人公は転生者】 作:シューティングスター
ストックなくても、先の話の内容さえ決まってたらなんとかなるもんですね。
「ふぅ……。ここがサンヨウシティか……。」
少々疲れ気味な様子で呟いた少年は、ユウキと共にカノコを出発したチェレンであった。
「早速ジムに挑戦しようかな……。」
新しい街についたばかりだと言うのに、いきなりジム戦への闘志を滾らせている。
流石は強さを追い求める者なだけあるのだろう。
「あーっ!チェレンだ~~!!」
「ん?ベル!?」
後ろから、自分の名を呼ぶ人物が居た。
振り返って見ると、なんと同じ日に旅立ったベルの姿があった。
「ま、まさか……、あのキミがボクよりも早く到着していたのか……!?」
「そ、そんなに驚かなくてもいいじゃんッ!
わたしだってやる時はやるんだよぅ!!」
「し、信じられない……ッ!!」
チェレンは、ベルの方が行動が早い事を認める事ができなかった。
なぜなら、ベルと一緒に遊んだりする時には、1時間遅れがザラだったからだ。
毎回遅刻しても、全く治らない。
それにみかねたユウキが、ベルに二つ名をつけた。
『カノコが生んだ
「………なんだかチェレンが凄く失礼な事を考えてるような気がするよぅ。」
「ご、ごめん。本当に考えてた……。
じゃあボクはジムに行ってくるよ。」
なんだか気まずくなってきたので、話を切り上げてジムに向かおうとした。
ところがそうは行かなかった。
「ほぇ?チェレン知らないの?」
「知らないって…何をだい?」
「しばらくジム戦は予約がいっぱいだから、あと1、2時間は無理っぽいよ?」
「え!?本当かい!?」
これにはチェレンも困ったし、驚いた。
これからすぐにジムバッジをゲットする予定だったのに、予定が狂ってしまったからだ。
「うーん、それじゃあ今日はどうしようかな……。」
「あ、それならさぁ!」
頭をひねって考えているチェレンに、ベルが助け舟を出した。
「3番道路に行って来たら?
野生のポケモンもいるし、育て屋さんってとこもあるらしいよ!」
「ふーん、育て屋さんか……。」
育て屋と聞いて、少しチェレンの心が踊った。
もしかしたら強くなる育て方を教えてもらえるかもしれないと考えたからだ。
そう考えると、ジム戦は後回しでもイイかと思えるようになった。
「ありがとう、ベル。
今日は3番道路に行ってみる事にするよ。」
「そっか、気をつけてね?
もしわたしのジム戦が終わって、まだジム戦が受け付けてもらえるなら、ライブキャスターで連絡するね!」
「そうしてもらえると助かるよ。
じゃ、行ってくる。」
「いってらっしゃーい!」
(しかし……、急にベルがしっかりするようになって来たな……。)
育て屋に向かう途中、チェレンは考え事をしていた。
そもそも、サンヨウシティに一番乗りの時点でおかしいとは思っていた。
その上、どこに行こうか迷っている自分に、3番道路のことや、そこにあるものまで詳しく教えてもらった。
そして、とてもイキイキとしていた。
カノコに居たベルとは、本当に別人のように変わっていた。
「まるで誰かに認めてもらいたいって感じだったな……。」
無意識の内に、考えていたことを口に出してしまった。
しかし、その思考をぷっつりと途切れされる出来事が起きた。
「た、助けとくれェェェ……。」
「?」
声が聞こえた。
それも老人のような声だった。
あたりを見回すと、とても広い庭を持つ家の玄関の前に、老夫婦が座り込んでいた。
「な!?
どうかなさったんですか!?」
「おぉ……、トレーナーの方かね?」
「ハイ、ポケモントレーナーです!」
実はトレーナーと言えるようになったことが少し嬉しいのは内緒だ。
「実はさっき、育て屋に変な男がやって来てのぉ……。
『育て屋はポケモンを監禁して、無理矢理鍛えさせるところ。
そんなところに閉じ込められたポケモンを我々が解放する!』
などと抜かしよった後に庭にいるポケモンを全部ボールに戻してそのまま持って行きよったんじゃ!」
「っ、酷い……!!」
「あのポケモン達はトレーナーの方々から預かった大事なポケモンなんじゃ!
どうか盗まれたポケモンを取り返して来てもらえんか!?
この通りじゃ!!」
老夫婦は二人ともチェレンに土下座をし始めた。
ハタからみたら、まるでチェレンが恐喝をしているように見えなくもない。
「ちょっ、顔をあげてください!」
通りすがりの人にでも、こんなところを見られて恐喝なんて言われたら溜まったもんじゃない。
そもそも、頭なんて下げられなくてもチェレンの答えは決まっていた。
「犯人の特徴を教えてください!
そいつからポケモン達を取り返して来ます!!」
「おぉ……!行ってくれるのか……!!」
「トレーナーとして当然です!
それよりも特徴を!」
「犯人は茶色いマントのようなものを羽織った男でーーー」
「わかりました、もう十分です!!
それではいってきます!!」
「あっ、待つんじゃ---」
老人がすべてを言い切る前に、チェレンは走り去った。
犯人の数と、方向も知らずに。
「っはぁ、っはぁ……!
どこに隠れてるんだ……!!」
すでに1時間以上走り回っているチェレン。
息もかなり乱れている。
その1時間の間に、3番道路はほとんどくまなく探したつもりだった。
「まだ探してないところがあるとすれば……!」
そういってチェレンは3番道路の一番端にある、【地下水脈の穴】を目の前にしている。
「ここぐらいだな。
入って調べてみるか……!」
洞窟の中に足を踏み入れたチェレン。
中はとても暗いというわけではなく、洞窟内の天井にぶら下がっている数個のランプが、ギリギリの明るさを保っていた。
「ーー!~~~。」
「ー?〜〜〜、ーー!」
(え?これって………、声?)
洞窟の奥から、かすかに聞こえてくる声のような音。
それがチェレンの耳には聞こえた。
音を立てては気付かれる可能性もあったので、極力足音を立てないように忍び寄った。
「では、ほとぼりが冷めるまでここで身を隠すことにしましょう。
異論のある者は?」
(!!見つけた!
茶色いローブの男!!)
育て屋老夫婦に聞いた通りの特徴の男を発見した。
だが---
(ちょっとまてよ……っ、なんだこの数は!?)
---人数が多すぎる。
ローブの男の目の前には、てるてる坊主のような白いフードを被った人間が20人近く居た。
ここでチェレンは、自分が壮大な勘違いをしていたことに気がついた。
敵は一人ではなかったのだ。
(ダメだ……!!
戦力に差があり過ぎる!!
ここは一度サンヨウに戻るしか……。)
『ピロリリーロリロ♫』
『ピロリリーロリロ♫』
重い空気が漂う場に、そぐわない音楽が鳴り響く。
その音の発信源は、チェレンが腕につけていたライブキャスターだった。
そしてチェレンが身を潜める岩陰に視線が集まった。
「あっ、!しまっ---!?」
予想外過ぎて、テンパりまくるチェレン。
慌て過ぎた上に、通話のボタンまで押してしまった。
『あ、もしもしチェレ---』
「〜〜〜っ!」
ピッ!
とりあえず、ライブキャスターは切った。
が、あちら側にこちらの存在がバレたのは確実。
チェレンは体中から嫌な汗が吹き出していた。
「どうやら、
ネズミが紛れ込んでいたようですねェ。」
「ほんっとーにメンドーなんだから……!!」
ところ変わってサンヨウシティ。
「あれぇ?
なんですぐに切っちゃったんだろ?
もっかいかけても繋がんないし……?」
「や、やっと着いた、サンヨウシティ……!」
「もう二度とあんたに地図は持たせないわ。
今心に決めた。」
「あは、ははっ。
あの森を直進したら近道できるかなって思って……。」
「地図以前の問題ッ!?
つか地図の存在価値はッ!?
あたしと同レベルじゃん!!」
「や、だって理屈じゃ近道になるし……!」
「あんたねェ……、考えたら賢いのに考えなかったバカなんだから……。」
サンヨウシティの入口方面から、懐かしい声が聞こえて来た。
そしてベルは声の持ち主を捉えた。
「あーっ!
トウコぉ!!ユウキぃ!!」
「ん?」
「あれ?」
「「ベルが先に到着してる………だと……!?」」
「ふ、二人ともおんなじこと言うのぉ!?」
この2人の反応も、やっぱり同じだった。
「『集合時間
「まさかベルに先を越されるなんて……!
きっとこの世の終わりをなんだわ……!!
誰か救世主を見つけなければ……!!
「そこまで言うの!?酷いよぅ!
わたしだってやるときはやるんだよぅ!!
ユウキに限っては捏造だよぅ!!」
「しっかし、あの『
明日は霰でも降るんじゃねぇの?」
「え?あられ?
わたしはあられよりおかきの方が好きかな?」
「そっちのあられじゃねーよ!!
相変わらずかッ!!」
ボケたつもりでもやっぱりツッコミに回るハメになるユウキ。
旅で少したくましくなったといえど、この思考回路まで変わることはなかったようだ。
「ったく……。
ところでチェレンは?
あいつがオレ達より遅いってのはねぇだろ?」
キョロキョロとあたりを見回すユウキ。
いつもチェレンは行動が早いタイプだったからこそ、先に到着してると考えたのだ。
「チェレンなら今日会ったよ?
でも、わたしが3番道路に行ったらって勧めたから、そこに行ったんだ!」
「そうだったの。
それなら居なくてもしょうがないわね。」
「でも変なんだよねぇ?」
ちょこんと小首を傾げるベル。
それにトウコとユウキは違和感を覚えた。
「変って、何がだ?」
「ジムが空いたからライブキャスターにかけたんだけど、出たと思ったらすぐに切っちゃうし、その後は電話が繋がんないし……。」
「確かに変よね。
すぐに切っちゃうのもおかしいし、チェレンはこまめにライブキャスターを、チェックしてるから電話に出ないことはほとんど無かったわ。」
「ふーーーむ。
ベル、3番道路ってどっちだ?」
二人とも、ベルと同じように違和感を覚えた。
そしてユウキはベルに3番道路の方向を聞き出そうとした。
「ああ、それならあっち---、なにあれ?」
3番道路の方向を指差したベルだったが、異様な光景に驚いた。
3番道路入口付近に、巨大な人混みが出来ていた。
よく見ると、ポケモンポリスのジュンサーさん達が、沢山出回っていた。
そしてユウキたちは、一番近くに居たジュンサーさんに話しかける事にした。
「あのー、何かあったんスか?」
「ああ、ポケモン強盗事件よ。
育て屋さんにあるポケモンを根こそぎ持っていかれたの。」
「ふぇぇ……、あのぅ、犯人は捕まったんですか?」
「それがまだなのよ。
3番道路に逃げた事は確実なんだけど……。
ひょっとしたらもうシッポウシティより向こうに逃げられてるかもしれないのよね。」
「犯人の特徴とかってないんですか?」
「特徴ね?
まず、リーダー格の男は茶色いローブを身に纏っていて、部下の人間達は白いフードみたいな服を着ていたらしいわ。」
(茶色いローブ---?
白いフード---?
間違いねぇ。
犯人は
プラズマ団ッ!!!)
ユウキは確信した。
そこまで特徴的な組織は、イッシュに存在しないし、ポケモン解放が、育て屋を狙う動機にもなるからだ。
「そーっスか。
わざわざありがとうございました。
見つけたらすぐに通報しますんで、お願いしまっス。」
「ええ、お願いするわ。
あなたたちも気をつけてね?」
「「「はいっ!」」」
聞きたい事をすべて聞きた後ユウキ達3人は、3番道路へ進んだ。
「 よし、この辺ならイイだろ。」
「イイだろって、何が?」
先程の人混みから少し離れたところで、ユウキたちは歩みを止めた。
「実はな、犯人の目星はついた。」
「ホントッ!?
それで、どこにいるの!?」
「もったいぶらずに教えてよぅ、ユウキ!!」
「ごめん。
まだ場所まではわからねぇんだ。
けど、そいつらはかなり危険な集団なんだ。」
「だったら、ジュンサーさんに頼めば……。」
「それも考えたけど、恐らくまだジュンサーさんたちは、事情聴取やら現場検証やらで動けないだろーな。」
「ふぇぇ?
別に時間がかかってもちゃんと動いて貰えるんならそれでイイんじゃないの?」
「ダメだ。
時間がかかり過ぎると、犯人に逃げる時間を与えることになるからな。
それに、まだ決まったわけじゃねぇけど----、
チェレンも危ないかもしれない。」
「っ!?」
「えぇ!?」
予想外な言葉が、ユウキの口から発せられて、驚く二人。
もちろん100パーセント決まったわけじゃないと言ったのだが。
「チェレンが行ったのも3番道路。
犯人が逃げたのも3番道路。
チェレンは3番道路から帰ってこないのも、あいつのライブキャスターに繋がらないのも、なんらかの形で接触した可能性があるからな。」
ポカーンと、口を開けて話を聞く女子二人。
なんでここまで考えられるのか、不思議で仕方ないみたいだ。
「つーわけで、ここら一帯捜索するぞ!
協力してくれるな?」
「「もちろんッ!!」」
ポケモン達を取り返すため。
そして、チェレンを見つけ出すため。
ユウキ、ベル、トウコの3人の闘いが始まった。
できるだけ連続で投稿できるように努力します。