ポケットモンスターBW【主人公は転生者】 作:シューティングスター
「あれ?」
目の前は川。
カノコタウンの次の目的地であるカラクサタウンではなかった。
間抜けな声をあげる、ポニーテールの少女、トウコ。
どうして自分でもこうなったかがわかっていないようだ。
「なぁ、トウコ?」
「………なに?」
「どうしてこうなった………」
その横に立つ少年、ユウキはため息と共にこれまでの過程を振り返った。
~30分前~
4人で同時に1番道路へ踏み出したユウキ達。
これから始まる道の世界への旅に、4人は興奮を隠せていなかった。
「じゃあ、ボクは行くよ。みんな、また旅の途中で会おう。」
知識が豊富なチェレンはしっかりと地図を見ながら進んで行った。
「わたしも行くね?また会おうねぇ~!」
ベルも旅立って行った。
((ベルの地図逆さまじゃん……。))
二人はベルのことが心底心配になった。
道に迷うフラグを現在建築中だった。
「よっし、オレもそろそろ___」
「ねぇ、ユウキ?」
「ん、どした?」
「よかったらあたしと一緒に旅をしない?」
(なっ!?なんだとォォォォォォォ!?
こ、ここ、これはアレか!?フラグが立ったというやつなのかッ!?)
1人でとんでもない妄想を始めたユウキ。
彼ならどんなところでも幸せに生きていけるだろう。
「いやァ~、ユウキってポケモンにすっごい詳しいからさ!
一緒に旅したらためになるかな~って思ってさ!」
「べ、別にイイけど……。」
「ホント!?
じゃあ出発しよ!」
「へ?お、おいっ!お前タウンマップは!?」
「へーきへーき!!カラクサまでは一本道だし、だいじょーぶだよ!」
カラクサまでは一本道。
ゲームをしたことがあるユウキは、この言葉の説得力に押されて、じゃあ大丈夫か。と、思ってしまったのだ。
30分後に道に迷って川に出るとは知る由も無かった。
そして舞台は現実へと戻る。
◆◆◆
「……カラクサタウンに行くのに森なんて通ったか?」
「……通ってない?」
「疑問にするなァ!
なんでさっきまでのことを覚えてないんだよ?!
アルツハイマーかッ!!」
「だってぇ……。一本道だから曲がらなくていいと思ったんだもん……。」
「だからって間違った方向に真っ直ぐ進みゃァ誰だって道に迷うわッ!!
この、単細胞のマッスグマッ!!」
「ぅぐ……。」
イッシュしか知らないトウコにはマッスグマというポケモンのことは知らなかったが、自分に対する罵倒ということは理解できた。
「そこまで言わなくてもいいじゃんかァ!!
ユウキのバカぁぁぁっ!!」
「え?___どわぁっ!?」
頭に血が登ったトウコはあろうことか、イシツブテほどのサイズの石をユウキ目掛けて投げて来た。
直前に気付いたユウキは、なんとか間一髪でかわせた。
投げた石は、ユウキの後ろに広がる川に落下した。
「てめっ、あぶねぇだろう___」
「ミロォォォォッ!!」
「「え!?」」
ユウキの抗議を遮るように、美しい鳴き声がその場に響いた。
二人が川に視線を向けると、綺麗なウロコを持ったヘビのようなポケモン、ミロカロスが君臨していた。
「な、何よォ!このポケモンっ!?」
「これはミロカロスだ!!てか何でこんなとこに____あ。」
そう、1番道路には超低確立でミロカロスが釣れる川があるのだ。
もっとも、滅多に人前に出て来ないので、知っていたのは原作ゲームをプレイしていたユウキだけであろう。
異常なほどに気が立っているミロカロスは、みずタイプの高威力わざ、ハイドロポンプを発車した。
「!! トウコあぶねぇっ!!」
「きゃぁっ!!!」
ハイドロポンプは、トウコに真っ直ぐ向かっていた。
ユウキがトウコの腕を引っ張る形で、トウコはなんとか回避に成功する。
「あ、ありがと……。」
「礼なら後にしてくれ!!今はコイツをどうにかするぞッ!!」
「う、うん!」
(なんであのミロカロスはあんなに怒ってる!?
イヤ、そもそもなんでオレたちの前に出て来たんだ!?
普通ミロカロスは人目に映らないように生活してるハズだ。
そんな判断も出来ないほどの怒りを抱えているのか!?
トウコが石を放り込んだから?
___違う!それもだろうけど、もっと根本的な原因があったんじゃないのか!?
ミロカロスの目を見ても、
【許しません!許しません!絶対に許しません!】
としか言わねぇし………!)
ゴールドとのバトルのように策を巡らせるユウキ。
しかし、今回はそれが仇となった。
「きゃぁぁぁぁぁっ!?」
「しまッ___!トウコォッ!!」
考えて動きが止まっていたユウキの横を何かが通り過ぎた。
それはミロカロスの尾で、いつまにか陸地に上がっていたミロカロスは、ユウキの横にいたトウコを尾で捕まえた。
「てめぇぇぇっ!!!
オレの仲間を捕まえといてタダで済むと思うなよッ!!!
サンダース、ゴンベ!!出番だ!!」
「ぎゃうぎゃう!」
「ゴーン!」
「二人とも、トウコがあのミロカロスに捕まったんだ!
解放するのに協力してくれ!」
「ぎゃうっ!」
「ゴンッ!」
「サンダース、10まん………!」
指示を送る瞬間、頭にビジョンが浮かび上がった。
10まんボルトに巻き込まれるトウコの姿を。
「____ッ、にどげりに変更だ!」
「ぎゃうーーーっ、ぎゃぎゃうっ!!」
「ミィ……?」
(っくそ、やっぱり全然ダメージが入ってねぇ……!)
サンダースは、とくこうとすばやさの高さがウリのポケモンだ。
反面こうげきはほとんどない。
しかもミロカロスは耐久力がウリのポケモン。
とくぽうよりもぽうぎょが低いといえど、にどげりのダメージは殆ど無かった。
「ゴーン!ゴンゴン!」
「? 次はお前が行くのか?」
「ゴンッ!」
「よし、頼んだぞ!メガトンパンチッ!!」
「ゴーーン!!」
「ミィ……ッ!」
ゴンベの重たい一撃に、ミロカロスは思わず顔をしかめた。よっぽど効いたのだろう。
(!? 効いてる!?
さすが6Vのやんちゃ!生まれたばっかでも十分戦力になってくれるぜ!)
これにはユウキも驚きを隠せなかった。
「ミロォォォォッ!!」
今度はこちらの反撃だと言うように、口から極太の水流、ハイドロポンプを発射した。
「サンダース、まもるだ!」
しかしサンダースのまもるによって作られたバリアが、いとも簡単にハイドロポンプをかき消した。
【チッ!あなたは後回しです!】
「は!?後回し!?おい、てめぇどういう____!?」
ミロカロスの目が後回しと語った。
一瞬後回しと言う意味がわからなかったが、理解して。
「ミィィィ……!」
「え?ちょっとウソでしょ……!?」
トウコから恐怖のこもった声が出た。
何故ならミロカロスは、トウコをターゲットにしてれいとうビームのエネルギーを貯めているのだから。
「____させっかァ!!
ゴンベ、ミロカロスの顔にメガトンパンチだ!!」
「ッゴーーーン!!」
れいとうビームを阻止すべく、ミロカロスの顔を目掛けて跳び上がり、拳に力を込める。
ゴンベはミロカロスの顔の目の前まで達し、拳を振り抜こうとしたときだった。
「___ロォォォォッ!!」
「ゴンッーーー!?」
「ヤバいッ!ゴンベ!!」
トウコに向けて発射されたれいとうビームだったが、
顔の前を跳んでいたゴンベが直撃を喰らった。
結果、トウコは少し氷がかかった程度で済んだ。
「ゴ………ンッ…!」
地面に叩きつけられ、身体が少し凍りついたゴンベだったが、苦しそうながらもなんとか立ち上がる。
(ちくしょうッ!人質取られてちゃマトモにたたかえもしねぇ!とりあえずトウコを解放しねぇと………!!)
「もう少し頑張れゴンベ!あくびだッ!!」
「ご〜〜〜〜〜………ん。」
目に涙を浮かべながらあくびをするゴンベ。
あくび中の彼の口から出た泡のようなものが、ミロカロスに接触した。
「ミッ!?ミィ!?ミロッ!?ミィ~~…。
ミィィィィィッ!!」
「きゃぁぁぁぁ!たすけてぇぇぇ!!」
あくびが当たって動揺したミロカロスだったが、自分の身体に異常が無いことを確認したあと、トウコに向けてれいとうビームを撃った。
「ワンパターンなんだよ!
サンダース、トウコの前に立ってまもるだ!」
「ぎゃうーっ!」
れいとうビームが発射される前に、サンダースはトウコとミロカロスの顔の間に立った。
まもるのバリアに当たったれいとうビームは、そのまま霧散した。
「ミッ、ミロォ………zzz」
「___っし、眠ったな。」
ゴンベのわざ、あくびによって眠りに落ちたミロカロス。
ちなみにあくびは、相手に当たってからすぐに眠るのではなく、少し間を挟んでから眠気に襲われるというわざだ。
「ゴンベはオレと一緒にトウコを助けるぞ!
サンダースはミロカロスを起きないように見張っててくれ!」
「ぎゃう!」
「ゴンッ!」
トウコをミロカロスから解放するため、走る1人と1匹。
一方トウコはと言うと___。
「ふぇぇ~~ん!ユウキぃ~~!助けてぇ……!!」
なんとも言えない泣き顔でユウキに助けを求めていた。
「プフッ!! ゲフンゲフン。
ちょっと待ってろよ、今すぐ助けてやるからな!」
トウコの情けない顔を見て笑いそうになったが、誤魔化すユウキ。
こんな状況では茶化せるものも茶化せないのだろう。
「ゴンベはトウコを持ち上げてくれ。
オレは少しでもミロカロスの巻き付きを緩めるようにするから。」
「ゴーン!」
「行くぞッ!せぇのーっ!!」
掛け声をかけて、ゴンベとユウキは行動を始める。
トウコとミロカロスの隙間に手を突っ込み、少しでも隙間を広げようとする。
ゴンベも、力一杯トウコを引っ張り出そうとしている。
「んがぁぁぁぁっ!!
こンのくそやろォォォォォ!!!」
「ゴォォォ……ンンッ!!」
2人が全力を込めてもビクともしない。
ミロカロスが寝ているというのにだ。
「頑張れゴンベぇぇ……!!
かいりきだァァ……!!」
「ゴッーーー!オーーーーーーン!!!」
ゴンベは身体中に力を溜めた。
その力を放出するように一気にトウコを引っ張る。
するとさっきまでは動かなかったトウコの身体が、徐々にミロカロスの巻き付きから解放され始めた。
「頑張って!ユウキ、ゴンベ!!あともうちょっとよ!」
「おう!まかせ____ッ!?」
瞬間、ユウキの言葉が詰まる。
何故ならミロカロスがすでに目を覚ましていたからだ。
それも口にはたっぷりと水が含まれている。
(____っくそ!!ゴンベは気づいてねぇ!トウコに
至っちゃ動けもしねぇ!!ここはオレが___!!)
「ゴンベ!そのままトウコを、引っ張り続けてくれ!!
それと絶対にこっちは振り向くなッ!!」
「ゴッ!?ゴンッ!?」
主人の尋常でない慌て方を察したゴンベは、振り向くなと言われても振り向いてしまう。
そこには自分の主人が今、まさに。
ハイドロポンプの直撃を喰らおうとしている光景だった。
どうして僕にはバスラオしか釣れないんですか?
ヒンバスすら釣れないんですか?
神様からのイジメですか?