祝、シンフォギア4期放送前!!
更新遅くなってしまって申し訳ございませんでした!!
色々なことがありましたが、最新話投稿です。
それではどうぞ。
―――― 一人の少女が泣いている。
手にカードの束を持ち、母と父を探しながら、名前を呼んで涙を流す。そんな少女を周りの人はみんな知らんぷり。
少女は涙で前が見えない状態で目をこすりながらも父と母を探す。ドンッと、案の定誰かにぶつかってしまい、後ろに尻餅をついてしまった。その拍子に持っていた、カードが散らばり、地面に広がる。
そのぶつかった人は、年上の少年だった。日の光が邪魔をして顔は見えない。
少女は、カードも心配だったが、怒られると思い硬く瞼を閉じてしまった。
しかし、少女の予想に反して、自分を叱る声は聞こえて来ない。
少女は瞼を開けると、カードの束が差し出された。少女は戸惑いながらも、そのカードたちを受け取る。
そのカードを拾った少年は、少女にカードを渡しながら、優し気な声色で、こう言った。「デュエルモンスターズは好き?」と。
少女は一瞬あっけにとられた表情をしてから、一転、声を出して泣き始めた。
「えええ!? ちょ、待って。俺、何かしちゃった? もしかして、さっきぶつかった時にどこか怪我でもしたのか?」
少年の戸惑う声が聞こえてくる。
違う、これは安心したためだ。
ずっと、一人で親を探していて、心細かった。誰も助けてくれない。寂しくて、怖くて、不安で……。
そう思っていた時に、優しく声をかけてもらえたことで張りつめていた緊張が完全に途切れたのだ。
「えっと、何があったかは知らないけど、大丈夫だから……泣き止んで、ね?」
少年は、そう言いながら、その後も少女が泣き止むまで傍にいて、大丈夫大丈夫と言い続けた。
しばらくして、少女は泣き止み、少年に事情を説明する。
「なるほど……じゃ、俺と一緒に親を探そっか?」
少女はうつむいていた顔を上げ、少年を見上げる。少年は、少女を見つめ、おもむろに腰にあるデッキケースから一枚のカードを少女に渡す。
そのカードには、綺麗な赤い竜が描かれていた。
「大丈夫、このカードに誓って君を両親の元に送り届けるよ。君の両親と会うまで持っていて? さっ、とりあえず、行こう!!」
そう言って、少年は手を差し伸べてくる。
――――その手はとても、とても温かかった。
「それはどうかな」
そう言ったのは白い鎧に身を包んだ女の子だった。
俺と響は臨戦態勢に入るが、しかし、目の前の少女が放つプレッシャーに、ジリジリと後ろに後退していく。
その時、指令室の風鳴おじさんから通信が入る。
『二人共、何があった!? そこに、こちらの三つとは違う、聖遺物の反応が……いや、待て、この反応は……』
「すいません、少しそっちに意識向けてる余裕ないっス……」
通信を問答無用で切り、白い鎧を纏った少女に再び意識を向ける。
……隙が無い。コイツ、相当できるな。俺は隙を何度か伺い、動きを誘ってみたが、しかし、隙を見つけることも隙を作ることも出来なかった。
俺の頬に汗が伝う。
俺自身の表情は、俺自身の纏っているシンフォギアがフルフェイスタイプのものなので、相手から分からないだろうが、相手もバイザーで隠しており、表情が分からない。
「立花!! 士遊!! 大丈夫か!?」
「翼さん!!」
翼がこちらに向かってくるのが見え、響がそちらを向く。と、同時に相手が動くのが見えた。
「戦闘中によそ見かよ!」
相手の鎧につながれている鞭がうねる。
「響っ!!」
「え?」
俺はとっさに響を押し倒す。鞭は倒れた俺のすぐそばを通って、岩に突き刺さり、その岩を砕く。
「マジかよ……」
「お、お兄ちゃん、そろそろ……」
ふと声がしたので下を見てみると……顔を赤くした響と俺の手……(何がと言わないが)Oh、ジャストフィット……
「悪い!!」
すぐさま起き上がり、体勢を立て直す。
「……」
「な、ナゼミテルンディス!?」
翼のジト目が痛かった。
「こんなところで、ラブコメってんじゃねえよ!!」
その言葉と共に、俺に鞭が振るわれるが翼が剣で切り払い、なんとか助かった。
そして、一瞬の攻防の後、二人はそれぞれ獲物を構えなおし、双方ジリジリと相手の出方を待つ。
しかし、そこに響の声が割り込む。
「待ってください!! 翼さん、お兄ちゃん!! 相手は人です、同じ人間ですよ!?」
「「戦場で何を馬鹿なことを!!」」
「……」
翼と相手の少女は同時に叫んだが、俺も同じ気持ちだった。あまり乗り気にはなれない。が、しかし、相手を迎え撃たなくてはならないのも事実。
「響、相手も何か譲れないものがあって戦っているんだろう。それにこっちにも譲れないものがあるはずだ。だったら、ここは戦うしかないだろ。……つーか、違っても戦いそのものが目的になってる奴なら、話し合いに応じるわけもないしなぁ……これが世界の闇か……」
「そっちのラッキースケベ野郎はわかってんじゃねーか。いいねぇ、ゴチャゴチャ建前無しなのはさぁ!!」
三度、振るわれる鞭。俺と翼はそれをサッと躱し、距離をとる。
しかし、響は避けようとしたが肩に当たり、軌道の読みにくい鞭を完全に避けることは不可能だったらしく、衝撃で後ろに転がった。
俺は、それを見てすぐさま倒れ伏した響に駆け寄る。
「っち、響!!」
「待て、士遊!!」
「おっと、よそ見か?」
「くっ!!」
翼と少女はつばぜり合いになりながら、ジリジリと互いに力を込めていく。
「その鎧は、ネフシュタンの鎧!! 貴様、どこでそれを!!」
「へぇ、てぇことはあんた、この鎧の出自を知ってんだ?」
「忘れるものか! 私の力が足りなかった!! そのせいで失われたモノを、命を!! 忘れるものか!!」
翼の剣が鞭を押し返す。
「私は決めたのだ!! 今度こそ、この手で、この剣で!! 守って見せると!!」
「何の話をしてやがる!!」
「まずは、その鎧を返してもらうぞ!!」
翼の剣が閃き、少女に的確に切り込まれていく。少女は鎧で剣を滑らせ、ダメージを防ごうとする。しかし、急に動きが早く、そして、キレが良くなった翼の速度に追いつけず徐々にダメージを負っていく。
「っち!! ちょせぇ!!」
「っく!!」
一瞬の隙をつき翼の腹を蹴り、距離をとる少女。翼も一旦距離をとる。
「なんだ、マシな奴もいるんじゃねえかよ……」
少女はそう言い捨てると、先程までの余裕を捨て、目に真剣さを宿らせる。
翼はさらに警戒を強めるように、しっかりと剣の柄を握り直し、中段に構える。
二人は互いに距離を保ったまま、睨み合う。
「やはり、さすが完全聖遺物という訳か……」
「はっ!! ネフシュタンの力だなんて思うなよ? あたしのてっぺんはまだまだこんなもんじゃねぇぞ?」
「なるほど……だが、こちらも負けらないのでな!!」
その言葉と共に、翼は少女に向かって踏み込み、瞬間、もう一度激しくぶつかり合うのだった。
「お、お兄ちゃんすごい……何がなんだか訳が分からない!!」
「緊張感なさすぎだ……まぁ、同じ感想だがな」
少女が鞭をうねらせ攻撃を仕掛けると、翼がそれを切り払いすぐさま切り返す。
「でも、そろそろ援護しないと」
俺が援護に向かおうと動き出そうとした瞬間、隙を縫って少女は杖を取り出し何かを俺達に向かって射出する。
それはノイズだった。一瞬で大量のノイズが目の前に現れたのだ。
「おおっと、テメーらはそいつらの相手をしてな!!」
「あの杖、ノイズを召喚出来るのか!?」
恐らく聖遺物……ノイズを使役できる聖遺物が存在していたなんて……
「いや、考えるのはよそう。とにかく、片づけるぞ!!」
「うん」
響が歌い始め、俺はノイズに向かって拳を振り上げながら飛びかかる。
俺と響きのコンビは危なげなくノイズを倒していく。
しかし……
「くあ!!」
「翼!!」
それは起こった。翼が少女に蹴り飛ばされたのだ。
俺は吹き飛ばされた翼をキャッチする。
キャッチしたはいいが翼の状態は、酷い。ボロボロな状態だ。
このまま戦わせておけないと思った俺は、翼と戦ってる相手を交代する。
「……少し無茶しすぎだ。少し休め」
「しかし……私の不始末は……」
「いいから、休んでろ。……俺にも背負わせろよ。あの時、力があればって思ってるのはお前だけじゃないんだからさ。……響、翼を頼めるか?」
「うん、気を付けて」
「ああ」
無理やり響に翼を押し付け、少女の方に向き直る。
「悪いが選手交代、こっからは俺が相手だ!!」
「っは!! 誰が相手だろうが関係ねぇ!! 待ってやったんだから精々踊れよ?」
「そうか、んじゃ、まぁ……行くぞ!!」
ダンッと、地面を踏みこみ一気に少女へと接近する。
「な、はやっ!!」
予想外の速さだったのか、反応に一瞬戸惑ったようだ。
チャンスだ!!
「アームドギアを使え!!」
「アームドギア……? こうか!? 来い、俺のアームドギア!!」
翼の声が聞こえてきたので、俺は出来るかどうかわからなかったがアームドギアを呼び出す。腕を前に掲げると俺の腕に、羽のような形状の機械が現れる。これが俺のアームドギアか……しっかし、なんだか決闘盤に似てるなぁ……
とりあえず、使ってみるか!!
俺は少女に向かって腕の羽のような機械を、腕ごと水平に振るう。
「だああああああ!!!」
俺が睨んだ通りならば、これはよく特撮とかで見る、通称『アームカッター』だ。
睨んだ通りならば……
パキンッ!
「パキンッ? え、ちょ、めげたぁ!? あっだ!?」
「ふざけてんじゃねぇ!! これは戦いなんだぞ!?」
「……ふざけてねぇよ!!」
しかし、上手くいかず、鎧部分に当たった瞬間めげる……つまり壊れてしまい、少女に怒られ、蹴られた。
これはこういう使い方じゃないみたいですね……しかし、いったいどうやって使うんだ。
「目の前にいるのに、考え事かよ!!」
『NIRVANA GEDON』
鞭からエネルギー球を生成し、俺に向かって投げつけてくる。名前が付きそうな大技だ。きっと、アニメならばカットインが入ってるであろうと予測できる。俺はとっさに顔の前で腕をクロスさせ、その技をガードする。
「ぐあ!!」
そうこう考えている内に、一発顔に食らってしまった。ガードしたのと、バイザーでおおわれているためダメージはあまりなかったが、衝撃で後ろに吹っ飛ぶ。
体勢を立て直そうとするが、すでに吹っ飛んだ先に少女がいた。そして、追撃。もう一度、違う方向に吹き飛び、今度は何とか受け身を取り、地面を削りながら止まる。
「クソッ、早すぎるだろ……」
「ちげぇよ、お前が遅すぎるんだ、よっ!」
「ぐっ」
鞭と殴打による連続攻撃で、俺の体には小さくない傷がついて行き、出血も決して無視できないくらいになっていた。しかし、致命傷となる傷は負っていない。
俺は攻撃を何とか受け流すくらいしか出来なかった。
それでも、俺の頭は殴られながら冷静に相手を分析していた。
「そらそら、どうしたぁ~?」
攻撃は一層激しくなる。しかし、思ったよりダメージを受けていない。
間違いない。隙が無く強者の風格はある。が、しかし、俺が見た限り、コイツは攻めが単調だ。そこらの不良の攻撃と大差ないと思えるほどに。あまり接近戦が得意でないと見える。
実際、戦闘のプロでもない俺が攻撃を受け流し続けていられるのも、偏に――
「至極、読みやすいっ!!」
そう攻撃が手に取るようにわかる、これに尽きる。いくら早くても、軌道が読めればなんてことはない。後は、それに合わせるだけだ。
次の瞬間、俺は一気に攻勢に出た。
「つかまぁえたぁ」
「な、あたしのネフシュタンの鞭を!?」
「掴んで!! 引っ張る……だ、らあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
攻撃時に、叩きつけられる鞭を掴み、引き寄せ、空中に浮いたネフシュタンの少女のがら空きの体に、渾身の右ストレートを叩き込む。
「がはっ!!」
えぐりこむように腹に吸い込まれた拳が鈍い衝撃を生み、ネフシュタンの鎧を砕きながら少女は後ろに吹き飛んでいき、15mほど地面を転がった末、止まる。
「く、ケホッ!! ゴホッ!! くそっ!! ッツ!? あ、あっ、ぐ、あぁぁぁァァァァァ!!!」
「へ、どうだよ……風鳴おじさん直伝、稲妻クラッシュの威力はぁよぉ……」
少女はせき込みながら立ち上がろうとするが、急に激痛に顔を歪ませ苦しみだす。
顔を歪ませながら立ち上がってこちらを一睨みした後、鎧の鞭を地面に叩きつけ、砂煙を上げると急いでその場を離脱した。
それを追おうとするが、腹に鋭い痛みが走る。腹に違和感があると思ったら、最初の蹴られた場所が赤黒く変色していた。どうやら、ここからも出血しているらしい。
このまま続けていたら、危なかった……
(あ、やべぇ、駄目だ。これは、血ィ、流し、すぎ、た……)
薄れゆく視界の中で逃げていくネフシュタンを纏った少女を見ながら、俺は意識を失うのだった。
俺のデッキの中のあるカードが、何かに反応するように光っていることにも気づかずにに――――
はい、いかがでしたでしょうか?
おい、デュエルしろよ!! と、言われるかもしれませんが戦闘と決闘の複合スタイルで行きたいと思っていますので、お付き合いいただければ幸いです。
これからも、ちまちまと更新していきたいと思っているのでよろしくお願います。
それではまた次回!!
次回予告
意識不明となり病院に搬送された士遊。目覚めたら、すでに10日間経っていた。
響からあったことをいろいろ教えられるが、ふとしたことでネフシュタンの少女の名を知り、士遊に衝撃が走る。
そして、始まる翼とのデュエル……
次回、第8話 迷いを打ち砕け!! 武神帝-カグツチ!!
デュエルスタンバイ!!