鋼殻の軌跡   作:かめぞう

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第2話

エステルとシェラザードのジト目からようやく解放されたレオン。ハーケン門のモルガン将軍から情報を聞き出すため、レオン、ヨシュア、シェラザードは策を練っていた。一方エステルは…

 

「レオン君の写真を持っていたら少し譲っていただけないでしょうか?」

 

「うーん、でもレオン兄がなんて言うかなぁ…」

 

「譲っていただけるのでしたら、最新のストレガー社モデルをプレゼントさせて頂きますわ」

 

「!すぐにティオに送らせるわ!」

 

なんてやり取りがあったことをレオンは知らない…。

 

 

 

 

*******************************

 

 

 

 

話し合った結果、レオンはハーケン門への同行はしないことになった。なぜならモルガン将軍に唯一知られている人物であり、遊撃士嫌いの原因の一つになっているからだ。市長の使いで通るはずもなくすぐに遊撃士だとばれてしまうだろう。

 

「うーん、本当にごめんなさい」

 

「あんたが謝ることじゃないわ」

 

「兄さんの分まで頑張るよ」

 

みんなの心遣いが沁みるレオン。こうして3人と離れ、一人で依頼を受けることになった。だがある程度の依頼をこなしていたため残っていたのは手配魔獣の討伐のみ。

 

(これでいいか…)

 

ルグラン爺さんに依頼の張り紙を渡す。

 

「どれどれ…、お、おまえさん一人で手配魔獣を相手にするつもりか!?」

 

「?そうですけど?」

 

それがどうしたと言わんばかりのレオンにルグラン爺さんは辟易とする。

 

「この手配魔獣は数が多いうえに手強い。…どうしてもやるのか?」

 

「はい」

 

頑なに止めようとしないレオンについに根負けし、「危なくなったら逃げるんじゃぞ」と溜め息交じりに伝える。

レオンは先日の盗賊との一戦を気にしており、今一度気を引き締めるためにもこの依頼はありがたいものであった――。

 

東ボース街道をロレント方面に向かう途中に魔獣がいるという情報のため、準備を整えたレオンは剄を体に張り巡らせ高速で移動した。

 

「あれか」

 

手配魔獣と思われる魔獣を4体発見。キングスコルプとクインスコルプと呼ばれる魔獣である。大型の節足飛行魔獣であり、サソリとトンボを掛け合わせたような外見をしている。

 

鞘から刀を抜き、魔獣の前面に衝剄を放つ。放たれた衝剄は地面を砕き、土煙が渦を巻きながら魔獣を飲み込んだ。

土煙の中から先んじて飛び出してきた一体に狙いを定め、足に溜めた剄を解放する。

 

【内力系活剄の変化、旋剄】

 

足場を砕き飛び出す。飛び出した魔獣は尻尾の棘をこちらに刺すべく振り上げる。

 

「遅い」

 

尻尾の棘が届く前に既に刀を降り下ろしたレオン。魔獣の甲殻をやすやすと切り裂き、それでも旋剄の威力は落ちない。スピードを保ったまま魔獣を真っ二つにし、次なる獲物を捉える。

 

【外力系衝剄の変化、渦剄】

 

大気の渦に閉じ込められた2体の魔獣は無数の衝剄に撃たれ、その姿をただの肉塊へと変えていく。これで残りは一体。

仲間をやられて怒り狂っているのか、耳障りな鳴き声を上げて襲いかかってくる。左右に開く巨大な顎に噛み付かれれば唯では済まないだろう。

だがレオンは冷静に刀を構え、横薙ぎに振るう。

 

【外力系衝剄の変化、閃断】

 

美しい刀身から凝縮された巨大な衝剄が斬線の形で放たれる。口を開いていた魔獣はその衝剄を正面から受け、メリメリと音を立てて分断されていく。内臓を零しながら地面を滑っていく魔獣はレオンの目の前で完全に静止した。

 

「ふぅ…」

 

身体に張り巡らしていた剄を徐々に落ち着かせようとしていると、丁度ハーケン門から戻ってきたエステル達に出くわした。

 

「なんとも美しい戦い方なのだ。思わず見惚れてしまったよ」

 

 

…あなたは誰ですか?

 

 

 

 

****************************

 

 

 

帝国から旅行に来たという自称詩人かつ演奏家の金髪の男性はオリビエと言うらしい。いつの間にかエステル達に同行したらしく、合流した五人はボースへ辿り着いた。

 

「ここには三ツ星レストランがあるそうだね。うーん、今から楽しみだよ」

 

「かなりのお金を取られるから普通の酒場をお勧めするけどね」

 

オリビエはアンテローゼで食事をするつもりらしく、シャラザードはリーズナブルな酒場を勧める。

 

「それなりに路銀は持ってきているし、いざとなったら僕の特技で稼ぐさ。それではアディオス・アミーゴ♪」

 

ものすごいハイテンションで去って行ったオリビエ。

 

「帝国の人ってみんなあんな感じなのかなぁ…」

 

リベールでも珍しい人柄にエステルは疑問を呈す。途中から同行したレオンも変わった人という認識に至ったものの、憎めない人で好感を持てる人物であると評した。

 

「とりあえず、ルグランさんに報告しに行こう」

 

「そうだね、ハーケン門で何があったか知りたいし」

 

「それならすぐ行きましょ!」

 

ギルドに着いた4人は将軍から得た情報をルグラン爺さんに詳しく説明した。今回の事件には『カプア一家』が主犯らしく遊撃士協会として今後の方針も定まったようだ。

 

「しかし、モルガン将軍というのは噂以上に遊撃士嫌いらしいのう」

 

「うん、びっくりしちゃった。レオン兄のことも言ってたし…」

 

未だ根に持っているようで、レオンは苦笑した。

一連の情報をメイベル市長にも伝え、引き続き捜索依頼として続けることになった。

飛行船失踪事件の概要が見えてきたところで、更なる情報収集と手配魔獣の撃破のためラヴェンヌ村へ行くこととなる。

西ボース街道からラヴェンヌ山道を登った途中にあるラヴェンヌ村は、百日戦役で多くの犠牲者を出した村である。

村長から依頼の話を聞くと奥にある参道の途中に現れるらしく、待ち伏せタイプの魔獣のため参道を探し歩いた。

 

「出てきたわよ!」

 

地面から突然現れたのはフェイトスピナー。山地に潜む大型の魔獣で巨体に似合わぬ俊敏な動きで獲物を捉えるそうだ。今日二度目の手配魔獣にレオンは補助に徹した。エステルとヨシュアに経験を積ませるためである。エステル、ヨシュア、シェラザードが中心となり、余裕とはいかないまでも撃破することに成功した。

 

ラヴェンヌ村に戻った4人は村長に報告し、件の目撃者の少年から事情聴取をこなした。かつての戦争で犠牲になった方々へ黙祷を捧げて…。

 

「ふうむ、あの廃坑に手掛かりが…」

 

「ルゥイってこの証言が気になっちゃって」

 

村長に事情を話すと廃坑のカギを持ってきてくれた。戦争が起こるまでは栄えていたそうだが、それっきり炭鉱は閉ざされてしまい今に至るそうだ。

 

廃坑の中に入ると既に魔獣の住処と化していた。魔獣を避けつつ奥へ進むと開けた場所に辿り着く。

 

「あれって…」

 

(静かにエステル…)

 

定期船リンデ号の前でロレントに出没した空賊艇が何らかの作業に取り組んでいた。

 

(大ビンゴね…)

 

(あの子が言っていたことが証明されたね…)

 

露天掘りをしていた谷間のようで、軍の警備飛行艇では発見できなかったようだ。

空賊を捕えるためすぐに行動に出る。だがキールと呼ばれていたリーダー格の男はすぐに気づき戦闘が始まった。

しかし手配魔獣や様々な経験をしてきたレオンたちの敵ではなく空賊全員を倒す。

 

「ちっ、かくなる上は…」

 

キールは懐から何かを取り出すと、地面に叩き付けた。この辺り一帯を煙が被い尽くし、4人の視界を奪う。

 

「くそっ」

 

視界が開けると、一家全員を収容した空賊艇は空の遥か彼方に消えていた。

 

「一度ならず二度までも取り逃がしたか…」

 

シェラザードは「これは降格されても文句は言えないわね」と呟く。戦闘面ではそれほど特筆すべき点はないのだが、逃げの一点だけは群を抜いていた。だがいつまでも悔やんでいるわけにもいかず、飛行船に目を向ける。

一通り船内を捜索してみたが、中に人質はおらず。船底の倉庫に僅かに盗賊達が運び損ねた積み荷が残っているだけだった。

乗客の行方は分からないが、失踪した飛行船は見つかったのだ。まずはこのことを軍に伝えなければならない。外に出ようとした矢先…

 

「不審なグループを発見! 武器を捨てて投降しろ!」

 

「世も末だぜ、こんな女子供が空賊なんて…」

 

リンデ号は多数の王国軍の兵士に取り囲まれており、四方八方から二桁を超える導力銃の照準がレオンたちを包囲した。

駄遊撃士の紋章を見せて空賊ではないと身の潔白を訴えようとしたが、遊撃士嫌いのモルガン将軍には受け入れられず、軍に捕まるのであった。

 




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