「私たちは遊撃士だって言ってるでしょ!」
「ならばなぜあの場所にいた?」
警備飛行艇でレオンたちはハーケン門へと護送される。今現在レオンたちは将軍から取り調べを受けていた。ずいぶん高圧的で明らかにこちらを疑っている様子だ。
「ラヴェンヌ村にいる目撃者の証言からあの場所に向かったんです」
レオンがはっきりと答える。ようやくレオンに気付いたのかモルガン将軍はまじまじと観察する。
「お主は…、レオン・ブライトか!?」
「…」
「…」
お互いが無言になり、沈黙が支配する。
「モルガン将軍?」
「…今日の取り調べはここまでにする。その者達は牢屋に放り込んでおけ」
副官の声に現実に返る。7年前に闘った少年は強い意志を瞳に宿し、ずいぶんと成長したようだ。尋問を中途半端に打ち切ると、取調室を後にする。一瞬だけレオンを一瞥したが、先ほどのような荒々しさは無くなっていた。
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「ほんとになんなの!?」
「空賊を逮捕できたら良かったんだけどね…、そうすれば何とかなったかもしれないのに」
エステルはいまいち意味が分からず、ヨシュアに聞き返す。
「もしかすると、軍に空賊のスパイがいるかもしれない」
「もしくは協力者のような人物かもしれないわね」
これまでの経緯と空賊の言葉からその可能性が高いと判断せざるを得ない。
八方塞の状況に頭を悩ませていると…
「どうやらお困りのようだね」
隣の牢獄にはオリビエがいるようだ。
リュートを奏でて哀愁漂うメロディーで悲しみを表現しているオリビエに対しなぜここにいるのかという疑問をぶつける。
「これには海よりも深く、山よりも高い事情があるのさ」
「だったら聞かない」
速攻で答えるエステルとそれに続く3人。
「遠慮することはないよ。聞いてくれたまえ、僕の身に起きた悲劇的事件をね」
要約するとオリビエは、料理を楽しんでいたところ普通のワインでは満足できなくなった。それゆえバイト先のアンテローゼの貯蔵庫に保存されていた高級そうなワインを無断で拝借し、コルクを抜いて先に賞味した挙げ句、支配人にもグラスを勧めたそうだ。
堪忍袋の緒が切れた支配人が呼んだのは当然王国軍の兵士たち。あれよという間にオリビエは高級ワインの窃盗犯として、ここまで連行されたという。
「本当に素晴らしいワインだったよ、グラン=シャリネは」
「グラン=シャリネですって!?」
いち早く反応したのはシェラザード。そのワインは王都のオークションに出品された一つでなんと50万ミラで落札されたとの事。
「鼻腔くすぐる福音たる香り。喉元を愛撫する芳醇な味わい。あの薔薇色に輝く時間と空間は確かにそこにあったよ…」
それからも話は続き、いつしかレオンたちは眠りについていた。
「それで…、ってあれ?聞いてる?もしもーし?」
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翌朝…
「あんたたちを釈放する」
理由を聞く前にメイベル市長が現れた。
「みなさん、大変でしたわね」
「フン、メイベル嬢たっての頼みだ、せいぜい感謝するといい」
どうやらメイベルがモルガン将軍に話をしてくれたらしい。釈放されればこんなところに用はない。何かを忘れているような気がするが、ボースへ帰ろうとする。
「ひどいな、ともに一晩を過ごした仲なのに…」
そうであった、この男…オリビエがいた。だが彼が行った行為は紛れもない窃盗。釈放は不可能だと思われたが、メイベルはアンテローゼのオーナーまでも兼任しているそうで、そのことについても掛け合ってくれるそうだ。なんていい人なんだろうメイベルさん…
~ボース市長邸~
結局オリビエも釈放になり、レオンたちの捜索依頼を手伝うことになった。新たな依頼を携えて…
「実は昨晩、南街区で大規模な強盗事件が起きたのです」
「ええっ?」
「例の空賊ですか?」
「その可能性は高いと見ています。現在王国軍が調査中ですわ。ですから、あなた方にも手伝って頂きたいのです。」
民間人の平和を守る遊撃士にとって見過ごせない事件だ。事件の概要を知るためには被害に合ったお店の聞き取りが必要になる。
「すぐに調査を始めましょう」
メイベル市長に改めてお礼を言い、市長邸を後にした。
しかし情報収集を進める中、軍の当たりが強く思うように調査が進まない。
「お前たちか…、いかに市長の代理とはいえ民間人。調査の邪魔はしないでもらおうか」
忠告ではなく警告。軍と遊撃士協会は協力体制のはずだが、さすがにこれにはカチンときた。レオンが口を開こうとしたとき…
「…何をやっている?」
「こ、これは大佐殿!」
階段から降りてきたのは玉ねぎ…ではなく、金髪をオールバックにした爽やかな男性だった。筋肉の付き方、隙のない自然体にレオンは相当な使い手であると気が付いた。
「栄えある軍人が一般市民を脅すとは…、恥を知りたまえ」
ようやく話の分かる将校が来てくれたようで、軍人たちはハーケン門に撤収した。
「お互いが足りない部分を補っていければ良いのだがね…」
(ずいぶんとまともそうな人ね)
エステルがひそひそと話す。これにはレオンたち全員が同意した。
「申し遅れたね、私は王国軍大佐リシャールという。以後よろしく頼むよ」
多忙な人物であるため、話をしてすぐに別の場所へ向かってしまった。軍もいなくなりようやく調査を進められた一行は、気になる情報を入手しヴァレリア湖を目指すのだった。
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5人はアンセル新道を下りきって、ヴァレリア湖のほとりにある川蝉亭へと辿り着いた。多くの釣り人が集まるこの場所は、とてものどかで美しい景色が広がっている。太陽の光が反射して輝く湖はさながら宝石のようだ。
「目撃者を探そうか」
実際の目撃者であるロイドという釣り人に改めて事情徴収した結果、怪しい二人組を見かけたという。片方は学生服を着て行動しておりジョゼットであった可能性が一段と高まった。
ジョゼット達が出没する真夜中まで待機する必要性から5人は宿を確保する。ヨシュアは読書を、シェラザードとオリビエはお酒を、エステルとレオンは釣りを楽しむことにした。
エステルの釣り技術はもはやプロの領域で、短時間で多くの魚を釣っていた。レオンも筋はいいのだが、エステルに適うはずもなく…
「ふふん、私の勝ちね!」
「なんでそんなに釣れるんだ?」
笑い合いながら楽しい時間を過ごしたレオンとエステル。
釣りを終えると既に夕方。レオンは宿に戻り、エステルはヨシュアを探しに行った。しばらくレオンが一服していると外から『星の在り処』が聞こえてくる。ヨシュアの十八番であるこの曲は切なくも美しい。なぜか気になったレオンはエステル同様、ヨシュアの元へ向かった。
「…相変わらず何も聞かないんだね」
「…はは、約束したじゃない。話してくれる気になるまであたしからは聞かないって」
「あれから5年もたった。どうして見ず知らずの子供を受け入れてくれたんだい?」
「そんなの当たり前じゃない。だってヨシュアは家族だし」
ヨシュアの性格や癖を知っている。それだけで十分だと言うエステルに呆然とするも、すぐに笑みを浮かべた。
「…本当、適わないな君には」
「これがエステルだよ」
どこか憑き物が落ちたようなヨシュアにレオンは話しかける。
「そうだったね、兄さん」
「むっ、まさか馬鹿にしてる?」
「そんなわけないだろ。君のおかげで僕たちは笑って生活できたんだ」
優しい表情でエステルに伝える。さすがのエステルも照れたようで顔を赤くする。
「絶対に今回の事件、解決しよう。僕たちの手で、絶対に!」
「モチのロンよ!」
こうして家族の絆を再確認した3人は宿へ戻った。グロッキーになるまで飲まされたオリビエを無視して…
ヴァレリア湖のシーンはほんと泣けますね…
星の在り処も名曲ですし、ほんとに神作すぎます。