鋼殻の軌跡   作:かめぞう

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一章も終盤です。

5連休に入りテンションMAX!


第4話

これはまずい……、非常事態である。

レオンはまじめに考えていた。老生体に襲われるよりも今の状況はきついとさえ思った。

何とかしなければならない。

だが何をするべきなのか?

今なお押し寄せる重圧にどうしていいのかわからない……。

レオンの身に何が起きているのか?

それは空賊の船内で起こっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

むにゅっ。

 

「んっ……」

 

レオンの後ろにはシェラザードがいた。しかもかなり密着している。

形を変えるそれ(凶器)は確かにレオンの背中に重圧(物理)を与えていた。

 

(どうしてこうなった……?)

 

 

 

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皆が寝静まった頃、完全に酔いつぶれたオリビエを置いて4人は行動し始めた。宿のベランダから外の様子を伺っているとジョゼットとキールが現れる。

 

「やっぱりあいつらか」

 

「外の浅橋に向かったみたいだね」

 

「気づかれないように行くわよ」

 

空賊に見つからないように気配を消す。殺剄を使えるレオンはともかく、ヨシュアの隠形には目を見張るものがあった。木の陰まで行き、気づかれないように盗み聞きをする。

 

「ドルン兄、最近変だよね……。それに定期船だって実入りは良かったけど軍が本腰入れて介入してきたし、やりすぎじゃないかなぁ……」

 

「心底悪党にはなりきれねぇか。……なあ辛かったら故郷に帰っていいんだぜ? この国よりはちと寒いけどな」

 

カプア一家はこの国の生まれではないらしい。気になる点はそれだけではない。ところどころに出てくる「ヤツ」、「アイツ」といった言葉。

 

(誰の事を言ってるんだ?)

 

レオンが考えに耽っていると、湖の方からボートが近づいてきた。全身黒装束の男がキールに軍と遊撃士の現状を話す。

 

(……あの男強い)

 

レオンは相手の剄の流れを見ることを得意としており、それを基準の一つとして相手の強さがある程度分かってしまう。剄は全ての人間が生きているだけで発するエネルギーだが、普通の人間が発する剄は非常に微弱である。特にこの世界では剄脈を持つ人間は存在せず、剄を自ら発生させることはできない。しかし闘気を高めることでそれぞれが独自の技を持ち、また闘気が剄と似通っていることから、レオンは同じように闘気を視認することができる。

今話している黒装束の男は、外部に漏れだしてはいないものの身体の内部には圧倒的な闘気が渦巻いており、それはカシウスと同等またはそれ以上の印象を受けた。

 

エステルが今突入するかどうか聞くが、まずは近くに停泊しているであろう空賊艇を探し、一網打尽にすることを提案した。

街道に出た一行は空賊艇が停泊できそうな場所を調べていき、琥珀の塔の目前で停泊していた山猫号を発見する。

 

「それでシェラさん、すぐに彼らを制圧しますか?」

 

「そうね……、前に遭遇した時と比べて手下の人数が倍以上いるけど……」

 

「一気にケリをつけましょ」

 

確かに、空賊の人数はそれなりに居るが一人一人の戦闘力はそれほどでもなく、4人でも十分に制圧できる。エステルが突入の合図を送ろうとしたとき、レオンは後ろからある人物の気配に気づいた。

 

「フッ……、それはどうかと思うけどね」

 

後ろから来たのはダウンしていたはずのオリビエ。

 

「やあ、待たせてしまったね♡」

 

オリビエの登場により、危うく大声を出しそうになったエステルの口を素早く塞ぐ。

 

「よくあの状態から回復できたわね」

 

「フッ、任せてくれたまえ。胃の中のものを全て戻して冷たい水を頭からかぶってきた」

 

オリビエの発言に周囲はドン引き。オリビエの只ならぬ執念には脱帽するばかりだ。

それはさておき、今突入して捕えたとしても人質やアジトの場所を話さない可能性があり、それどころか人質を盾に釈放を要求してくる可能性もあるとオリビエは言う。何事もリスクは付き物だが、今回のオリビエは何か策があるらしく笑みを浮かべていた。

 

「フッフッフッ……諸君、耳を貸したまえ」

 

「いいけど……、耳に息を吹きかけたりしたらまじでぶん殴るからね」

 

ジト目で疑うエステル。

こうしてオリビエの策を実行し、今に至るのだった。

 

 

 

 

 

***************************

 

 

 

 

現在5人は空賊の船倉、階段下に隠れている。全員がそれなりに密着した状態だが、シェラザードは特に密着している気がした。

 

「……あの」

 

「狭いんだからしょうがないでしょ。」

 

「まだ何も言っていないんですけど……」

 

 

「……」

 

「……」

 

 

「……わざとやってるでしょ?」

 

「……てへぺろっ♡」

 

正直に答えたシェラザードにものすごく脱力したレオン。

 

「うーん、顔を真っ赤にしたレオン君もそそるものがあるね♡」

 

なんなんですか、あなた達は……。

やり場のない気持ちから大声で叫びたいレオンであった。

 

空賊艇がアジトに到着し静まり返った後、5人は行動を開始。まずは見張りの空賊一味2人を気絶させる。

 

「誰d――ぐわっ」

 

「……」

 

有無を言わさず、敵を無力化していくレオン。

その後も溜まったストレスを発散させるように、レオンは鬼神の如き強さを発揮していた。大人気ないと思いつつ、ものすごいスピードでアジト内を制圧し、9割方内部を把握したところで人質と遭遇した。

 

「みなさん、無事ですか!?」

 

「ホンマか?ワイら助かったんか!?」

 

人質に助けに来たことを伝えつつ、カシウスを探す。しかし肝心のカシウスはどこにもいなかった。

 

「そういえば、離陸直前に降りたお客様が……」

 

どうやらボースから発つ前に船を降りたらしい。それなのに何の連絡も寄越さないカシウスに切れるエステル。

だが今はカシウスよりも乗客の安全確保が最優先。そのためにもキールやジョゼットといったリーダー格を捕えなければならない。乗客をその場に留まらせ、先へ進む。

一番奥の部屋に辿り着くとキールとジョゼットだけでなく、もう一人いるようで話し声が聞こえてきた。

 

「ぐふふ、女王が身代金を出しやがるか。これで貧乏暮しとはオサラバだな」

 

「うん、まずは人質解放の段取りを決めなきゃね」

 

「人質解放?……おいおいどうしてそんな面倒なことをするんだ?そんなもんミラだけ頂いて、皆殺しにすればいいじゃねえか」

 

ドルンと呼ばれる男の発言により、さすがのジョゼットとキールも言葉を失う。

それだけはできないと反対するキールにドルンは酒瓶を投げつけた。

 

「ミラがなくなりゃ、また強盗すりゃいい。それがこれからのカプア一家だ!」

 

「ドルン兄……、どうしちゃったのさ!」

 

さてお話を聞くのはここまでだ。

 

「お取込み中のところを悪いんだけどさぁ…、兄妹喧嘩は後にしてくんない?」

 

遊撃士の登場に驚くジョゼットとキール。空賊艇でここまで来たことを伝えるとジョゼットはエステルに暴言を吐く。売り言葉に買い言葉、エステルも同じように反論する。

 

「エステル落ち着いて……、人質も解放しましたし、抵抗しない方が身のためですよ?」

 

「てめえら……、まあいいここでぶっ殺せば問題はねえわけだ」

 

そう言うといきなり導力砲をぶっ放す。全員が回避行動を取るが、導力砲を軽々と扱う膂力にヨシュアは驚く。

 

「……あの目、誰かに操られているみたいだね」

 

(なら、あの技を試してみるか……)

 

「あの男、僕に任せてもらえませんか?」

 

「できるの?」

 

「やってみます」

 

シェラザードの問いにすぐに返事をする。残りの二人を任せドルンと対峙する。

 

「なんだぁ? お前が俺の相手をすんのか? どっちにしろ全員皆殺しだがな」

 

導力砲をこちらに向ける。導力砲は二種類のタイプがあり、ひとつは導力エネルギーを利用した標準型、もう一つは実弾も併用した型である。どうやらドルンが使っているのは後者のようで、実弾を使った導力砲の威力は標準型より高い威力を誇る。

 

「悪いけど、眠ってもらうよ。……いやこの場合は目を覚ましてもらうかな?」

 

迫りくる砲弾を紙一重で躱し、レオンはドルンの正面に立つ。

 

【サイハーデン刀争術 封心突】

 

刀身を覆った剄が流れる水を切ったように弾け、ドルンに降り注ぐ。刀の斬線とは違った軌道を描いて飛ぶ衝剄の針がドルンの体の各所に突き刺さった。

 

「ぐわぁあ」

 

剄路に針状にまで凝縮した衝剄を打ち込み周囲の肉体、神経に影響を与えるこの技によって、レオンはドルンの気の流れを乱す。レオンの目は一般人とドルンの気の流れ方が違うことに気付いていた。

気の流れが落ち着くまで剄を止めることはない。やがてドルンの気の流れは正常に戻っていった。

 

(エステル達も終わったみたいだね)

 

「あいたたた……、どうなってやがる?体のあちこちが痛てぇぞ……」

 

ドルンが目を覚ます。先ほどとは打って変わり落ち着いていた。

 

「なんで俺……導力砲なんか持ってんだ?」

 

話を聞いているとロレントから記憶が無くなっている。操られていた代償か、それとも意図的に消されたのか分からないが…

 

「定期船強奪、人質監禁、身代金要求他にもあるけどあなたたちを逮捕するわ」

 

「キール、ジョゼット、こりゃ一体何の冗談だ!?」

 

「聞きたいのはこっちだよ……、だがおかげでチャンスができたぜ!」

 

キールは懐から発煙筒を出し、投げつける。

 

「しまっ「同じ手は二度も通じないよ」――レオン!」

 

不意を突かれた形であったがレオンはいち早く動き、煙が発生する前に発煙筒を切り裂く。逃走手段を完全に断たれたキール。最早打つ手はなく、軍が空賊を取り押さえるまで静かに佇んでいた――。

 

 

こうして定期船失踪事件は幕を閉じた。

後日、リベール通信にリンデ号事件の解決記事を扱った特別号が発刊されたが、空賊を逮捕し、人質を救出した功績はリシャール大佐率いる情報部ということに改竄されており、協力関係があったという事実だけが記載されていたのだった。

 

 

 




淡々と進んでいますがいかがだったでしょうか?

一章が終わり、ようやく二章に突入します。
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