第2話です。
マノリア間道を通って、ルーアンへの中間ポイントとなる宿場町に辿り着いたレオン達。海を一望できるマノリア村は心地良い潮風が吹き、ラヴェンヌ村のような素朴で美しい景色が広がっている。
丁度お昼時であったため、休憩と腹ごしらえを兼ねて白の木連亭で村名産のお弁当を買い込み、お勧めスポットである風車下のベンチでランチを楽しむことにした。サービスとしてハーブティーのおまけをつけてくれたレックスに、お礼を言いつつ店を出る。
「困ったわ、どこへ行ったのかしら?」
「ほらほら、二人とも早くー」
「エステル、前を見ないとあぶn…」
ヨシュアが言い切る前にエステルと制服の少女はぶつかってしまった。だがレオンはすぐに反応し、少女を抱きとめる。
「大丈夫?」
「あ、ありがとうございます」
少し頬を染めてお礼を言う少女はクローゼ。男の子を探していたようで、周りの注意が散漫になっていたとエステルに謝罪する。軽い自己紹介を済ませるとクローゼは再び男の子を探しに行った。
クローネ峠を越え、度々出てくる魔獣との戦いもしてきた一行は弁当から漂ってくる美味しそうな匂いに、空腹が刺激されさっそく展望台に向かう。しかし…
「レオンさんですか?」
「ん?」
「私ファンなんです!」
荷車に花を乗せて売っているサティに、いきなり質問攻めにされるレオン。
「えっと、二人とも先に食べてて」
先に行くよう促し、サティに対応するレオン。
ようやく解放された頃、遊撃士の紋章を盗まれたエステルと合流するのだった。
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エステルの紋章を盗んだのは、マーシア孤児院の児童らしい。同じように孤児院出身のレオンは複雑な感情が渦巻いていた。
メーヴェ海道の道沿いにある『マーシア孤児院』の看板を右折し、程なくすると木造の一戸建てが姿を現す。
クラムという少年を捕まえたがなかなか白状せず困り果てていたところ、孤児院からクローゼと院長であるテレサが出てきた。
「クラム、本当にやっていないのですか?」
「うん、当たり前じゃん!」
「女神に誓えますか?」
「ち、誓えるよっ!」
徐々に動揺が見え始めてきた。
「さっき、バッジみたいなものが子供部屋に落ちていたけど、あなたの物じゃありませんね?」
「えっ、だってオイラズボンのポケットに入れて…」
テレサの見事な誘導尋問に引っかかったクラムは、言い逃れができずガッツリと絞られるのであった。
お詫びも兼ねてお茶とパイを御馳走になるレオン一行は、自己紹介をしつつ先程の出来事について説明した。
「本当にすみませんでした。保護者としてお詫び申し上げます」
悪い子ではないのですが、と付け加えるテレサ。
「あは、もういいですよ。紋章もちゃんと戻って来たし」
「元はと言えば、それに気が付かなかったエステルも悪いよ」
能天気なエステルにレオンは釘を刺す。素人の子供に紋章を取られるのはさすがに問題だと、エステルに対し今一度気を引き締めるように伝える。
「えーん、ヨシュアぁー、レオン兄が虐めるっ」
「確かに兄さんの言う通りだね」
笑いを含んだ表情でヨシュアはエステルに返す。
お店で出せるようなお手製のアップルバイと自家栽培したハーブティーを堪能し、ご満悦な一行。アップルパイの方はクローゼが作ったそうで、その出来栄えにレオンは感心した。テレサ院長は数年前に事故で夫を失くした未亡人で、一人でこのマーシア孤児院を運営しており、四人の孤児を育てている。慈愛に満ちた妙齢な女性で、マノリア村の人からの評判も良い。
その後もテレサとクローゼを交えて色々と談笑し、ギルドへの申請を行うため孤児院を後にした。
ルーアンは白いレンガ造りの家が立ち並び、海の青と相まってとても美しい街である。近年は観光業が盛んであり、リベールのみならず帝国や共和国からも観光客がやってくる。
ギルドに着いたレオン達だったが、受付であるジャンは依頼の打ち合わせをしており、クローゼと共にルーアンを散策することにした。
「これはすごいね…」
ルーアンの目玉であるラングランド大橋。全長109アージュもある橋は圧巻で、思わず感嘆の吐息を洩らす。
橋を渡り、南街区の散策を一通り終えたところでハプニングが起こった。
「待ちな、嬢ちゃんたち」
「暇だったら俺たちと遊ぼうぜ」
古典的なナンパを仕掛けてきたのは、地元で『レイヴン』と呼ばれるチンピラ達である。
「悪いけど、他を当たってくんない?」
和気藹々としていたところに水を差されたため、内心穏やかではない。エステルがはっきりと告げるが
「お、その強気な態度。おれ、ちょっとタイプかも~♡」
面と向かって言われたのは初めてだったのか、エステルは素っ頓狂な声を上げた。そんな反応に気を良くしたのか、饒舌に話しかけるロッコ。
「そんな生ちょろい小僧たちを相手にしなくてもいいんじゃねぇか?」
向こうの言い分にカチンときたエステル。反論するもレイブンは嫉妬の怒りを振り撒くだけ。レオンとヨシュアは気にしてないと告げるが、それでも突っかかってくるチンピラにレオンは痺れを切らした。
「彼女たちに手を出したら…手加減しないよ?」
笑顔で言うが、目の奥は笑っていない。
「ひっ!」
「は、ハッタリだ!」
レイブンがレオンの威圧感に後退りしたところで橋の向こうから男性がやって来た。
「お前たち、何しているんだ!」
現れたのはダルモア市長の秘書を務めているギルバート。かつてジェニス王立学園を首席で卒業した秀才で、クローゼの先輩筋に当たる。さらに後ろから現れたのはルーアンの現市長、ダルモアである。
「それ以上迷惑行為を行うなら、それ相応の処置を取らせてもらうが?」
ダルモアが警告をすると文句を言いつつ去っていくチンピラ達。
それを見届けた市長はレオン達と軽く会話をして帰って行く。ちょっとしたハプニングだったが気を取り直し、再びギルドへと向かうのだった。
~遊撃士協会 ルーアン支部~
「君たちが新人の遊撃士か! いや~、ホントよく来てくれた」
お互い自己紹介をし、転属の書類にサインした。
「うんうん、これで君たちもルーアン支部の所属というわけだ。いやぁ、この忙しい時期によくルーアンに来てくれたよ」
受付のジャンは人当たりが良さそうで、うまくやっていけそうだとレオンは思う。
「…ふふ、もう逃がさないからね」
…訂正。背筋に冷たいものが走ったレオンは、今後の展開に不安を感じたのだった。
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夕暮れの時間となったところで、エステルはホテルに泊まりたいと言い出した。
「せっかく来たんだし、優雅にホテルに泊まるのはどう?」
「だったら、急いで部屋を取った方がいいかもしれません」
現在は観光シーズンのため、どのホテルもいっぱいになるとの事。予約をするべくホテル・ブランシュに向かった。
受付に話を伺うと丁度最上階のスイートルームがキャンセルされ、現在空き部屋となっているようだ。すぐさま予約を取り付け贅沢な一時を過ごせることに胸を躍らせるのだった。
「わー、すっごいね!」
「通常料金で泊まるのが申し訳ないくらいだね」
流石にスイートと名乗るだけあり、部屋は広々とし、バルコニーからは海を一望できる作りになっている。クローネ峠を越え、ルーアンでの一日を満喫した一行はそれなりに疲れており、羽を伸ばそうとベッドに転がる。だが不運というか、またもやハプニングが起こる。
「ほほう、なかなか良い部屋ではないか」
「お待ちを、閣下。この部屋には既に利用客がいるとのこと」
いきなり部屋に入ってきたのは貴族風の男性と執事らしき老人。
突然現れて「部屋を明け渡して出て行け」という非常識な要求に、ムッとするレオン達。ただ、フィリップと名乗った執事から、この貴族風でわがままそうな男性がアリシア女王の甥のリベール王族のデュナン公爵だと知らされた時には仰天した。この国の行く末を本気で心配するレオン。
それからはフィリップの尋常ならざる頼み込みに、これ以上困らせたくないと感じた一行はデュナン公爵に部屋を明け渡したのだった。
泊まる部屋を失い一階のフロントに顔を出し空き部屋の有無を確かめたが、全て満室とのこと。この際ホテルは諦めてギルドに泊まろうか思案していた時だった。
「お困りのようだな」
声を掛けてきたのはリベール新聞の記者ナイアル。彼もこのホテルに泊まっているようで、空きのベッドを貸してくれることになった。先日の定期船失踪事件の記事が随分と売れたようでそのお礼という事らしい。ナイアルの厚意をありがたく受け取る一行。明日からの依頼に備え、身体を休めておく。しかし、あんな事件が起こってしまうとは予想だにしていなかった。
今回全然見せ場がない…