鋼殻の軌跡   作:かめぞう

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連続投稿です。


第3話

「ジャンさん、おはよー!」

 

「おはようございます」

 

受付のジャンに挨拶を交わし、さっそく依頼の紹介をしてもらう。ジャンが依頼を吟味している中、ギルドに一本の電話がかかってきた。

内容はマーシア孤児院で火事が起こったという事。

 

「なっ!?」

 

昨日訪れたばかりの孤児院でそんなことが起き、一瞬信じられなかったレオン達。原因究明のためすぐにマーシア孤児院へと向かった。

 

「ひどいな…」

 

家は焼け崩れ、見る影もない。炭になった柱がポツンと立っていただけで、他は跡形もなく焼けてしまっていた。

マノリア村の住人が片付けを行っており、話を聞く。孤児院のみんなは無事だったようで不幸中の幸いだった。

三人は別れて現場検証を行う。いくつかの検証結果から結論に近いものを導き出すと、テレサ院長と面談する為にマノリア村に向かった。

 

 

 

 

****************************

 

 

 

 

「現場検証を行った結果、何者かによる放火の可能性が極めて高いことが判明しました」

 

「…そうですか、火気には気を付けていたのでおかしいとは思っていましたが」

 

今回の火事は明らかに外部から起きたものだった。テレサ院長の話を伺うと、ミラにも余裕はなく、恨まれる覚えもないとの事。つまり強盗目的や怨恨の可能性は低く、愉快犯若しくは別の目的があったと考えられる。様々な聞き取りを行う中、クローゼとダルモア市長、秘書のギルバートが慰問のため訪れる。

 

「本当にご無事でよかった。地方を統括する市長としてほっとける筈もないからね。それよりも誰だか知らんが、許しがたい所業もあったものだ…」

 

「失礼ですが市長、もしかすると犯人は彼ら『レイブン』なのでは?」

 

彼らが犯人であるという証拠はないが、ギルバートは普段から面倒事を起こすためそのように思ったらしい。

ダルモア市長はテレサ院長に今後の身の振り方を尋ねる。自分の別荘を一時的にでも使ってくれという申し出である。当然その場で答えられるような話でもなく。とりあえずは保留という形になった。

 

「クローゼお姉ちゃん!」

 

話の数々がようやく一段落つき、白の木連亭の外に出た4人にマリィが取り乱しながら声を掛ける。

エステル達とギルハート秘書の会話を扉の外から又聞きしたクラムが、「絶対に許さない」と凄い剣幕でマノリア村の外に飛び出したらしい。話を聞いていたというなら、彼が目指す場所は一つ。

 

レオン達は急いでメーヴェ街道を下り、レイブンがいる倉庫へ駆けつける。

 

「とぼけるなよ! お前たちがやったんだろ!?」

 

「むかつくガキだぜ…」

 

クラムは彼らに取り囲まれたまま、リーダー格の青年に胸倉を掴まれ持ち上げられた。

 

「こいつはちっとばかしキツイお灸を据えてやる必要があるかもな」

 

「ならお尻百叩きといきますか? ひゃーはっはっはっ」

 

元はクラムの勘違いから始まった今回の騒動だが、さすがにやりすぎた。

 

「止めてください」

 

クローゼの凛とした声が倉庫内に響く。いつ戦闘が始まってもおかしくない状況のため、クローゼの身を案じたエステルは下がるよう伝える。

 

「いえ、剣は誰かを守るために振るうものと今まで教わってきました。今がその時だと思います」

 

細剣を構えたクローゼは様になっていて、それなりの実力者であることが窺える。

 

「おめえらやっちまえ!」

 

開始とともに乱戦となる。クローゼの様子を伺いながら多数をエステルとヨシュアに任せ、クラムの安全を確保するため巻き込まれないよう入り口付近まで移動する。

 

「隙だらけじゃねぇか! 喰らえやオラァ!」

 

気合と共に警棒を降り下ろす。警棒は何の迷いもなくレオンの右肩に命中。

怪我をさせるのに十分な威力なはずだった。それなのにまるで鋼鉄を殴ったかのような衝撃がディンの手首に跳ね返ってきた。

 

【活剄衝剄混合変化、金剛剄】

 

活剄による肉体強化と同時に衝剄による反射を行う防御専門の剄技で単純な仕組みだが、使い手によってはとんでもない防御力を誇る。

 

「い、いってぇー!」

 

気づけば既に半数以上が地面に伏していた。魔獣を相手にするエステルやヨシュアにとって、たかが不良など相手にならない。だがレイブンの恐ろしさをすぐに知ることになった。

 

「死んでんじゃねぇっての!」

 

幹部格が倒れているメンバーを叩いた瞬間、戦闘不能にした連中がフラフラと起き上がる。これにはさすがのレオンも驚愕した。

 

「厄介だね…、一度に終わらせないとだめか」

 

幹部格三人に対してレオン達それぞれが対応する。幹部格と言っても下っ端よりは強い程度で難無く倒し、残りの下っ端もクローゼのアーツによって一蹴。

 

「く、くっそー!」

 

「…そこまでにしとけや」

 

「「アガットの兄貴?」」

 

アガットはレイブンの元リーダーだったらしく、メンバーに活を入れる。そしてクラムに向き直り、褒め称える。

 

「だが、母ちゃんに心配をかけるんじゃねぇ…」

 

「…クラム」

 

「テレサ先生」

 

アガットと一緒に来たテレサ院長がクラムに声を掛ける。

 

「あなたたちが無事ならそれでいいの…、だから、お願いだから、危ないことはしないでちょうだい」

 

失ったものは戻らないけれど、子供たちがいる。涙を流しながら訴えるテレサ院長についに耐え切れなくなったクラムが抱き着く。

 

「うわあああああんっ!」

 

思わずウルッと来たレオンは、クラムたちを引き連れ倉庫を後にする。アガットは事情聴取と言う名の脅迫で取り調べを行うそうだ。レイブン達との一悶着も解決し、二人を見送ることにした。

 

「オイラ、結局助けられて…かっこ悪い」

 

「そんなことはないさ、誰かのために立ち向かえるのは簡単な事じゃないさ。」

 

レオンはクラムと同じ目線に立ち、しっかりと目を見据えながら話す。

 

「だから君は、君しかできないことで家族を支えていくんだ」

 

「うん、わかったよ!」

 

元気よく返事をし、明るさを取り戻したクラムはテレサ院長と手を繋ぎながら、家族の元へ帰って行った。

ギルドに戻った一行はアガットが来るのを待つ。ジャンと会話を交わしながら待つこと10分、ようやくアガットがやって来た。

 

「あいつらは犯人じゃなさそうだな。それから、この放火事件は俺が引き継ぐ。お前たちには手を引いてもらうぜ」

 

「あんですってー!」

 

「納得できる説明を聞かせてもらえますか?」

 

強引なアガットにエステル達の不満は爆発。だがこのような場合は、正遊撃士が優先されるため成す術なく、手を引くことになってしまった。今回の犯人はアガットが追っている者の可能性があり、捜査のためにレオン達を下がらせたようだ。

だが孤児院のみんなやテレサ院長と約束した手前、はいそうですかと納得できるわけでもない。これからの方針に頭を悩ませていると、クローゼが助け船を出してきた。

 

「遊撃士は民間の行事も手伝ってくれるんですよね? でしたら学園のお芝居に参加していただけませんか?」

 

「お芝居?」

 

エステルが繰り返し尋ねる。

 

「毎年、学園祭の最後には講堂でお芝居があるんです。あの子たちもとても楽しみにしていたんです。今になっても役が決まっていなくて…」

 

「もしかして」

 

「その役を僕たちが?」

 

クローゼの話だと学園の生徒会には既に話が通っているようで、むしろ連れてきてほしいと頼まれたそうだ。

 

「でも私たちはお芝居の経験なんてないわよ?」

 

「片方の女の子が演じる役が武術に通じている必要があって…、エステルさんならうまくこなせると思うんです」

 

「なるほど」

 

意外とまんざらでもないエステル。

 

「それでもう一つの役は?」

 

「えっと、私の口からは…」

 

なんとなく嫌な予感がしたレオンは弟を差し出す。

 

「お、お芝居ならヨシュアうまいよなー」

 

冷や汗を掻きながらものすごい棒読みで話すレオンに、ヨシュアはすぐに状況を把握。

 

「い、いやそれよりも兄さんのお芝居してる姿が見たいなー」

 

結局その場では決まらず、学園についてからゆっくり話し合うことになった。

クローゼからの依頼があそこまで大変だったとは知る由もなかった。

 




あの役はどっちになるのか!?

次回もお楽しみに!
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