それでは第5話です。
劇は大成功で幕を閉じ、制服姿に戻ったクローゼと談笑するレオン達。そこへ孤児院のみんなも合流した。
「クローゼ姉ちゃん、かっこよかった!」
「エステルさんも良かったです」
「レオンちゃん、とっても可愛かったよー」
各々の感想に笑顔になるエステルとクローゼ。レオンだけは引きつっていたが、みんなが喜んでくれたのなら何よりだ。
「ふふ、みんなで楽しませてもらいましたよ。…本当にいい思い出になりました」
「やはり…」
ダルモア市長の厚意を受け取ることにしたテレサ院長。子供達にはマノリア村に戻ってから伝えるそうだが、楽しげな笑顔の裏に悲しみが宿っていることをレオンは見逃さなかった。
「テレサ院長、久しぶりだのう」
遅れてやって来たのは学園長。
「事情はクローゼ君から聞いておる。本当に大変な目にあったのう…、そこで学園としても微力ながら力になれればと思ってな」
そうしてジルがテレサ院長に手渡したのは、王立学園の紋章が入った分厚い封筒。
「学園の来場者から集まった寄付金です。ちょうど、百万ミラあります」
「「「ひゃ、百万ミラぁ~!?」」」
レオン達は滅多に見られない金額に思わず叫ぶ。
「いけません! こんなものは受け取れません!」
個人に渡すにはあまりに大きな額…、テレサは即座に断った。しかし、そんなテレサ院長にハンスが優しく告げる。
「心配はいりませんよ。毎年、学園祭で集まった寄付金はこうして福祉活動に使われているんですから」
それでも渋るテレサ院長に、クローゼは自分の正直な気持ちをぶつける。
「テレサ先生、どうか受け取ってください。それだけのミラがあったら、孤児院を再建できるし、王都に行く必要もありません」
「クローゼ……」
「あのハーブ園だって、放っておかなくてもいいんです!」
「クローゼ君の言う通りだ。受け取りなさい、テレサ院長。亡きジョセフ君と、何より子供たちのためにもな」
クローゼやコリンズ学園長の慈愛に満ちた言葉、優しさに満ちた空間にテレサは涙を流す。
「ああ……本当に、ありがとう、ございます……」
突然泣き始めたテレサ院長に困惑する子供たち。悲しくて流す涙もあれば、嬉しくて流す涙もある。この光景をレオンは生涯忘れることはないだろう…。
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後片付けも終わり、ギルドに報告するために学園に別れを告げる一行。
学園を南に下り、メーヴェ海道へ入る。
「数日間と短い間でしたけど、本当に楽しかったです」
「こちらこそ!」
クローゼとも別れの時。それぞれが別の目的地を目指し、お互い背を向けた時だった。
マノリア村の方角から、ザックという住民が息を切らしながら走ってきた。
「おーい、ハァハァ…、テ、テレサ先生と子供たちがマノリアの近くで何者かに襲われた」
「あ、あんですってー!」
「……あ…」
ザックの言葉に衝撃を受けたクローゼは、足元がおぼつかなくなり倒れてしまう。
学園祭から帰ってくる最中に襲われ、正遊撃士であるカルナも気絶させられたそうだ。彼女がやられたという事は犯行を行った人物が相当の手練れだとわかる。
ザックをそのままギルドに向かわせ、レオン達はマノリア村に急ぎ向かった――。
~マノリア村~
宿屋に着くとテレサ院長とカルナが寝かせられており、子供たちは神妙な顔つきで、ただただ呆然としていた。
「お姉ちゃんたち…」
クローゼを見た子供たちは堰を切ったように泣き出す。
子供たちが落ち着くのを待つと、マリィが当時の状況をポツリポツリと話してくれた。
覆面を被った集団に襲われたらしく、カルナが迎撃するも多勢に無勢。さすがの遊撃士も数の暴力には勝てず、そのまま気絶させられたそうだ。
「…あいつら、先生からあの封筒を奪ったんだ…、レオン兄ちゃん、ヨシュア兄ちゃん…オイラ守れなかったよ」
悔やむクラムをヨシュアが慰める。レオンの中で怒りが沸々と湧いてくる。
計画的な犯行と思われる今回の事件は、放火した犯人と同じグループである可能性が極めて高い。
「早く犯人を捕まえましょう」
クローゼは先程とは違い、力強い雰囲気を醸し出していた。
「フン、そいつは同感だな」
扉から入ってきたのは《重剣》のアガット。
「あーっ!?」
「アガットさん…」
「ああ、ギルドに連絡があったからな。随分と厄介なことになってるじゃねぇか」
寄付金が奪われたことも含め、今までの状況を掻い摘んで話す。無表情だったアガットも徐々に苦虫を潰したような顔になっていった。
「実はな、レイブンの奴らも港から姿を消しやがった…」
彼ら程度にカルナがやられるとは思えないが、それでも今回の件に関わりがあるのは確かだ。手掛かりを見つけるために5人はすぐに行動を始めた。
子供たちに声を掛け、部屋を出る。外に出ると既に日は落ちており夜になっていた。
「どこから探しましょうか?」
辺り一面真っ暗で、手掛かりを見つけるには最悪のコンディション。レオン達が今後の方針を決めあぐねていると、空から甲高い鳴き声が響いてきた。
「ジーク!」
現れたのはクローゼのお友達である白隼のジーク。彼は黒装束の二人組が少年たちを襲う瞬間を見ており、案内人を務めてくれるらしい。
アガットがクローゼの言葉を信じずに一蹴したが、その場の少年少女全員は気にせずジークの後を追う。一瞬言葉を失った赤髪の青年は、半信半疑のまま彼らの後を追いかけた。
ジークが案内してくれたのはバレンヌ灯台。中に入るとそこには目を虚ろにした不良青年がいた。
「お、おい」
アガットが彼らに近づくといきなり攻撃を仕掛けてきた。ただの不良青年には出し得ない膂力にアガットは一瞬焦る。
「この状態は…、カプア一家のドルンに似てるね」
「くそが、何をラリってるのか知らねぇが、キツイのをくれて目を覚まさせてやるぜ!」
アガットが重剣を構え飛びかかる。
クラフト【フレイムスマッシュ】
火の出るようなすさまじい一撃は、本来なら敵を後方まで吹き飛ばすのだが…
「…」
アガットの攻撃を受け止めたディンはわずかに後退しただけであった。
「なっ!」
本来ならあり得ない光景に驚くアガット。その隙を突いて殴りかかるディンだが、さすがと言うべきかアガットはすぐに体制を立て直し、薙ぎ払われた警棒を重剣で防ぐ。
「この力、明らかに限界を超えているね…、このままだと危ないな」
過ぎた力は身を滅ぼす。脳のリミッターが外れているような状態の不良たちに、危険を感じたレオン。
「兄さん!」
「わかった!」
アイコンタクトだけで意思の疎通を図る。それを見たエステルは兄弟への支援を行う。
「よーし、皆行くわよ!」
エステルの掛け声により力が漲る。それに続いてヨシュアがすかさず攻撃に移る。
「手加減はするから…」
Sクラフト【漆黒の牙】
すべての敵を一瞬にして斬り伏せる暗黒の刃は、確実に敵の急所を切り裂き全滅させるほどの威力を誇るが、今回は峰打ちで攻撃したため死ぬことはない。レイブン達がダメージによって硬直している間にレオンは更なる攻撃を繰り出した。
【活剄衝剄混合変化、竜旋剄】
レオンは活剄を両腕に集中。同時に刀に剄を再度収束させる。膨大な衝剄を周囲に撒き散らしながら、活剄によって強化した腕力が空中でレオンをコマのように回す。
レオンを中心に剛風が渦を巻いて天に昇ってゆく。打ち上げられたレイブンの落下地点には、既にエステルが構えている。
「ハァァァァァ!」
クラフト【旋風輪】
つむじ風のように棍を振り回し、落ちてくる不良達を一人残らず吹き飛ばす。
オーバーキルな気がしてならないが、溜まったストレスを発散…もとい正気に戻すためにあえてここまでしたのだ。
当然レイブン達は戦闘不能となり、レオン達の勝利となった。
「えげつねぇな…」
アガットの呟きが静かに溶けていく。ブライト家のコンビネーションは抜群で、どんな育て方をしたんだよ、あの親父は…と思わずにはいられないアガット。
「そうですね…」
クローゼも怒涛の攻撃に思わず苦笑い。だがこれで終わりではない。
レイブンもまだ残っている。黒幕を追い詰めるためにもレオン達は一歩を踏み出した。
第2章もまもなく終了です。
次回もお楽しみに!