鋼殻の軌跡   作:かめぞう

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リアルが忙しくなってきた今日この頃。


第6話

動かなくなったレイブンを縛り上げ、次の階へ向かう。

同じように操られていたレイス、ロッコを撃破し屋上へと進む。

 

「ふふふ…君たち、良くやってくれた」

 

最上階から聞こえてきたのは、何度も言葉を交わした人物…ダルモア市長の秘書であるギルバートであった。誰もが予想をしていなかった展開に動揺を隠せない。

 

「これで連中に罪をかぶせれば全ては万事解決というわけだね」

 

操られた上に罪まで被せられそうなレイブンに同情してしまう。さらには暗示を解くためにそれなりに痛めつけたので、目を覚ました時は驚くに違いない。

 

「我らの仕事ぶり、満足していただけたかな?」

 

声を発したのは黒装束の男。アガットが追いかけていた連中で、ボースを騒がしたカプア一家の黒幕である。

 

「ああ、素晴らしい手際だ。念のため確認しておくが……証拠が残ることはないだろうね?」

 

それから聞こえてきたのは、孤児院放火事件から寄付金の強奪までの真実だった。饒舌にしゃべるギルバートに、レオン達の怒りは増す一方。

言うまでもなく真犯人はギルバートとその上司であるダルモア市長。彼らは孤児院の土地一帯を高級別荘地として売りつける計画を立てており、別荘地としての価値を半減させる孤児院を潰す機会を窺っていたとの事。

一連の話を聞いたレオンは既に我慢の限界。怒りに呼応するように徐々に剄が漏れ出していた。

 

(こいつら潰してやろうか…)

 

溜まった剄を解放しようとした矢先、クローゼが飛び出した。

 

「それが理由ですか…」

 

ギルバートは突然現れた遊撃士の一行に驚きの声を上げ、なおもクローゼの独白は続く。

 

「そんなつまらない事のために……皆を傷つけて……思い出の場所を灰にして……」

 

「ど、どうしてここにいる!? それよりもあのクズどもは何をしているんだ!?」

 

「残念でした~、皆下でオネンネしてるわよ。しっかし、一連の事件の黒幕が市長だったとはね。しかもどこかで見たような顔もいるし」

 

「ほう? 娘、我々のことを知っているようだな。そこの赤毛の遊撃士とは少しばかりの面識はあるが……」

 

「ハッ! 何が面識だ。 ちょろちょろ逃げ回ってやがったくせによ!」

 

アガットは重剣を敵に向け、臨戦態勢に入った。

 

「き、君たち、今すぐこいつらを皆殺しにしろ!」

 

ギルバートの言葉に頷いた黒装束の男二人は、高速で移動しエステルとアガットに攻撃を仕掛ける。

 

「くっ」

 

「エステルっ!」

 

アガットは以前戦った経験を活かし重剣で防ぐ。

だが予想外な速さにエステルは対応できず、棒術具を弾かれる。敵の鉤爪がエステルを切り裂かんとするが、ギリギリ間に合ったヨシュアが庇う。

 

「離れてください!」

 

クローゼが水のアーツ【アクアブリード】を発動。重い水の塊が黒装束の男に放たれたが、ヨシュアを蹴り飛ばす反動で避ける。そして次なる獲物を見つけ、地を這うようにレオンに迫る。

 

【影縫い】

 

ヨシュアの絶影と同じく、対象者の遅延を促す技。黒装束の男は残像を残して懐に潜り込むと、鉤爪をレオンに向けて突き出した。

 

「レオンさん!」

 

終始動じなかったレオンだが胸元に当たるその瞬間、その姿がブレた。

 

「ぐはぁっ!」

 

一際大きな音が部屋の中に響くと、そこには男が突っ伏した姿とそれを悠然と見下ろすレオンの姿があった。

 

「ちっ、…仕方ない」

 

アガットを相手にしていた男が獲物を構えると、あろうことかギルバートに向けた。

 

「き、君たち……雇い主に向かって何のつもりだ!?」

 

「勘違いするな若造」

 

簡単に裏切った黒装束の男は、冷酷に告げる。

 

「我々の雇い主は市長であって貴様ではない。お前が死のうがどうなろうが、我々はどうでもいいのだ」

 

「撃つな、撃たないでくれぇ!」

 

先程の威勢はどこへやら、完全に震え上がったギルバートは味方であった男に懇願する。

 

「オイコラ……そんな下手な芝居打って逃げられると」

 

言葉の途中で一発の銃弾がギルバートの足を貫通した。

 

「が、ぎゃあああっ!?」

 

「お、おい!」

 

「せ、先輩!?」

 

いつの間にかティアラの薬で回復したもう一人の男も隣に立っていた。ギルバートを囮に逃げていく黒装束たちを追う。

 

「俺はこのまま連中を追う! お前らは協会に戻ってジャンの指示を仰げ!」

 

レオンも追いたい衝動に駆られたが、真犯人はまだ捕まっていない。怒りの矛先をダルモアへと向け、黒装束たちはアガットに託す。

 

……こうして、レオン達は奪われた寄付金を無事に取戻し、レイヴンとギルバートをマノリア村の風車小屋の倉庫に拘禁した頃にはすでに空は明るくなっていた。カルナに風車小屋の見張りと寄付金の管理を任せ、四人はルーアンへ向かう。

 

「話が出来過ぎていたとは思ったけど、まさか市長が犯人だったとはね…」

 

メーヴェ海道を移動しつつ、レオンはぼやく。するとクローゼが何かを思いついたように立ち止まった。

 

「あの…私、学園でやることがあるので、先にルーアン市に行っててもらえませんか?」

 

このタイミングで?とは思ったが、本人はすぐに追いつくからとごまかすように笑った。何か考えがあるのだろう…、直感でそう感じたレオンは先に行くからと簡潔に伝え、目的の場所へ向かう。

 

ルーアン支部に着いた一行は受付のジャンに真相を報告。

 

「話は分かった。ただ逮捕するのは難しいね…、現行犯だったら問答無用で逮捕できるんだけどね」

 

遊撃士協会は広く国家にも受け入れられるために中立性を保つため「国家権力への不干渉」を掲げており、政治家や公的機関に対しては現行犯以外では手を出すことができないというという弱点を持つ。

 

「ならば、僕たちが行うべきは時間稼ぎか…」

 

「さすがだね、レオン君。そうだ、市長を逮捕するにはそれしかないだろうね」

 

「え?どういう事?」

 

エステルだけは意味が分からず首を傾げる。それを見かねたヨシュアがフォローする。

 

「遊撃士では逮捕できない。なら王国軍に逮捕してもらうしかないという事だよ」

 

ゆえに、連絡をしてからルーアンに到着するまでの時間稼ぎが必要になるというわけだ。方針が決まればあとは行動するだけ。クローゼも合流し、準備を終えた一行は、この事件に終止符を打つため市長邸へと向かった。

 

 

 

 

****************************

 

 

 

 

「困るな君たち…、ギルドの遊撃士なら礼儀くらい弁えているだろう。大切な話をしているのだから出直してきたまえ」

 

当然出直す義理もなければ、見逃すはずもない。ヨシュアが放火事件の犯人が明らかになったと話すと、態度を改めただけで特に驚きもせず、公爵に席を外すことを願い出た。

 

「ヒック……いや、このまま話すといい。どんな話なのか興味があるからな」

 

「し、しかし……」

 

「いいじゃないっ、公爵さんもああ言ってるし。聞かれて困る話でもないでしょう?」

 

 エステルの皮肉めいた言葉に、ダルモアは落ち着いた様子で対応する。だがその冷静さも話を進めていく内に崩れていく。

 

「高級別荘地を立てる計画のために孤児院が邪魔だったと聞いています。これでもまだ、容疑を否定しますか?」

 

「っ……しつこいぞ! 確かにその計画は存在していたが、数あるルーアンのための事業計画の一つにすぎん! 何故今私が、犯罪に手を染めてまで計画を推し進める理由がある!?」

 

「……莫大な借金を抱えてるからでしょう?」

 

聞き覚えのある声。扉から入ってきたのは無精髭を伸ばしたリベールの記者、ナイアル。

 

「そこの市長さんを取材しよう屋敷まで来たらお前たちが入ってくじゃねえか。こりゃ何かあると思ってお邪魔したらこの有様だ…いやー。一部始終聞かせてもらったぜ♡」

 

さらには市の予算まで使い込んでいたことまで指摘。ナイアルは独自のルートで情報を集めていたらしい。

ダルモアの借金は、リベールの東にあるカルバード共和国で相場に手を出して大損した結果だった。しかもその額は一億ミラ。犯罪に手を染めたとしてもおかしくないほどの額。

 

「行き当たりばったりですなあ」

 

図星を突かれたせいか、ナイアルの言葉に開き直るダルモア。

 

「そんな証拠がどこにある。憶測だけで記事にしてみろ、名誉棄損で訴えてやるぞ!」

 

「貴様ら遊撃士も同じこと! 市長の私を逮捕する権限はないはずだ! 今すぐここから出ていけ!」

 

「さすがに自分の権利はわかってるみたいだね」

 

ここまで言われれてもなおも自分の罪を認めないダルモアに、怒りを通り越して呆れかえるレオン。

 

「…一つ、お伺いしてもよろしいですか」

 

声を発したのはクローゼ。

 

「王立学園の生徒がこのような輩と付き合って……とっととこの場から出て、学園に戻りたまえ!」

 

クローゼは凛とした眼差しでダルモア市長を真っ直ぐ見つめた。

 

「どうしてご自分の資産で返金なさらなかったのですか。……この家なら、一億ミラになりそうですよね?」

 

「この屋敷は先祖代々からのダルモア家の誇り! どうして売り払うことができよう!?」

 

「あの孤児院だって同じ。多くの思い出が育まれてきた思い出深く愛しい場所……。その思いを壊す権利なんて誰だって持ってはいないのに…」

 

「あんなみすぼらしい建物と、この屋敷を一緒にするなああ!!」

 

ダルモアは激高し叫ぶ。

 

「結局貴方は、自分が可愛いだけ。ルーアン市長としての自分とダルモア家の当主としての自分を愛しているだけにすぎません。可哀想な人……」

 

「自分の尻拭いもできない人に、何を言っても無駄さ…」

 

クローゼの憐れみとレオンの皮肉を受けたダルモアは茫然自失となるも、高らかに笑い出した。

 

「…言ってくれたな。こうなったら、後のことなど知ったことか!」

 

 突如として立ち上がったダルモアは、デュナン公爵に目もくれず、部屋の奥の壁に手をかける。すると隠し扉が開き、獣の匂いが充満する。

 

「ブロンコ、ファンゴ、出てこい! 餌の時間だ!」

 

現れたのは飼育された戦闘用魔獣。空腹のためか涎が床に滴り落ち、獲物を駆る瞳はこちらを捉えている。

 

「ま、魔獣だとぉ!?」

 

 ナイアルは思わず仰け反り、武器を構えた四人の後ろに隠れる。デュナン公爵に至っては泡を吹いて気絶し、フィリップに避難させられている始末。

 

「お前たちを皆殺しにすれば事実を知る者はいなくなる……こいつらが食べ残した分は川にでも流してやるから安心したまえ」

 

「…手間が省けた」

 

レオンは魔獣を見据え、飛びかかった。

 




1話で終わらせるつもりが無理でした。
次回で2章は終了です。
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