第5話です。それではどうぞ!
折れた刀を抱えながらギルドに向かうレオンは、先の闘いを思い返していた。
(グレンダンでもあのレベルの武芸者は滅多にいなかった。それにあの剣…)
剄が通らないなんてことは今まで一度もなかった。それゆえ対応が遅れてしまったが、次はそうはいかない。頭の中で先の闘いから学んだことをシミュレーションしていく。
(剣術、身のこなし、高位アーツを使いこなす技量。どれをとっても超一流だった…)
思考に没頭しているといつの間にかギルドの前に着いていた。自分の状態をキリカにどう説明するべきか悩むレオン。武器は破損し、身体は土汚れや傷が目立っている。
(結局取り逃がしてしまったし…)
扉の前で唸っていると、中からエステルやアガットの声が聞こえる。どうやら中央工房の一件は終わったようだ。覚悟を決め、扉を開けようとした時ティータが泣きながら出て行った。
「…あれ?」
呆然と見送る兄に気が付いたエステルは、闘い後のレオンを見て驚きの声を上げる。
「レオン兄、…ってどうしたの!?」
「どこで油を売っていやがった?」
「あ、あはは…」
説明することがあり過ぎて、思わず苦笑いをするレオンであった――。
*******************************
「…なるほど。黒装束のリーダーは相当腕が立つみたいね」
「ええ、しかも見たことがないアーツまで使っていました」
戦いの中で使われたアーツは、既存のオーブメントでは発動できないものだった。新型のオーブメントは未だ開発段階にあると聞いており、敵勢力の技術力がこちらを上回っている事がわかる。
そして一番の問題は―――
「武器がないあなたには、今回の作戦から外れてもらうわ」
「……」
キリカの宣告に黙り込むレオン。
「そんなの新しい刀を用意すればいいだけの話じゃない!」
ティータに続き、レオンの戦線離脱。ティータの場合は一般人かつ年齢が幼いため、連れて行くことができなかったが、レオンは遊撃士で腕も立つ。納得のいかないエステルは叫んだ。
しかし、エステルとは対照的にレオンは落ち着いていた。
「…やはり、ツァイスには?」
「…ええ」
「? どういう事?」
レオンとキリカの話についていけないエステルは怪訝な顔をする。
「リベールでも刀を取り扱ってる武器商店は珍しいんだ。元は東方の武器だし、流派も限られているからね」
さすがと言うべきか、ヨシュアは現状をしっかりと理解しておりエステルに説明する。
剣を扱う流派は数多く在れど、刀を扱う流派は極端に少ない。リベールも例外ではなく、武器商店で売られることが少ないのだ。
しかし、遊撃士には八葉一刀流(東方出身の剣士である《剣仙》ユン・カーファイによって創始された東方剣術の集大成とも言うべき流派で、極めた者はいずれも《剣聖》と呼ばれる)を扱う者が在籍しており、ギルドの中では刀の認知度は高い。
「とにかく、新しい刀が見つかるまで参加させることはできないわ」
「けっ、獲物を失ったてめえにできることはねえ。さっさと刀を見つけるんだな」
アガットはそう言い残しギルドを出ていく。
そうは言っても刀をどこで入手すればいいのか皆目見当もつかない。ツァイスで手に入らないのなら他の地方に足を伸ばすしかなく、一旦ロレントへ戻る決意をする。
ロレントは鉱業が盛んで、知り合いの武器屋もある。刀を手に入れるならあそこしかないだろう。
「…仕方ない。僕は一旦ロレントに戻って刀を新調するよ、後は頼むね」
「わかったよ。こっちの事は僕たちに任せて」
肝心な時に協力できない自分を不甲斐なく感じながら、ヨシュアたちに託す。定期船のチケットはキリカが連絡し、準備させておくとの事。無駄のない仕事ぶりに感心するばかりだ。
「ロレントに行くならあの女の子も連れて行って頂戴。今の精神状態だと何をするかわからないから」
「女の子って…、ティータの事ですか?」
「ええ」
「私からもお願い。博士が連れ去られてショックを受けてるから、レオン兄が励ましてあげて」
確かに一人でカルデア隧道に赴くような子だし、連れて行く方がいいのかもしれない。レオンは頷くとティータが向かったであろう自宅へと足を運んだ。
扉は開きっぱなしとなっており、中へ入ると泣きながら手持ちの整理をしていたティータを発見した。
「一人で探すつもりかい?」
よほど集中していたのか、声を掛けるとビクッと反応し恐る恐るこちらを振り向く。
「グスッ、レオンお兄ちゃん。私もおじいちゃんを探す手伝いがしたい…」
「その気持ちは痛いほどわかるよ。けど、今はエステル達を信じてあげてほしい」
泣いているティータと目線を合わせ、優しく諭す。
「ティータの気持ちを蔑にしているわけではないんだ。それに、ティータに何かあったらラッセル博士も悲しむ…」
「…うん」
我慢できなくなったのか、ティータはレオンに抱き着くと胸の中で再び静かに泣いた。ティータが泣き止むまで頭を撫でていると、徐々に落ち着きを取り戻し、泣き止んだティータは目を真っ赤にして胸を濡らしたことに対して、ごめんなさいと謝りながら離れた。
「それでね、ティータ。君には僕と一緒にロレントに来てほしいんだ。」
「ふぇ? どうして?」
ギルドで話していたことを掻い摘んで説明した。ティータが危険な行動に走る抑止としてもそうだが、黒装束の連中が博士の孫娘に対して何もしてこないという保証もない。ツァイスを離れることは正に一石二鳥。
ティータは少し考えた後、了承してくれた。
「定期船のチケットはキリカさんが手配してくれたから、さっそく向かおうか」
「うん」
定期船の受付に行くと既に話が通っており、スムーズに定期船に乗ることができた。
ツァイスを発ってから、時折不安な表情を見せていたティータであったが、レオンと会話をしていく内にその回数は減っていき、笑顔を見せるようになっていった。
*******************************
ロレントに到着した二人は、武器屋に向かう。以前から良くしてもらっているエルガー武器商会だ。
「エルガーさん、ご無沙汰しています」
「おお、レオンじゃねえか! もう正遊撃士になったかぁ?」
「まだですよ。それより元気そうで何よりです」
「ガハハ、当たり前ぇよ! ところでそこのお嬢ちゃんはどうした?」
「あのあの、私ティータって言います。よろしくお願いします!」
エルガーの豪快さに圧倒されつつも、元気よく挨拶をするティータ。可愛らしい容姿に礼儀正しい姿にエルガーも笑顔で対応する。
「おう、よろしくな! んで、今日はどうしたんだ?」
「実は―――」
腰に下げていた刀を机の上に置く。エルガーは静かに受け取ると鞘から刀身を抜き出した。
「こりゃあ…、見事に折れてんな」
「えーと、修復できそうですか?」
刀を食い入る様に見つめるエルガーに、恐る恐る質問するティータ。
「修復は難しいな…、新しい刀を購入した方が早い」
「やはり、そうですか」
長年苦難を乗り越えてきた上、手に馴染んだ武器を手放すのは辛い。折れた刀を見つめていると、エルガーは更に言い辛そうに口を開いた。
「…購入した方が早いんだが、今うちの店にも在庫がなくてなぁ、取り寄せてる最中なんだわ」
「どれくらいかかるんですか?」
「一週間ほどだな」
「そ、そんなぁ…」
ロレントまで来て刀が入手できないとなると、博士の救出に間に合わなくなる可能性がかなり高まる。ティータの目に涙が滲んだ。
「だが、直接知り合いの鍛冶屋に行けば刀が手に入るかもしれねぇぜ」
「どこにあるんですか!?」
「ああ、それは―――」
エルガーが鍛冶屋の場所を伝えようとした瞬間、店の扉が開き、ある人物が入ってきた。
「…あら? レオン君ではありませんか」
「…メイベルさん?」
この出会いがレオンの運命を変えるとは、誰も知る由も無かった――。
メイベルさんとの再会…
この出会いがレオンの今後を変えます。
次回もお楽しみに!