半年ぶりの投稿です。
第1話
“エレボニア帝国”とはゼムリア大陸の西部にある《黄金の軍馬》を紋章に掲げる巨大帝国である。大貴族の支配する旧い体制の国家だったが、《鉄血宰相》の異名で知られるギリアス・オズボーンの政策で全土に鉄道網が敷かれ、急速に近代化。さらには20以上もの機甲師団の他、領邦軍(大貴族の私設軍)など巨大な軍事力を保持しており、先の『百日戦役』でリベール王国に侵攻してきた国でもある。
レオンにとっても複雑な思いがある国ではあるが、父の情報が掴めるチャンスを逃したくはなかった。ラッセル博士の救出も気掛かりなのは確かだが、エステル達ならやり遂げてくれるだろうという確信に近いものもあり、今回の依頼を引き受けたのであった――。
様々な交通機関を通して帝国に向かったレオンだったが、エレボニア帝国は元々入国審査が厳しく、ギルド襲撃事件によって更に入国手続きが厳格になってしまった。
審査官からの長い拘束を受けて何とか入国できたレオンは思わず溜息をついた。
「ふー、やっと入国できた。まずは情報を集めないと」
入国するだけで多くの時間を使ってしまったが、ここからが始まりなのだ。父の行方の手掛かりを探すべく、息つく間もなく行動する。
だが、情報を集めようとするにもギルド襲撃の名残が強く、事は思うように進まない。聞き込みや調査で今までに得た情報を整理するレオン。
・帝都ヘイムダルを始めとした計6つのギルドが襲撃。
・高性能爆薬を用いて襲撃。専門的な組織による作戦と思われる。
・帝国内の遊撃士のほとんどが出払っており、機能しているギルドは少ない。(確認できたのは湖畔の町レグラムの支部)
遊撃士手帳を確認しながら書き込んでいく。時間をかけた割に手に入れられた情報量は少なかったが、機能しているギルドが確認できただけでも良しとした。
(湖畔の町レグラム…、確か《光の剣匠》がいる街だったよな)
帝国で高名な剣術流派「アルゼイド流」の筆頭伝承者でもあり《光の剣匠》とあだ名される帝国最強の剣士の1人である。剣を志す者ならば一度は聞く名であり、その二つ名はリベールにも知れ渡っているほどだ。
「今得られる情報としてはこんなところか……」
情報をまとめ、次の方針を決める。
「思った以上に深刻な事態だな。ここまで大規模な作戦だと何か裏がありそうだけど…」
帝国ギルドの現状を把握したレオンは呟いた。
この事件がリベールでの一連の騒動に関わっているとは知る由もなかった――。
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“湖畔の町レグラム” バリアハートの南西方面にある、アルゼイド子爵家が治めるエベル湖畔の街。様々な伝説が残っており、 中でも250年前の獅子戦役で活躍した「槍の聖女サンドロット」の話はとくに有名らしい。
鉄道を利用し、近代化が進む街並みを観察しながら、ようやく目的地に辿り着く。父の行方が分かるかもしれない。逸る気持ちを抑えつつギルドに向かう。
外観を見ても襲撃されたような痕跡もなく、情報が確かであったことに安堵する。
「すみません。誰かいらっしゃいませんか?」
丁寧にドアを開け、中を確認する。受付の後ろには多くの書類が山積みにされている。
「今行くから、ちょっと待っててくれー」
声は二階から聞こえる。どうやら何か作業をしているようだ。待つこと数分、降りてきたのは白衣のような服を着た金髪の青年だった。
「何か依頼があるのか?……いや、同業者か。見ない顔だな」
依頼者と勘違いされたようだが、遊撃士のバッジを見て気づく。後半真顔になった青年に対してレオンはここに来た経緯を話す。
「なるほどな、確かにカシウスさんは帝国にいる。だが、どこにいるかは話せない。……最重要機密ってやつだ」
「今回の事件と関係があるんですね?」
「まあな」
父が生きている確証を得ることができ、とりあえず安堵するレオン。
「俺はトヴァル・ランドナー。よろしくな」
ホッとするレオンを労うかのように笑顔で自己紹介を始める。トヴァルは手を差し出し、握手を求める。
「すみません、自己紹介が遅くなりました。レオン・ブライト、準遊撃士です」
「お前が……」
「?どうしたんですか?」
驚いた様子のトヴァルに更に詳しい話を聞こうとすると、誰かが入ってくる気配を感じた。
「トヴァル! 私のオーブメント調子悪いから、ちょっと見てくれる?」
「あのな、工房があるんだからそっちで見てもらえよ」
「あんたがやってくれれば無料でしょ!……ってあんた誰?」
勢いよく入ってきた女性は、言いたいことだけ言うとようやくこちらに気が付く。勢いに驚いているとトヴァルが横から助け船をだしてくれた。
「彼はレオン・ブライト。リベールからきた準遊撃士だ」
「へぇー、こんな時によく来たわね。どんな用件なの?」
レオンはトヴァルと同じようにここまでの経緯を話す。
「なるほどねー。でも今の状況じゃ会うことはできないわよ? 近いうちに大規模な作戦が決行されるから」
「作戦?」
「そう、でも機密事項だからこれ以上は言えないわ」
「そうですか……」
父であるカシウスの無事はわかったが、これ以上は踏み込めないらしい。
帝国内の遊撃士との接触には成功し、ある程度の状況も把握できた。
(クエスト成功……になるのかな?)
今後どう動くべきか考えていると、突然トヴァルが口を開いた。
「……彼に作戦に参加してもらうってのはどうだろうか?」
「はぁ!? 冗談でしょ!? 相手は下位とは言え猟兵団なのよ? それに奴らだって現れるかもしれないのに!」
トヴァルの発言に女性は噛み付く。
「わかっているさ。でも彼はリベールの武術大会でも優勝した《天剣》と呼ばれる実力者だ。戦闘力に関しては申し分ないと思うぜ?」
「でもね「帝国ギルドの存亡がかかってるしな。人手は多い方がいい」……いいわ。そこまで言うなら私が確かめてあげる」
真剣な表情で話す女性に、ニカッと笑うトヴァル。
「と言うわけだ。勝手に話を進めてしまって悪いがどうする? 作戦に参加すればカシウスさんに会えるかもしれないが、かなりの危険が伴うことになる。……まぁ、サラの御眼鏡に適ったらの話だが」
「やります。やらしてください!」
父さんに会えるかもしれない期待がレオンを動かす。
「決まりだな! なら早速練武場を借りるとしようか」
トヴァルが準備のため外に出ようとすると、思い出したようにレオンに声を掛ける。
「そういえば、彼女の紹介がまだだったな! 名前はサラ・バレスタイン。最年少でA級遊撃士になった実力者だ。気をつけろよ~♪」
「はい?」
唐突な報告に間の抜けた返事をするレオン。
「……手加減しないから♡」
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~練武場~
「こちらが練武場を管理されている執事のクラウスさんだ」
「よろしくお願いします」
「ほっほっほ。お若いのにかなりの実力を秘めていらっしゃいますな」
レオンの実力をある程度見抜いているらしい。
話を聞くとアルゼイド流の師範代を任されており、相当な強さである事が窺える。
(フィリップさんみたいな人だな)
執事という職は実力者ばかりなのかな?とどうでもいいことを考えていると、
「ここが練武場なのね、入るのは初めてだわ」
準備万端であろうサラが入ってきた。
「あ~、どう料理してあげようかしら」なんて呟きは聞こえなかったと思いたい。
ここからは戦いが始まる。気を引き締めなければ…
レオンも目を閉じ、剄息を行い臨戦態勢に入っていく。
「ふぅー」
それを見たサラは笑みを浮かべる。
(どうやらトヴァルの言ってることは少なからず当たってるみたいね)
「では僭越ながら、私が審判を務めさせていただきます。準備ができましたら、前にお進みください」
クラウスが言い終わるとそっと目を開き、刀を抜いて前に出る。
対するサラも導力銃と強化ブレードを手にレオンの前に向かう。
両者の準備ができたことを確認するとクラウスは手を上げた。
「始めっ!」
「レオン・ブライト、行きますッ!」
「サラ・バレスタイン、行くわよッ!」
《天剣》と《紫電》の闘いが今始まる――。
登場キャラが少ないですが、ご容赦を。
うろ覚えなので時系列や独自解釈がありますので、
温かい目で見ていただけたらと思います。