鋼殻の軌跡   作:かめぞう

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プロローグⅢ

「では、始めようか…」

 

“カシウス・ブライト”

 

『百日戦役』において、その戦術眼を遺憾なく発揮し、窮地に陥ったリベール王国を救った英雄。《剣仙》ユン・カーファイに師事し八葉一刀流を伝授して貰い、7つの内の一つ「螺旋」の型を皆伝し、《剣聖》の二つ名を持つ武人である。また、武道の極めた者が行き着く物事の本質を見極める「理」に至っており、リベール王国において1、2を争う実力者である――。

 

「はあっ!」

「らあっ!」

 

二人は同時に気合を放ち、前と飛び出した。

中央で二人は激突する。斬撃を流し、技を繰り出す。幾度か刃を交えお互いに距離をとる。

 

(エステルの話は聞いていたが、この若さでなんという強さだ)

 

(まったく隙がない……、それに回転の力を利用した斬撃がやっかいだ)

 

レオンは足に込めた剄を爆発させる。

 

【内力系活剄の変化、旋剄】

 

大幅に強化された脚力は高速移動を可能にする。

一気にカシウスの間合いに入り込んだレオンはその勢いのまま刀を降り下ろす。

 

「くっ」

 

予想外のスピードに一瞬焦りはしたものの、今までの経験からか瞬時に対応、斬撃をいなしカウンターを繰り出す。

 

「確かに速いが、直線的な攻撃では動きを読めるぞ!」

 

「ならっ!」

 

旋剄は対応されると判断し、次の行動に移るべくレオンが動く。

 

【内力系活剄の変化、疾影】

 

分散させた気配を先行させ、仕掛ける。分裂したように見せるその技に、カシウスはすぐに反応した。

 

【雷光斬】

 

眼にも止まらない、正に雷光の如き動きで範囲内にいる相手全てに攻撃を行う。疾影によって分散させた気配は消滅。本物であるレオンはすぐに防御に入った。

 

「ちぃっ」

 

7歳という若さで汚染獣に立ち向かい、サイハーデンの免許皆伝にまで至った天才。片や八葉一刀流の免許皆伝者であり、「剣聖」の名を持つ英雄。達人級の二人の戦いは荒々しくも美しく、見るものを魅了するものであった。

 

(ここまでとはな、末恐ろしいものだ。それにこのまま続けていれば庭も滅茶苦茶になってしまうか……なら)

 

「次で終わりにしようか……」

 

「はい」

 

二人はまたもや同時に動いた。

刀を腰まで戻したレオンは抜き打ちの形で一閃させる。またカシウスも刀を納め、抜刀術で勝負を決めにかかる。

 

【サイハーデン刀争術 焔切り】

【残光破砕剣】

 

斬撃は同じ軌道を真反対に描き、衝突する。同時に放たれた衝剄と剣圧が二人の足場を崩し、後ろへと下げた。しかし、カシウスが放つ残光破砕剣は既に二連撃目に入っていた。

だが、忘れてはならない。焔切りにも二の太刀がある。

居合抜きによる突出した斬撃力と衝剄による二段攻撃が焔切りであり、相手の技を無効化する際にも有効で、衝剄はその余波を弾き飛ばす。

 

「うおおおおおおおっ!」

 

「はあああああああっ!」

 

レオンはさらに剄を込め衝剄の圧力で二連撃目を防いだ。だがカシウス更なる斬撃を繰り出す。

“残光破砕剣”は二連撃ではなく三連撃。衝剄によって弾かれた勢いを利用して刀を振るう。

だが、レオンも終わりではない。“焔切り”から派生する―――その技は、

 

【サイハーデン刀争術、焔重ね】

 

切っ先が翻り、カシウスの肩から胴にかけて刃が振るわれる。

ぶつかり合った刀の余波により、地面は弾け、空気が軋み、爆発した。

達人級の技は破壊をまき散らしながら、互角であった力は二人の間を駆け抜け、衝撃により二人は吹き飛んだ―――。

 

「いてて……最後のは危なかった。カシウスさん、本当に強いですね」

 

「ふう、私も闘っていく内に本気になってしまった。……まったくこれで7歳というのだから反則級だな」

 

「でも、本気だとしても全力ではなかったでしょう?」

 

「それはお互い様だろう? サイハーデンの刀技、しかと見届けさせてもらった」

 

“サイハーデン刀争術”

 

戦いに勝つためではなく、生き残るための刀技であり、闘技。グレンダンに現存する武門の多くは様本家分派様々あれど、その起源には必ずと言っていいほど天剣授受者が存在し、そして天剣を生み出せない武門は消滅していく。

その中でサイハーデンの武門は、その起源から義兄であるレイフォンが現れるまでの間、一度として天剣授受者を生み出したことはない。それでも生き残れたのは技を継承した者の生存率が高いためである――。

 

「最後に君と闘えて良かった……。これで思い残すことはない」

 

「本当に刀を捨てるんですか?」

 

戦う前からわかっていた。今まで刀で戦ってきたであろうカシウスの身体は刀を振るう動き、すなわち切り裂く動作に特化している。それを捨て新たな武術を取り込むということは一から身体の動きを修正しなければならないことに加え、相当な鍛錬が必要となる。

それゆえ刀を捨てると言ったカシウスの言葉には理解はできても納得できない部分は少なからずある。しかし、並々ならぬ決意を持っているカシウスにこれ以上レオンから言うことはなかった。

 

「知り合いに棒術を扱う人がいてな、その人に教えを乞うつもりだ。…それから、俺の刀を君に授けよう。錬金鋼と言ったか?あれは古代遺物(アーティファクト)と間違えられるかもしれないからな、そうなれば七曜教会が回収に来るかもしれん。極力使用は避けたほうがいいだろう」

 

「……わかりました」

 

「銘を《正宗》、先生から頂いたものだ。大切に使ってくれ」

 

こうして、レオンとカシウスの戦いは幕を閉じた。カシウスが刀を振るった最後の戦いとして--

 

 

 

 

 

******************************

 

 

 

 

レオンがブライト家で過ごすようになり、3年が経過した。この3年間の中で大きな変化があった。レオンはブライト家の養子に入ることにしたのだ。

大きな要因としてレギオスの世界からこの世界の接触がなかったこと。自分がいなくなって孤児院が大変なのではないか?という点も、義兄が天剣授受者であることから収入には困らないだろうと判断した。だが一番の要因は、エステルが養子にならないことを絶対に認めなかったことかもしれない。

そして現在レオンが10歳、エステルが9歳となり、カシウスは無事遊撃士となった。

エステルも母の死を忘れず、何かを守るために遊撃士を目指している。

当初、レオンに戦いを教えてくれと頼みこんでいたが、レオンの戦い方とこの世界の戦い方は似て非なるものであり、カシウスの助言もありエステルは棒術を習い始めている。

しかし、エステルはレオンに教えてもらいたいようで、何度も頼み込んでいた。ついにレオンも根負けし、棒を失ったときの戦いの基礎だけは教えてあげることにした。

 

「レオン兄! 今日も戦い方をおしえてよ~」

 

「父さんがいるじゃないか、それに前から言ってるだろ? エステルと僕じゃ戦い方が違うんだよ」

 

「ぶぅ! いいじゃん別に、レオン兄がいいのっ!」

 

「俺はお払い箱なのか……」

 

エステルとレオンの会話を聞いていたカシウスが嘘泣きを始める。

 

「ねえ、レオン兄ぃ~」

 

「……俺は無視か」

 

そんな他愛もない会話している最中、新聞を読んでいたカシウスが一つのチラシに注目した。

 

『王都グランセルにて武闘大会を開催します!』

 

(確かユリアの奴も参加すると言ってたな……、おもしろそうじゃないか)

 

「レオン武闘大会に参加してみないか?」

 

「え?」

 




カシウスの技名は苦労しますね
ゲームでは棒術で【雷光撃】だったので、刀の場合は“斬”に変えました。
軌跡シリーズでは闘気とか気といった概念がでますが、剄と似たようなものと解釈しています。ただ、剄のほうが濃密です。
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