駆け足になってしまい、わからない部分も出てくるかもしれませんので注意してください。
本選候補者をなんなく撃破したレオンは、その後も順調に勝利し本選へと駒を進めたのだった。
「あと二回勝てば優勝か…」
その声色には緊張しているような感じはなく、むしろ淡々としているのだった。レオンは5歳の時に養父であるデルク・サイハーデンに武芸の才を見出され、それからずっと腕を磨いてきた。ある程度の大会はそれなりにこなし、何度も勝ってきた。油断はない、ただ物足りなさは感じていた。そして次の闘いに向け集中していると、カシウスがやって来た。
「準決勝進出おめでとう。だが次の相手はなかなか手強いぞ、才能もあるし努力も欠かさない奴だ」
「なんていう人なんですか?」
カシウスがここまで言う人物…、レオンは興味を持った。
恐らく軍人か遊撃士ではないかとは思うが。
「ユリア・シュバルツ。リベール王国の王室親衛隊に所属する軍人だ――」
「さあ、ついに準決勝となりました!赤コーナーは、王室親衛隊ユリア・シュバルツ選手~!」
「「「キャー、ユリア様よ!」」」
静かに闘技場に入ってきたユリアは既に辟易としていた。
「毎回これではな…、なんとかならないのか」
短髪で親衛隊の制服を着こなす姿は非常に凛々しく、男性よりもむしろ女性からの人気がすごい。初戦と少しデジャブを感じるレオンであったが、足捌きと軸のブレなさから相当な実力者であると思われる。
「そして!わずか10歳にして準決勝まで上り詰めた期待のルーキー、レオン・ブライト選手!」
わぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ------!!!!!!
最初に比べるとはるかに歓声が増しており、少し圧倒されるレオン。注目の大きい対戦だけに観客のテンションは最高潮に達していた。
「君がカシウス殿の息子か…、相手にとって不足はない!」
生真面目そうだが、こういった人物には好感が持てる。グレンダンの大会ではお金を稼ぐためだけに出場していたが、今回はこの世界を知るために参加している。武芸者としての血が騒いだのか自然とテンションが上がってきたレオンだった。
「お願いします!」
「では両者構えて、…始めっ!」
先に仕掛けてきたのはユリアのほうだった。
今までの相手とは一線を画すスピード、一切の容赦のない突き。
そして細剣による連続で仕掛けてくる攻撃には隙がないのと同時に切れ目がない。
こちらの動きを崩そうとレオンの行動を先読みしているようだ。
レオンは細剣を弾き、距離を強引に取らせる。
(次はこちらから行く)
【内力系活剄の変化、疾影】
分散された気配は疾走する。どれが本物かわからないユリアは攻撃を防ぐべく行動に移る。
【ミラージュベルク】
幻影の盾を身に纏うことで、攻撃を1度だけ完全防御するクラフトである。レオンの斬撃は幻影の盾によって弾かれ、本物が露見してしまった。
「ちっ」
「そこかっ!」
攻撃を防がれたこともそうだが、クラフトの本質を見抜けなかったことに苛立つ。
そしてすぐにユリアは攻勢に出る。クラフトを発動すると同時にアーツの詠唱も始めていたのだ。
「ゆけっ、ダイアモンドダスト」
アーツが発動し、レオンの頭上に氷の結晶が出てきたとの同時に冷気が包む。しかし、レオンもアーツの発動は見逃していなかった。
【サイハーデン刀争術、円礫】
レオンを中心に衝剄が吹き荒れ、ダイアモンドダストの冷気を力づくで吹き飛ばす。
息もつかせぬ闘いに観客は見入っていた。
「ユリアも腕を上げたな」
「でもレオン兄は負けないよ」
ずっと近くでレオンを見てきたエステルは兄が負けるとは微塵も思っていなかった。
「ああ、そろそろレオンも本格的に動き出すだろう」
そしてカシウスが言った通り、レオンが動き出した。刀身に剄を流し、解き放つ
【外力系衝剄の変化、閃断】
剣身に収束させた剄を斬線の形のまま解き放つ。ユリアはすぐに防御するも細剣は手から離さずとも弾かれる。レオンはその隙を逃さない。
「なっ」
【内力系活剄の変化、旋剄】
足に込めた剄を爆発させ、一気にユリアへ肉薄する。いまだ体勢を整えられなかったユリアはレオンを迎撃できず、レオンは細剣を狙いユリアの後ろ側へ弾き飛ばす。そして首元に剣を突きつけた。
「…まいった」
首に剣を突きつけられ、これ以上は動けない。ここにレオンの勝利が確定した。
「ユリア選手のまさかのギブアップ。よって…………レオン選手の勝利、レオン選手の決勝進出が決定しました!!!!!!!!!」
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!
大きな歓声が闘技場を包んだ。
「強いとわかってはいたが本当に強いな、決勝戦頑張ってくれ」
ユリアは握手を求め、レオンは笑顔でそれに応じた。
「はい!」
控室に戻ると記者や多くの観客が出迎えた。
「その強さの秘訣はなんですか!?」
「いい闘いっぷりだったぞ」
「このまま優勝しろよ!」
「レオン君、頑張って!」
今まで試合が終わってから出迎えてくれたのは孤児院のみんなだった。それが今この瞬間多くの人が出迎えてくれている。死に満ちた世界で生き抜くためにしか闘っていなかったレオンは、この世界に来て、見ること、聞くこと、体験することすべてが新鮮で、リベールの優しい空気に胸がじわりと温かくなる。
「レオン兄!おめでとー!」
「さすが、俺の息子だ」
そして異世界の自分を家族にしてくれた、エステルとカシウス…。今の自分があるのはもちろんグレンダンのみんなのおかげでもあるが、この世界に来て助けてくれたのは今の家族だ。
この世界の人を守りたい。そう思うようになったレオンはこの瞬間から遊撃士としての道を考えるようになった――。
「みなさん、お待たせしましたいよいよ決勝戦!会場のほうもヒートアップしてきたところで選手に入場していただきます。まずは赤コーナーにご注目!!数々の戦いをくぐりぬけてきた歴戦の勇者と呼ぶにふさわしい男。現在はハーケン門にて国境師団を率いているモルガン将軍!!!」
わあああああああああああーーーーーーー!!!!!!!
観客の歓声にも動じず、静かに佇む。
「そして英雄カシウスの息子であり、私たちの度肝を抜いたスーパールーキー、レオン・ブライト!!」
わあああああああああああああーーーーーー!!!!!
きゃああああああああああああーーー!!!!
出てきた自分がびっくりするほどの大歓声。戸惑いつつもあたりを見回し観客の声援にこたえた。
「準決勝の闘い見せてもらったぞ。どうだ?君が成長したら軍に入らんか?君ならばこのリベールを守るに足る人物になれると思うのだが…」
モルガン将軍はいきなり入隊を進めてきた。
「…すみません。僕は軍よりも遊撃士のほうが向いてると思うんです」
「な、なんだと!?…カシウスといい、お主といい、遊撃士だと!!!」
(やばい、なんか逆鱗に触れちゃった?)
「では、さっそく始めたいと思います。長かったこの武術大会もこれが最終戦です。両者構え!!……はじめ!」
「ちょっ」
開始と同時に手に持っていたハルバートを降り下ろす。
その破壊力はすさまじく大きく地面が抉れていた。
“モルガン将軍”
王国軍のトップに位置する人物で、階級は将軍。エレボニアとの国境に位置する要塞ハーケン門の守将として日々リベールを守護している。非常に頑固かつ短気な性格かつ怒鳴り声のすさまじさは有名で、怒鳴られた新兵が泣くこともある。斧槍(ハルバード)を得物とした苛烈な戦いぶりで数多の敵を屠り、《武神》と称された豪傑である。
いきなりの切れっぷりに動揺していたレオンは、飛んできた破片に当たってしまい後退する。しかしモルガン将軍は追撃の手を休めない。ハルバードを横薙ぎに振り抜く。
レオンは全身に剄を張り巡らせ、モルガン将軍の力に対抗して受け止める。
(なんてパワーだ!)
しかし、すぐに反対側に引き戻し、横薙ぎの一閃。
「うおりゃああ」
「くっ」
防御するも、体勢が整っていなかったため吹き飛ばされる。
「おおっと、レオン選手初めてダウンしました!」
「遊撃士なんぞ入らず、軍を目指すがよい!遊撃士では国を守れん!」
その言葉にレオンは反応した。
父さんは国を救ったが、妻は救えなかった。ゆえに遊撃士を目指したのだ。…身近な人を守れずして、どうして国が守れるのか!
父さんは軍では守れないものを守るために遊撃士となった。それが間違いだとでも言うのか!
レオンは静かな怒りを携え、モルガン将軍に語りかける。
「僕は僕の手の届く範囲の人すべてを守りたい!父さんが考えたように、軍で守れない人、僕に関わった人を守りたい!」
「何!?」
「それに父さんのことを誰にも否定はさせない!」
体に剄を走らせる。内力系活剄を高め、剄の密度を上げていく。体から漏れ出した剄が突風となって吹き荒れる。
「な、なんという力だ…」
武器に流す剄の制御が甘くなる、支給された刃引きをした刀が悲鳴を上げる。
チリチリとモルガン将軍の顔にその余波が届く。
そして負けじとモルガン将軍も闘気を高める。
「行きます!」
「来るがいい!」
【外力系衝系の変化、轟剣】
剄を練り上げ刀身を覆うように収束させるその技は、レオンが使うことによって強大な剣となる。
【激獣乱舞】
《武神》の異名で近隣諸国に名を轟かせた老将モルガン最大の必殺技。ハルバートに力を溜め、縦横無尽に走り回りながら攻撃を仕掛けてくる。
刀とハルバートがぶつかり合う。限界まで剄を込めた刀はとてつもない破壊力を生み出し、モルガン将軍のハルバートを粉々にした。
「ぬうううんっ」
それと同時に限界を超えた模擬刀も自壊した。無手となったレオンは隙ができたモルガン将軍に更なる技を繰り出す。
【外力系衝剄の変化、剛力徹破・咬牙】
本来は外側からの衝剄と徹し剄による内外同時破壊の技だが、今回は衝剄のみの打撃。ルッケンス武門の技だがグレンダンで見様見真似で習得した。
その拳はモルガン将軍に届き、衝撃は背中を突き抜けた――。
「優勝は!なんと最年少のレオン・ブライトだあああああああ!!!!!!」
わあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!
最大の歓声がレオンを迎えた。
そして表彰式が終わり廊下に出ると例の如く記者たちの質問攻め、観客にもみくちゃにされながらもレオン一行は闘技場を後にした。
――この日レオンはグランセル武闘大会の最年少記録を塗り替え、《天剣》と呼ばれるようになる…。この二つ名がグレンダンの天剣授受者と被ってしまい、レオンが苦笑いしたのは余談である。
ようやく、ゲームの始まりが書けそうです。
一気に書いたのでミスがあるかもしれません。
その時は教えてくださるとうれしいです。