第二話です。
「パーゼル農園の魔獣退治をしてもらいたいのよ」
カシウスがギルドから調査の依頼を受け王都に飛び立ったすぐ、カシウスが以前から頼まれていた依頼をレオンたち三人が引き受けることとなった。
「ティオの農園そんなことになってたんだ…」
「怪我人がでてなくて良かったよ」
ブライト家は何かとパーゼル農園の方々には日頃から世話になっている。特にティオは三人の幼馴染であり、魔獣被害に合っていたと知った三人は不安になった。
アイナから依頼を受けすぐに農園へと向かう。町を出れば魔獣がウヨウヨしているのだが、道を外れなければそう襲われることはない。なぜなら、遊歩道に定期的に配置された街道灯が歩道の真ん中を歩く旅人の姿を魔獣から認識し辛くしているからだ。
時折訓練もかねて魔獣と闘うのだが、このあたりの敵は弱いため、レオンはともかくエステルとヨシュアが手こずることはない。ただし、手配魔獣クラスとなると話は別だが…。
ヴェルテ橋の関所とロレント市を結ぶミルヒ街道から南へ進み、三人はパーゼル農園へとたどり着いた。
~パーゼル農園~
「はぁ~、いつ来てものどかな場所よね~。魔獣に襲われてるなんて信じられないけど…」
「確かにそれらしい気配はないね…、まずは事情を聴いてみよう」
人参やキャベツ、様々な野菜を育てているパーゼル農園はロレントだけでなく、ボース地方や王都にまで出荷している。無農薬野菜として丁寧な仕事で育てられた野菜は非常に美味で、『居酒屋アーベント』のように直接農園と契約して野菜を仕入れている飲食業者は多いと聞く。多くの野菜を目にしながら、一行はティオの自宅へ歩いていく。
「あ、レオン兄ちゃんとヨシュア兄ちゃんだ。やった!遊びに来てくれたの?」
「ごめんね、今日は仕事できたんだ」
子供たちに断りを入れつつ依頼人を探す。すると少し離れたところで彼女を見つけた。
「久しぶりだね、ティオ」
「レオンにエステル…、それにヨシュアまで…。遊びに来たの?」
先ほどのウィルと同じことを聞かれながら、遊撃士として依頼を受けたことを説明した。魔獣被害のせいか目の下にはクマができており、普段から素朴で明るいティオも疲れているように見受けられた。
家の中に入ると、パーゼル農園の主人であるフランツ、妻のハンナが休んでおり、カシウスから依頼を引き受けたことを説明するのだった。
「でも、君らに怪我をさせるわけには…」
小さいころから彼らを見てきた夫婦にとって、魔獣を相手にさせるのは気が引けた。
「これでも遊撃士になったんだし、大丈夫よ」
「ギルドから許可も得ています。どうか任せてもらえませんか?」
三人の決意を無駄にするわけにもいかず、フランツは任せることにした。魔獣の特徴を聞くとどうやら夜に出るらしく、しかも素早いとの事。
「野菜を荒らす魔獣っていうのは夜行性が多いって聞くし、夜まで待とうか」
「ああ、夜になるまでゆっくりと寛いでほしい」
「もちろん、三人とも夕飯に付き合ってくれるんだろう?」
「やった!ハンナおばさんの料理っておいしいから楽しみー」
「嬉しいこと言ってくれるじゃないか。」
こうして三人はハンナの料理に舌鼓を打ちながら、夜を迎えたのであった。
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「はぁ、おいしかったなあ」
「お母さんお客さんが来ると張り切っちゃうから、でもレオンとヨシュアには悪いことしたなぁ…。チビたちの相手をさせて」
「レオン兄とヨシュアって子供に好かれるのよねー」
「面倒見もいいし、容姿端麗で性格もよし。女の子がほっとくはずないよね~♡」
「…二人ってそんなモテるの?」
「何を今更…、交際を申し込んだのは一人や二人ってわけじゃないわよ?」
そういった恋愛話を一言も話さないヨシュアに対してエステルは不満気だ。
「レオンはともかくヨシュアはねぇ、異性に相談することじゃないし…、しかもエステルなら尚更よね…」
「え?なんで?」
そこから先を聞こうとするエステルだったが、丁度部屋がノックされ、ひとまず二人のお話は終わった。見回りのため部屋を出ていくエステル…。
(ヨシュアも苦労するわね)
鈍感なエステルに対し、ティオ溜息をつくのだった――。
皆が寝静まった頃、三人は動き出した。見回り中に魔獣を発見し、三人で追い詰めていく。
“畑あらし”
かわいい外見と鳴き声とは裏腹に、畑を荒らしまくる困った魔獣である。すばしっこいものの、三人の相手ではなくすぐに戦闘は終了した。倒した魔獣を一か所に集めフランツに報告する。
「いやはや、さすがは遊撃士だ」
「でも、この魔獣たちどうしよう?…退治しないとダメかな?」
悩むエステルにヨシュアは退治すべきだと主張する。人を守るのが遊撃士の務め、被害が出からでは遅いのだと。
未だ悩むエステルに答えを出したのは、ティオ達だった。
「被害が出たのは家だけなんだし、見逃してあげない?」
パーゼル農園の全員が見逃してあげたいという主張した。
「なら僕に任せて」
レオンは魔獣の前に立ち…
「かあっ!!」
一際巨大な声がレオンと魔獣に合った空間を支配し、爆発した。
【内力系活剄の変化、戦声】
溜めこんだ呼気に剄を乗せ、レオンは声を放つ。
痛めつけられた上に脅しまで受けた魔獣は、我先にと暗闇に消えていき、パーゼル農園を苦しめていた問題はひとまずの終わりを迎えたのであった――。
「そう、魔獣を見逃したのね。でも守り方は人それぞれ…。それを見極めるのもあなたたちの仕事よ」
「ほわー、一流への道は遠いわね…」
「…そうだね」
正直な話、あの時点でのレオンはヨシュアの考えに傾いていた。レオンの世界では敵を見逃すなんてことは有り得ないからだ。汚染獣を見逃す、それはすなわち都市の崩壊を意味する。殺さなければこっちが死ぬ。10年こちらの世界で過ごしたが、小さいころに根付いた部分はなかなか変わらない。
ヨシュアも今の言葉でいろいろと考えているようだ。
「ともかくこれで依頼は完了ね、他にもあるからどんどんやりなさい」
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依頼の多さからレオン一人と、エステル・ヨシュアと別れて行動することになり、二人はクラウス市長の依頼をレオンは手配魔獣と捜索の依頼を引き受けた。
エステルとヨシュアは問題もあったようだが、二人で切り抜けレオンも危なげなく依頼を完了させた。効率良く終わらせた三人は再び行動を共にするのだった。
「今回の依頼人は…あの人だな」
『居酒屋アーベント』に依頼人がいると聞き、店内を探索するまでもなく、リベール通信の記者を発見した。
「あん?なんだお前さんたちは?」
ナイアルと名乗る記者に事情を説明する。しかし、今回の依頼にカシウスが関わらないと知るや否やガッカリされた。
「せっかく噂の遊撃士に取材してやろうと思ったのに。当てが外れちまったじゃねえか!」
「まあまあ、私たちがしっかりと代わりを務めさせてもらうから♪」
エステルは特に気にした風もなく、ナイアルに答える。
「まじかよ、しゃあねえk…」
しぶしぶといった感じで承諾しようとしたところ、ナイアルの目にある人物が止まった。
「お、お前さんは…レオン・ブライトか!?」
肩をガッチリ掴まれ至近距離で大声を聞いてしまったレオンは思わず顔を顰めた。だがナイアルはなおも興奮した様子で続ける。
「ちょっと!いきなりどうしたのよ!?」
「ばかやろう、これが興奮せずにいられるか!《天剣》レオン・ブライト。7年前の大会を見たが、あれほど感動したことはねえ!俺に武芸の素養はないが、それでもあの凄まじさは万人に理解できるものと確信できるぜ!」
10歳になったばかりの子供が大の大人を次々と倒していったのだ。
「あの時の記事はすげー売れたぜ、問い合わせも多くてなぁ。そうか、お前さんも遊撃士になったのか…。カシウスは見れなかったがこれでチャラにできそうだなぁ」
「レオン兄ばっかりずるい!」
興奮しているナイアルに、拗ねるエステル、ヨシュアは苦笑いしているだけで助ける気はないらしい…。
先が思いやられるレオンであった。
ナイアルの興奮が書きたかった(笑)
原作でカリアンがレイフォンに対して思ったことと同じです。
確かに子供が次々に大人を倒したら驚きますもんね。