魔法少女リリカルなのは~優しい嘘~   作:アマネ・リィラ

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第二十四章〝開戦、更なる局面へ〟

 

 戦いはここに始まる。

 饗宴は狂宴となり、世界を喰らい尽くす。

 

 もし、戦いが正義だというのなら。

 証明して欲しい。

 その価値を。

 意味を。

 

 そして。

 

 世界となりしキミに、見せて欲しい。

 

 絶望と戦い、傷つきながら、しかし、それでも見つけられるのかを。

 

 希望を。

 人はまだ、希望を見ることができるのかを。

 

 キミに、激励を贈る。

 

 

 ……光あれ。

 

 

 

 

 

 

 ――――◇ ◇ ◇――――

 

 

 

 

 

 

 ミッドチルダ首都クラナガン。

 その中心に座すのは、一度は破壊され、しかし、本来の姿を取り戻した地上の要――地上本部。

 その一角にある模擬戦ルームで、ソラ・ウィンガードは荒い息を吐きながら仰向けに倒れていた。そんなソラに、彼の模擬戦の相手だったファイム・ララウェイが声をかける。

 

「大丈夫、ソラ?」

『大丈夫ですか?』

 

 ファイムとユニゾンした状態のミリアムも、重ねて問いかける。ソラはそんな二人に対して苦笑を返した。

 

「大丈夫ですよ~……いやぁ、いい勉強になりました」

 

 疲れの色は濃いが、ソラの口調は明るい。何かを掴んだのだろう。

 ここ数日、ソラは様々な魔導師に模擬戦を申し込んでいた。

 なのは、フェイト、シグナム、ヴィータ……誰もが、一流と認める魔導師に。

 そして今日、ファイムもミリアムとのユニゾンや、それとは別に確かめたいことがあってソラと一騎打ちをした。

 結果は――ファイムの勝利。

 

「あんな戦い方も……あるんですね」

「兵法の基本だよ」

 

 ソラの言葉に、ファイムは苦笑しつつ応じる。やったことは、そう難しいことではない。

 ただ単に、開始直後にフルドライブとブラスターシステムを起動。ソラが本来の力を出す前に、全力でファイムの最大魔法『バーストストーム』を叩き込んだ――それだけだ。

 本来のソラの実力なら防ぐことができるはずの一撃だ。だが、オープニングで気持ちも何も乗っていない状況では防ぐことは不可能。魔力を練るにも時間がかかる。

 

「戦いにおいて理想的なのは、奥の手をいくつも用意することじゃない。相手が力を出す前にノックアウトさせるのが一番だよ」

「あはは……勉強になります。それやられると、俺はキツいなぁ……」

 

 上半身を起こし、座り込みながらソラは苦笑する。ファイムの言葉は真理だ。戦い方における一種の答えでもある。

 奥の手を打ち破るのではなく、奥の手を出される前に叩き潰す。

 あまりにも、理想的だ。

 ただ。

 

「あくまで、それができる場合に限られますが」

 

 ファイムとのユニゾンを解きながら、ミリアムが言う。ファイムは頷いた。

 

「そうだね。例えば……なのはさんには通用しないだろうね。あの人は、僕と同じ戦い方をするから」

「あー、確かに。本気になるの早いですよね」

「教導の時はそうでもないけどね」

 

 ファイムは言う。高町なのは。『エース・オブ・エース』たる彼女は、『全力全開』を信条とするためか出し惜しみというものをしない。

 だからこそ常に限界を超え続け、そして、奇跡を起こしてきた。

 自分自身を、犠牲にして。

 そんなファイムの言葉を聞きながらソラは立ち上がり、苦笑じみた笑みを零す。

 

「……やっぱり、色々と不便ですね。いきなり本気が出せないのは」

 

 出せない、ではなく出し方がわからない、なのだが、今の時点では結局同じことだ。

 

「やっぱりあれです。これが、『手抜き』をしてきたわたしのツケなんでしょうね」

 

 常に余裕を、という言葉を実践するために全力を出すことを拒み、それ故にいつの間にか『全力を忘れてしまった』少年、ソラ・ウィンガード。

 だから彼は、思い出そうととしている。

 何も知らなかった幼少期は出せた『本気』を、出すために。

 ファイムはそんなソラを優しげな表情で見ながら、だけど、と言葉を紡いだ。

 

「かもしれないけど、それは良いこととは限らないよ」

「……そう、ですね」

 

 ファイムの言葉に、ミリアムは頷く。ファイムとユニゾンした彼女は、理解しているのだ。

 ファイム・ララウェイが、一体どのような状態にあるのかを。

 

「常に全力というのは、要するに『後がない』ってことだよ。勝てればいいけど、負ければそこで終わり。余裕なんて、欠片もない」

「いや、まあ、そうかもしれないですけど」

「だからね、僕は僕のスタイルを強制しない。してはいけないんだ」

 

 限界を出し、通じなければ限界突破の術式を使う。

 それは、言い換えれば。

『オリヴェント式』など使わなくとも、命を使うことになる。

 それに、そもそも魔法とは――

 

「……ねぇ、ソラ。ソラは、『魔力』って何なのか、考えたことある?」

「え?」

「いや……ごめん、変なことを聞いたね」

 

 ファイムは首を左右に振る。それは、触れてはならぬ部分。

 管理局が隠し続けてきた、秘密。

『オリヴェント式』という、命を使う術式を使うファイムだからこそ気付けた事実。

 管理局を否定し、魔導をも否定する秘密。

 まあ、だからどうというわけでもないのだが。

 結局、魔導だろうと質量兵器であろうと力は力だ。どちらを使おうとリスクはあり、危険もある。

 ただ、それだけのことなのだから。

 

「じゃあ、僕はこれで。ソラも、あんまり長居しないようにね」

「あはは、教導もありますんで、大丈夫ですよ~」

 

 笑いながらソラは言い、ファイムは立ち去る。そうしながら、ファイムはミリアムに言葉を紡いだ。

 

「ミリアム。僕の体のことだけど、他言無用だよ」

「……はい」

 

 ミリアムは頷く。だが、彼女とて全てがわかっているわけではない。

 わかるのはただファイムの体が実はもう限界で、何らかの方法で現状維持のまま固定している、ということくらいだ。

 まさかそれが『世界と契約する』などという途方もない行為によって成立しているなどと、誰が気付こうか。

 そして。

 今のファイムは、実はもう戦える体ではないということも。

 

「それじゃあ、ミリアム。僕は提出しなくちゃいけない資料が――」

 

 

 ――――!!

 

 

 耳を切り裂くような警報。ファイムは、言葉を止める。

 これが意味することは、一つだ。

 ……敵襲。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 八神はやては、迷っていた。

 テンリュウ・シンドウ。敵として立ちはだかる、最強の存在。

 彼女は、確かに口にした。

 

『ファイムは限界だ』

 

 その、抗いようのない事実を。

 大丈夫だと思っていた自分が、恨めしい。

 なんと、楽天的か。

 わかっていたはずなのに。

 ファイムがもう、限界だということは。

 

「…………ッ」

 

 はやては、胸元で煌めく十字架のネックレスを握り締める。

 ファイムに贈られた、祈りの品を。

 どうすれば良いのか。

 戦うことを決めて、彼はそれについてきてくれた。

 だけど。

 戦いは、彼を蝕んでいく。

 

 戦わせない?

 ……無理だ。

 

 彼に戦うなと言ったところで、彼は聞かないだろう。

 それが、ファイム・ララウェイという青年なのだから。

 迷いは深くなっていく。

 もしもが、脳裏を過ぎる。

 もしも、あの時。

 選択肢を与えられたあの時に、戦わないことを選んでいれば。

 そうしていれば、戦う必要はなかったのだろうか?

 いや、それは違う。

 戦わない道を選べば、八神はやては自分を許さなくなる。

 それは、ダメだ。

 それは、自分も彼も許さない。

 だって。

 彼があんなになってまで自分にくれたのは、『選び直す機会』。

 幸福に至る道を、探し当てることだったのだから。

 ――そして、選んだ道は間違っていない。

 ここで、八神はやては様々なものに出会ってきた。

 辛く、悲しく、苦しい中で。

 幸福を、掴んできたのだ。

 だから。

 間違っていない、はずだ。

 ――しかし。

 間違っていないなら。

 彼の死は、必然だったのかもしれない。

 ……そんなことを思ってしまう自分は、何なのだろう。

 八神はやては。

 どうしたらいいのだろう?

 

「…………」

 

 沈黙が世界を支配する。

 

 ……しばらくして、

 

 ――警報が、鳴り響いた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 空に浮かぶは、次元航行艦。

 以前吹き飛んだ『アンチテーゼ』の代わりに裏ルートから手に入れた、元は管理局の艦だ。

 管理局で製造された戦艦ががこうして堂々と敵対を示す集団の手に渡るのだから、世界はやはりどうかしているのだろう。

 自ら滅びへと歩を進め。

 一体どこを、目指すというのか?

 

「さて、諸君。この日は、この時は、この瞬間は。後に歴史に刻まれる」

 

 わざわざ用意された、玉座の間。そこに座すのは、『聖人』の名を継ぐ少女。

 だが、語り部は彼女に非ず。

 語り部は、狂気を纏いし破壊のメシア。

 

「今後一年、今日この日は『厄災の日』として語られるであろう。しかし、その後永劫に渡り、人類は今日という日を『救世の日』として語り継ぐ!」

 

 両手を広げ、クライムは語る。

 仰々しく。

 物言わぬ機人たちに。

 彼の戦いに力を貸す、同志たちに。

 

「停滞とは終焉である! 人は安寧と引き換えに進歩を諦めた! 仮初めの欺瞞に満ちた平穏に身を委ねた! それは正しいのか!? 否! 断じて否である!」

 

 管理局――その名の通りの『管理』という、平穏と停滞を、彼は否定する。

 何故ならば。

 停滞の先にあるのは、滅びであるからだ。

 

「ただ生きるだけならば動物として生まれれば良い! 野山を駆け、大海を生き、大空を舞えば良い! だが、我らは人間だ! 知恵を持つ、万物の霊長! その我らが進歩を諦めれば、その先に望むのは何たるか!?」

 

 この演説は、どこまで行こうと一人の価値観に終止する。

 しかし、それを聞く者が。

 それを認める者が、確かにいるのだ。

 現に。

 彼に賛同せし世界に牙を剥く者たちは、彼の言葉に耳を傾けている。

 それは事実であり。

 それだけが、真実だった。

 

「我らは知恵を持つ獣だ。故に、義務を有する」

 

 一転、静かな口調でクライムは語る。

 

「それは、進歩し続けること。歩み続けること。我は現状に満足できぬ生き物だ。『アンリミテッド・デザイア』……それは個人を示す名前ではなく、人類が抱える本能である」

 

 もっと、もっと。

 少しでも。僅かでも。

 人は、そうやって発展してきた。

 だから。

 

「それを否定した先は滅びしかない。だというのに、管理局は人の在り方を否定する。滅びを望む。その先には、未来などありはしないというのに。なればこそ、我らが立ち上がらねばならない。だが、僅かな方法では最早変えられん。故にここに、私は謡おう」

 

 クライムは、天を仰いだ。

 

「闘争を。闘争を。闘争を。闘争を!」

 

 狂ったように、彼は叫ぶ。

 

「争いは全を奪い、全を生み出す! 闘争とは人類の本質であり! 破壊であり! 創造である! 我々は、世界を救う! 滅びなど認めない!」

 

 バサッ、という音と共にマントをはためかせ、クライムは謡った。

 彼の言葉は真実であり、事実であり、虚偽である。

 だが、そんなことは些末な話だ。

 ただ、戦争を望む。

 彼が謡うのは、それだけなのだから。

 

「さあ、立ち上がれ! 私は知っている! 諸君たちが勇猛なる勇士であることを! 数多積み重ねられる屍の上に佇むべき、無双たる英雄だと!」

 

 機人たちが、武器を取る。クライムは、宣言した。

 

「――開戦だ! 地獄を! 煉獄を!」

 

 そうして笑うクライム。そのクライムに、グリスが確認、とばかりに言葉を紡いだ。

 

「じゃ、宗主。目標確認だよん?」

「最終目標は、地上本部の壊滅やったな?」

「ああ。それでいい。派手にやってくれ」

「首都記念公園は~?」

「目障りだ。粉砕したまえ。欠片も残すな」

「三提督記念館は?」

「鬱陶しい偽善の館だ。吹き飛ばすといい」

「次元同盟記念碑は?」

「砕け。倒せ」

「パシフィックドームは?」

「邪魔だ。解体せよ」

「魔導師は?」

「向かってくるなら殺せ」

「一般市民は?」

「逃げるようなら殺せ。否定するなら殺せ。慈悲など必要ない」

 

 矢継ぎ早の質問に、クライムは全て簡潔に答える。質問者であるグリスは、壮絶な笑みを浮かべた。

 そして、クライムはなに、と言葉を紡ぐ。

 

「難しく考える必要はない。見敵必殺、サーチ・アンド・デストロイ。人類のあるべき姿への回帰、その名誉ある犠牲だ。躊躇いはここに置いていきたまえ」

 

 そして。

 戦いが、始まる。

 

「……第一降下部隊が、市街地に到達したようやな」

 

 ホムラが呟く。先鋒を務めるのは、『最強』の侍と『氷姫』の騎士。

 それぞれ違う場所に降り立った二人は、二百人からなる戦闘機人を引き連れ、戦場を蹂躙する。

 

「見事だ。さあ、行きたまえ戦士たちよ。戦場がキミたちを待っている」

 

 戦いが始まる。

 理不尽で、残酷な……悲しい戦いが。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 旅団構成員にかけられた、緊急召集。

 それぞれの隊長の指揮の下、市民の避難や敵軍の対応に当てられる。

 しかし、突然の奇襲である以上、すぐに対応できるわけではない。

 ならば、どうするか?

 ――部下を持たぬ隊長が、出ればいい。

 旅団には、八神はやてより独自の行動が許される隊長が二人いる。

 その二人が、誰に言われたわけでもなく……時間を稼ぐ。

 

「いくよ。ミリアム、リンネ」

「はい」

《はい》

 

 二人が応じ、ファイムは走りながら自身のデバイスを掲げる。

 ファイムが手にした、新たなる姿に至るために。

 

「リンネクロウズ・ナイトメア。セットアップ!」

《Yes,set up》

 

 ファイムがバリアジャケットを纏う。堕天の翼を纏い、夜天の杖を手にした姿に。

 そして。

 

「「ユニゾン・イン!!」」

 

 ミリアムとのユニゾン。黒髪が透き通るような翡翠の色に変わり、その瞳は夜の輝きを強くする。

 堕天使の如き翼を背負いながら、しかし、その衣装は騎士の如く澄んでいる。

『悪』たる堕天使と。

『正義』たる騎士。

 相反し、相容れぬそれを纏うその姿は歪であり、しかし、美しい。

 それは、あるいは。

『矛盾』という、何よりも人間らしいものを携えているからかもしれなかった。

 

「…………!」

 

 地面を蹴り飛ばし、ファイムは空を駆ける。翼をはためかせ、望むのは百を超える戦闘機人の軍勢。

だが、ここで問題が一つ。

 

(敵は二手……どうする?)

 

 敵は二手に分かれている。時間稼ぎをするなら、両方を足止めせねば意味がない。

 だが生憎と、百単位の敵の塊を二つも同時に足止めするような力をファイムは持ち合わせていない。

 ならば、どうするか。

 その迷いは、すぐに消え去ることになる。

 

『ファイムさん!』

「あれは……!」

 

 ファイムの目に入ったのは、空を飛行する、『エース・オブ・エース』の姿。

 その人物はこちらに視線を向けると、静かに微笑んだ。その笑顔から意図を悟る。

 ファイムは頷くと、眼前に意識を集中する。そして。

 

「フルドライブ!!」

「イクシード・ドライブ!!」

 

 二人の『エース』は、己の体に更なる負担を強要し、そして、力を紡ぐ。

 

「一点突破! ウインド――」

「全力全開! エクセリオン――」

 

 翡翠の光と、桜色の光が空に瞬く。

 放たれるは、開戦の合図。

 

「「バスターッ!!」」

 

 放たれた砲撃は、狙い違わず敵を飲み込んだ。

 しかし。

 安堵は、早い。

 

「――――!!」

 

 煌めいたのは、紅の一閃。咄嗟に盾にしたはやてと同型、同名の杖『シュベルトクロイツ』が軋み、悲鳴を上げる。

 伝わる振動で、腕が痺れた。

 

『ファイムさん!』

《マスター! 『彼女』です!》

「…………」

 

 杖を構え直し、ファイムは油断なく前を見据える。

 煙の中から、無事にやり過ごしたのであろう戦闘機人たちが次々と降下していく。

 無視はできない。しかし、無視するしかない。

 何故なら――

 

「……以前、あなたにはこう言いましたね」

 

 まるで散歩でもするかのような軽い足取りで。

 しかし、欠片の油断もない足取りで、その人物は空を歩んできた。

 

「『殺し合いましょう』――と」

 

 戦装束に身を包み。右手に薙刀を、左手に刀を携えた侍がこちらを見据える。

 

「こうして私の眼前に立つということは……是非もない、と受け取っても良いということですね?」

 

 口調こそ問いかけであったが、そこに『問いかけ』などという優しさはなかった。

 あるのは、ただ、詰問。

 何故。

 刃のようなその問いかけが、突きつけられる。

 

「……何故、私の眼前に立ったのです?」

 

 テンリュウは、純粋なる問いかけをファイムに叩きつけた。

 

「あなたが私に勝てるとでもお思いですか?」

「負けると断じて立つ人はいない」

 

 ファイムは言い切った。そして、魔力を纏う。

 その姿を見たテンリュウは、あなたは、と言葉を紡いだ。

 

「あなたまで。あなたまでもが『化け物』になったのですか。何故です、何故」

 

 その言葉は静かなようで、荒々しい。

 

「私のようになど。私のようになどなってはならなかったのです。人を捨てねばならないような。そうしなければならなかったほど弱かった私などには」

 

 テンリュウは、その瞳に必死ささえ滲ませながら言葉を紡ぐ。

 

「今ならまだ戻れるはずです。やめなさい。世界の奴隷になど。人を捨てるなど。そんなものは、望むべきではない」

「…………」

「私のような怪物は、人間に殺されなければならない。怪物に殺されてはならない」

 

 いつの時代も。

 どんな戦いでも。

 怪物を倒すのは、人間なのだから。

 ファイムは、僕は、と言葉を紡ぐ。

 

「僕は強くなりたかった。強くありたかった。強くあろうとした。強さを、生まれる前から望まれていた」

 

 人造魔導師とは、そういう存在だ。

 力を望まれ、戦う存在。

 ただ、自分は失敗だったのだが。

 

「力さえ、と何度も叫んだ。世界を呪いさえした。自分の弱さを認め、それでも戦う? ただ、諦めただけだ」

 

 いや、受け入れた、というべきか。

 ファイム・ララウェイは、自身の限界を受け入れた。

 だからこそ。

 だからこそ、こんな風になっている。

 この様に。

 

「でも、諦めきれなかったんだ。強くなることを。強くあることを。だから、こうしている」

 

 力を望んだその果てに。

 こうして、歪みの極地にきた。

 怪物の、領域に。

 ――しかし。

 

「ここが僕の果てだ。あなたを倒さなければ、僕は大切な人を守れない」

「……そのために、人であることを捨てたというのですか」

「いいや。捨ててなど、いない」

 

 ファイムは、否定する。

 敵であっても。

 味方であっても。

 彼自身でさえ、認める事実を。

 ファイム・ララウェイは、人を捨てたということを。

 他ならぬ彼が。

 ――否定する。

 

「この右腕と、右足と、右の瞳は人類の刃だ。この身に飲み込んだ力は、人類の叡智だ。纏うのは、人類の盾だ。共に戦うのは、人類の友だ。そして……この身は、人類の夢、その残骸と、人類の夢が紡いだ魔法の果て」

 

 右半身に宿るのは、戦闘機人の手足と瞳。

 飲み込んだのは、夢を叶えるロストロギア『ジュエルシード』。

 纏うのは、人類が生み出した魔導師の盾、リンネクロウズというデバイス。

 共に戦うのは、人類が紡いだ『緑風の紡ぎ手』と呼ばれる、ミリアムという名のユニゾンデバイス。

 そして、その肉体は。

 人類が夢見た神の真似事にして。

 人類が紡ぎ上げた、世界と繋がる魔法の果て。

 だから。

 だからこそ――

 

「僕の全ては人の力で構成されている。僕は怪物でも化け物でも異物でもない。僕は、『人間』だ」

 

 その嘘を。

 ファイム・ララウェイは、その身に纏う。

 

「人間を人間たらしめるのは、その心の在り方だ」

 

 ファイムはテンリュウに杖を向け、宣言する。

 

「あなたは自身を否定した。だけど僕は、僕自身を否定しない。あなたは僕が倒す。……怪物を倒すのは、いつだって人間だから」

 

 テンリュウは、成程、とため息のように呟く。

 そして。

 あまりにも冷たい目で、ファイムを見据えた。

 

「ならば問います。あなたの勝機は? 億分の一? 兆分の一? 果たしてどれだけの可能性が?」

「……たとえ無に等しくとも、僕には十分です」

 

 ファイムは、覚悟を決める。

 

「奇跡を起こすのが、『エース』と呼ばれる僕の義務だ!」

 

 そうして。

 絶望が、幕を上げる。

 あまりにも深く、無慈悲で、圧倒的なものが。

 人が抗ってはいけないものが。

 その力を、開放する。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 高町なのはの眼前に現れたのは、蒼き騎士だった。

 ――エリア・カリア。

『氷姫』と呼ばれ、かつての『エース・オブ・エース』と肩を並べたとされる、歴戦の騎士。

 言葉はない。なのはは戦おうとデバイスを握る手に力を込める。

 だが。

 

「むっ!」

 

 駆け抜けてきた山吹色の閃光にエリアが反応し、砲撃を障壁で受け止める。

 その彼女の背後に、蒼く輝く軌跡が描かれる。

 ウイングロード。その上を走るのは、ギンガ・ナカジマ。

 

「はああっ!」

 

 振り抜かれた拳は、エリアに受け止められる。ギンガは素早く飛び退くと、エリアから距離を取った。

 そして、その反対側になのはにとっては後輩である人物が舞い降りる。

 陽光纏うその魔導師の名は、ソラ・ウィンガード。

 

「お前たちは……」

 

 エリアが眉をひそめる。ソラは、高町隊長、と言葉を紡いだ。

 

「ここは引き受けます。行ってください」

「ソラくん?」

「敵の本丸を落とせば、まあ、敵も止まるでしょう。お願いします」

 

 頭を掻きつつ、ソラは言う。面倒臭そうに。

 

「わたしが行ったところで、大したことはできませんしね。隊長、行ってください」

 

 ソラはなのはの方を見ない。見れやしない。

 目を離せば――死ぬ。

 

「でも……」

 

 なのはは逡巡する。ソラに任せても良いのかを。

 相手が相手。ソラでは荷が重いとは誰もが思うところだ。相手はかつての『エース・オブ・エース』と並ぶような実力者なのだから。

 しかし、ソラはもう一度、行け、と口にする。

 

「敵の本丸に突っ込んでどうにかできるような人は、あなた以外にいません。……それに、何というか。あの人とは個人的に少しありましてね」

 

 口調は変わらず、不遜。

 だが、込められた意志は真実だった。

 なのはは、ソラとエリア、そしてギンガを見回す。優しい彼女だからこその迷い。しかしなのはは、それを振り切った。

 

「……わかった。ソラくん、ギンガ。任せるよ。あと、私の呼び方はなのはさん、ね?」

「――了解」

 

 ソラが応じると同時に、なのはが空を駆け上がる。阻止せんとエリアが動くが、それをギンガが阻んだ。

 火花が、空を彩る。

 

「行かせない!」

「……ふん」

 

 双剣を振るい、エリアはギンガを弾く。なのはが最早追いつけぬ場所まで飛翔し、エリアはそれを確認するように一度だけ視線をそちらに向け、再びソラとギンガを見据えた。

 

「お前たちが相手か。自身の力量さえ見極めずに、刃を握るな。覚悟さえ定まらぬ未熟者が我が眼前に立つなど、片腹痛いにも程があるぞ。身の程を知れ」

「……覚悟なら、ありますよ」

 

 ソラは、『マジックモード』によって杖の形態を取っている自身のデバイス『ヴィクトリア』をエリアに向け、言葉を紡いでいく。

 

「教会で過ごした俺は、あなたの名前を何度も何度も聞いてきた。まあ、それだけですけど」

 

 ヒュンヒュンという音を響かせながら、ソラは杖を回す。

 ――かつていたという、最強の騎士。

 何度も何度も聞いたその人を思い描き、理想にしていた。

 その人が管理局からも聖王教会からも離反したと後に聞かされても、数々の武勇伝は色褪せなかった。

 ただ。

 管理局に入って、あまりにも理不尽な世界を目にして。

 最強の騎士でさえ抗えなかったのかと、絶望した。

 ――それだけの縁だ。

 ただ、それだけの。

 夢見たものは腐り切った権力にさえ勝てないものだったという、脆く儚い夢の終わり。その瞬間、それを目の当たりにしただけだ。

 

「勝手に憧れて、勝手に失望したんだ。だから、あなたには関係ない。ただ、何というか。これが俺の仕事なんで」

 

 だから。

 今、こうして戦うのは別の理由。

 

「管理局がどうなろうと知ったことじゃないし。滅びんなら滅びればいいとさえ思うけど。……この街が消えんのは、流石に困るんだよ」

「ソラ……」

 

 ギンガが呟きを漏らす。ソラは、普段の彼が決して見せない苛烈な表情で、言葉を紡いだ。

 

「戦うんなら勝手にやれよ。他人巻き込むなよ。俺の日常に、何の権利があって干渉してんだよ」

 

 空気が固まる。エリアは、ふん、と言葉を漏らした。

 

「変革とはそういうものだ。後の時代に英雄と謳われる者は数多の犠牲を築いた存在だ。そのための礎として数多の墓標が建てられるのは世界の道理。……若いな、それすらもわからないか」

「若くて結構。無鉄砲でいられんのは、若い間だけだ」

(Dust to Dust)

 

 ヴィクトリアが、魔法を紡ぐ。

 ソラの魔力変換資質『水冷』……魔力を水に変える力を用いて生み出される、霧の結界だ。

 それは敵を閉じ込める、迷いの霧。

 ただの霧ではなく、魔力が込められた霧であるそれは閉じ込められた者の方向感覚を狂わせ、結果、出られなくする。

 

「ダスト・トゥ・ダスト。霧に帰れ」

「……良いだろう」

 

 直感で出られないと感じたのだろう。エリアは双頭の剣を構えた。

 そして、ソラとギンガに問いかける。

 

「私は先代聖王騎士団筆頭、エリア・カリア。お前たちがただの雑兵であるなら退け。時間の無駄だ」

 

 凛とした声色だった。二人は息を吸い、応じる。

 

「第108魔導旅団第一連隊隊員、ギンガ・ナカジマ。階級は三等陸尉」

「第108魔導旅団魔導砲兵第三中隊隊長、及び戦技教導官。階級は三等空尉」

 

 エリアは、そうか、と二人の名乗りに頷き。

 ――空を、舞う。

 

「ならば、相手にとって不足はない!」

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 地上本部司令室。地上本部における最高指揮官が指揮を執るべきその場所は、現在、騒然としていた。

 

「地上中央情報統制本部、通信が途絶えました……!」

 

 地上本部を現在統べているのは、ルドルフ・ゲインブリッジ中将だ。理事会のメンバーでもある。

 ただ、周囲からは常に陰から無能と謗られ続けてきた人物であるが。

 その男に、いくつもの報告が寄せられる。

 

「遺失物管理部機動一課、二課、三課、通信が途絶えました!」

「クラナガンNTB社管制局と通信断絶! 現在首都圏における民間の通信が不通になっています!」

「第一支部連絡がありません! 陸士106、107部隊通信断絶!」

「首都海上防衛艦隊司令部通信断絶! 首都防衛隊本部情報管制部応答ありません!」

 

 ――それは全て、絶望の報告。

 ルドルフは、馬鹿な、と言葉を漏らす。

 

「なんだそれは。戦争でも始まったというのか」

「そうなんでしょうね。戦争が始まったんでしょうよ」

 

 その言葉に、吐き捨てるように応じたのはカグラだった。彼は苛立たしげに、火を点けないタバコを咥える。

 

「何考えてるかは、知りませんが。知ろうと思いませんが。とにかく、始まった――」

 

 ――バァン!

 

 カグラが言い切ると同時に、指令室の扉が乱暴に開け放たれた。見ると、そこには何人もの武装した戦闘機人たちがいる。

 

「何だ貴様ら!」

「おっと、動かないでもらおうかランバード殿」

 

 叫んだルドルフを無視し、部屋にいた局員のうち数名がカグラに銃を突きつけた。掛け値なしの質量兵器である銃を。カグラは鬱陶しそうにその銃口を一瞥すると、ふーん、と呟いた。ルドルフが、貴様、と言葉を紡ぐ。

 

「レイベルン二佐! き、貴様っ! どういうことだこれは!」

「やかましい騒ぐな! 見ての通りだ。管理局などもう必要ないのですよ!」

 

 はっはっは、とレイベルンと呼ばれた男は笑う。

 

「しかし僥倖だ。まさかあのカグラ・ランバードを捕えることができるとはな。これは宗主殿もお喜びになるに違いない」

 

 再び響く笑い声。癇に障るそれが響く中、カグラがはっ、と吐き捨てるように言った。

 

「テメェらは糞みてぇな仁義さえも忘れたようなクソッタレで、質量兵器に頼らなければ何もできねぇようなカスだ。そんな奴らが、この俺を、かつての『エース・オブ・エース』を捕まえるだと? 笑える冗談だよ。あの世で二階級特進でもしてな」

「き、貴様っ!」

 

 早打ちだった。一瞬でデバイスを起動したカグラは、問答無用でレイベルンの腕を撃ち抜いた。そこから更に、銃弾を連射する。

 

「魔導だって人は殺せる。授業料だ。それ持って先に地獄に行ってな」

 

 一瞬だった。

 ほんの一瞬で、戦闘機人たちも裏切り者たちも撃ち殺された。カグラは欠片も減っていないタバコを死体に向かって投げ捨てると、ふん、と鼻を鳴らした。

 

「くだらねぇ。裏切り者にはお似合いだ。……無事ですか、将軍」

「あ、ああ。すまない。助かった」

「俺はあんたが裏切るんじゃねぇかなー、とか思ってたんですけどね」

「……私は無能で臆病者だが、卑怯者ではないよ、カグラ」

 

 グッ、と両手を握り締め、ルドルフは言う。カグラは口笛を吹いた。

 無能と囁かれていることを知ってか、そうでないかはわからないが、無能であることをこの男は認めた。存外、そういう男は珍しい。

 将軍に対する認識を改め、カグラは立ち上がる。

 

「それじゃ、ここから急いで逃げますよ将軍。腹立つ話だが、先手を取られた。ここも攻撃目標でしょうしね」

 

 賛成してくれると思っての提案だった。おっさんの子守は面倒だが、一応上官だ。見捨てるわけにもいかない。

 だが、返ってきた返答は予想外のものだった。

 

「か、カグラ。君は急いで脱出しなさい。き、君には……君には君にしかできない仕事がある。かつての『エース・オブ・エース』たるキミだからこそできることが。わ、私は脱出はできない……逃げることはできない。そ、それだけはできないんだ」

「敵の一団が新たに降下してきます! 数は――四百!」

「敵の規模が連隊規模を超えました! 第108魔導旅団のみでは保ちません!」

 

 矢継ぎ早の報告。絶望の報告。それを聞いてなお、将軍は逃げないと言う。

 

「この状態じゃあここに指揮能力何ざ残ってねぇ。将軍、あんた死ぬ気か」

「も、もしかしたら……もしかしたら、通信が回復して命令が伝達するかもしれない」

 

 ルドルフは、震える口調でそう言葉を紡いだ。

 

「どこかの基地が、部隊が、敵を撃退して我々の指示を待っているかもしれない。私はここの指揮者だ。『ここ』が生きている限り、逃げるわけにはいかんだろう?」

 

 ルドルフは震えている。しかし、その瞳は強い光を宿していた。

 

「カグラ。私は無能だ。どうしようもない男だ。君とは違って、私は何かを成せるような人間ではなく、何も成そうとしてこなかった」

 

 いつしか。

 誰もが、耳を傾けていた。

 

「私は、生まれと与えられた仕事でこの地位にいる。どうしてここにいるかがわからないような無能者だ。与えられた仕事だけをこなしてきた。そして『これ』は、私の『仕事』だ」

 

 怯えながら、震えながら、ルドルフはカグラを見上げる。

 

「私は何も掴もうとしてこなかった。成そうとしてこなかった。……だから、せめて。せめてだ。この仕事は、全うしなければならない、と、思う、ん、だが……」

 

 言葉から自信が消えていく。怖いのだろう。当然だ。

 これから彼は、死を迎えるのだから。

 どれほど上手く立ち回ろうとも。

 それは、真実だから。

 

「行け、行ってくれカグラ。君ならば、世界を救える」

 

 カグラは、コートを翻した。そして、腰に装備していたものを机の上に置く。

 それは……拳銃。

 魔導ではなく、人を殺めるためだけの、鋼鉄の力。

 

「万一ん時のための切り札です。手榴弾も置いていきます。……使うかどうかは、将軍、あんたが決めてくれ」

 

 敬語が消える。

 カグラは、初めて目の前の男を対等と見なした。

 全く、自分も修行が足りない。

 管理局もまだ――捨てたものではないではないか。

 

「色気はねぇけど、これが餞別だ。……武運を、サー・ルドルフ」

「君もな、カグラ」

 

 笑みを交わし合う。そして、ルドルフは他の局員たちへと視線を向けた。

 

「さあ、君たちも脱出するんだ。ここには必要最低限の人員がいればいい。……あ、いや」

 

 折角決まっていたのに、またルドルフは怯えたような調子で言葉を紡ぐ。

 

「も、もういっそ私だけでいいんじゃないかな? 君たちも早く逃げなさいよ」

 

 局員が、動く。

 

「――もう一度、情報統制本部へ連絡を試みます」

 

 なにを、とルドルフは呟いた。カグラは微笑し、他の局員たちも笑い出す。

 

「「「くっ、くくっ、あははっ!」」」

 

 対してルドルフは、震えながら言葉を紡いだ。

 

「な、なにがおかしい。なんだ、笑っている暇なんかないぞ。早く逃げるんだ。命令だぞ」

「被害状況を確認し、再整理しろ。隊を組織し、直接連絡を取りに行け。徒歩ででもだ!」

「なっ、なにを言っとるんだ。逃げろ、早く、逃げるんだ!」

 

 ルドルフは言うが、局員たちは従わない。

 

「首都防衛隊に連絡だ! 生き残っている魔導師たちを集めろ!」

「守備隊を組織しろ! 走れ!」

「出入り口にバリケード構築! 急げ!」

 

 ――ダンッ!

 

 ルドルフは立ち上がり、机を叩いた。そうして、怒鳴る。

 

「なにをしとるんだバカモンっ! こんなことに付き合う必要はない!」

 

 局員たちは顔を見合わせる。誰もが恐怖で僅かに顔を引き攣らせながら。しかし。

 ――それでも、笑っていた。

 

「何を言ってんです、将軍。あなたじゃ、コンソール一つ動かせないでしょ」

「いつも通り座っててくださいよ。『仕事』の邪魔ですから」

 

 それは、彼らの覚悟。

 あまりにも尊く、そして、眩いもの。

 同時に――無能と謗られ続けてきた男が、手にしたものでもあった。

 

「……すまん、皆。すまんな」

 

 ルドルフは座る。いつものように。死を迎えると理解していても、それでも。

 それが彼の、『仕事』だから。

 

「…………」

 

 カグラは何も言わず、その場を去ろうとする。ここに、カグラの仕事はない。

 そんな風に静かに場を立ち去ろうとするその背に、ルドルフが言葉を紡いだ。

 

「カグラ。……私は、未来に何かを紡げたのだろうか」

「繋いださ。俺を通して、あんたの覚悟と決意は未来に繋がる」

 

 ルドルフは、そうか、と頷いた。

 

「若者に何かを繋げるというのは初めての経験だが……いいものだな。実に、いいものだ」

「だろう?」

 

 だから俺は、教導官なんだ――カグラはそう言い残し、その場を立ち去った。そして、携帯端末を取り出す。

 

「指示を出す。いいか、これは至上命令だ。一般人の救助を最優先しろ。守ってこその管理局だ。テメェらが磨いてきた力を見せてみやがれ」

 

 そして、カグラは歩き出す。地上の戦力は奇襲によって壊滅的な打撃を受けた。ただ、八神はやて率いる旅団は無事。そして今、彼らは戦っている。

 おそらくこれは、彼らにとって最初で最後の総力戦だ。勝とうが負けようが、被害は甚大。二度と、今のような形で戦うことはできないだろう。

 しかし――それでいい。

 管理局は刃であり、盾である。

 人を守るために敵に刃を突き刺し、そして盾となって死ぬなら、それが本懐だ。

 

「援軍到着まで、最低でも二時間はかかる。クラナガンは終わりだ。だが……テメェらも終わらせてやる。俺の名に懸けて」

 

 覚悟と決意は、いつだってここにある。

 だから、大丈夫。

 たとえここが――カグラ・ランバードの夢の終わりだったとしても。

 

「――覚悟しろよ」

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