Fate/Grand Order Emiya The Third 作:黒崎士道
第4話 二人の戦闘
『まったく、情けないぞ』
ーー頭の中に誰のかわからない声が聞こえてくる。でも、なんでだろう。すごく懐かしいような、安心する声だ。
『簡単に諦めるなど、それでも衛宮士郎の息子か?』
ーーあんたは父さんを知っているのか?それに、あんたは誰なんだ?
『安心しろ。君とはもうすぐで会える。あとは君が力を望めばーーー』
ーーそして、声はそこで途絶えた。
♦︎
『先輩。起きてください、先輩……起きません。ここは正式な敬称で呼ぶべきでしょうか?』
『フォッ、フォーウ?』
『ーーマスター。マスター、起きてください。起きないと殺しますよ』
ーー闇に落ちていた意識がゆっくりと戻ってくる。その際に、空が最初に感じたのは熱だった。とはいえ、夏の日差しのように低温の遠火でじりじりと焼かれるような感覚ではなく、まるで、炎のように苛烈な肌を焼く熱さだった。
「……ん」
空はゆっくりと目を覚ます。
「よかった。無事で何よりです、先輩」
空はゆっくりと目を覚ます。最初に目に映ったのは躍る炎だった上半身を起き上がらせると、周りは先ほどのカルデアスと変わらない地獄だった。そして視界の中に一人の少女が入った。肩をくすぐる程に伸びたショートボブに穏やかな瞳、先ほどまで重傷を負っていた少女、マシュだ。
「………マ、シュ…?……マシュ!無事だったんだな!それにその姿は……?」
空は改めてマシュの姿を視認すると、その姿は先ほどとはかけ離れたものとなっていた。身には軽装の黒い甲冑を纏い、右手には身の丈より大きい黒い十字盾が持たれていた。
「…………それについては後ほど説明します。それより今は周囲を見渡してください」
マシュの言葉に空も辺りを見回すと、二人の周りには五体ほどの赤い瞳を持つ黒い靄に包まれた異形の獣が空とマシュの二人を取り囲んでいる。異形たちは唸り声をあげこちらにじわじわとにじり寄ってきている。
「ーー言語による意思の疎通は不可能。適性生物と判断します」
マシュはそう呟くと、手にしていた盾を構える。
「マスター、指示を!私と先輩の二人でこの場を乗り切ります!」
「え、ちょっ、指示って何が⁉︎」
空の言葉を待たずにマシュは動いた。それを合図に向こうもがマシュに襲いかかり、走り出す。マシュは口を開いて襲ってきた異形を手にした盾を水平に構え。
「やぁあっ!」
気合の声とともに盾の尖った先端で突き攻撃を放った。巨大な盾が獣に迫り、その頭を吹き飛ばした。残された胴体は数メートルも飛び、周りの獣の一部を巻き込む。
『ーー、ーーー、ーーーーッ!』
そして、それを見た異形どもが何を思ったか一匹の雄叫びとともに群がり始めマシュ取り囲んで来た。そして獣の一匹が正面からマシュに飛びかかる。
「……っ!」
マシュは咄嗟にそれの奇襲を盾で防いだ。
「かーーは……っ⁉︎」
突然、背後から凄まじい勢いで衝撃が走ってきた。空は群れの間から目を凝らして見ると、前の敵に気を取られていたマシュの背後に別の敵が突進を仕掛けた。
「あ……っ!」
それによりマシュはバランスを崩し、そのまま地面に叩きつけられる。それに機に異形たちは次々とマシュに向かって飛びかかり始めた。
「マ、マシュ!」
空は叫ぶと、マシュのもとに駆け寄ろうとしたが、その時偶然にも足に落ちていた鉄パイプが当たった。空はそれを見て鉄パイプを拾い上げると両手で握り魔力を込める。
「ーー
空は目を閉じ、鉄パイプに自分の魔力を流し込む。“強化”の魔術。魔術において基本中の基礎とされるもの。そういう意味ではよく母さんに仕込まれてたものだ。
ーー基本骨子、解明。
ーー構成材質、解明。
ーー構成材質、補強。
強化を終え、目を開くと鉄手にしたパイプには空の魔力が込められ頑丈に、より丈夫な武器となっている。空は武器を手に異形に駆け込むと、助走を付けてパイプを振り下ろす。
「マシュから、離れろ!」
空の奇襲に気づかなかった異形の一体はパイプの一撃で跳ね飛ばされた。最初は驚いていた異形だが、体勢を立て直し空に襲いかかると、反応に遅れた空はそのまま大きく突き飛ばされてしまう。
「い……ぐ、ぅ……」
腹が酷く痛い。呼吸が苦しい。でも、そうしている間に異形たちの中からマシュの苦悶の混じった声が聞こえてくる。
「マシューー!」
空は絶叫を上げた。同時に途方もない無力感が、頭の中を蹂躙した。結局、空はマシュを助けられてない。せめて、あの異形を切り裂いて進める力があれば。
「ーーーーぁ」
何故だろうか。その時、妙な光景が頭をよぎる。荒野に無限に突き刺さる剣の丘に佇む、あの赤い背中。それはこちらを振り向くとその容貌が明らかとなる。褐色の肌、色素のなくなった真っ白な髪を逆立てた男だ。男はこちらを向くと静かに口を開く。
『ーー
無意識のうちに、空の口からも男と同じ言葉が出てきていた。言葉は同じでも、その言葉に込められた意味が違うと感じた。同時に、空は自然と右手を振り上げていた。そして。
「え……?」
呆然と、声を発する。振り上げていた右手を前に下ろした瞬間、目の前に立ちふさがっていた異形の上半身が、綺麗に消え去っていた。空は信じがたいものを見るように、己の両手を見やった。そこには、二振りの黒と白の夫婦剣が、握られていた。
「なんだ……これ…?」
空は突如自分の両手の中に現れた夫婦剣を凝視しながら声を上げた。黒と白のそれぞれ同じ幅の刀身、鍔には白黒の勾玉の装飾が施されている。
「先、輩……?な、何故先輩が……⁉︎」
マシュもまた、驚いた様子で空の方を見てきている。いや、正確には空の剣ではなく、その時の空の装いを見て驚愕しているのだ。空に驚愕しているのは何もマシュだけではない。彼女を取り囲む異形も双剣を手にした空にざわめく。
『ーー、ーー!』
異形は異形どもとなり、未だ呆然としている空ににじり寄ると、群れとなり地を這うように襲い掛かってきた。
「先輩‼︎」
遠くからマシュの声が聞こえる。それとは裏腹に異形たちは甲高い雄叫びをあげながら突っ込んでくる。異形は牙を剥き、爪を振るう。だが、
「ーー見えるッ!」
空にはその動きが遅く見えた。振るわれた爪を打ち払うつもりで右手の白い剣を振るうと、異形の爪は弾くどころか五指ごと切り払い左手の黒い剣で頭を穿つ。
「は、あああ!」
続いて背後からの奇襲を防ぐと、両手の夫婦剣で二閃。そしてまだ残る異形の群れへと駆け出し、次々と異形たちを葬っていく。
剣で戦うのは、別に初めての体験ではない。むしろ日本では母には魔術を、父には剣術を教わっていた空にとっては日常茶飯事だった。でも、これはそれとは少し違う。なんというか、体の中に別の誰かがいて、そいつが戦い方を教えてくれてるみたいな感覚だ。妙な感覚だけど、何故か嫌じゃない。
「先輩!別の敵が現れました!」
背後からマシュが叫び、最後の異形を真っ二つに一閃すると背後を振り返る。そちらにいたのは先ほどの獣とは明らかに違う、剣や槍、弓矢などで武装している骸骨の群れだ。数は約八体。
「マシュ、一緒にあれを突破しよう!」
「は、はい!では、行きます!」
マシュを横目で見てそう言うと、マシュも若干戸惑いながらそれに応えてくれる。二人は駆け出し剣や槍を持った骸骨に向かっていく。
「マシュ、左を頼む!俺は右の方をやる!」
「わかりました!お気をつけて!」
マシュは左の方へ行き、空は右側の骸骨に駆けていく。空を確認した骸骨が剣を振り下ろすと、空はそれを白い剣で受け流し、ガラ空きとなった首を黒い剣で叩き斬る。次いで槍で突きを放つ奴は剣を持ったままの手で槍を掴むともう片剣で叩き斬る。槍を失った骸骨は動きを止め、その頭蓋に黒い剣を振り下ろす。
なんだろう。こんな戦い初めての筈なのに、怖いくらいに敵に剣を振るって命を消していく自分が怖くなってくる筈なのに、なんでこんなに冷静でいられるんだろう。
と、よそ事を考えていると不意に何かが顔の横を一閃した。驚いて後ろを振り向くと、そこには一本の矢が地面に突き刺さる。前を見るとそこには矢を番えた骸骨が三体も見える。
「………あれ?俺こんなに目が良かったか?」
そこで疑問に思う。確かに視力は良い方だけど、あんなに遠くにいる骸骨があんなにもくっきり見えるなんて少しおかしくないか?なんて考えていると盾を手にしたマシュが空の前で矢を防ぐ。
「マシュ、少しだけ盾であいつらの矢を防いでてくれ。あっちが弓で来るならこっちも弓だ」
「構いませんが……先輩、弓なんてどこに……」
「……わからないけど、何となく出来る気がするんだ」
根拠はもちろんない。でも、今の空ならそれができると感じたからだ。瞳を閉じて頭に浮かぶのは、黒塗りの長大な洋弓を手にしたあの赤い男。もう片手には突如として現れた矢を番えている。
「ーー
先ほどと同じ言葉を口にすると、両手に握られていた白と黒の双剣は粒子となって手の中から消えていく。代わりに左手には長大な洋弓が握られていた。今頭の中で見たあの男が手にしていた洋弓だ。もう片方の手にはいつの間にか鉄の矢が三本握られている。
空は一気に三本の矢を指に挟み矢を弦に番え、引く。狙うはここから約二十メートル先に構えている三体の敵。意識を研ぎ澄ませ、矢の軌道をイメージし、浮かぶのは穿たれた敵の末路。
「マシュ!しゃがんで!」
「ーーはい!」
空の指示通りに盾で矢を防いでいたマシュが地面にしゃがみこむと、同時に空の手から矢が三本の赤い閃光となり、その頭蓋を穿ち貫いた。
「………」
後のマシュ曰く、その時の空は無意識のうちに、口角を上げて顔に似合わない不敵な笑みを浮かべていたらしい。
♦︎
異形や骸骨との戦闘を終え、初めての戦闘に少し疲弊した空は瓦礫の上に腰掛けると手にしていた洋弓が突如粒子となって空の手の中から消えていく。すると身に纏っている甲冑に傷をつけながらも大して軽傷であるマシュが空の方に来た。
「えっと、ありがとうございます先輩。初陣だというのに失態をさらしてしまって……」
「え?い、いや、気にするなよ!俺はマシュの先輩なんだから、当たり前だよ!」
マシュの言葉に空も少し照れながらも空回りな笑いを見せる。正直言って何が起きているのかもわかっていないのに。
「ところで……先輩。その姿は、一体……」
「え?」
空はマシュが何を言いたいのかまったく理解できず、首を傾げてみるがマシュはため息をつくと手に持った盾のよく輝いている部分を見せた。空はそこから顔を覗き込ませると、
「ーーなんでさ⁉︎」
思わず父の口癖をそのまま言ってしまった。空は訳も分からずにもう一度盾に写った自分の姿を凝視した。顔や髪型こそ変わっていなかったが、カルデアで支給された特注の白い礼装は、黒いライトアーマーと紅い外套に変化していた。そして右手には赤く輝く紋様がある。
カルデア大百科
オルガマリー「こんばんは皆さん。カルデア大百科の時間よ。って、空君?」
空「よっし!未来父さんゲットだぜ!」
オルガマリー「ちょっと!コーナー1回目から何してるの‼︎」
空「?なにって、グランドオーダーですよ」
オルガマリー「そうじゃなくて!なんでそんなのやってるのよ!」
空「だって!英雄王が星4のサーヴァント一体くれるって言うんですよ⁉︎しかも、その中に未来父さん(エミヤ)がいるんですよ⁉︎これでやらずして何がマスターか!」
オルガマリー「だからーー」
ギルガメッシュ「喚くな雑種。この雑種が我の授けた褒美にうつつを抜かして何が悪い?」
空「流石王様!星4のサーヴァントプレゼントなんてやっぱり真の王様は違いますね!」
ギルガメッシュ「フハハハ!存分に我を讃えよ!貴様は父親と違い見所があるからな、特別に臣下にしてやっても良いぞ」
オルガマリー「……ぐず。もうヤダ、助けてよレフ……」