Fate/Grand Order Emiya The Third 作:黒崎士道
「あの……先輩?大丈夫ですか?」
「う、うん。なんとか。何が何だかわからないけど…」
空は身に纏っている赤い外套をヒラヒラとさせながらも答える。思えば今日はカルデアに来たと思えば爆発に巻き込まれ、よくわからない場所に来るわ、化け物が出てくるわ、マシュと共にコスプレじみた格好になるわと、突然の出来事に空はなんだかもう心身ともに疲れてきた。
そんな中、不意にその場にピピピ、と電子音が鳴り響く。空は辺りを見回すとマシュが小さな端末を取り出し画面を操作する。
『ああ!ようやく繋がった!こちらカルデア管制室!聞こえるかい⁉︎』
マシュが端末を操作すると、端末から聞きなれた声が聞こえてくる。この穏やかそうな声音は知る限りでは一人しか知らない。あのゆるふわ系のDr.ロマンだ。
「こちらAチームメンバー、マシュ・キリエライトです。特異点Fにシフト完了しました。同伴者は衛宮空一名。先輩を正式な調査員として登録してください」
『……やっぱり、空君もレイシフトに巻き込まれていたか。コフィンなしでよく意味消失に耐えれたね。とにかく、君が無事で何よりだよ』
部屋を退出した後、空が管制室へ向かったと知ったロマンは空を心配してカルデア中を捜索していたらしい。そう思うと衝動で動いた空は申し訳ない気持ちになる。
『それにしてもマシュ!空君も!なんて格好をしてるんだい⁉︎お父さんは二人をそんな子に育て覚えはないよ⁉︎』
「育てられた覚えもないよ!」
「Dr.ロマン。ちょっと黙ってください」
悪ふざけをしてたロマンにいい加減我慢の限界だったのか、笑ってるはずなのに凄い迫力でマシュはそう言って黙らせた。それを見て、空は衛宮家の赤い悪魔たる母を思い出した。
「私と先輩の体を状態チェックしてください。現状の把握には、それが一番早いです」
『き、君たちの、身体状況を?……………お?おおぉ⁉︎』
ロマンはマシュにそう言われ少し黙ったかと思えば、急に叫び出した。
『身体能力、魔術回路、全てが飛躍的に向上している!これじゃあ人間というより――』
「はい。サーヴァントそのものです。私は経緯を覚えていませんが先輩は先程の戦闘中、サーヴァントと融合したようです」
「??……サーヴァントとの、融合…?」
二人が会話をする中、唯一空知らない単語にまったく会話についていけていない。いや、サーヴァントというものは知っている。何度も母から昔の体験談を聞かされていたんだ。
サーヴァントとは、過去に偉業を成し遂げた英雄が死後に人々に讃え祀られた英霊のこと。でもサーヴァントとの融合、というのがわからない。そんな空の心境を察したのか、ロマンはわかりやすく説明する。
『デミ・サーヴァント……。人間と英霊の融合という、カルデア六つ目の実験だよ。今までに成功した例はなかったのだけど、二人はそれを成功させたようだね』
結局よくわからないけど、俺とマシュはそのサーヴァントとの融合って奴に成功したってことなのか?まあ取り敢えずそれでいいや。
『そういえば、二人には融合したサーヴァントの意識はないのかい?』
「私の中には彼の意識はありません。詳しい経緯までは覚えていないのですが、私は彼と融合したことで一命を取り留めました」
マシュはそう言うとこれまでの経緯を語った。今回の調査のために、カルデアでは事前にサーヴァントが用意されていたらしい。しかし、そのサーヴァントもあの爆発でマスターを失い、消滅する運命にあった。――そんな時、彼は死にかけのマシュを見つけて契約を持ちかけてきたらしい。自分の能力と宝具を譲り渡す代わりに、この特異点の原因を排除してほしいと。そうして彼はマシュに力を託し、真名を告げる前に消滅してしまいまった。そのため、マシュは自分がどんな英霊なのかも、手にしたこの武器がどのような宝具なのかもわからないようだ。
『それで、空君はどうなんだい?君の中にサーヴァントの意識はあるのかい?」
「いや、サーヴァントの意識って言われても……」
ロマンの問いかけに空は返事に困る。だって、いきなりサーヴァントの意識って言われてもいつの間にかこうなってたんだしそれに自分がどんな英霊と融合したのかなんてわかるはずもない。
『それには及ばない。私はここにいる』
「うおっ⁉︎誰⁉︎」
突然、空の中から知らない声が聞こえてきた。空が辺りをきょろきょろ見回した時ーー
『君の中だ。衛宮空』
その時、突然空の体から別れるように一人の男が一歩前へと足を踏み出した。その姿は赤い外套を纏った白い髪を逆立てた褐色肌の男、空の頭の中に写った男と同じだ。でもその体は向こうが透けて見えてる。
『では、改めて自己紹介でもしよう。私はアーチャーのサーヴァント、真名は訳あって話せない』
突然現れた赤いサーヴァント、アーチャーの登場に空とマシュは目を見開いて固まっていた。その中で唯一意識が戻ったロマンが問いかける。
『そ、そうか……ではアーチャー、君はどうして空君と融合したんだい?』
ロマンの問いにアーチャーは顔を渋らせると、口を開いた。
『……それは私にもわからん。私はこの街で召喚され、ある理由でこの身を汚染された。そんな時、何故か私はこの少年と強制契約という形で融合し、こうなったという訳だ。理由はおそらく、彼の持つペンダントだろうな』
「これのこと?」
アーチャーの言うペンダントに心当たりのある空は外套の中から母から預かった赤い宝石の付いたペンダントを取り出すと、アーチャーはああ、と答える。
『おそらくそのペンダントが私を召喚する触媒となり、私は再び正常な形で君のサーヴァントとなったのだろう。まあ、最もこんな不自由な形だがね。その上、マスターはこんな子供ときた』
空はアーチャーの言動に少し頭にきた。睨みながら自分を見上げる空を見たアーチャーは苦笑を浮かべ、
『おや、怒らせてしまったかな?いや失敬。何せ君は幼いからね、つい本音が出てきてしまったよ』
と、明らかに反省の色も見せずにひょうひょうとそんなことを言う。子供だからって馬鹿にしやがって!と、思うとアーチャーが言葉を繋ぐ。
『だが、一応契約をした関係だ。取り敢えずは君に力を貸そう。どうするかは君次第だがな』
「……つまり、不満だけど先輩をマスターとして認める、ということですか?」
マシュがアーチャーに尋ねると、アーチャーはああ、と頷く。
『こんな子供だが私が力を貸してやればなんとか生きていけるだろうさ。まあ、何かあれば私にはなしかけろ。ある程度は答えてやる』
アーチャーはそう言うと、空に歩み寄る。空はアーチャーと向き合う形になり、アーチャーは瞳を閉じ、天を仰ぐ。するとアーチャーの体が、光を纏い、その光が空の体の中に吸い込まれるように消えた。
『まあ、なんにしても、空君には強力な力がある。空君とマシュの二人と融合したアーチャーと謎のサーヴァントという、最強の兵器がね』
気を取り直したようにロマンが言う。最強の兵器、というのはサーヴァントとしての力のことなのだろうか。マシュも少し不満げな顔をしている。
『空君、はっきり言うと君がアーチャーとマシュのマスターになったんだ。右手にあるその令呪が証拠さ。まあ、二騎同時契約なんてーー』
ロマンがそこまで言うと音声に突如ノイズが走り始めた。
「Dr.、通信が乱れてます。通信途絶まで、あと10秒』
『え?あー、仕方がない。説明は後ほど、そこから2キロほど離れた地点に霊脈の強いポイントがある。取り敢えずそこに向かってくれ。こちらもーーー』
と、そこで通信が切れた。
「……切れちゃったな、通信」
「まあ、ドクターのことですから。いつもここぞという時に頼りになりません」
「そ、そうなんだ……」
やっぱりあの人、優しいけどあまり信頼されてないんだな。優しい性格のマシュでさえここまで言うなんてどんだけなんだ。
「取り敢えず、ドクターの言ってたポイントを目指そう」
「はい」
♢
空とマシュはそれから目標のポイントまで歩き続けている。その間も先程のものと同じ骸骨たちからの襲撃はあったが、問題なく対処して進んできた。
「ーーキャアァァァァァァァッ⁉︎」
そんな時、向こうから女性の悲鳴が聞こえた。
「今のって、悲鳴だよな!」
「はい!急ぎましょう!」
悲鳴を聞き、空とマシュは急いでその場から駆け出す。サーヴァントと融合したことによってか、全力で走っても体への負担も少ない。そして悲鳴が聞こえた場所までたどり着くと、そこには骸骨達に囲まれた一人の女性がいた。あの人は確か、カルデアの所長のオルガマリーだ。
「所長さん!」
空はオルガマリーの元へ駆け出し両手に夫婦剣を握る。空の奇襲に気づかなかった骸骨の一体はそのまま頭蓋を一閃され、その場に崩れ落ちた。空に続いてマシュも駆け寄ってくる。
「オルガマリー所長、お怪我はありませんか⁉︎」
「あ、あなた達まで⁉︎一体何がどうなってるのよ!」
「説明は後!所長、危ないから下がってて!」
空は夫婦剣を握り締め、盾を構えたマシュとともに骸骨達に向かって駆け出していく。
カルデア大百科
オルガマリー「みんな、久しぶりね。カルデア大百科の時間よ。漸くこの小説も更新されて安心したわ」
空「なんでも、作者がドラクエ8にハマっててそっちも執筆しだしたって。さっきドラクエ8のエイトさんが挨拶に来ましたよ」
オルガマリー「また……なんでうちの作者はこうも根気がないのよ!次から次へと作って!放置された人たちがどれだけいると思ってるのよ!」
空「そうだそうだ!この間なんて俺『DATE・A・FATE』の父さんに「一話から全く更新されてない」って散々愚痴聞かされてたんだからな!」
ーーー本当にすいません