再開の先にあるのは希望か、それとも絶望か………
超兵器ドレッドノートとの戦闘を終えてトラックに帰還した倭達を出迎えたのは笹川や妖精達を含んだ大勢の仲間達だった。夕立などは初の超兵器戦で味わった恐怖と生還出来た嬉しさで白露らに泣きながら飛び付き、衣笠や木曾は苦笑いながら何があったのか事細かに聞かれていたが、倭だけは艦内に留まって次の戦闘に備えて電探をフル稼働させていた。
何時あるとも分からない襲撃に備えるのも当たり前だが、何よりドレッドノートの出現によって倭は非常戦闘態勢へ移行していた。
「超兵器ノイズを観測次第何時でも出港出来る様にしておいてくれ。俺は艦内巡検に向かう。」
「了解です。……艦長、お話があるのですが。」
「………航海長、艦橋を任せる。副長は付いて来てくれ。」
「ありがとうございます。」
航海長に艦橋を預けて倭は副長を連れてエレベーターに乗る。その中で、ようやく話せると一息ついた。
「大方解っているとはお思いでしょうがどうしても艦長の耳に入れておきたい情報がありまして。」
「……話せ。」
「お気付きになっているのではありませんか?シブヤン海とジャワ島沖に超兵器ノイズがある事を。」
「……………」
「……………」
副長妖精の言い放った言葉は、普通の人が聞けば少なくとも“2隻は超兵器らしい存在が居る”程度だが、倭は超兵器ノイズの濃度で超兵器か通常兵器か見分けていた。シブヤン海に居る存在は濃い超兵器ノイズだが、ジャワ島沖の存在は“非常に薄い”が、70ノット前後でこのトラックを目指しているのは間違いなかった。
「シブヤン海に居るのは“超兵器ヴィルベルヴィント”で間違い無さそうですね。」
「恐らくな。報告書に“風の様だ”と言われているのだから尚更だな。あの兄弟本当に“俺はここに居る”と示したがるな……」
「ただのスピード狂じゃありませんからねぇ……あぁ、あの大艦巨砲主義やクソドリル共も同じでしたな。」
「(何でクソ扱い?)あいつらは別の意味で堂々としているだけだ。それにしても電磁防壁の不具合は直ってないようだが原因は解ったか?」
艦底部に着いた事を示すランプが点き、開いた扉の先にはある物が置かれていた。原子炉やεタービンではない別の物であり“倭が超兵器と同類”とされた原因であるもの。“ソレ”の前にあるパネルに触れて“ソレ”を起動させた。ここに向かっているであろう1隻の艦の為に。
「それなのですが、回路自体に不具合は見つからなかったので配線か何かが断線している可能性も浮かんできました。既に作業に入っていますが復旧の見通しはまだ先ですね………」
「出来る限りで良い。もし『極光』に出くわしたらこちらが一瞬で溶かされてしまう。それだけは勘弁して欲しい。」
「了解です。」
その場を離れて機関部を見回っていると、
「あ、こんな所に居た。倭、司令官が呼んでるわよ。」
どうやってこの場所に辿り着いたのか、満潮がやってきた。彼女と彼女達の末妹に捕まるとお小言が飛んでくるので大人しく執務室へ向かわざるを得なかった。
(小言が多い事を除けばただの小学生にしか見えないんだがなぁ………というか朝潮型は小学生そのものか………)
「で、どうして俺は宴会の席に居るのか説明して欲しいのだが?」
「あ~それは伊勢や隼鷹が『超兵器初撃破祝いだ!』とか言って宴会企画を提出してきたのよ。それに同調したのが那智や足柄なんかの酒豪勢ってわけ。」
「そうかい(くだらん理由でつまらん宴会開く程緩み切った状況で良く今まで生きて来れたなコイツ等)。俺は艦に戻る。」
戻ろうとした倭の腕をそっと、しかし力の篭った手で掴んだ者が居た。振り向けばここに着任直後から今日に到る大半の日数を自分の横で過ごした時雨の姿。だが誰かが酒を飲ませたのだろうかそれとも自ら酒の飲んだのか、顔は赤くなっていた。
「戻るのかい?主賓が居なくなったらただのドンチャン騒ぎになるだけだよ?」
「……………こんな宴会開くだけ無駄だと俺は思うがな。」
「偶には息抜きしないと、疲れちゃうよ?」
「……あまりここには居たく無い。どうも馴染めん。」
偶には息抜きしろと時雨から言われたものの宴会と言うものを経験した事の無い倭にとってこの場は退屈にしかならなかった。食事も酒も豪勢に並んでいるが倭は何一つ見向きもせずに記憶内に仕舞われていた配線図面を見ていた。こんな宴会の場にまで仕事の事を持ち込むなど可笑しいだろうが宴会などどうでも良い倭にとって一刻も早く電磁防壁βの不具合の原因であろう配線の異常を探したかった。
何よりこの場に居ない倭の全乗組員と鎮守府の電探監視員達を忘れて自分1人楽しい思いをするのは彼女等に対して申し訳ないと感じていたからである。
「倭さん、今は心の疲れを癒す時間だと思ってこの場に居てくださいませんか?皆貴方が心配なのですよ?」
「心配?俺を?」
何を馬鹿なと左隣に座る扶桑の目を見て言うが、扶桑は気にする様子もなく言葉を続けた。
「ここに来てからずっと動いてばかりじゃありませんか。例え馴染めなくてもこれから時間を掛けて慣れていけば良いんです。」
「何と言うかな……俺にはこんな平和な時間を過ごす資格など無いと思っている。」
その言葉を扶桑の隣で聞いていた山城は良い様の無い悲しみに包まれた。自身の姉とは対照的な蒼い瞳の奥に映るのは孤独と絶望。
「早い話が俺は量産可能な大量破壊兵器だ。あの戦争で俺は数多の敵艦を海に沈め、幾千もの兵士達を艦砲射撃で隣に奥方と並んで居る方が御似合いな奴も、子供を抱き上げて笑う姿が似合う奴も、子供達の前に立って教鞭を握りたかった奴も、重症を負って尚必死に生きようとしていた奴も、想い人に会いたかっただろう奴も、郷里に居るだろう母の元へ帰りたいと思っていた奴も夢も希望も何もかもを俺は奪い、焼き尽くした。そんな奴がのうのうと生きる事はできんよ。相手に与えた苦しみの分だけ俺はしっぺ返しを受けるだろうからな。」
この時、間に1人挟んだ山城と違い真横に居た扶桑にしか見えなかったが、倭の蒼い瞳の奥の更にその奥で開放される時を待ち望む狂気を彼女は感じ取り、人知れず冷や汗をかいていた。
(何て威圧感………これが、もし、彼の本性だとしたら………一体どれだけの力を隠しているというの?決して解放してはならない“禁断の宝箱”というべき代物………)
その狂気を少しだけ解放した姿が特技『Bloody Rising Sun』だとはこの時点ではまだ誰も知る由は無い。
扶桑の表情から彼女の考えている事を見抜いた倭は『気にするな』の意味を篭めた目で一度だけ扶桑を見てから目の前の状況(食事)をクリア(処理)する為に動き出す。
「だが、折角用意された食事を無駄にするのは日の本に生まれた艦として恥というもの。何か俺でも食べられそうなものはあるか?」
暗い表情から一転して明るい表情に変わった倭に内心ホッとした扶桑は急いで周囲を見回すと、戦艦組と空母組対抗の早食い大会が開かれており、その近くで『食費が……私の賞与が……』とうわ言のように呟く笹川の姿があり『司令官しっかりしてくださいよぉ?!』と慌てる青葉の姿があった。
「倭さん、あの早食い対決に別枠で参戦してはどうですか?」
「早食い?あまり得意じゃ無いんだが……まぁ出てみるかって別枠?」
「貴方が戦艦組に入ったら空母組が確実に負けるじゃないですか。空母組に入っても同じでしょうからいっその事別枠で宜しいかと。」
要するにシードかなどと納得した様子の倭を見て、扶桑が席を立ったと同時に今まで右側で静かにしていた時雨が行動を起こした。突然倭の腕を軽く引いて振り向かせ、手に持った小さな湯飲み型の御猪口に並々と注がれた日本酒を見せた。
「酒?君はまだ駆逐艦だろうに……」
「飲んじゃダメなんて誰にも言われないからね。それに響はウォッカを飲んでるんだよ?」
「未成年は飲酒禁止な………これ法律で決まってるから………」
「誰に言ってるんだい?変な倭。」
「気にしたら負けだ。で、その酒を如何しようと?」
「倭に上げる。僕の飲み注しだけどね。」
時雨としてはここで倭が慌ててくれると思っていたのだが、そこは超弩級鈍感戦艦。特に気にする素振りも見せずに受け取ろうとした。
(むぅ……そっちがその気なら……もうあの方法しかないね………)
差し出されていた御猪口が突然戻っていくのを目で追い掛けるしかない倭。その御猪口の中身は時雨の口の中へと消えた、と思っていたが少しばかり気が抜けていた倭の僅かな隙を時雨が見逃すはずもなく、目にも止まらぬ速さで倭の首の後ろに両腕を回して半ば強引に唇を重ねた。
その勢いはさしもの倭といえど驚愕せざるを得ず、僅かに開いた口に時雨の唇が重なると同時に差し込まれた舌の侵入を防ぐ事は出来なかった。何より口を閉じようものなら時雨の舌を噛み切ってしまいかねないという考えが倭の思考回路を殊更鈍らせ、容易に侵入を許したきっかけとなったのだ。その差し込まれた舌から生暖かくも甘く、少しとろみのついた酒が流し込まれ、強制的に嚥下させられる。
「……………」
「……………//////」
先ほどと同様に素早く離れて赤くなる時雨を他所に扶桑が倭に参加申請が通った事を伝え、席を立ったがその瞳は紅くなっていた。
早食い対決に途中参加となった倭だったが、状況は明らかに不利極まりなかった。倭参戦の時点で既に倭以外の参加者は残り3分の1まで食していた。普通の人ならばまず形勢逆転は不可能と思われるだろう。
だが忘れてはいけない。世界が違うとはいえ倭はれっきとした大和型戦艦の系譜に属しており、当たり前ながら消費量も尋常ではなかった。
最初に出された海鮮盛は伊勢海老や蝦蛄などの甲殻類がてんこ盛りになっていたのだが、倭は伊勢海老を掴むとその頭を何の苦もなく噛み砕き、バリバリと殻ごと咀嚼していく。硬い殻まで食べるなどはっきり言って常人のやる事では無いが倭はそれをやらかす艦だった。殻を取り除いて食べる身の部分も遠慮なく殻ごと食べ、一緒に盛られていた魚達も骨ごと全て完食してしまう。
「……海老って殻ごと食べるんだっけ?」
「違うと思う……」
「魚も骨ごと食べるの?」
「甘露煮とかなら出来るけど普通姿造り丸ごと食べる人なんて居ないよ。」
明らかに常人離れした食事方法に絶句するしかない艦娘達。それもそのはず、倭は文字通り残さず完食したのだから。
続いて出されたのはまたしても山積み状態で登場した骨付きフライドチキンも骨を噛み砕きながら倭の胃の中へ消えて行った。他にも用意された料理を目が追い付かない程の光速の箸捌きで次々に平らげて最後の一品が倭の口に消えた頃には誰しもが唖然とするしかなかった。
誰が目に見えぬ勢いで、しかも一欠片も零さずに淡々と食事を続けろと言ったのか。箸捌きを無意識に撮った青葉曰く、
『写真にすら腕も手も箸も写っていない。』
と言わしめたそうだ。事実、倭は早食い対決に紅い瞳で参戦している事から非常識レベルの身体能力を持たせて最速で終わらせようと考えていたらしい。
勿論この早食い対決に倭が終止符を打った形となり、参加者の殆どが戦意を喪失してしまったが倭のみ笹川から小言を言われてしまった。
「勝っちゃったね………」
「あの程度で食欲が満たされる連中の気が知れんよ。」
宴会の席を離脱(直後にただの飲み会に変わる事を知らされていた為)してから時雨と相部屋になった倭の自室に戻ってきた倭と時雨だが特にする事も無く真夜中でも夜天に輝く月を眺めていた倭の発した言葉に、
(君の底知れない胃袋の方が怖いよ………)
と思う時雨であった。
この日も倭は眠らず、時雨が眠りについた事を確認すると音を発てずに駆逐艦寮を抜け出し、夜間巡回の艦娘達の目にも引っ掛からないように自艦へ戻った。
「状況はどうか。」
「お戻りになりましたか艦長。現在微弱なノイズを発してはいますがこれが何時笹川提督に感付かれるか心配ですよ。」
「現在時刻は?」
「02:24です。」
「それなら03:00までに係留縄を解いておいてくれ。直ちに出港準備に掛かれ。出港予定時刻は03:30。バンダ海到着予定時刻は16:00だ。」
『了解!』
慌ただしく艦内を走り回る妖精達を見ながら倭も艦長室で一枚の軍艦旗を取り外していた。その軍艦旗の端に書かれていたのは『雨月』の二文字。
「これを……ようやく返す日が来ようとはな……」
丁寧に畳み、慎重に風呂敷に包んで艦長机の上にそっと置いて部屋を出る。その足で笹川達がまだ居るであろう宴会場に向かい笹川に、
『もう1隻俺と同型艦を連れてきて戦力増強をしても良いか?』
と持ちかけてみた。然程酔っていない様に見えても酒の効力は大したもので、普段は資源不足云々言っているのだが
『良いわよ~』ヒック
と笹川はあっさり許可を出した。勿論後々自分の発言を後悔する事になる笹川だが、倭同様超高燃費という事実が発覚して胃を痛める結果を招くなど誰が想像できただろうか。
定刻通りにトラックを出港した倭はハルマヘラ島とニューギニア島の間のハルマヘラ海を抜けて一路、バンダ海を目指した。ここならば超兵器と友軍基地からも離れている上に激戦区の一角で、誰もここに来るわけが無いと思い込んでいるが為に警戒の隙を突く形で会合にこの海域を利用した。
下手をすれば深海棲艦達が嗅ぎ付けて襲撃を受ける危険もあったが、このバンダ海が現状況で一番誰にも見つからない確立が高い海域と倭の電算機が弾き出した結果だった。その海域中央部へ到達する5分前、倭の電探は前方に巨大な艦影を捕捉した。この時点で既に目視可能距離であるものの、この海域へ着くまでに1日半を要しているので日は落ち始め、周囲は闇と静寂に包まれようとしていた。
「前方に巨大な艦影を確認。」
「艦影照合急げ。照合完了次第発光信号を準備。」
「了解しました。」
段々迫る巨大な影はやたらごつごつしているが辛うじて見える船体のラインは滑るように滑らかであった。
「艦影照合完了。帝国海軍所属艦『雨月』と認む。」
「雨月より発光信号あり。」
「読んでくれ。」
「はっ!『我、帝国海軍第1護衛艦隊旗艦雨月。貴艦ハ倭ナルヤ?』以上です。」
「雨月、全砲塔最大仰角にて本艦へ接近中。」
「やはり、か………こちらも全砲塔最大仰角。両舷微速にて接近せよ。」
『両舷微速!』
甲高いタービン音が次第に小さくなり、速度が低下していく事を感じながら砲兵装が最大仰角を取って待機する。近付くにしたがって倭に酷似した戦艦の全容が明らかになってくる。倭と殆ど変わらない砲兵装に迎撃兵装だが、主砲の後ろには副砲とは違う物が搭載されていた。
恐らく艦娘や深海棲艦をも一瞬で溶かし貫いてしまう『超怪力線照射装置』が前後合わせて2基搭載されている。
「通信が着ていますが。」
「回線開け。」
「はっ!」
「こちら大日本帝国海軍トラック泊地第2艦隊旗艦倭。貴艦は所属不明艦だ。速やかに所属と艦名を明らかにせよ。」
既に発光信号で所属と名乗りをしているのに無線でもう一度確認を取るのは如何なものかと思うが念には念を入れていた。
『私は帝国海軍第1護衛艦隊旗艦雨月。兄上……あの日以来、御久し振りでございます……』
あの日以来、確かにジャワ島沖航空戦で雨月は俺に沈められた。見敵必殺の覚悟を持って突撃を敢行した最初の相手が雨月であり、真っ先に戦闘不能に追い込み、戦闘終了後も浮いていた為に止むを得ず砲撃処分せざるを得なかった。
必殺のつもりで放った倭の砲撃は雨月の事を想うがあまり彼自身が無意識に致命傷を避けて戦闘不能に追い込み、長く苦しみを味わわせる事になった。そして戦闘終了時の予定では沈んでいたはずの雨月が漂流している事に気付き、帝国軍の回収部隊が来る前に砲撃処分を実行して余分な苦痛を与えてしまった事を未だに後悔している。
「ああ。久し振りに会ったな雨月。お前、流浪の身ならばトラック泊地まで来ると良い。さっき通信で伝えたように俺はトラック泊地所属だ。」
『そのお言葉に甘えさせていただきます。』
「疑ったりしないのか?兄とはいえ、敵となってお前を沈めた相手が目の前で背中を晒しているんだぞ?」
『何を仰います。自分にとって兄上はただお1人なのですよ?例え敵になっておられた時期があったとしても些細な間ではありませんか。御自分を責めないで下さい。あの日の事は戦争の常でありましょう。』
「…………」
そんな事があって堪るか。兄弟通しが敵味方に分かれて殺しあう事が戦争の常であって良いわけが無い。と言っても俺自身は兄弟を4人も殺めた。時雨が赦すと言っても俺自身が赦しはしないし出来る自信も無い。
「………取り敢えずトラック泊地まで誘導する。はぐれるなよ?」
『兄上は私がはぐれる事の無いように誘導してくれると信じておりますよ。』
緩やかに旋回をして艦首を元来た方角ヘ向ける。だが、2隻の会合は深海棲艦に嗅ぎ付かれてしまったようで、索敵機らしき機影と120隻近い艦影を倭と雨月の電探が捕捉した。すぐさま対空・対艦戦闘命令を発令し、雨月もそれに倣って全兵装を稼動させる。
まだ夕暮れ時であったが、時刻は18:30で既に周囲は暗闇に包まれて索敵機では発見が困難だと思っていた。だが索敵機が真っ直ぐこちらに迫ってくる以上、索敵電探を装備しているとしか考えられない。
『兄上、私は対艦攻撃に集中させていただきますので空に居るハエを消してください。』
「了解。光学兵器は使うなよ。位置がバレて集中砲火なんて洒落にならんからな。」
『承知!』
ここで倭と雨月の違いをハッキリさせておこう。倭が対空兵装を重視しているのに対し、雨月は対空兵装の性能低下と引き換えに超怪力線照射装置や対艦ミサイルVLS6基を装備した対艦攻撃能力を強化した型であり、倭型を分類させた張本人でもある。
『諸元解析値入力完了………全目標捕捉……対艦誘導弾全弾一斉発射体勢準備宜し………』
「諸元解析値入力良し……目標敵索敵機。ESSM準備……」
要約すると倭は対空対潜重視、雨月は対艦重視と分かれており、この2艦を同時運用する事で少しでも帝国軍の戦力を削ごうとした解放軍の胸中も窺い知れる。
「『発射!」』
開かれた192ものハッチからハープーン対艦ミサイルが射出され、夜空を駆けていく。続いて倭も対空ミサイルVLSのハッチを開いてESSM1発を発射。この1発は接近する敵偵察機を撃墜する為に放たれた刺客であり、敵索敵機が目視した頃には時既に遅しで成す術もなく撃墜。
『対艦誘導弾命中まで後30秒。第2次攻撃開始を要求します。』
「第2次攻撃を許可する。徹底的に叩き潰して良いぞ。」
『第2射…全弾発射。』
再び192発のハープーンが発射されて行くが、今度は海面を這うように飛んでいくシースキミングに切り替えたようだ。
電探上では既に敵艦隊のいくつかは被弾の影響で沈没している艦も居た。その沈没艦にまでハープーンが飛んで行く事はなく、雨月の電波誘導によって生き残りの艦に向かうように指示を受けて針路を変えていく。その直後に倭と雨月は主砲の角度を情報共有能力で調整し、最大仰角で6回連続斉射を行い、急いで速度を上げると戦果も確認せず海域を離脱していった。
深海棲艦にとって30隻の艦隊をたった1隻の戦艦に潰された雪辱戦に燃えていたのだが、蓋を開けてみれば自分達の射程外から一方的に飛んでくる槍に穴を穿たれる結果になっていた。第1回目は空中から突っ込んでくる形を取った為、深海棲艦達に第2次大戦末期のカミカゼを連想させたようで士気が少し低下し始めていた。が、その第2回目の槍が海面スレスレをカッ飛んできた所為で深海棲艦達の電探には至近距離になるまで反応しなかった。一応対空弾幕を張った艦も居たが、それを上回る速度で迫ったハープーンを食い止めるには到らず対応が遅れて次々に撃沈されていった。
戦艦以下の装甲しか持たぬ重巡や軽巡、駆逐艦などは全て撃沈され、浮いている艦は僅かに残った重装甲の戦艦達20隻あまりだが、空母はどうなっていたかと言うと文字通りの全滅である。まともに装甲を施していない飛行甲板はハープーンの良い的になり、弾薬引火や燃料引火を引き起こして船体を裂かれた空母達に生き残る術は無かった。
これで終わったと思っていたタ級達だが、彼女等の命運は決まっていた。倭型重装護衛艦1隻であればある程度は善戦できたかもしれなかっただろうが、今回は対艦戦重視の2番艦を引き連れている。
間も無く飛来した144発の徹甲弾は情け容赦なくタ級達の頭上から降り注ぎ、艦上構造物と船体をズタズタに引き裂く。近くに居たはずの僚艦の姿が水柱に包まれて見えなくなる中で、僚艦の船体が悲鳴を上げて軋む音が聞こえてくる。
「コンナ……馬鹿ナ事ガ……」
絶対勝てる。1隻の戦艦が120隻近い艦隊に勝てるわけが無いと自負して出撃したはずだった。だが結果はこの有様だ。空母も護衛艦達も全滅し、今正に私達戦艦部隊も全滅に近付いている。
「奴ハ化物カ……」
そう呟いたル級の眼前には5発の榴弾が迫っていた。
「戦艦水鬼様、ドウカ御元気デ………」
刹那、轟音と閃光が轟きタ級は榴弾で船体の要所を破壊されて海中へと没した。
スリガオ海峡とサマール島沖に居た我が打撃艦隊を無傷で捻り潰した巨大戦艦出現の情報は八丈島近海まで補給船狩りに出ていた機動艦隊の最後の生き残りであったイ級から齎されたものの、巨大戦艦に対して興味を示したのは我々打撃艦隊派だけであり、機動艦隊派は「大艦巨砲は航空機に対して無意味かつ非力」と結論付けた上で、数多の仲間の犠牲を出してまで有力な情報を持ち帰ったイ級に対して「無様に逃げ帰ってきた臆病者」「仲間を楯にして生き残った恥知らず」と罵声を浴びせ、イ級に対して標的艦への格下げを宣告。
我々の反論も弁護も聞き入れられず、標的艦になったイ級は恨み言も何も言わず、終始無言を貫いて航空爆撃の標的艦として生涯を閉じてしまった。
その機動艦隊は如何しているかと言うと、巨大戦艦によって激減した航空戦力を補充する為に後方に居り、一度も前線へ出てきていない。当然前線で巨大戦艦と向かい合って戦力をガリガリ削られ続けた打撃艦隊を総轄する戦艦水鬼は機動艦隊による航空支援を再三に渡って要請していた。しかしその度に「航空支援は打撃艦隊所属の軽空母を利用すべし」と返事を受け、悔しさのあまり自ら倭の相手をしようとしたものの戦艦棲姫達に力尽くで静止させられた。確かに大きく減らされた航空機の補充は時間が掛かるが、艦船の補充速度よりは確実に速い。だが我が打撃艦隊が失ったものは多過ぎた。可愛がっていた沢山の部下と航空支援の要であった空母ヲ級を失った戦艦水鬼は長い溜息を吐いて今回は戦力再編の為に後方待機を取っていた。
機動艦隊を総轄している空母水鬼は航空攻撃による巨大戦艦撃沈を固持している事を承知の上で戦艦水鬼は後方待機を決め込んだのだ。その影響で止む無しといった形で機動艦隊が前線へ出てきていたのだが、想像を超えた倭と雨月の戦闘力の前に敗れる結果になった。
「何故空母水鬼ハ奴ノ恐ロシサヲ理解シヨウトシナイ……アノ数的劣勢ヲ覆ス力ニ今ノ我々デハ太刀打チ出来マイ………」
「デスガ水鬼様、奴ガ単艦トハ限リマセン。モシ2隻目ガ居タトシタラ……」
「傷付イテモ……必ズ帰ッテ来ル事ヲ祈ルダケヨ……」
「御優シイノデスネ。」
「私ニハ派閥ナド関係ナイ。例エ疎マレテイタトシテモ私ニトッテハ皆同ジ仲間。私ハ皆ヲ等シク愛シテイルダケ。」
意気揚々と出撃して行った機動艦隊が一体何隻無事に戻って来てくれるのだろうかと戦艦水鬼は思案に暮れていた。深海棲艦に愛など無い筈だが、戦艦水鬼は生まれた時からこの感情を持ち、それを知りたがった戦艦棲姫や重巡ネ級から慕われる事になり自然と人望も厚くなっていった。
枠組みなど関係なくそういった事が出来る者だからこそ人望も厚いが疎まれ、出る杭は打たれるが如く叩かれる事も懸念されていた。
だが、彼女も現実は非情であると常識を遥かに超えた力を持つ兵器によって自らが赴いた戦場で教えられる事になる。
雨月の速力に合わせて戦闘海域を離脱した倭は秘匿回線である場所に連絡を取っていた。
「ああ。そういう事だ。宜しくお願いする。………それで大丈夫だ。その交換条件だが陸軍司令部への話は通してあるのか?……成程、そうか向こうから直々にあって話したいと。………了解した。指定された日付に向かうようにする。では。」
「陸軍さんの輸送任務ですか?また面白そうな話ですね。」
「面白い、とは思えんがな。どの道向こうにとっては藁にも縋る思いだったのかも知れん。」
連絡を終えた倭に副長と航海長が話しかける。
「ですが何処へ向かうので?」
「ガダルカナルだ。」
やってきた艦は自作艦でありますはい。これからリアル多忙によって更新が遅れる事が多々あると思いますので御了承くださいませ。
雨「作者曰く出来るだけ早めの完成を目指すらしいので暇な時にでも本作を御読みください。
雨月の詳細
倭型重装護衛艦2番艦『雨月』
○性能
機関:原子炉δ 9基
推進器:標準タービンε 3基
出力:280800馬力
過負荷出力:291000馬力
タービン回転効率:156%
基準排水量:79250t
満載排水量:87150t
最大戦速:77.4kt
巡航速度:38.2kt
航続距離:無制限
全長:300m
全幅:75m
装甲:対61cm完全 70%完全
○武装
・25mm3連装高角機銃:34基
・25mmCIWS:10基
・20.3cm65口径連装砲:12基
・超怪力線照射装置:2基
・61cm55口径3連装砲:4基
・対艦ミサイルVLS:6基
・対潜ミサイルVLS:2基
○艦載機
無し
○補助装備
・音波探知機Ⅴ
・電波探知機β
・自動装填装置γ
・電磁防壁β
・電波照準装置α
・発砲遅延装置α
・電波妨害装置β
◇此処から別途オリジナル装備品あり
・急加減速制御装置
・バウスラスター
・徹甲炸裂焼夷弾
・拡散榴弾
・硫酸弾
評価(4段階評価):攻撃型
火力:4
機動力:1.2
対空:2.4
指揮・索敵:2
防御力:4
対応力:4
総合評価:A
解放軍側で表向きに大和型戦艦を凌駕する長砲身タイプの51cm砲搭載超戦艦“倭型戦艦”として7隻の建造計画が進み、裏で対超兵器用超戦艦として建造・就役。本艦はその2番艦であり、対艦・対地攻撃力を重視した形になっている。
倭と同様に主砲搭載スペースが広く取れた艦でもあったため、建造当初から61cm砲搭載を予定していた。が、帝国の侵攻が予想よりも早く解放軍側が受領できたのは1番艦倭のみであり、雨月を含む残りの4隻は帝国軍所属艦として倭討伐に派遣される事になる。
就役後の混乱で演習も間々ならぬ状況に置かれながらジャワ島沖航空戦まで温存されていたがジャワ島沖航空戦に倭が来る事を想像しておらず、圧倒的な倭の速力の前に翻弄された挙句、隙を突いた倭の砲火を受けて無力化。戦闘終了時まで残存していた為、止むを得ず砲撃処分を行い、弾薬庫誘爆を引き起こし帝国軍空母護衛艦隊の中で一番最後に撃沈される。この事を倭は悔やんでいるが、やられた当人曰く、『戦争だから仕方ない』との事。
装甲も対61cm防御を施され倭と同じく高角砲は迎撃機銃と主砲、副砲で十分と判断されてしまったために搭載される事はなかった。(倭の所為で)品薄になった15.5cm砲の代わりに余ってしまっていた20.3cm砲が搭載され、駆逐艦や魚雷艇等の小型目標への攻撃に用いられている。
巨艦故に旋回力は低く、バウスラスターが付いている以外の操舵関係の補助装置が無いのでかなり鈍く、伊勢型航空戦艦並しかない。急速旋回も可能だがバウスラスターへの負荷が凄まじい為に多用は出来ない。
倭と同じ装甲を艦上構造物に採用している事から電探で捉えられない隠密性を持っているが、船体構成素材の不足(これも倭の所為)でハニカム構造にした対61cm装甲を採用している為に電波吸収率は倭より低下し電探に映りやすくなっている。
しかし、それを補う77.4ktもの速力で敵艦の追撃を振り切る事が出来たので通商破壊任務にも投入される可能性があったとされる。
原子炉δが9基も搭載されている為、燃料の補給は不要。が、倭型のお約束として鋼材と弾薬は大和型の4倍は吹っ飛ぶ。
・性格:倭と似て決して退かない艦。だが余計な事まで喋る事もある。
・容姿:倭と瓜二つ(数少ない相違点として、戦闘時の瞳の色の違い。倭:蒼→紅 雨月:蒼→金色 軍帽の被り方。倭:右斜め被り 雨月:左斜め被り)
・艦歴
1999年3月3日起工
2001年10月22日進水
2003年7月27日帝国軍籍として就役
20XX年11月21日ジャワ島沖にて倭と交戦し戦没。
・愛称:特に無し。
・好きな物、人:模型製作(姫路城) 倭(尊敬的意味で)
・嫌いな物、人:倭に危害を加えようとする輩 深海棲艦
・渾名:無し
・所属:未定
・所属艦隊:未定