恋雨~重装護衛艦『倭』~   作:CFA-44

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※注!このタイトル名は深海棲艦の心情を表したものだと思ってください。

投稿が遅れ申し訳ありません。リアル多忙に加え、全身を疲労が襲っておりましたので………

今回は彼にちょいと遠くまでお遣いに出掛けてもらいましょうか(にっこり) 大丈夫、ウチのはそう簡単に沈みませんから(ゲス顔)


???「さぁ!楽しいゲーム《戦争》の時間だ!」(暗黒微笑)



悪夢のガダルカナル強襲

‐横須賀鎮守府‐

「うむ、確かにその様に伝えてくれたのならそれで良い。後の事はそちらが心配せんでも大丈夫だ。ではな。」

「どうしたんですかぁ?」

「いや、さっきの作戦指令をトラック泊地宛に送ったかどうかの再確認だ。敵に暗号が解読されておるとはやはりアメリカさんの真似事をするのが上手い。」

「確かにビックリしましたねぇ。まさかこちらの暗号が全部解読されてたなんて。」

「まぁ流石に彼が居れば相当な打撃を与えてくれるとは思うがな………神の奴こんな作戦を立ておって…もし彼が轟沈でもすればどうなるか分かっておるのか。」

横須賀鎮守府で大本営の決定とされた作戦内容を見て思わず溜息が出た久遠だが彼自身倭が深海棲艦の攻撃如きで沈むなどとは毛頭考えていなかったが。

(色々と鋭い彼の事だ…この作戦を立案した者が誰かぐらいは簡単に見破るのだろう……ワシも作戦には反対だが“彼”の性能を活かす為にはこうでもせんと難しいか………)

 

 

 

 

 南太平洋にある日本軍の一大拠点トラック泊地。この巨大な環礁の中に巨大な鉄の城達が思い思いに休息を取っている。だが、その泊地の頭脳たる司令部は喧騒に包まれていた。

「こんな作戦無謀です!私は承認出来ません!」

「貴女の言いたい事は痛いほど分かるわ山城。それでもこれは大本営が決めた事よ。私達に拒否権なんて無いの。」

「っ!それなら私も一緒に行かせてください!アイツ1人での作戦なんて容認出来ません!」

発令された作戦の内容を見た山城が笹川提督に懸命に食い付いて作戦を変更させようと粘るものの、笹川提督も大本営からの作戦決定に逆らう事は出来ず、少し強めに言って山城を突き放すしかなかった。

「これは命令よ山城。貴女は第2艦隊の代理旗艦として彼の艦載機収容任務を遂行しなさい。それが彼に出来る数少ない援護よ。」

「……どうしても、ですか?」

山城自身何故こうも提督に食い下がるのか理解出来ていなかった。何故彼が絡む作戦となると口出ししてしまうのか、彼と共に戦う事を選びたがるのか、その度に提督に無茶を言って強引に作戦参加をしているのかも。だがそれを姉に聞いても答えてはくれなかった。だから今回の作戦も行動を共にすれば何か分かると思っていた。

 しかしこの作戦で一番重要視されたのは山城達が持つ航空戦力でも、火力でもなかった。作戦遂行に必要とされたのは最高の隠密性と最高の機動性に最強の火力。これら3つが該当する艦は倭以外存在し得なかった。雨月も該当しているものの、隠密性と速力が倭に及ばない事から即応出撃に備えて待機していた。

 

 

‐第六次ルンガ泊地強襲作戦‐

 

 

この作戦は何度か発令され、実行にも移された。だがその度に猛烈な空襲と厳重な防衛戦によって最初の作戦以降は相次いで撤退させられており、他の司令部では艦隊が全滅した記録まであるほどだ。

 突入するのは日没直後であり倭の持つ高い隠密性と機動性は夜襲にうってつけであったし、倭の性能は既存艦の性能を突き放している。だからこそ大本営も「単艦運用の方が存分に性能を発揮出来るという判断を下し強襲作戦への参加を命ずる。」と倭の性能を活かす作戦を立てたのだろう。

 勿論この作戦が発令され、単艦での強襲任務を言い渡された本人は二つ返事で了承し、準備のために出て行ったが当然のように執務室に集まっていた長門を筆頭に艦娘達が猛抗議を行ったものの山城同様に強硬策を取られた為、止む無く治まったとはいえそれでも簡単に了承出来るような作戦ではなかった。

 

・主目標:ルンガ泊地に存在する敵勢力を可能な限り撃破せよ

・副目標1:飛行場姫を撃破せよ

・副目標2:餓島南東方面より突入し速やかに敵艦隊の防衛網を突破せよ

・副目標3:鉄底海峡付近の敵重巡洋艦隊を撃破せよ

 

何しろこの4つを単独で達成して戻らねばならないのだ。作戦終了まで幾ら倭でも相当な苦労を強いられると誰もが思っていた………

 

 

 

 

 既にトラック泊地を発って既に3日が過ぎ、倭の艦内では暇潰しに廊下で囲碁や将棋で遊ぶ者が出始めていた。特に陸戦隊はやる事もないので常時暇を持て余す事が多く、不特定の場所で囲碁・将棋・チェス等で遊んでいる姿が頻繁に目撃されている。

(こんな所規律に五月蝿い連中が見たら絶対艦長に抗議しにいくよなぁ………まぁそんな事したら投げ倒されたり摘み出されるだろうなぁ………)

と、そんな事を考えながら副長は艦内を巡検していた。副長としての仕事は非戦闘時の方が多いので少々ゲンナリするがそれでも巡検をやらずに艦長にキレられるよりは万倍マシである。

「おう電防班長。調子はどうだ?」

「うぃース副長。今の所何とも無いのが幸いスね。それで今回の作戦はまたガダルカナルっスか?電磁防壁も作動する機会が無いから整備し辛いんスけど。」

「ん~まぁ艦長が『大本営から凸って殲滅もおkって言われた』って言うから問題ないと思うけどなぁ~」

規律もへったくれもない会話をしながら定期点検表を受け取ると副長は素早く目を通して回収する。副長ですらこんな口調で会話をするのだから副長本人が規律に関してとやかく言えない。というより倭の艦内は非戦闘時に凄まじいまでにだらけている事が多くそのだらけ振りは当直の者まで及んでいる。当然ながら戦闘時には連携して行動しているので倭本人はその辺に関しては目を瞑って黙認している。

「んで護衛も無しに逝って来いと?何か馬鹿馬鹿しくないっスか?」

「ぼやきなさんな。仕事と割り切るしかなかろ。ま、問題ないみたいだし艦橋戻るわ。」

「りょーかいっス。」

電磁防壁の最終出力調整装置の点検表を受け取って艦橋へ戻るまでに気持ちを切り替えて仕事モードへ移る。が、戻った第1艦橋に倭の姿が見えない。砲術長に居場所を尋ねると、

「幹部は全員艦長室に集合だそうです。何でも会議をやるそうです。」

と言われ、急ぎ足で艦橋下の自室に戻って服を着替え直す。艦長室で会議という事は気を引き締めなければならない証拠であり、寝巻きで行くなど自殺行為である。

制服に着替えて艦橋に戻ると砲術長に冷やかされたが何とか凌いで艦長室へ向かうと、既に航海長や電探班長、飛行班長が揃っていた。

「遅れてしまい申し訳ありません。」

「気にするな。副長が“寝巻き姿で”巡検に言っていた事は俺も知っている。それに今しがた全員集まったばかりだ。」

sit寝巻き姿で巡検に行った事が艦長にバレていたらしい。今更ながら己の軽率さを呪いたくなったよ。

「まぁそれは置いといて、今回我々は大本営からの作戦指令でガダルカナル島ルンガ泊地を強襲するよう通達が来ている。多分こんな作戦を立てたのは大穴博打が好きなイカレた奴かも知れんが与えられた命令はこなさねばならん。」

「ではこの作戦は大した事はないと?」

「あの泊地にレイガナーズ級やシュバルツ・ゾンダーク級が山ほど居ると言うなら話は別だ。だがそれらが確認された旨の情報はまだ軍令部に届いていない。居るのは深海棲艦連中だけだ。まぁ用心するに越した事はない。」

「もう火炎放射砲で焼かれるのは勘弁ですね。それで南東方面といえばマレータ島を回り込めば良いでしょう。」

航海長が示したガダルカナル島の東側にある細長い島がマレータ島であり、この島の東側を通る迂回航路が指定されていた。そうなると速力の調整をしないと突入時間がズレてしまう。速過ぎれば日没前に着いてしまうのでピケット艦に発見されかねない。仮に遅くなったとしても差して問題はないのだがその時は火力で全てを捻じ伏せるまでだ。

 会議の後、倭は速力を90ktまで落とし、日没時刻の5分前にマレータ島最南端部に着く様に調整して航行し始めた。

 

 

 

 

‐ガダルカナル島ルンガ泊地‐

 

現在深海棲艦によって占領されたこの島には飛行場姫が陣取っており、他にも空母棲鬼を主軸とした新設の機動艦隊と戦艦棲姫率いる打撃艦隊が配備されている。何度か奪回の為に人類側の攻撃を受けたが初戦以外は退ける事に成功していた。

「例ノ『モンスター』ハトラックカラ動イテイナイノダナ?」

『エエ。特ニ大部隊ガ動イテイルワケデモ無イワ。ソレデモ人類側ノ通信量ノ増加カラ考エテ間違イナク反抗作戦ヲ目論ンデイル筈。ソンナ大規模作戦ニ必ズヤツハ来ル。ソノ時コソ装甲空母姫ノ仇討ツ絶好ノ機会ダワ。』

戦艦棲姫は最近の人類側の妙な動きが気になって何度か偵察機を出していたが、自分の上官が唐突に会いたいと言い出した『モンスター』に関する有力な情報も得られぬままであった。得られたのは精々18インチ砲を超える巨砲を4基も搭載しており対空対艦共に圧倒的火力を持っている・レーダーに映らない、などの少ない情報であった。それも仕方ないだろう。その戦艦と交戦した味方艦隊の殆どが全滅しているのだから。

(レーダーニ映ラナイナド……一体ドンナヤツカ私モ一目見タイ。ドレ程強イノカ知リタイ!)

戦艦棲姫の胸中を察したのか傍に居た副官が何か言おうとしたのを制して艦橋を後にし、艦首甲板へと出て行った。アイオワ級と同じ姿をした戦艦棲姫に搭載された16インチ砲の砲身は夕暮れ時の陽光を反射して鈍く赤黒く輝いており、力強さを感じさせてくれた。だが、もし『モンスター』と合間見える事になると思うとその力強い光でさえも物足りなく感じられた。

既に多数の艦が撃沈され、強力な味方である戦艦レ級も数隻が撃沈されており、装甲空母姫も無残な姿となって発見された。立ち塞がる者全てを粉砕し、海の藻屑へと変えていく怪物戦艦に戦艦水鬼様は会いたいというのか。

(ドウヤッテモンスターニ会ウカガ難シイナ。マァソレハ明日ニデモ考エルトスルカ……)

そこまで考えていながら考えるのを止めて艦内へ戻っていく戦艦棲姫だが、彼女も空母棲鬼も飛行場姫も、誰も気付きはしなかった。南東側のピケット艦達が敵の来襲を告げる間も、悲鳴をあげる事も許されず怪物《モンスター》の餌食となっている事に………

 

 

 

 

‐マレータ島最南端部約20kmの沖合い‐

「さて、丁度良い頃合いか。」

『方位300、距離1万5千。ピケットに出ている駆逐艦です。』

「防空艦橋見張からも同様の報告が入っております。この先がガダルカナルで間違い無いでしょう。」

「良し…後3分くらいで日没だな……副長、無線を。」

「どうぞ。」

突入前に少しだけ乗組員全員に訓示でも何でも無いが気合を入れてもらうための活を入れる。

「総員に告ぐ。これより本艦は敵の巣窟と化しているルンガ泊地に強襲を仕掛け、飛行場と残存する敵戦力の全てを殲滅しなければならない。非常に危険な任務だが大本営は、いや少なくとも久遠総長は我々を信頼しているからこそこの任務を与えてくれた。その思いに答える為にも、母港で待っている仲間の為にも絶対に成功させねばならん。諸君等の迅速な行動と奮闘に期待する。以上だ。」

無線を切ると、艦橋に居た全員が俺に対して敬礼をしていた。その行動は艦橋だけでなく、艦内各所に配置されたスピーカーに対しても行われていた。皆が俺を信頼してくれている。時々変な暴走をする奴も居る。だがどんな困難にも、絶望にだって共に立ち向かって痛みや楽しみを分かち合ってきた心強い戦友達だ。だからこそ俺も皆を信頼している。

「艦長より全乗組員へ。必ず生きて母港へ帰るぞ!一人として脱落する事は許さん!全員が生きて帰る事が最高の勝利だ!良いな!」

『ウオォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!』

艦内に響き渡る妖精達の歓喜の雄叫び(?)を聞いていると、副長が近付いてくる。

「全く、これを他の鎮守府の艦娘達が聞いてたらどうなる事やら。ま、私は何があっても何処までも艦長に着いて行きますぜ?」

「それは有難い事だ。優秀な副官が居なくてはこちらも弄り甲斐がなくなってしまうからな。」

「冗談が過ぎますって。怖いじゃないですか。」

「無論冗談だ。さぁ手始めにピケットは全て機銃で戦闘不能にした後体当たりで撃沈する。どうせ音でバレるかも知れんが針路そのまま、機関全速!」

 13基の原子炉εと4基のεタービンが唸りを上げて8万5千tの巨体を急加速させてロ級が気付かぬ後方から接近する。それと同時に針鼠の如く取り付けられた40mm4連機銃と35mmCIWSが無防備に背中を晒すロ級に向けられ、ロ級が気付くよりコンマ数秒早く射撃が開始される。ロ級は緊急電を打とうと試みたのだが濃密な機銃群によって通信用のマストが破壊され、次いで艦橋をボロ雑巾のように蜂の巣にされた為艦橋要員が全滅し成す術無く漂流し始める。陸戦隊妖精の1人が擦れ違い様に高性能時限爆弾を打ち込んだという報告を受けるも素早く次の敵艦を捕捉した電探により倭の意識もそちらへ切り替わる。

 次から次へと敵艦を機銃攻撃と体当たりで撃沈していく姿は傍から見れば気が狂っているようにも見えるが、これは倭にとって弾薬節約の一環に過ぎなかった。最も機銃弾もそんなに撃っているわけでは無いが。

 僅か5分で全てのピケット艦を撃沈し終えると、倭は次の段階に入る。カタパルトを稼動させ、久し振りに晴嵐改が飛び立っていく。航続距離は短いがそれでも搭載する九一式航空魚雷は侮る事は出来ない。何せ向こうの世界で造ったものだからである。

 

 

 

 

よう、俺は晴嵐攻撃隊の隊長だ。これから俺達は3機中2機が飛び立ち、残る1機は指示あるまでカタパルト待機を命じられていた。だが俺達はちっとも怖いという感情は無かった。どの道着水する場所は限られるがきっと艦長の事だから絶対に拾いに来てくれる、全員揃って帰る事が最高の勝利だと言ってくれたのだから。だから俺達は絶対に生きて帰れるんだ。

「1号機出ます!」バシュン!

『同じく2号機出ます!』バシュン!

『こちら3号機、指示あるまで待機って結構大変ですけど待ってますぜ隊長!』

「任せとけ!」

カタパルトから打ち出されてすぐに2号機の姿を確認するとちゃんと付いてきているようだ。後席に頼んで電探を確認させて目的のルンガ泊地へ問題なく近付いている事を教えてもらい、スロットルを調整しつつ操縦桿を倒して海面スレスレまで降りる。勿論翼下にフロートがあるからペラが海面スレスレなんて事は無いが。夜間飛行も出来るように色々と改良が加えられたこの水上攻撃機晴嵐改での攻撃任務なんて久し振りだ。多少時代遅れ感はあるがまだまだ現役で動けるんだから壊れるまで使ってナンボだ。

数十分も飛ぶと前方に深海棲艦の重巡洋艦の姿が。こちらに気付いているのかどうかは分からないが手信号で2号機に『雑魚はいい。大型艦を撃ち漏らすな。』と合図を送ってぶつからないギリギリの距離でやり過ごす。

『敵重巡の電探が不具合でも起こしていてくれたら有難いですね。』

『見つからないだけ有難いが次はそうも行かなさそうだ。戦艦部隊の電探網を抜けられるかは運に任せるしかないな。幾らステルス塗装といえど限度がある。』

『ですな。でもどうして敵重巡をやらなかったので?』

『無駄撃ちは出来ん。それだけだ。さぁ行くぞ。』

『了解!』

手信号で無駄に長い会話を終えて前方に停泊する大型戦艦と大型空母に狙いを定めて接近していく。まさか我々が奇襲を仕掛けてくるとは予想していませんでした、レベルで警戒が甘かった。

 実際に通り過ぎた重巡リ級のレーダーは不具合を起こしていた為、その隙に上手く通り抜けられたのであった。そしてリ級自身もプロペラ音に気付いていたものの、味方の夜間哨戒機だろうと思い込んでしまっていたのだ。

手前に居る大型戦艦への攻撃を2号機に任せて俺は奥に居る大型空母を目標と定める。見たところヨークタウン級だが暗くて良く分からない。なら艦橋の真下あたりにコイツ《九一式航空魚雷》をぶち込んでやるまでさ。

「投下装置安全ロック解除。」

「解除良し!やっちゃってください隊長!」

「良し来た!逝っちまえ!!」カチッ

軽い振動と共に抱いてきた魚雷が海中へ解き放たれ、大型空母目指して猛然と突き進んでいく。魚雷投下後、僅かに右旋回へと転じながら増速し、レーダー網に引っ掛からないようにまたも海面ギリギリを飛んで鉄底海峡方面へと向かう。

後ろを振り返れば、命中の証たる2本の巨大な水柱が出来上がっており、確実に命中した事が分かった。

この後、順調に行けば鉄底海峡付近まで接近している代理旗艦の山城達が回収してくれる手筈だが何時敵に見つかるか分からない状態である以上、何時でも陸に逃げる用意はしておこうと思う。

(艦長、後は頼みましたよ………)

 

 

 

 

 

 晴嵐隊の攻撃が成功したのか、深海棲艦の通信が慌ただしくなり始めた。そしてピケット艦とも連絡を取ろうとしているようだがピケット艦はこちらで殲滅させているので永久に連絡を取れない。だが電探に映る相当な数の戦力がこのルンガ泊地に集められているという事は大方ショートランドかラバウルあたりを占領しようとしていたのかもしれない。そうなる前に叩けた事は意外と幸運だったのだろう。

『敵飛行場から敵艦隊宛に平文で対潜攻撃指示が出ました。連中とんでもない勘違いしてますよ。』

流石にそこまでの勘違いは無いだろうと思ったが電探に映る艦影は明らかに対潜攻撃の為に軽巡や駆逐艦達が集結している事を示しているのでこれを殲滅してしまえば後は如何にでもなる。

「勘違いしてくれている事に感謝するさ。主砲に改三式装填。探照灯照射用意。」

「探照灯照射用意!」

「全門斉射準備良し!」

「目標、泊地正面海域。主砲撃ぇ!」

『主砲斉射!』

轟音と共に撃ちだされた6発の改三式弾は夜の闇を引き裂いて獲物が群れる海に飛び込んでいく。6発のうち5発が泊地正面海域で炸裂し、辺りを漂白するような閃光と巨大な火球を作り出して集まっていた艦艇の殆どを轟沈させる。

残りの1発は少し離れた場所で海面を大きく抉ったが、そこに居たのは輸送船ワ級の中規模輸送船団と補給を受けていた潜水艦隊だった。直撃ではないにしても装甲性皆無の輸送船や潜水艦などが近接信管装備の改三式弾の膨大な破壊エネルギーに耐えられるはずも無く、船体を破壊され瞬く間に海の藻屑となり、暗い夜の海へ消えていった。

「敵艦隊総合残存戦力40%に低下。如何しますか艦長。」

「飛行場砲撃は後回しで良い。先に敵艦隊殲滅を優先する。探照灯を照射しながら全砲門で畳み掛ける。晴嵐3号機を発進させろ。」

「晴嵐3号機発進準備が出来次第発進せよ!」

『了解!3号機発進します!』バシュン!

 発進した3号機には魚雷が搭載されておらず、代わりとして照明弾2つを搭載していた。敵の真上で使って敵の被害状況を確認する為に搭載されただけでなく、自らの姿を晒す為に使うつもりだった。

泊地正面海域の敵艦隊を徹底的に叩く事で突入時の危険性を極力下げ、敵艦隊の戦意を削ぎ落とす効果を期待された初撃に続いて副砲、両用砲から残存艦及び漂流艦へ砲撃が開始される。徹甲弾ではなく榴弾だが、短時間で大量に降り注いでやれば大なり小なりの被害は確実に出てくれるものだ。

「晴嵐3号機、照明弾投下。」

「泊地正面海域に突入する!巡航速度を維持!全砲門は探照灯照射に合わせて個別に応戦せよ。これから敵も攻撃してくるが決して怯むな。」

 被雷して少なからぬ損傷を負っている大型戦艦と大型空母の2隻に主砲の照準を合わせ、砲撃を開始する。戦艦棲姫の方は艦首を吹き飛ばされて行き足が止まり、空母棲鬼は所詮装甲が薄い空母でしかない為、2発で弾薬庫と機関室を破壊されて火達磨になった所に晴嵐隊によって艦橋真下に出来ていた破孔へ飛び込んだ1発が装甲・非装甲区画を食い破り竜骨を粉砕する形で止めを刺した。

 侵攻作戦の為に揃えられた新型艦載機を繰り出す事も叶わず二つに折れて沈んでいく空母棲鬼を横目に見ながら戦艦棲姫も反撃として16インチ砲で抵抗を試みた。しかしその全てが倭の強靭な特殊装甲によって跳ね返されて空中で炸裂する。

その上、倭は戦艦棲姫など意に介さず探照灯を照射しながら全火力を周辺で蠢く護衛艦隊に叩き込んで潰していく。ある時は砲撃でニ級を轟沈させ、時には体当たりでリ級の船体を真っ二つにしながら狭い湾内を駆逐艦さながらの機動力で縦横無尽に駆け回って深海棲艦の戦力を徹底的に叩き潰す。

 殲滅作戦成功のためには敵に慈悲など掛けないし掛ける必要性など微塵も感じない。余計な事を考えないでただ敵を沈める事だけ考えていれば良い。それこそが戦艦として、兵器として当たり前の事だと信じているから。

だから敵艦が降伏を示す発光信号を送ってきても関係なく沈める。降伏したと見せ掛けて裏切られる可能性は十分にあっただけではないが、これは殲滅作戦だ。目に映る敵は全て破壊したって構いはしない。この惨状を味方の誰かが見ているわけでもない。

 

(奴等カラ全テヲ奪エ!奴等ガ築キアゲタ物ハ全テ破壊シ尽クセ!ソレコソガ我等ノ存在意義ト奴等ニ知ラシメロ!)

 

 倭はただただ自分の脳内に響く禍々しい声音に秘められた破壊衝動に突き動かされ、自らに牙を向く者、逃げ出そうとする者を等しく沈めていく。その様子を電源が破壊されて戦闘不能に陥ったままの戦艦棲姫はただ黙ってみているしかなかった。

ようやく新設されたばかりの機動艦隊と打撃艦隊が徹底的に叩き潰され、強さの桁が違うという事を否応無く叩きつけられていた。

 

 

 

 

 突然の襲撃に最初は潜水艦による雷撃かと勘違いした為(奇しくも戦艦棲姫と空母棲鬼に魚雷命中の水柱が上がった所為)に飛行場姫は対潜警戒を発令して爆雷攻撃命令を下していた。だがその勘違いが途轍もない被害を齎した。

敵潜がいると推測した泊地正面海域に軽巡や駆逐艦が集結した直後、5つの巨大な火球が膨れ上がり、正面海域に展開していた味方艦が瞬時に全滅。何が起きているのか確認する間も無く今度は補給艦隊と潜水艦隊が先程の火球によって全滅してしまう。

 そんな混乱した艦隊の隙を突いて重巡・軽巡クラスと思われる大量の砲弾が艦隊の頭上に降り注ぎ、大破した艦や漂流するしかない艦を次々と轟沈していく。それが終わったと思えば、空を明るく染める照明弾が投下され、見上げれば離脱せずに旋回を続けている航空機を見つけた。憎たらしい艦娘達が使っているズイウンとかいう水上機に似ているが何故かレーダーに微弱にしか反応しない。

 急いで夜間攻撃も可能となった新型艦載機を搭載した空母棲鬼と強靭な防御力を誇る戦艦棲姫に泊地からの退避を命じたものの、両艦共魚雷攻撃を受けて航行に若干の障害を及ぼしていた。

(艦娘ニコンナ攻撃能力等無イ筈……脆弱ナ艦娘如キニコンナ事ガ出来ル訳ガ……兎ニ角、コチラノ哨戒機ヲ出シテ……)

哨戒機を発進させようとしていた直後、探照灯を照射しながら正面海域に突入してきた高速の物体から砲撃が始まる。まさか潜水艦ではなく、単独で突っ込んでこようとは思っていなかった。それも警備を厳重にしていた鉄底海峡方面からではなく、高性能ピケット艦を配置していた筈の南東方面から。如何やってピケット網を潜り抜けたのかは知らないが、飛行場近くに併設された砲陣地で攻撃を行おうとした。たかが1隻で何が出来るのかと嘲笑う事が出来る余裕が飛行場姫にはまだあった。

 だがズイウン似の航空機から2度目の照明弾が投下された直後、照らし出された単独艦の姿ははヤマト型に酷似した大型戦艦だった。ボンヤリとしか分からないがその巨体に見合うだけの重武装を施している事だけは分かる。加えてレーダーに反応しない………待て、レーダーに反応しない?

 ここに来てようやく飛行場姫は遅ればせながら自身が下した対潜攻撃の判断が勘違いだったという事に気付く。先の魚雷攻撃はあの航空機がやった事であり、あの戦艦が自分に勘違いをさせる様に仕向けたのだと。そしてレーダーに反応しない事でようやく分かった。あの戦艦が、現在進行形で深海軍を震え上がらせている人類最強の切り札である『モンスター』なのだと。

 成す術も無く空母棲鬼が撃沈され、戦艦棲姫も艦首を吹き飛ばされて戦闘不能に陥った挙句、駆逐艦以上に鋭い動きに我が艦隊は翻弄され、10分もしないうちに全滅。いや、正確には戦艦棲姫とこちらに向かっているであろう鉄底海峡方面の偵察艦隊が残っている筈なので全滅では無いが嫌でも次に狙われるのは最重要目標であろう飛行場姫《ワタシ》だとは分かっていた。

 せめて戦艦棲姫の退艦の時間を稼ごうと、砲陣地で反撃を行っても中々当たらず、どんどん距離を詰めて砲陣地を副砲で薙ぎ払われてしまう。航空機を出せれば良かったのだが、搭乗員達が目の前に現れた『モンスター』の存在に恐れをなして搭乗拒否までする者もいた。

(出来レバコノママ戦艦棲姫ガ脱出スルマデ私ニ集中シテイテ!)

そんなささやかな願いが通じたのかは分からないが、モンスターは全火力を私に向けて停止した。そして、発光信号が送られて来た。まるで処刑宣告のように。

「『我ハ倭。言イ残ス事ハアルカ?』………我ノ命ト引換エニ戦艦棲姫ノ無事ト手厚キ持テ成シヲ保障サレタシ………」カチカチカチッ

言い残す事。どういう理由があったのかは分からないが、彼女は戦艦水鬼の大事な右腕であり彼女を死なせるという事は戦艦水鬼を侮辱した事に等しい。自分の命と引換えに彼女の無事が確約されるならそれで良い。

今まで表向きは航空主兵派でありながら裏で艦隊決戦派の戦艦水鬼に色々な情報と物資を横流ししていた私に天罰が下るだけの事だ。

 航空機を扱うとはいえ、私は陸上から動けない。海面に立つ事も出来ない。だから航空機を飛ばして打撃艦隊を援護したり機動艦隊に補充機を送ったりしていた。被害を受けにくいアウトレンジ戦法で艦娘達を苦しめる機動艦隊と違って近寄って攻撃を行い、損傷しながら、時に仲間が撃沈されてもへこたれない打撃艦隊が眩しくて羨ましかった。

だから空母水鬼達にバレない範囲で打撃艦隊に横流しを続けて時には擁護したりした。そんな戦艦水鬼の一番弟子たる戦艦棲姫が生き残れるのならその代償に私の命など幾らでも差し出してやる。

『了解。敵艦ノ無事ハ確約スル。サラバダ。』

その発光信号を受けると同時に砲撃が始まった。大小様々な34発の砲弾は滑走路に着弾すると先程と同じ火球を生み出して私を焼いていく。全身に激痛が走り、管制塔にへたり込みながら空を見上げると直ぐ目の前に大きな大きな砲弾が来ていた。まるでスローモーションのように迫った砲弾が白い光を発し、熱さが全身を覆った瞬間、私の意識は途切れた。

 

 

 

 

 管制塔で飛行場姫が命を落とした後も倭は改三式弾を放ち、残った施設や格納庫、滑走路にまで砲撃を浴びせて破壊し尽くし、ヘンダーソン飛行場を文字通り“消滅”させた。

戦闘不能となった戦艦棲姫は近付いてきた倭に僅かに戦いたが、飛行場姫の命と引換えに生き残った事を知らされるや否や大人しく捕虜となる事を選ぶ。約束通り手厚い持て成しを受ける事となるのだが、それは後ほど語ろう。

 

『トラック泊地第2艦隊旗艦倭よりトラック泊地司令部へ。我、敵性勢力の殲滅に成功。尚、当艦の損害は皆無である。これより帰還する。』

 

この電文が送られて来た事でトラック泊地司令部の提督達は成功した事に喜んだが、同時にある種の畏怖の念を覚える事になる。

だが、大本営では『敵の真っ只中に突撃して作戦を成功させた挙句損害皆無。』という常識を逸脱した戦果に、もしも反旗を翻された時に自分達も深海棲艦達と同じ運命を辿るのではないかと考え、万が一に備えての『倭』対策を練り出す者までいた事は誰も知らない。

 




はい”飛行場消滅☆”&”敵艦隊殲滅☆”されました!金剛と榛名によるヘンダーソン飛行場への砲撃をふと思い出したので倭にサクッと殺ってもらいました。

副長達のだらけシーンは突っ込まないで下さい(笑)暇潰しに将棋や囲碁は必須だと思わr(61cm砲弾直撃
だって三式も改三式もどの道対空弾として使えるから大丈夫なはず(震え声)金剛達が三式弾を撃ち込んでそれなりに被害が出たんだから改三式弾を撃ち込んだって問題ナイアッド。

捕虜にした戦艦棲姫の事は次回書こうと思いますがあまり期待しないで下され(汗)

一部にエスコンの台詞を入れましたが誰かお気付きになられましたか?
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