戦闘シーンは前半のみで、後半はほぼ駄弁りがwww
【新型艦が参入いたしました】
やったね笹川提督!これで艦隊戦力は更に増強されるね!(同じ様に消費量(と提督の胃薬の使用量)が増えますけど)
‐20XX年12月31日22:00北極海極点付近‐
『時雨との通信途絶!先程の爆発と同時です!』
「直ぐそこに居る筈だ!ヴォルケンクラッツァーの相手は倭に任せて我々は時雨の乗員救助に向かう!」
『倭より春風へ。貴艦は時雨の救助に向かわれたし。』
「了解!すぐに向かいます!先輩、どうか御無事で!」
『へへっ!簡単にくたばるつもりなんてねぇよ。俺達の倭は不沈艦だぜ?さぁ早く時雨の救助に向かえ。連中を凍え死なすなよ。』
「急いでも60ktしか出ませんって。うわっ?!」
少し緊張感が抜けた会話が出た瞬間に至近距離に80cm砲弾が着弾した。ヴォルケンクラッツァー級も初弾で夾叉させてくるとは厄介な奴だ。春風(つまり本艦の事だ)が至近弾を受けたお返しとばかりに倭の61cm砲が轟音を轟かせて超兵器に牙を向く。負けじと撃ち返してくるヴォルケンの80cm砲弾が倭を掠める度に見ているこちらの肝が冷えてしまう。
何とか辿り着いた時雨の居たであろう海面には重油が漂っており、幾つかの救命ボートと辛うじて浮かんでいる艦首にしがみ付いた数名の乗組員が居た。殆ど姿を残さずこの最果ての海に身を沈めていく『近接戦最強の護衛艦時雨』を見て一部の乗組員は「時雨もやられたか……」と呟いていた。
専属護衛艦として10隻が建造された白露型護衛艦の中で激戦を乗り越えてここまで生き残れたのはこの時雨だけだった。そして最後の最期まで『倭の為に』と春風と共に砲台群全てを叩き潰して極寒の海を駆け回り、遂に力尽きた。
時雨の乗員を救助した後、本艦は一時後退し、後方に居る大型ドック艦『イズモ』へ時雨乗員を送り届けた後、倭用の61cm砲弾を積載して極点海域へ直走っていた。だがヴォルケンの波動砲によって解放軍第1打撃艦隊の9割が消滅した為、解放軍司令は残存する戦艦部隊の極点海域へ迂闊に近付けさせられず、水雷戦隊の駆逐艦を本艦の護衛に当てていた。
彼等とて倭単艦に超兵器を任せている事に悔しさすら感じているだろう。戦艦としては破格の性能を誇る倭だから、最早最後の1隻となったから尚の事喪失する事を恐れた解放軍上層部は倭投入を躊躇った。だが波動砲で主力艦隊の9割が削られた事が確認されるや否やアークロイヤル解放軍司令官が直接倭へ赴き、出撃命令を下した。
『苦しい戦いになるがこの戦艦の力が今必要なのだ。これが最後の戦いになると信じている。だから今一度力を貸して欲しい。解放軍司令官としてお願いする。』
そう言い切って地に頭を着けんばかりに深々と頭を下げた司令官の姿に誰もがやろうという意識を固めた。険しい表情のアークロイヤル司令が『世界の為に死んでくれ。』と言っている事を悟った倭乗組員の中で言及する者は1人も居なかった。
そして海域の入り口付近で水雷戦隊が一斉に回頭を始めて戦域離脱に入り、春風はそのまま直進して倭が戦っている極点海域を目指して狭い氷山の間を駆け抜けていく。開けた場所に出るとそこが極点の湾内なのだが、到着した我々は思わず息を呑んだ。
倭がヴォルケンクラッツァーを大破させているのは噴出している炎と黒煙で分かるが、当の倭は既に船体後部左カタパルト付近に貫通弾を受けて内火艇格納庫が全損。擬装煙突も中程で吹き飛び、第3砲塔から火の手が上がり、砲塔そのものが大きく破損して砲身はあらぬ方向へ折れ曲がっていた。この時、艦橋要員が思わず手に持っていたカメラのシャッターを押したのは偶然だったのかは分からない。だが遺しておかねばならないと直感で悟ったのだろう。
文字通り中破判定だが、それでも倭の戦意は衰えていない。大破している第3砲塔の、生き残った1門の砲身までも使って砲撃を続け、ヴォルケンクラッツァーの甲板上に存在する全てに攻撃を集中させていく。
ヴォルケンクラッツァー自身も凄まじい損傷を負いながらも力を振り絞って倭に反撃を行っている。自慢だった波動砲の砲身はへし折れ、主砲の80cm砲は僅かに1基が生き残っているだけだ。殆どの兵装を潰されながらそれでも負けじと奮戦する姿には敵であっても敬意を表したかった。だから倭も敢えて砲撃の手を緩めない。沈めるべき相手でありながらも敬意を表するに値する超兵器は幾つか見てきたが、その中でもこの超兵器は別格だ。
止めの一撃とばかりに放たれた倭の主砲弾がヴォルケンクラッツァーの艦橋へ飛び込み、艦橋そのものを粉砕した。それと同時にヴォルケンクラッツァーは全機能を停止し、ゆっくりと沈降を始めた。その間に急いで倭へ接舷して砲弾の補給を済ませて海域を離脱しようとした時、倭から約100mも無い地点に巨大な水柱が立ち上がった。
それは今まで見た事の無い程大きく、途轍もない恐怖を感じるものだった。レーダーを見ればまだ超兵器ノイズは観測され続けている。つまりヴォルケンクラッツァー級は1隻ではなかったという事。
倭が再び艦首を極点方向へ向けると同時に薄い霧の向こうから湾内に進入してきた巨大な戦艦が居た。
『我ガ艦コソ、究極超兵器………ルフトシュピーゲルングナリ………』
ただ、幻を見ているとしか思えなかった。だがこれは紛れもない事実だ。2隻目の摩天楼級が姿を現した。
倭の主砲が砲撃を行うと同時にルフトシュピーゲルングも砲撃を開始。2艦の激しい戦闘が始まり、本艦も時折流れ弾に肝を冷やしつつ戦況を記録し続けた。勿論多少なりと援護になるように倭に向かう巡航ミサイルを多目的ミサイルや主砲の改三式対空弾で落とし、隙を見て雷撃をする程度の事しか出来なかったが。
3度目の雷撃を行った直後、倭の後部艦橋と第3砲塔、第4砲塔が100cm砲弾の命中によって大爆発を起こした。その中でも第3砲塔は当たり所が悪かったのか、バーベッドの中程から上が左舷側へはね上がってしまい、8番両用砲と10番両用砲を押し潰した。だがそのまま振り上げられていた砲身の重みが加わった事で更に海へ向けて傾き、遂に第3砲塔は大きな水柱を上げて海中へ没した。
直撃を喰らった第4砲塔は折れ曲がった砲身1門を除き、1門は砲塔天蓋を通り越して海に吹き飛ばされ、もう1門は艦載機格納用エレベーター付近まで吹き飛ばされた挙句、入り口を塞ぐ形で蓋の役割を担っていたエレベーターに突き刺さっていた。後部艦橋は設備そのものが跡形も無くなって、マストも第3砲塔と同じく海中に沈み、その後部艦橋と第3砲塔に挟まれていた2番副砲は言うまでも無く消滅。後部艦橋で炸裂した100cm砲弾の威力は凄まじく、破損していた擬装煙突は前部艦橋への破片を防いだものの瞬時にズタズタに引き裂かれ、辛うじて根元の部分を残すのみとなった。
たった3発で戦闘力が半減した倭に情け容赦の無い攻撃が雨霰と降り注ぎ、船体のあちこちに直撃弾を受けても尚、倭は迫り来るミサイル群を叩き落しながら戦闘を継続。浸水が発生しているのか、速力が大分低下している様に……いや確実に低下している。推測が正しければ今の倭が発揮出来ている速力は60ktが精一杯という所だろう。
実際に倭ではヴォルケンクラッツァーとの戦闘で発生した至近弾で浸水が小規模ながら発生しており、今までは食い止められていたのだが、流石に61cmの装甲でも80cm砲弾の威力を抑え切れなかった。
執念とも言える攻撃は倭も堪えたらしく卓越されたダメージコントロールを持ってしても最早成す術が無く10度近く右に傾く。しかし、そんな状態になりながらも倭は強引に主砲を含む残存砲による攻撃を続けてルフトシュピーゲルングに撃ち返し続ける。
大和型戦艦では5度を越えると主砲の発射が出来なくなり10度で副砲が、15度で高角砲や機銃の発射が困難になるとされている。当然だが倭は大和型の最終形態とも言える戦艦であるが故に傾斜によって射撃が困難になる等の欠点もある程度受け継いでしまっている。だがそれが何だと言わんばかりに10度以上傾いているにも関わらず主砲、副砲、両用砲は撃ち続けている。その姿はネームシップたる意地を張り続けるかの様に見えた。
倭もルフトシュピーゲルングも双方共に瀕死の状態になっても攻撃の手は緩めず『撃って撃って撃ちまくる。』を体現していた。退かず譲らずの戦いに終止符を打たんと、ルフトシュピーゲルングは超波動砲の砲口を倭に固定しエネルギーの充填を始めた。
だが瀕死になっても諦めなかった倭の主砲弾が超波動砲の砲口へ飛び込み、炸裂すると同時にチャージされていたエネルギーが暴発を起こす。強烈な閃光と共にルフトシュピーゲルングそのものを粉砕し、存在そのものが消えてしまった。
ルフトシュピーゲルングが既に消滅した事を確認してから倭の方を見ると、限界を超えた戦いでアラハバキ・アマテラス戦以来損傷したまま穴埋め程度の応急修理しか出来なかった右舷装甲板が耐え切れなくなったのか舷側に大きな亀裂と大量の浸水によって倭は右に傾きながらゆっくりと艦尾から海中へ沈み始めていた。力強い印象を与えてくれた主砲は力尽きたかのように砲身を下しており、次第に右へ右へと重力に従って自然に旋回していた。
だが倭の周りには一切の救命ボートやカッターなどは浮かんでいない。それらを降ろせなかったのかどうかは分からないが、倭全乗組員がこの北の海を墓場と考えていたのかもしれない。
時刻は23:59。新年を目前にして倭は横倒しに近い状態ままその姿を完全に海上から消した。そして沈みきると同時に爆発音と共に水柱が立ち上がり、海中で分断された倭は極点の海中深くに消えて逝った。
正直言って映像記録として遺して遺族に伝える事を考えるとかなり辛いものがある。だがそれでも我々と春風は途方も無い代償を払って生き延びた。
=北極海決戦における戦闘結果=
解放軍
戦没
戦艦:倭型1隻、大和型3隻、金剛型2隻、扶桑型2隻、アイオワ級3隻、キング・ジョージⅤ世級2隻、ヴァンガード級2隻
駆逐艦:白露型1隻
損傷艦
駆逐艦:旗風型1隻(損傷軽微)
帝国軍
戦没
超兵器:ヴォルケンクラッツァー級2隻
駆逐艦:A.M.サムナー級3隻
勝利:解放軍 敗北:帝国軍
‐5年後、江田島‐
江田島から呉軍港が見える位置にその軍艦は係留されていた。だが、武装を取り外され、全ての穴を塞がれたその艦は何処か寂しげな雰囲気を纏ったまま近くの港から出て行く漁船を静かに見守っていた。
その艦は旗風型イージス護衛艦3番艦『春風』。5年前、北極海決戦に参加した数多の解放軍艦艇の内、沈む事無く無事に生き残り同型8番艦と同じ様に幸運艦とも呼ばれた。
終戦後、解放軍の護衛駆逐艦隊旗艦として様々な任務に当たった後、予備役に編入されていたが次世代型イージス護衛艦への改修が決定され、艦名と級名を改めて『やまと』として再就役させる計画が発足し、順調に作業が進んでいた。
春風が『やまと』の名を冠したのは対帝国戦で解放軍の旗印として解放軍に多大な貢献をした倭型1番艦への感謝と共に参戦して生き延びた春風への賛美が込められている事はいうまでも無い。
改名の際に解放軍総司令官アークロイヤルは、
『あの日倭を救えなかった謝罪の意味も込められている。倭とその乗組員達と散って逝った多くの人々が『平和』を願った様に私もそれを願って名付けたのだよ。倭に出撃指示を出した事は間違ってはいないと思っている。それと同じくらいあの戦艦を死地に出したく無いとも思っていた。だが倭達諸共世界が滅んでしまうのならせめて一矢報いてやろうと私は……私は、倭に『世界の為に死んでくれ。』と言った。』
と取材陣にコメントしている。
しかし改名式の2日後、心不全で急逝したアークロイヤルの願いも空しく解放軍が統合軍へ変わった際の経費削減の煽りを受けた『やまと』はミサイルVLS以外の武装を取り外しモスポール処置が施された後、江田島に係留され、事実上計画は無期限延期とされてしまった。
そんなやまとの艦首に佇む1人の少女の姿があった。その手が持つのはかつて倭の初代艦長、時雨吉明大佐が被っていた軍帽だった。紺色を更に濃くして黒に近付けられたその軍帽は倭の幹部だけに支給された特注品でもある。彼女の姿が誰にも認識されぬまま佇んでいられたのはこの艦の魂であるからだろう。
「倭、私はもう疲れました………2年前に雪風が解体されてからずっと独りでいるのは………今、私もそちらへ行きます………また貴方に会えるのなら………もう一度……もう一度護らせてください……」
そう言うと、少女の身体が淡く光り、空に吸い込まれるように霧散した。
‐ガダルカナル島より南東30kmの海上‐
「…………あれ?………ここ、どこ?…………なんでガダルカナル島の近海なの?取り敢えず統合軍の拠点もある筈だから行ってみようかな……」
ガダルカナル島より南東に30kmほど離れた海上に1隻の軍艦が現れる。その外見は今まで誰も見た事のない形状をしており、重巡洋艦に匹敵する船体に天高く突き出したマストと巨大な艦橋構造物。
如何みてもフリゲート艦に見えるが兵装配置が明らかに変だ。最近のフリゲート艦は単装砲が1基となっている事が多いが、この艦は火力に劣る貧弱な単装砲を主兵装にはしていなかった。
かつて戦艦大和の副砲や軽巡洋艦大淀の主砲として採用された長砲身15.5cm3連装砲4基を主砲として搭載し、ミサイルVLSは全て艦の後方に集められていた。近接防空火器としての役割を担う25mmCIWSは10基が設置され、ただの個艦防空に使われるわけではないといえる。
「ん?」
赤茶けた髪を揺らした少女があらゆるレーダーバンドを使って周辺を索敵していると、ガダルカナル島方面の赤外線が一瞬だけ増え、直後に何者かの慌ただしい通信が飛び交っている事に気付いた。
「まさか拠点が襲撃を受けたの?!い、急がなきゃ!!」
自分1人しか居ないCICで艦が動く事を意識しただけで1万トン近い船体は滑るように動き出してあっという間に持ち前の60ktを発揮して全力でガダルカナル方面へと向かう。
だが全力で突入した湾内に存在したのは自分が知るものではなく、黒く不気味に滑りを帯びたナニカの残骸であった。それが大量に浮いているのだから吐き気すら催してしまいそうだ。
「あれ?何でここに戦艦パターソンが……乗員も居ないみたいだし………基地は吹っ飛んで無くなってるし………うっ………」
目の前に艦首を失って鎮座するアイオワ級戦艦。大きく抉られたクレーターが幾つも存在する基地。似たような景色が脳裏に浮かんでは消えていく。その中には必ず彼が居た。私が必ず護ろうと心に決めて、結局護れなかった、大きくて勇ましかった戦艦。
その彼が持つ独特の匂いがここで感じ取れたという事はもしかするとサルベージされて蘇ったとしてもおかしくは無い。だが、ある事がその考えに疑問点を抱かせた。1つは、私は戦後ミサイルVLS以外の武装が撤去され、名前だけの次世代型イージス護衛艦としてモスポール処置を受けて江田島に係留されて放置されていた筈なのに今の自分はミサイルVLSを含む全ての武装が北極海決戦直前のものに戻っていること。
もう1つは船体が完全に分断されている上に放射能で汚染された北極海の深い海に沈んだ倭がサルベージ出来る訳が無いということ。
これらが組み合わさった事で、倭そのものが何らかの理由で異世界か並行世界に転位し、そこへ私が来てしまった、というSF小説ばりの事態がおぼろげに分かった。
取り敢えず漂流しているアイオワ級を放置し、レーダーを広域索敵モードに切り替えて周辺を探る。すると鉄底海峡方面に戦艦クラス2、巡洋艦クラス1、駆逐艦クラス5の正体不明の艦隊を発見した。どうやら何かの回収作業中なのか、ぐるりと護衛艦達6隻が囲んでいる。
巡航速度に落として30ktで接近していくと、気付かれたのか作業が済んだのかは分からないが艦隊が動き出した。だが妙な隊列の組み方をしている。艦隊最前方に巡洋艦、その後方に戦艦が並び、その両翼を2隻ずつで固めているのは分かる。問題は中央に出来た大きな隙間だ。7隻の艦隊ならばもう少し艦隊幅を小さくしてもいいのに。
しかし私の抱いた疑問はすぐに晴れた。一瞬だけ、本当に1秒映ったか移らないかだったが、中央の隙間に大きな点が薄く映った。僅かに映っただけとはいえ、その点の映り方は見覚えがある。点が示した存在に追い付くべく全速で動き出す。
私が出せる最大速力60.3ktを叩き出す為にガスタービン4基が唸りを上げる。少々燃料を食うけど、今はそんな事に構ってはいられない。
(あの映り方、間違い無い……あんな映り方をする戦艦なんて彼以外考えられない……)
朱に染まったガダルカナルを背にして目的の場所へと彼女は走り出す。自分の置かれている状況やこの世界について知る為に彼に会って確認しなければならない。
「作戦成功ですね。手際良く晴嵐隊も回収してもらえて何よりです。」
「燃料補給さえなければ、と言いたいのだろう副長。」
バレてましたか、とペロリと舌を出しておどけた副長に対して少し睨みを利かせて艦橋へ行くように指示を出し、自分は客間の扉を開ける。
そこには1人の女性が、正確には敵である深海棲艦『戦艦棲姫』が座布団に大人しく座っていた。特に塞ぎ込んでいる訳でもなく、かといって客間で暴れまわるような事もせず、チューブで繋がれた自身の艤装を従えたまま、卓袱台に出されていた紅茶をジッと見つめているだけだった。既に冷めてしまったのか、湯気も無くなっている。
「何故淹れたのに飲まなかった。」
「毒デモ入ッテイタラ困ル。」
「余程の事が無い限り毒入り紅茶なんて本艦では出さんよ。尤も、悪戯感覚で下剤をうちの乗組員が入れる可能性は捨てきれないだろうな。」
「冗談ダロウ?」
「勿論冗談だ。そんな馬鹿げた事は禁止している。で、貴女の現状だが、如何捉えているのかな?」
「捕虜、ダロウナ。ソレシカ思イ浮カバナイ。」
そう思っていても仕方ないか。確かに彼女は飛行場姫の命と引換えに生き延びているのだから。だが俺は彼女を捕虜扱いしているわけではない。実際この部屋に閉じ込めているといえば閉じ込めているので体裁上は捕虜になるのだろう。
「捕虜、そう捉えているか……普通はそんなものか………」
だが表向きは兎も角、俺は『捕虜』と言う言葉が嫌いだ。だから彼女を接待用に誂えた客間へ案内した。本来なら捕虜用の部屋もあるが今は砲術長の私物が詰め込まれ、実質砲術長専用の物置と化しているのでそこへ案内するなど論外。
どの道丁重に扱うつもりだったので畳敷きの客間へ通したのだが、紅茶セットが置かれたままになっていたのには驚いた。大方前の御茶会で金剛が忘れていったモノだろうか。連日の出撃で泊地に居る時間が少なかった事も含めてまたこの客間で御茶会をやるつもりで置いていったのかも知れない。
戦艦棲姫を通してすぐにアールグレイを淹れてみたのだが警戒され飲まれずに冷めてしまったわけで。
「ム?ナラバオ前ハ私ヲドウ捉エテイルノダ?」
「客だ。俺は『捕虜』という言葉が嫌いでな。例え軍令部が貴女を捕虜として扱っても俺は『客』として扱う。飛行場姫にも貴女の無事を約束しているから尚の事だ。それに、今の貴女は艤装が在るとはいえ、無防備に等しい。違うかな?」
「………………コノ私ガ簡単ニ艦娘如キニヤラレルトデモ思ッテイルノカ?尤モ、オ前ニナラ消サレテモ悔イハ無イゾ。」
確かに今彼女が脱走した場合、交戦するのは俺を除く山城達第2艦隊の面々だ。だが戦艦棲姫はもとより俺ですら致命傷を負いかねない武装をした駆逐艦を2隻も抱えた艦隊のど真ん中に居る事を教えてやればどんな表情をするだろうか。
「シカシ、以外ダ。」
「何がだ?」
「オ前ハ刃向カウ者モ逃ゲ出ス者モ関係無ク徹底的ニ沈メル『モンスター』ダ。ダカラ私モアノ場デ沈ズメラレルト思ッテイタ。」
俺は深海棲艦達を刃向かおうが逃げようが関係無く沈めているのは事実だ。だが逃げる者に関してはどの場合も『砲を撃ちながら逃げている』事が殆どだった。砲を向ける事の無かった何隻かは見逃しているつもりだが、大抵は沈めてしまっている。本音としては“超重力弾や改三式通常弾の効果範囲内に居るのが悪い”と言いたいが、言ったら絶対に厄介な事になるので黙っておく。
「砲を向けなければ無闇に沈める事はしない。さっきも言ったが俺は貴女の無事を保障しなければならない。っとこれじゃ聴取にもならんな。」
「フフフ、タダノ駄弁リニナッテイルナ。」
「まあこちらとしても情報を引き出せと言われているが、言う気は無いのだろう?」
「私モ戦艦ダカラナ。ソレナリニ責任モ重大ダカラ言ウ気ニハ無イ。」
別に俺も情報を引き出す為にここへ入れたわけじゃない。もし他の部屋に入れておいた場合、訳合って乗り込んでくる艦娘や提督達に見つかるのは明らかだ。
この客間は司令塔の真下にあり、厚さ1000mmの装甲で一緒に覆われているので100cm以上の砲弾でも直撃しない限りどうと言う事は無い。その上ここへ入るには厳重なチェックとフル装備の陸戦隊が常時監視している廊下を通らなければならないし、俺しか知らない暗証番号が必要なのでまず誰も入る事は出来ない。尤もロックをしたとしても内側からドアノブを回してしまえば簡単に出られてしまうのが難点だが。
以前も金剛達がここで御茶会を開いて帰る時に色々疲れたと言っていただけあって以降の御茶会は宿舎でやる事になっている。それだけ厳重な警戒を布いているからといって油断は出来ないが彼女の存在を出来る限り隠すのならこの客間は都合が良かった。
「逆ニ問ウ。何故オ前ハ強イノダ?何故味方ニ艦娘ヲ選ンダ?オ前ホドノ実力ガアレバ人類ナド滅ボスノハ容易イ筈ダ。」
「………昔、共に戦って同じ海域で沈んだ仲間と瓜二つの子に出会ってその子だけは俺の命を投げ出してでも守ると決めた。それに俺に帰るべき『家』があると、俺の事を『家族』と言ってくれた人達に何の恩も返さないわけにもいかないし、何より力は弱きを守る為に振るうモノだと思う。」
「ソウカ……残念ダ……(命ヲ賭ケテデモ守リタイ、ソノ一心デ強ク在ロウトイウノカ……戦艦水鬼様ト同ジ、似タ者同士トイウ事ダナ。)」
「さて、そろそr『艦長、艦隊後方より高速接近中の艦影あり。速力60kt、距離8万。如何しますか?と言うか艦橋戻ってきてください!』……やれやれ、俺は艦橋に戻るが、今日から解放する日までこの部屋を貴女に宛がうのでこの部屋にある物は好きに使って良いぞ。何かあったらそこのボタンを押せば艦橋と通話が出来るから忘れないでくれ。」
「分カッタ。艤装ハ着ケテイテモ構ワナイカ?」
「この部屋では許可しよう。それ以外は検討させてもらう。では。」バタン
客間にロックを掛ける事が捕虜と同じ扱いだと言えるが取り敢えず周囲に仲間が居る以上彼女の存在を知られるわけにはいかない。それが例え時雨であっても、だ。
急いで艦橋へ戻ると副長がいかにも怒ってますという顔で待っていた。まぁ20cmサイズの状態では全然怖くないけどな。
「状況報告。」
「23:00頃、艦隊後方に所属不明艦1隻を探知。現在時刻は23:35ですが進路変更の様子が無く、尚も距離を詰めつつあります。」
「後どれ位で視認可能距離に入るか分かるか?」
「こちらは全艦12ktで進んでいますから……速度差は48ktくらいですのであと3時間ほどでしょう。」
「艦隊各艦に警戒態勢を発令。見張りを厳にせよ。」
警戒態勢が通達された為、山城達の艦内では当直以外の者が警報で叩き起こされ、寝床から転げ落ちる者が続出していた。そんな事は露ほども知らない倭ではもっと別の意味で大慌てになっていたが。
『こちら解放軍日本艦隊所属旗風型3番艦春風。倭、応答願います。』
「こちら解放軍日本第1艦隊所属旗風型3番艦春風。倭、応答願います。」
『こちら大日本帝国海軍トラック泊地第2艦隊旗艦倭。本当に春風なのか?』
「嘘を付いても仕方ありませんよ。これより当艦はそちらの艦隊に合流させてもらいますが宜しいですか?」
『そのまま接近しても大丈夫だ。事情はこちらから艦隊と泊地司令部に通達しておく。』
「了解。あと2時間で合流します。」
『燃料無駄食いするんじゃないのか?』
「満タンですから心配しなくても大丈夫です。」
『了解。』
他愛の無い会話を終えて、兎に角進む事だけに集中する。それからきっかり2時間後に倭達が見えてきた。編成は白露型2隻、朝潮型3隻、最上型1隻……扶桑型らしい艦橋を持った航空戦艦2隻、そして2隻の航空戦艦より巨大で目立つ倭型1隻。
(間違い無く倭ね。5年ぶりに会える………早く、会いたいなぁ………)
倭と春風、数多くの激戦と別れを乗り越えて5年ぶりに再開する彼等は何を語るのか。それはまだ分からない。
何かヴォルケン・ルフト戦がgdgdしてるぞ!設定があやふやになってる、しっかりしろ!と言っていただければ幸いです。
一応本編製作をここで止めて番外編(エクストラ編・日常生活編、イベント・行事編、訓練編など)の製作に掛かっていきます。本編製作は番外編がある程度出来てからになりますので御理解の程お願い申し上げますm(_ _)m