遂に動き出す災禍達。倭との関連性や如何に。
では、本編へどうぞ。
‐横須賀鎮守府中会議室 21:30‐
ここ横須賀鎮守府では、ガダルカナル強襲作戦成功の勢いが冷めぬうちに太平洋での主導権を握る作戦を呉・佐世保・舞鶴の最高指揮官を招いて立案していた。尤も、大本営に居なければならないはずの久遠が横須賀鎮守府に大本営での仕事を持ち込んでいるので強引に鎮守府で会議が出来るのである種の防諜対策は出来ていた。
「では、全会一致でMI再攻略作戦に賛成と言う事で早速準備に取り掛かってもらいたい。」
「はっ!しかし総長、倭と雨月を遊撃艦にして宜しいのでしょうか?せめて雨月を打撃艦隊へ編入させてもらえないでしょうか?」
佐世保から出向してきている水元中将は暗に打撃艦隊の火力を増すべきだと主張しているが、彼がそういうのも無理は無かった。
名前の挙がった2隻は火力・防御力・機動力の3点において突出した戦闘力を有している。1番艦の方が火力・機動力に優れているが、まだ既存艦艇と速度を合わせやすい2番艦を打撃艦隊に組み込んだ方が良いと水元は考えていた。
「ふむ・・・確かにそれも良い。例の超兵器とやらが出てきた時に離れた場所に居られては対応出来ぬな。だが、倭に遊撃全てを押し付けるのは少し心苦しい気もするが・・・・・・」
そう相槌を打ったのは呉で第1艦隊指揮官を務めている光部厳慈大将。前任の呉第1艦隊の指揮官は、横須賀で起こった傷害事件(被害:艦息が手を負傷)の件で拘束された蛇城英作少将への尋問によって、艦娘の売買に加担していた事・輸送船団護衛任務時に不当な理由で合流を故意に遅らせ、輸送船団とその護衛艦隊の命を危険に晒した事で牢獄行きとなっていた。
その為、艦隊指揮官が不在で居るわけにもいかず、止む無しとして取られた措置は光部大将率いる呉第2艦隊との統合だった。幸い、両艦隊とも同じ艦娘が被る事が無く、統合も手早く済ませられたものの、激務が2倍になった為に光部大将の頭はすっかり白くなってしまっていた。
「・・・1つお尋ねさせていただきますと何故私のような若輩者が倭に乗り込まねばならないのでしょうか?私よりも他に適任者が居るのでは?」
「橋本中佐、君の言いたい事は分かる。だがこれも経験だと思って行ってくれ。」
「・・・分かりました。必ず任務を全うしてまいります。」
「頼んだぞ。」
この橋本大祐は呉鎮守府所属であり光部大将の指揮下で着々と地盤を固めている最中で、言わば新米と中堅の間に居た。経験を少しでも補おうと光部が久遠に頼み込んで倭への乗艦を要請。久遠はそれを快く承諾し、後は東山中将が許可を取り付けてくれるかどうかに掛かっている。
「・・・・・・」
何も言わず、ただ海図とそこに並べられた敵味方の駒の中で割りと目立つ駒の1つを男は睨み付けていた。その瞳に宿るのは怒りと憎悪の感情のみ。名を柿本清(かきもときよし)といい、階級は中将。彼は超兵器の説明を行った艦息に愚弄された事を根に持っていた。あの会議で大抵の提督達は超兵器との絶望的なまでの力の差を見せ付けられていた。
【間違っても既存の艦娘で勝てるなどと思うな。】
だがそれは誰よりも劣る事を嫌い、時には他人を踏み付けてまで強引にのし上がって来た柿本にとって絶対に受け入れられない事実だった。だからこそ復讐の機会を窺う。
(この作戦、奴に一泡吹かせて思い知らせてやる。この俺と俺の艦隊が戦争兵器風情に劣っているなど絶対に有り得んという事をな。)
‐横須賀での会議から数週間後‐
春風の着任手続きやその他諸々の作業で横須賀へ直接赴く事が出来なかった私宛に、暗号化された電文が届けられた。しかも難解極まる陸軍式で。
「倭、これちょっと解読してくれるかしら?」
「・・・『MI再攻略作戦を実行するに当たって必要な資料を送った。熟読せよ。』だと。割りと端的だな。」
窓の外を見ると、1機の一式陸攻が朝焼けの日を浴びながら飛び去っていく。あの陸攻はこれから横須賀に戻っていくのだが、ここからパラオ、マニラ、台北、鹿屋を経由して横須賀へ行かなければならない。日数的にどうなっているのか分からないが、片道約6830km、往復13660kmは途中休憩を挟むとはいえかなり疲れるだろう。そんな彼等が持ってきた情報を無駄にしない為にも作戦を完遂しなくては申し訳が立たない。
書類に目を通していくと、雨月は第1打撃艦隊に編入され、春風は我トラック泊地機動艦隊の護衛艦隊旗艦に、倭は・・・・・・想像通り単独配置。然程制限を設けられていないのである程度自由に行動出来る。一応遊撃艦には攻撃と防御のどちらにも素早く対応出来る艦が望ましい。重火力・重防御・高機動の三拍子が揃った倭には丁度良い任務だが、それは同時に上層部にとって倭を運用するには専用の高速艦が必要となる為、扱い辛い戦艦であるという事を現していた。
「倭は遊撃艦として前線配置ね。」
「ふむ。露払いをして来いと。」
「そんな事したら『我々の戦果を奪うな。』とか言われるわよ。」
「そういう事を言う奴に限って実力は大した事無さそうなんだが。」
「まあ一概にそうとは言えないわ。横須賀の柿本中将は言い方に問題があるけど艦隊の使い方はかなりの腕よ。」
そうか。と言おうとした瞬間、執務室の黒電話が鳴り出した。『こちらトラック泊地司令部笹川大佐です。』と応対している間、手元にある資料を何となく眺めていた。
「倭、東山中将から貴方宛の電話よ。」
東山中将から俺に?珍しい事もあるな、などと思いつつ受話器を受け取る。
「御電話変わりました。倭です。」
『倭か、急で済まないが少し頼みがあるのだ。』
「その頼みというのは?」
『うむ、橋本という呉の佐官が居るのだが、その彼を君に乗艦させたいと総長が仰っているのだ。何とか乗せてやれないか?』
「ではその方が信頼出来るという保障はありますか?」
『彼は光部大将の部下だ。素行・思想に関しては全く問題ない。私が保証する。』
「分かりました。乗船を許可させていただきます。しかし、艦内での行動には制限を掛けさせてもらいますので御了承ください。」
『助かる。橋本中佐は作戦前に輸送船団と一緒にそちらに着く手筈となっている。用件は以上だ。宜しく頼む。』
「了解しました。」
電話を終えて受話器を戻すと、笹川は目でどうだったのか質問してきた。
「俺に乗りたい奴が居るから許可をくれ、と言ってきただけだ。」
「そう、じゃあ今度は―――」
「作戦参加メンバーにこの書類を届けろ、だろう?」
「分かっているなら宜しい。それと此間の計画だけど、一応許可は出しておくわ。」
「了解。」
資料を手渡されて執務室を後にし、各艦隊旗艦の部屋へ書類を投げ込んで中庭へ移動すると、幸い誰も居なかった。中庭に設置されたベンチに座って資料に書かれている艦隊編成を見ていく。
俺達転位組はそれぞれの役割を持たされて任務に従事する事になるが、相変わらず特殊弾の使用が制限される編成だ。超重力弾は起爆点から直径50kmの範囲に存在するあらゆる物を吸い込むが、その強力な効果は中心から15kmまでに限られる。それ以降は段々引力が低下していき、最大効果圏内の50kmの場所にいたっては俺の船体が僅かに引かれる程度まで引力が下がる。
超重力弾の時速5000kmで飛び回るハウニヴーだろうが何十万トンもある超兵器だろうが何でも引き込む性能の所為で俺が『無差別破壊兵器』とも称されてしまったが無ければ間違い無く俺が1万機近い航空攻撃から身を守る事は出来なかったわけだ。
それは兎も角、敵中間棲姫を防衛する敵艦隊を雨月含む艦隊で突破出来るかというと正直怪しい。幾ら雨月の火力が高くても随伴する味方の戦艦娘達が真っ先に離脱を余儀無くされ、その護衛の為に更に戦力が割かれる恐れもある。そして何より超兵器の事も気掛かりだった。
ここ暫らく現れていないが、作戦中に乱入してくる恐れもある。何時何処から現れても即座に応戦出来る様にしておきたいのだが、その前に開発をしておきたい。特に補助兵装や機関の開発が望ましい。尤も、艦娘達に積める物でないとお話にならないのだが。取り敢えず提督に相談してみよう。
‐工廠‐
意外にもアッサリと許可をもらえたので是が非でも良い物を開発したい所だ。そうでなければ申し訳が立たない。
必要な資源を放り込んでレバーを降ろす。30分後に現れたのは何と80cm60口径連装砲。俺でも運用出来ない代物だ。
「でかっ?!これ何ですか?!」
「80cm60口径連装砲。別名は『ツインドーラ』。ドイツの巨大列車砲を艦載砲に改造した物だ。取り敢えず要塞砲にでもしておけば良いだろう。」
「ここは要塞化されて無いんですが・・・・・・」
そう言ってくる夕張を尻目にもう一度レバーを降ろす。今度は2分ほどで出てきたが、これは『応急注排水装置Ⅳ型』だった。無いよりマシな装備なので取り敢えず明石に任せておこう。三度レバーを降ろし、出てきた物は『電磁防壁Ⅲ型』だ。これが無ければ一瞬でエネルギー兵装の餌食になってしまうので、あの世界では必須装備とも言えた。俺が積んでいる電磁防壁β型と比べれば雀の涙ほどの緩和機能だが、本当に無いよりマシである。
「そう言われてもな。」
仕方なく開発レバーを動かすと今度は1時間ほど掛かって出てきた。巨大な単装砲で長大な砲身かつ爆風避楯が無いと運用出来なさそうな代物だ。
「これ、さっきのよりデカくないですか?」
「当たり前だ。こいつは100cm60口径単装砲。コイツを運用していたのは超兵器ぐらいだ。通常艦にこの砲はデカ過ぎるし搭載して発砲しようものなら即転覆する色物兵器だという事さ。」
そう言いつつ視線は造られたばかりの巨砲、別名『ヨルムンガンド』と呼ばれる帝国軍が開発した大口径砲の1つに固定されていた。超兵器同様に自分と浅からぬ縁を持つ為、放って置くわけにはいかない。取り敢えずこれも砲台化する方が良いだろう。
その後も開発を続けてみたが出てきた物を纏めると、
・100cm60口径単装砲×1
・80cm60口径連装砲×2
・56cm60口径3連装砲×2
・怪力線照射装置×1
・多目的ミサイルVLS改×1
・噴進爆雷砲×1
・応急注排水装置Ⅳ×1
・電磁防壁Ⅲ×3
・水流補助推進装置×2
・統合制御装置ζ×2
・音波探信儀Ⅴ×1
・音波探信儀Ⅵ×1
・電波探信儀Ⅳ×2
・自動装填装置Ⅴ×2
・駆逐タービンε×4
まあ26回もやらせてもらってまともな装備がいまいち出来なかった。だが噴進爆雷砲や補助兵装が開発出来た事は喜ばしいと言えよう。
「うわぁ・・・かなり色物揃いですね・・・」
「文句を言うな。それで、頼んでおいた物は出来ているのか?」
「ええ。注文通り“2隻分”出来てますよ。載せ変えますか?」
「いや、それは本人達の許可が要るし先に見てもらわねばなるまい。取り敢えず確認に行こう。」
「分かりました。ではこちらです。」
明石に先導されて俺と夕張が案内されたのは工廠内にある駆逐艦用のドック。本来は修理に使う所なのだが、照明を消されたドックの最奥の2つだけがブルーシートで覆われていた。
「点けますね。」
ブルーシートの覆いを除け、照明が灯るとそこには軽巡洋艦に匹敵する大きさの船体が鎮座している。解放軍ではこの船体を『駆逐艦Ⅳ型船体』と呼称しており、白露型護衛艦はこの船体へ載せ変えて超兵器戦争に臨んでいる。恐らく駆逐艦の中で破格の戦闘力を獲得しているであろう時雨と夕立の武装を更に活かす為に提督に掛け合って開発許可を取り付け、後は機関を組み込んで上部構造物を載せれば完成。という段階まで建造は進んでいる。尤も、57mmバルカン砲はこれまた新たに開発しておいた12.7cm65口径連装砲2基へ交換されるので57mmバルカン砲は暫らくお蔵入りになるが。
この船体を開発させてもらったのは、新型超音速酸素魚雷と特殊弾頭魚雷を搭載する為だ。後々追加されるであろう高性能補助兵装やCIWSの事も念頭に入れているが問題なく積めるだろう。
「どうです、出来栄えは?」
「パーフェクトだ明石!夕張!そして工廠妖精達!」ニヤリ
「喜んでいただけて何よりです。」フンス
計画が順調に進めば彼女等2人は74.3ktもの高速性を獲得するに到る。急加速をすれば100ktを超える事だって可能だ。
さて、作戦開始日までに2人の許可を貰って慣熟訓練が終われば良いんだがな。願わくば早期に作戦終了を心掛けたいものだ。
目を覚ますと朝の日差しが差し込んできていた。時計を見れば06:30を示していたが、昨日の彼は執務室と工廠を行き来していて食事どころではなかっただろう。それでもって一睡もしていないと明石が知れば殴ってでも医務室に縛り付けるかもしれない。
それくらい彼は眠らずに戦い続けている。どれだけ身を削っても足りないとでも言うのか。
「ふぁぁぁ・・・やっぱり寝てない・・・のよね・・・・・・」
本来私はこんな時間まで眠りについてはいないのだけど、彼の事を考えているとどうにも眠れなくて遅くまで起きていてしまう。
‐もっと自分を大事にして欲しいものだわ。扶桑姉様も凄く気にしているのだし。って何で私があんな奴を気に掛けなきゃならないのよ!あぁもう本当に不幸だわ!‐
そう思ってついつい頭を掻いて唸る。身体を起こして外を見てみると、気に掛けていた人物が書類の束を引っ提げて執務室に向かっていく姿が視界に捉えられる。その後ろから小走りで近付いていくアホ毛と三つ編みおさげが特徴的な黒い制服の少女の姿も捉えた。本当に傍に居ると親子に見えて仕方ないのだけどあの2人の間柄は残念ながら親子でもないただの他人だ。
‐でもアイツってパッと見は提督に見えるんだから不思議ね。新入りの子なら間違いなく笹川提督と見間違えるだろうけど。‐
何時までも起きないままだと自分の姉が起こしに来てしまうので手早く寝巻きから何時もの服へ着替え終わって鏡台の前で少しだけ化粧をしているとやっぱり姉が自分の部屋へ起こしに来てしまった。
‐なんで化粧なんて覚えたのかしら・・・変な私ね・・・‐
そう思った山城は部屋を後にして、自分の姉と朝食を取る為に食堂へ向かう。今日の砲撃演習の相手として彼が参加する事になっているとすっかり忘れたまま。
最近になって化粧をし始めた妹。その原因がどんなものかは姉である扶桑は察しがついていた。妹は間違いなく『違います!何でアイツなんですか!』とか『有り得ません!』とか言って否定しようとするだろう。だが彼がやって来て数ヶ月で化粧の仕方を教えて欲しいと自分の所へ頼み込んできたのは記憶に新しい。もし妹と彼の前で言う機会があったなら言ってみたい。真っ赤になって俯いて沈黙する姿が容易に想像できて笑ってしまう。
「どうしたんですか?扶桑姉様?」
「いいえ。何でもないわ。」
辛うじてバレてはいないけれど、妹が彼を意識している事は誰でも分かっている。敢えて大破したままの格好で彼の前を通り過ぎたり「暑い」と言って近くで服を少し脱いでみたりしているが大抵の場合、彼は反応しないし見たとしても頭に疑問符を浮かべるくらいでまた別の作業に没頭していく事が殆どだ。
‐この先、もし彼が揺るぐような事があったらその時私達が支えてあげなければ立ち直れなくなるかもしれない。そんな事が無い様に願うばかりだわ・・・・・・‐
‐某所‐
寒風吹き荒ぶ地にその巨大基地はあった。その港に威風堂々と鎮座する鋼鉄の城の主達は、寒さから逃れる為に小さな掘建て小屋で暖を取っていた。
「今見回りから戻った。」ガララ
「寒い・・・」ブルブル
「お、戻ってきたか“魔神”サマに“極光”。いい加減出撃してパーッと暴れまわりたいぜ。てか寒いから早く戸を閉めろよ。炬燵から暖かさが逃げちまう。」
「・・・・・・まだ『その時』ではない。急いては事を仕損ずるぞ“暴風”よ。」
「そうだ。“奴”を倒す時まで抑えておけ。先に“始祖”が出て行くのだからな。」
「そりゃ無いぜ“極光”~!!俺も早く出撃したいんだよぉ!!なぁ“カキ氷”、お前もそう思うd・・・ってあれ?アイツは?」
それぞれの呼び名やあだ名を出しつつ、1人の男はある人物を探して首を巡らせるが、目的の人物はここに居なかった。
「あれ?“カキ氷”は?“鶴人形”、お前見なかったか?」
「アイツなら『炬燵に入ると溶けちまうから外に行く。』とか言って出て行ったぞ。おい、俺にもミカン1個寄越せ。」
情報提供を終えると同時に果物を要求した戦友に溜息をつきつつ、黄色い果実を投げ渡す。近くに居るのに投げたのは炬燵から出たくないからである。
「そういえば暴風、先日は人間が駆使しているという“艦娘”なる輩を拿捕したらしいな。何か吐いたか?」
「あーそれなんだけどな。『私はあくまで潜水艦隊の補給であの海域に居ただけだから詳しい事は知りません。』とか言ってたけど、ちと自白剤盛ったら意外とすんなり情報を吐いたよ。」
「情報を引き出すためにそんな物を使ったというのか・・・貴様・・・同じ同胞とは思えん・・・騎士道精神は何処へやったのだ!」
「へっ!騎士道もクソもあるかよ!こちとら戦争やってんだ!自白剤くらい使って何が悪い!」
「だからといってやって良い事とやってはならん事の分別も出来んのか貴様!」
同国の者同士でいがみあいだした瞬間、怒号が空気を切り裂いた。
「やめんかこの馬鹿共が!・・・暴風、“勇猛”や貴様の兄“旋風”が葬られたのは手痛いし貴様が出撃したい気持ちも分からんでもない。」
それなら何故、と詰め寄りたくなったが魔神と呼ばれた日本海軍の男は言葉を続けた。
「―――だが今の我々ではあの“バケモノ”を倒す力を得ていてもまだ十分に慣れてはいない。その為に我々は慣熟訓練を急いでいる。違うか?」
魔神が諭すと、暴風と呼ばれていたドイツ海軍の服を纏う男は不貞腐れたようにそっぽを向いてしまう。
「フン・・・・・・その代わり明日の哨戒任務は誰か代わってくれ。俺は炬燵でヌクりたい。」
「はぁ・・・では私が代わりに行こう。」
「で、そういえば先日協定を結びたいと言ってきた奴等は何と言ったか?確かシンカイセイカンと言っていた連中との話し合いってどうなった?」
同じく炬燵に入った日本海軍の服を纏った男が極光に話しかけ、協定とやらの事を聞いてくる。炬燵を導入したのはこの男がこの地に着いてからあまりにも寒がった魔神と呼ばれる男が複数自作した物である。そして炬燵は他に集まった男達を次から次へと誘い、抜け出せなくしてしまった。極光と暴風もその誘惑に負けて撃沈されている。
「“緑神”か。その話は私が蹴ってやった。その前は人間達が接触してきたからな。あの様な薄汚れた連中など“灰も残らぬよう綺麗に掃除”しておいた。」
「おお、かつての名で呼んでくれるとは嬉しい!成程な!その薄汚れたクソ共にはさぞかし綺麗な手土産に見えたろうな!」
少し前、極光は数隻のブルーゲイル級と哨戒任務に就いていた際、この世界の日本艦と思しき艦が数隻近付いて来るのが見えた為、警戒態勢を布いた後に接近。相手が発光信号で対話を求めてきたのでそれに応じつつ、搭載兵装のエネルギー充填をしておいた。
相手の要求を覚えている範囲で絞ると、
・自分達の出世を邪魔する異世界から来た戦艦の撃沈。
・本土に居る腰抜けの老害共の一掃に協力する事。
・見返りにそれ相応の地位と富を用意する準備は出来ている。
この3つだけしか出て来なかった。後は自画自賛の演説を長々と続けられ、出世欲と金に目の眩んだただの虫けらであると判断し、脳内では既に抹殺のGOサインが出ていた。延々と繰り返される自賛の演説に嫌気が差した頃、要求に出ていた戦艦、つまりあの世界で私が沈み行く際、発光信号を送って私の最期を2度も看取ってくれた解放軍の戦艦を馬鹿にするような言葉が放たれた瞬間、私は最早不要と判断を下し、冷ややかに数隻の日本艦を光学兵器で海の藻屑としてやった。
何人たりともあの戦艦を馬鹿にする事だけは許さない。奴と初めて出合った時は自らの祖国を解放し超兵器を撃破する意識に燃え、傷だらけになりながら私を撃破した。再び出合った時、奴は更なる力を身に付けていたが、同時に何かに失望したような感じを纏っていた。そして奴同様に強化された私は大きくなった図体が仇となって奴の動きに追随出来ず、後背より飛来した徹甲弾によって撃沈された。
その際、
『貴艦ノ素晴ラシキ騎士道、永久ニ不滅デアル。』
と、そう言ってくれた。それだけで私は満足してしまっていた。それで満足していた筈だ。だが超兵器としての私は沈む事を良しとせず、再び戦えと催促してくる。
炬燵に入ったまま部屋に居る者を眺めれば、どれも奴に撃沈された者ばかり―――いや少し違うな。奴や我等とは違う世界から転位してきた超兵器達も居る。それでも我々の目的は、奴を、怪物戦艦倭を撃沈する事のみ。
「では、私は捕虜の様子を見てくる。この寒さでは凍え死んでしまうかも知れない。」
「そうか。台所に“双火山”が作ったポタージュがある。それを持って行ってやると良い。」
「ああ。」
私は炬燵から抜け出すと空かさず魔神が潜り込んだ。やはり寒いのは嫌なようだ。ブリザードが止んだとはいえ、それでも外気温は氷点下を下回る。この大陸の地下に眠る豊富な資源とその近くで氷付けになって発見された“摩天楼級”の1隻。もし奴が、摩天楼級と再び戦う日が来たら―――それは、この世界の明暗を決定付ける最終決戦である事は言うまでも無いだろう。
「“倭”よ、貴様は今何処に居るのだ・・・・・・今度会う時は激戦の只中だろうが・・・・・・それまで沈むなよ・・・私を満足させてくれるのは貴様だけだからな・・・・・・」
極光が言い放った言葉は白い吐息となって再び吹き荒れ始めた強風に溶けていった。
やっと忠犬時雨公とぽいぬの更なる改装の準備が出来ますた。浪漫砲はスクラップか要塞砲のどちらかへ変わります。個人的にはスクラップで良いんですけど(震え声
あ、言い忘れてましたがクソ提督注意報を出しておきます。出し忘れるはもう止めないと・・・
しかし扶桑型の艦胸に埋もれてみたいものd(61cm砲弾命中
災禍達の渾名は私が適当に考えて付けさせていただきましたので悪しからず。