倭side
結論から言おう。輸送船団は一隻残らず全滅していた。その護衛に就いていたソロンの護衛艦隊もほぼ全滅し、残存していたのはソロン所属の霞改二と朝潮改二のみ。霞の証言によれば潜水艦の襲撃を受けて輸送船団が混乱した直後、蒼い光を纏ったレ級が海中から出現。手も足も出せず叩き潰されたそうだ。
ソロン艦隊の壊滅後、レ級に随伴していた深海棲艦達が逃げ場のない輸送船や漂うしかない艦娘達を攻撃し、動けない艦娘達は海中に引きずり込まれ、輸送船の乗組員達は機銃掃射で銃殺されたり食われた・・・・・・らしい。
霞と朝潮は旗艦であった摩耶の指示で俺達への救援信号を発しながら出発地点のトラック泊地へ反転を始め、摩耶は既に艦隊の指揮も間々ならない中、緩む事の無い敵の猛攻から死力を尽くして彼女達を守ったのだろう。そうでなければ艦橋を含む艦上構造物の大半が吹き飛びながらも黒焦げになっている摩耶の船体が漂流しているわけが無い。
「総員、敬礼。」
号令と共に皆が夕日と共に沈み始めた摩耶に敬礼。要塞砲として使われる予定の物資は深海棲艦達に強奪され、味方は壊滅。最悪の結果が艦内の空気を重くしていた。
「提督に嫌な報告をしなければなりませんな艦長。」
「・・・・・・尤も嫌な報告は部下の戦死報告だよ副長。」
「そうですね・・・・・・で、艦長は何時までその娘を撫でているおつもりで?」
「ん?」鈴奈ナデナデ
「/////////」ゴロゴロ
霞と朝潮だけでも送り届ける為ソロンへ向かう途上、鈴奈がずっと俺にしがみ付いているのを思い出した。で、俺も何で鈴奈をずっと撫でているんだろうか・・・?わかんねぇし悪い気はしないから良いか。
だがそれ以上に輸送船団の全滅と蒼いレ級の出現が何を意味するのか。即ち【超兵器技術】を深海棲艦側が手に入れ、限定的に運用している事になる。それらは俺の想定内だが、それ以上に厄介な事になりつつあるのかもしれないな。
時雨side
救助された霞と朝潮はソロン要塞に着くまで暗い表情のままずっと艦尾の格納庫に居た。ソロン要塞までは倭でもそれなりに遠かったのに2人は何も口にしなかった。出されたとしても手を付けた様子は無く、決まった時間に食事が入れ替えられただけで、どれだけショックが大きかったのか良く分かる。
味方が次々に葬られ、旗艦は2人を逃がす為に敵に向かって行った。きっと2人は救援信号を発しながら逃げる事しか出来なかった自分達を責めている。僕もスリガオの事を思い出して胸が締め付けられる感じがした。
「・・・・・・まだこんな調子か。」
「・・・・・・」ガクブル←倭の後ろにガチ隠れ
「倭・・・と鈴奈さん。」
何時の間に来ていたのか、倭も格納庫に来ていた。
「・・・・・・もっと早く貴方が来てくれていたら私達はこんな思いをしなくて済んだんです・・・・・・どうして遅れたのですか!!貴方のその力ならここに着くらい訳無い筈ですよね!!貴方のその力があれば奴等を簡単に葬れる筈ですよね!!」
それまで鳴りを潜めていた朝潮が以前の初月の様に倭に食って掛かった。ただ、やり場の無い怒りと悲しみをぶつけて来た初月と決定的に違うのは朝潮の目に宿った【憎悪】の感情。だからこそ矢継ぎ早に倭を責めた。
それに対して倭は何も言わずに聞いていた。さっきまでチラチラ覗いていた鈴奈さんが怯えて倭の後ろに引っ込んでしまったね・・・・・・
「朝潮、もう言わなくて良いじゃない・・・・・・コイツだって持てる限りの速さで来てくれたんでしょうし。」
「っ!!」
朝潮自身分かっていた。自分がやっている事はただの八つ当たりで、全力で駆けつけてくれた彼等に言うべき言葉ではないと。だがそうでもしない限り収まりがつかず、煮え滾る怒りの矛先が関係の無い者にまで向いてしまう。霞もそれが分かっているからそれ以上は何も言及しなかった。
「・・・・・・」
「・・・今は私達だけにして・・・」
「・・・・・・お前達を襲撃した新手のレ級に関してはある程度分かり次第ソロン要塞に情報を送る。」
「・・・・・・これ、置いておくね。食べたい時に食べて良いから。」
「・・・・・・」
2人だけを格納庫に残して僕は当ても無く廊下を歩きだして、倭は通信室へ向かって歩き出した。まあ結局倭に付いていく形になるんだけどね・・・・・・
「倭、今回襲撃してきた深海棲艦の中核がレ級なんだよね?」
「ああ。もしかすると超兵器機関をサルベージして運用しているのかもな。まあそうなったら俺も本気で殺りに行くがな。」
「・・・それなら・・・・・・艦隊の皆に・・・やーくんと・・・・・・同規格の兵装を着けたら良い・・・・・・」
鈴奈さんの言う事は確かだ。現に僕と夕立、扶桑と山城といった戦艦の大多数は武装と機関の交換が行われている。尤も、空母や巡洋艦、駆逐艦、潜水艦は改装が遅れているんだけど。
「潜水艦の連中なら機関と魚雷の換装は済ませておいた。取り敢えずディーゼルと誘導酸素魚雷を搭載したから戦果は少しずつ右肩上がりにはなっているみたいだがな・・・・・・」
「潜水艦に殺られた身だから今の潜水艦組が如何に恐ろしいか分かるよ。」トオイメ
もう潜水艦達にそんな物を載せていたんだね・・・・・・まあ知ろうと思えばすぐに分かる程度の情報だし・・・・・・
「空母に関しては耐熱処理を施した甲板にしなきゃならんし機関の増産が追いついていないからな。明石と夕張は今もせっつかれてるだろう。鎮守府全体の管理も補佐する大淀もてんてこ舞いだったりしてな。」
なんだろう、元はそんなに忙しくない鎮守府だったはずが無駄に騒がしくて忙しい鎮守府になってきてるような・・・・・・
「・・・それは・・・・・・やーくんが・・・元凶・・・・・・」
あれ?読まれた?鈴奈さんも人の心が読めるだなんて・・・・・・ちょっと嫉妬しちゃうな・・・・・・
夜雨side
倭が救援艦として出港していって2日目に入ってきたのは『我当該海域ニ到着スルモ輸送船団及ビソロン所属護衛艦隊ハ全滅。残存艦ノ証言デハ新型ノレ級ニヨル攻撃ノ模様。ソレ以上ノ詳細ハ不明。残存艦ヲソロンへ届ケタ後、帰投スル。』という最悪な内容だった。
「最悪の報告ですよね・・・・・・助けられないとか・・・・・・」
「聞いた限りじゃ積載物は要塞砲らしいですね・・・・・・そうそう当たりそうに無い物でしょうけど・・・・・・」
「要塞砲?!(資料欲しい!てか現物見たかった!)」ガタッ
ど、どうしたんだろう・・・・・・急に龍奈さんがソファから立ち上がった。あれ(前話)からしばらくしないうちに一応部屋は用意したから上陸してていいという事で確認も兼ねて行ったみたら割と広めの4人部屋。戦艦寮という事も相俟ってホテルみたいな豪華さをイメージしてしまったけど、笹川提督の性格なのか、豪華絢爛という事はなく、さりとて質素すぎるわけでもないほどほどに過ごし易い内装となっていた。
尤も個人別となればかなり内装に違いが出るらしく、大和ホテルや武蔵御殿、英国仕様だったりと分かれているみたいでした。
ともあれ、出撃準備を終えて待機していた所にさっきの報告。駆逐艦2隻が生き残っただけでソロンへ送り届けてから倭は戻って来るらしい。レ級とか言うのはこの世界の資料によれば『超弩級重雷装航空戦艦』とか言われていたりするらしい。
「新型、ですか・・・・・・」
「そう言われても分かんないよね~」
「取り敢えずこちらでも考え付く限り意見でも纏めてみましょうか・・・・・・倭の考え方が分かれば・・・・・・//////」カァァァァァァ
「艦長~?」
「またか・・・・・・」
彼の名前を出すだけで、彼が考えていそうな事を想像するだけでどうして顔が熱を帯びるの?どうして彼の事をこんなにも意識するの?どうしたら良いんだろう・・・・・・
「あれ?そういや鈴は?」
「さぁ?最近倭にくっ付いてばっかりだからそのまま付いていったんじゃね?」
「それありうるけど脳筋まっしぐらなアイツだけは無いわ~」ケラケラ
何故だろう。凪の言い方に無性に腹が立った。
「凪、今の訂正して。倭はそこまで脳筋じゃない。」
「でもそれも脳筋って認めてるじゃん。」
「戦闘方法が私達と違うから結果的にそう見えただけよ。多分ちゃんとした理由があるはず。」
「でもそれが分かんないままじゃん。」
う・・・それを言われると言い返しにくくなる。何となく理由がある、と思っている。そうでなければあの過剰速力やステルス性の説明がつきにくい。
「まあ春風とかいう娘に聞けば分かるって提督さんも言ってましたし・・・・・・作戦が終わったら聞いてみましょうか・・・・・・」
「ですねー・・・・・・」
倭に関しては作戦終了後に春風に聞くという事で結論付けた。私達はこの作戦が未だ予想しなかった戦闘になるとは現時点では想定していなかった。ここは前に居た世界とは違うというのに。その代償はそれ相応の形となって自らに降りかかる事をまだ知らない。
倭side
「救援、感謝している。」
「・・・・・・ほとんど手遅れだったがな。」
「いや、彼女達を連れ帰ってくれただけでも十二分にありがたい。輸送任務失敗と護衛艦隊の壊滅・・・・・・これほど痛い物は無いよ。」
朝潮型2人をソロン要塞へ送り届け、その報告がてら顔合わせもしなければならなかったのでソロン要塞司令富樫実少将の下を訪ねていた。勿論鈴奈はピッタリ俺に着いて来ている。艦内に居る事すら嫌がったのでこうして連れて来ているのだ。
「申し訳無い・・・・・・」
「いやいや、君が謝る必要は無いさ。要塞砲として転用したいと要請したのはこちらだ。それに・・・・・・」
「海軍の暗号は端から信用してない、と。」
「うむ。こういっては何だが俺は陸軍上がりでね。陸軍式暗号なら海軍なんぞに負けはせんよ。何分要塞を扱う手前、陸軍から選抜されたのだが・・・・・・どうも海はやりにくくて敵わんね。」
へぇ・・・コイツは陸軍上がりと来たか。なら一つ聞いてみるとするか。もしかすると良い情報が入手出来るかもしれねぇ。
「陸軍上がり・・・とすると那羽呂少将をご存知ですかな?」
「知っているも何も俺の上官だよ。出来ればもう一度あの人の隊に戻りたいよ。」
「・・・・・・そのご子息に関しては何か知っていますか?」
「あの人の息子?ああ一昨年ぐらいに『ウチの愚息は海軍に入隊している。艦娘絡みの問題を起こしてばかりで手を焼かされている。』とは聞いた事がある。今は上官に怪我をさせて少佐への降格処分と拘留所に居るとか何とか。」
「ふむ。」
「・・・・・・こんな事を言うのは無粋かも知れんが・・・手前、何を企んでやがる。」
へぇ・・・・・・流石は陸軍上がりって所か。中々良い目をしてる。こりゃそれなりの利用価値がありそうだ。
「別にこれといって企んでる事は無い。ただ頼み事があるだけだ。」
「・・・言ってみろ。」
「島嶼部と本土の提督に不審な動きが無いかだけ確かめてくれれば良い。後は俺が纏めて総長に情報を送るだけだ。」
今言った内容で『纏めて総長に情報を送る』部分は100%嘘だ。別に総長からそんな指示は受けていないし、個人的な情報収集の一環だ。カマを掛けているようなもんだからちょっとした賭けかもしれんが。
「・・・・・・手前、そんなに人間を信用出来ねぇか。」
「ああ。俺がこの世界の戦艦じゃないのは知ってるだろ。俺はこっちに来る前の世界の日本人に見捨てられたんでな。一部の例外を除いて、特にアジア系の人間は信用していないのさ。」
「・・・・・・はぁ・・・・・・言っても引かなさそうだな。分かった。その件は引き受けるがそれほど詳しく探れない事は十分留意しておいてくれ。あくまで電話でチラッと聞く程度の事しか出来んだろうからな。」
やはりそう来たか。まあそれぐらいで無いと面白くねぇ。それにそろそろ護衛の名を捨てる頃合いなのかもしれないな。便利といえば便利だがこの世界じゃどうも護衛って付いた艦は下に見られる傾向が強いからな・・・・・・
「まあそれは仕方ない。変に探りを入れて感付かれるのもこちらとしては困る。」
「そういう事だ。慎重に行動させてもらうからそのつもりでな。」
「定期輸送船団が出る時に俺宛の手紙にでも混ぜて出せば早いだろう。検閲されても問題の無い様に頼みたい。」
「任せろ、といっても難解なものになるかもしれないがな。少し話は変わるが、その娘は手前の副官か?」
「・・・」(倭の後ろに隠れようとしてる)
富樫少将は俺の傍から一歩も離れようとしない鈴奈が気になった様で話を切り替えてきた。幸い、何かあると不味いので俺の予備の軍服を(鳳翔が作ってくれた鈴奈にピッタリなサイズにしてくれた)着せておいたから副長に見えなくもない。本物の副長は今頃三角定規の手入れでもしている事だろう。
「・・・・・・まあそんな所かな。無口だが、優秀でとても助かるよ。」ナデナデ
「なるほど。道理で御似合いに見えるわけだ。」ウンウン
「//////」カァァァァァ←(倭の後ろに隠れつつ顔を倭の背中に埋めて赤面を見られないようにしている)
その後、3日掛けて泊地へ戻り、出撃まではのんびり出来るだろうと思っていた。その矢先に矢矧の改装で提督共々悩まされる羽目になったのだが。
矢矧side
最近、どうにも調子が悪い。そして「焦り気味よ。」と阿賀野姉や能代姉に言われる。それは自分でも分かっている。というのも改装されてから実戦でも演習でも着実に戦果を上げつつある大和に対して自分は大和達の様な練度、近代化改装の最高値を軽く上回る改装を施してもらっておらず、このままでは大和に引き離されてしまいそうだと感じていたから。
だから無理を言って救援任務から帰ってきて間もないもう一人の同名の人物の元を訪れていた。幸い何時も一緒に居るはずの時雨や春風はどこかに行っている(寧ろその方が好都合だけど)。
「で、俺にどうしろと。」
「私も大和達と同じ場所に居たい。提督にそう言ったら跳ね返されたわ。」
そう言った瞬間、倭の目は紅く変わり、私を射殺さんばかりの殺気を叩きつけてきた。「憤怒・憎悪・悲愴」という意思以外は存在しない複雑なようでただただひたすらにどす黒くシンプルな感情。
「っ?!」
「・・・・・・
その殺気は「改装しなければ地獄を見ずに済む。」という事を意味していた。確かに改装しなければ今まで通り過ごせる―――
“本当に?”
―――否、深海棲艦達と戦う
そのイレギュラー同士の戦いに私達は否応無く巻き込まれた。でもその改装を受ける事で力になれるのなら、少しでも力を添える事が出来る。
「ええ。この世界で生き残る為に、その力を使わせてもらうわ。」
仲間と共に生き延びられる確率が少しでも上がるというのなら、私は躊躇わずにそれを選択する。何より―――
(守るのは大和だけじゃない、
「はぁ・・・・・・そこまで言うからには“最後まで”役目を果たしてもらうぞ。」
「!・・・ええ!」
アッツ・キスカ島攻撃作戦の為に
翌日には新しい船体がほぼ出来上がっていた。これも明石と夕張、そして工廠の妖精達が徹夜で造ってくれた。お礼を言いに行ったら明石と夕張は『生きてデータを持って帰ってきてくれればそれで良いですよ。』と行ってくれた。妖精達には・・・・・・後で甘味でも買ってきてあげないと・・・・・・
その日の内に改装が始まり、新規の武装や機銃が次々搭載されていく。私自身が変化していく事に高揚を覚え、飽きる事無くずっと見ていた。全ての作業が完了するのは明日の昼頃らしい。その時に来て承認してくれという事でその日は眠りに就いた。
夕張side
「大丈夫ですかね?」
「何が?」
「何がって・・・・・・足りない武装は開発するって言っても勝手にやっちゃって良いんですかね?」
「あ~夕立ちゃんの件もあるから大丈夫よ。取り敢えず機関の搭載と艦上構造物はあらかた乗せ終わったから一旦休憩しましょうか。」
何時から明石はフリーダムになったのか。前はもっと大人しかったのに・・・・・・資材の無断使用はしてないから提督も黙っているのかも知れないけど・・・・・・まあ倭さんが提督に話を通してくれてるから出来る事なんだろう。取り敢えず感謝、かな。
もうすぐ一二〇〇になる頃、矢矧の改装は終了。後は本人が承認するだけで完了する、のだが本人は市街地へ買出しに行っていた様でもうすぐ戻るとの事。
「基本的に対空戦闘を考慮してますね・・・ん?何ですかこれ?見た目倭さんの15.5cm砲なんですけど・・・・・・」
「ああこれ?この15.5cm砲は倭さんが搭載しているのベースに開発したのよ。最大仰角90度まで引き上げただけよ。装填速度も変わらないけどちゃんと対空戦闘にも使える高性能両用砲ね。高角砲も前の7.6cm高角砲2基から12.7cm高角砲6基へ格上げされてるし、高性能機関砲7基とシールド付き40mm4連装機銃14基もあるから尚更対空特化という所かしら。」
「摩耶さんの時もそうですけど倭さん達が持ってくる設計図って軽巡は対空・対潜主体で重巡は砲戦主体って割り切ってますよね。」
あくまで主体にしているだけであって極端な特化型では無い。だから傍目には特化型が目立ってしまう傾向にあるのだが。と言っても図面を見る限りでは主砲と装甲・速力に差がある程度で、それ以外の雷装等は五連装酸素魚雷(偶に七連装型も)を標準搭載しているくらい。
ぶっちゃけ言ってしまえば、倭が居た世界の巡洋艦はバランス型に毛が生えた程度なのだ。そう言いつつ対潜攻撃に関しては割と充実しているけど・・・・・・
「それが向こうの世界で標準なのよきっと。改装で消費する資材は遠征で何とか補えるからありがたいけどね。」
「低予算で高品質、ですね。」
「そう言われると大和型と扶桑型の4隻同時改装の時の提督の顔を思い出すわね。」
「真っ青になって倒れたんでしたね。胃薬とか処方されたらしいですよ。」
そう言った直後、工廠の扉が開き、矢矧が入ってきた。艦上を埋め尽くさんばかりの対空兵装で覆われた『矢矧』をしばらく眺め、渡されていたキャットウォークを通って承認しに行った。
初月side
僕は今南鳥島への資材輸送を終え、そのままトラック泊地へ向かう輸送船団と一緒に南に向かっている。そう、第四艦隊旗艦『鈴谷』に載せられて。
小笠原までは上手く着いた。しかしその直後、鈴谷の瑞雲に見つけられて逃げようとした所で鈴谷から『霞の頼みで迎えに来たよ。トラック泊地まで送ってあげる。』と言われて拍子抜けした。
ここにも味方が居てくれた事に、いや、霞に感謝するしかない。こうなる事は予測済みだったから根回ししておいてくれたのだろう。
「隣良い?」
「断っても座るくせに・・・・・・」
『鈴谷』の甲板で夜風に吹かれていると、隣に鈴谷が腰を下ろした。
「まあね。ここは
「助けてくれた事には感謝している。だが良く僕の脱走に手を貸せるものだな。」
「そりゃ鈴谷も同じ事されたからね・・・・・・同情するつもりは無かったけどやっぱり放っておけないんだよね~・・・・・・アンタ危なっかしいからさ・・・・・・」
一瞬だけ月明かりに照らされた鈴谷の顔が暗くなった。あの提督は鈴谷にまで・・・・・・それ以外にも毒牙に掛けていそうで怖いものだ。
「心外だな・・・・・・僕はそこまで危なっかしくは無いぞ。」
「・・・・・・提督がさ、アンタを探す、と言っても見つけ次第撃沈する為に高速戦艦4隻、空母2隻投入してたんだ。もし私が迎えに行かなかったらアンタは赤城の索敵機に見つかってオシマイ、の所って忘れちゃ困るね。」
たかだか駆逐艦1隻を撃沈する為に過剰戦力を投入するなんて・・・・・・やはり僕が資料室で見た事をバラされたら不味いのだろうか。
「多分提督は自分の経歴が傷付くからアンタを始末して何も無かった事にしようとしてる。だけどもう流石に我慢出来ない。出来るわけないよね?!勝ち目の無い戦闘に無理やり参加させられて仲間皆が殺されて自分だけ生き残ってさぁ!!やっと帰ってきたのに全部私達に責任丸投げして私的制裁ばっかり加えるなんてさぁ!!ホントあの人どうかしてるよ!!」
鈴谷がここまで感情的になるなんて思っていなかった・・・・・・僕が着任する前に彼女も被害を受けた事は間違い無い。本当は僕を提督に突き出さなきゃならないのに僕の脱走に目を瞑って手を貸してくれている。
あぁ・・・僕の無謀に付き合わされている事に腹が立つだろう。それでも、付き合ってもらう。戻った所で死が待っている。それなら生き延びる確率が高くなるトラック泊地への逃走を選ぶ。姉さん達の仇討ちも果たさなくてはならない。
「ん?・・・分かった。すぐ戻るね。」
「どうした?」
突如、鈴谷が立ち上がって艦橋へ戻ろうとした。まさか僕の事がバレたのか?
「丁度この船団の航路と重なる形で単冠湾泊地へ向かってる艦隊があるからさ、ちょっと隠れて。」
「・・・・・・」コクン
取り敢えず僕も一緒に艦橋へ行って、隠れている事にした。トラック泊地の艦隊なら臨検とかはしない筈。隠れて、と言われたけど胸騒ぎがして気になるから双眼鏡で前方を見ていた。はるか前方におぼろげだがうっすらと艦影が見えた。3隻しかいないが、前方の2隻は大型戦艦で、後方の1隻は重巡洋艦のようだ。
あっという声が出た。最前方を進む戦艦に見覚えがある。超兵器に軽くあしらわれた日に僕を救助してくれた戦艦『倭』。あの戦艦は他と比べても別格の、王者の風格というかそういうものがあの戦艦から滲み出ているからすぐに分かる。
「鈴谷!僕を降ろしてくれ!」
「はぁ?!ちょい待ち!アンタ自分で何言ってんのか分かってんの?」
「僕はアイツに用がある。それだけだ。」
「・・・マジでどうなっても知らないからね?」
「その時はその時だ。」
そう言っている間に艦隊同士の相対距離は縮み、輸送船団から見て右側を進んでいく倭と新鋭艦らしい2隻。輸送船団とすれ違う時、3隻の反応は異なるものであり、1隻の新鋭戦艦からは航行の無事を、という無線が来た。が、最前方を進む倭と最後尾の新鋭巡洋艦は航海灯すら点けず、無線も発光信号も無いまま無反応で通り過ぎて行った。
この行動を鈴谷達は礼儀知らずと捉えたが、倭と春風は航海灯を点けずとも昼夜関係なく視界は確保出来ているし、西方に敵のマリアナ基地がある事と対潜警戒も兼ねての行動である事を知らないためであった。
新鋭巡洋艦が通り過ぎたと同時に初月はこの期を逃すまいと鈴谷の艦尾から飛び降り、倭達を追いかけ始める。それを見送りつつ鈴谷は初月のこれからが幸多からん事を祈り、トラック泊地へと向かって行った。
倭side
「艦長、輸送船団から艦娘が1隻離れた模様。こちらに向かってきています。」
「・・・・・・む?確認出来るか?」
「・・・・・・ありゃ・・・この前救助した秋月型艦娘ですな。」E.双眼鏡
「・・・・・・発光信号、『本艦ヘノ乗艦ヲ許可ス。』だ。」
「了解。」
帰投した後、報告書を端的に纏めて提出させられた。そして新型のレ級に関してはある程度施設の充実している(俺からすれば広過ぎて落ち着かないが)夜雨で検討会(俺は妖精による制御と遠隔操作が出来るが春風にはまだ妖精が居らず、遠隔操作も完全には出来ない為、航行中は搭載されたAIである
まだ確実な事では無いし、余計な情報を流すのは得策では無い。それに交戦してから判断した方が早いかもしれないので検討会の場では『詳細不明』として誤魔化しておいた。春風もそれが分かっているからか、俺と同じ結論を出した。夜雨達は・・・・・・うん、俺がついていけないレベルの議論へ発展させやがった。
超兵器に関してはデータでしか知らないからだろうが、俺が聞いても今一ピンと来ない。元から行動派だからだろうか。実戦を知らないわけじゃないだろうが、劣勢に追い込まれた事が無いのかもしれん。
それはそれで困るな、と思いつつこの世界で俺が交戦した超兵器達のデータを渡して帰って来た。あの話には着いていけそうにないし聞くだけウンザリする。
「艦長、電探に感あり。方位280より4機接近中。恐らくP38かと。」
「
「先程終わりました。現在負傷が無いか検査中です。」
「む、春風に通信を繋げ。」
『何ですか倭。』
回収が終わる方が早く済んで良かった。何故俺が拾わなけりゃならんのか不思議だが。というか何で居住空間が潜水艦より劣悪な俺に乗ろうとするんだコイツ等は。
まあそれはさて置き、こちらに向かっているであろう敵機の事だ。大方輸送船団と夜雨が点けた航海灯で潜水艦にバレたんだろう。幸い、輸送船団はこのまま行けば15分ほどでP38の索敵を免れる。が、俺達はそうも行かない。
夜雨も春風も気付いているだろうが、発光信号で航海灯の点灯を禁止させる。どうして敵の索敵圏内でああも自分の位置を晒す様な真似をするのかね。余程自信がある様だが・・・・・・折れなきゃ良いがな。
「こういうのも何だが、航海灯は消せと伝えてくれ。」
『了解。先程提督から連絡がありました。単冠湾に着いたら指揮を二分するそうです私は艦隊全体の指揮、貴方は―――』
「超兵器戦、だろ?」
『その通り♪ミサイル迎撃をお願いしますね。』
「夜雨には撃たせないのか?」
この一言、もしかすると余計な言葉だったのかもしれない。
『別に撃たせなくても大丈夫でしょう?自分の身は自分で守ると言ってたようですし。超兵器戦でも自分の身は自分で守ってもらいましょう。』
「・・・・・・あの火力で太刀打ち出来るのか?(あれ?夜雨達ってそんな事言ってたっけ?)」
『出来なきゃその時はその時で置いて行きましょう。(ま、倭なら置いていくわけが無いでしょうけど。)』
なんだろう、随分ご機嫌斜めな春風になってしまったがまあ良いか。そう思いつつ倭はミサイルVLSの装甲ハッチを展開。数秒の後、
要塞砲なんて重量物積んでたら足が鈍って当然という感じで『当たり前の様に』輸送船団には全滅してもらいました(にっこり)
蒼いレ級に関しては倭の想像通りの状態ですがまだまだ欠陥を多数抱えたままですのでやり方次第ではアッサリ葬れます(多分)
何故朝潮型を出したかって?実は渋に居た頃、時雨のイラストを漁っていたらとある方に『ロリコン紳士』と呼ばれたからですってそれは関係ない!断じて関係ないぞぉ!『艦これが原作の小s』ドゴォ!(時雨の回し蹴りがHitした音)
それと神威ちゃん・・・・・・すんげぇ衣装ですな!とねちく姉妹よりもやばそう!っと失礼。私(作者)は時雨一筋。浮気は許さr・・・[文章はここで途絶えている。]
誤字脱字等ありましたら報告の程願います。
次話:予期せぬ共闘(後編)
あくまでタイトル通りになるとは限りませんのでご了承ください(ヲイ)