守宿市内のとある場所―――そこには13席の椅子で囲まれた長机がある部屋が存在する。
部屋の中で常に照明で見える場所は長机の上と1つの空席のみ。12席は誰かが座っているにも関わらず、顔が認識出来ないほど闇に包まれていた。
その中の1席・・・・・・唯一明かりに照らされている席とは机を挟んで真反対の席の人間が声を放つ。
「・・・此度集まってもらったのは、全員に知らせておきたいことがあったからだ・・・」
重苦しく張り詰めた男の声が響く。すると、空席の隣に座る・・・100歳を超える老人が静かに声をあげた。どうやら、この老人がこの12席の人物で最も偉く発言権のある人物らしい。
「どうしたんですじゃ睦月どの、話してみなされ」
「あぁ・・・包み隠さず、真実のみを話す。今朝9時40分頃、例の王の結界を無事無能なる海南大学研究員どもが破壊、俺の部下の黄梅が監視より追跡を開始、2つの柩の強奪を許可した。しかし、海南へと向かう1本道にて9時55分頃、力を破壊された後警察に捕縛された」
どよめく室内を、老人は静かにと声をかける。
「柩の中はどうなったのじゃ?」
「警察関係者が海南病院にて黄梅へ取り調べを開始。それに紛れ込ませた満作の話によれば、柩の中は2つとも空っぽだったという・・・」
「何をしているのよ」「やはり睦月などに任せたのが・・・」「計画に支障をきたす惨事だ・・・」次々に睦月へ与えられる言葉に、睦月はただ下を向くしかなかった。
「これこれ静かにと言ったじゃろう。皆の言いたい事も至極分かるが、そこはぐっと耐えこのワシ、師走に喋らせてくれぃ」
師走様がそういうなら、と。他の10人は今度こそ何も嫌味を言葉にしなくなった。
「確かに皆の言うとおり、1つめの柩が開くことは遺憾ではある。が、2つめの柩が開いた事はむしろ我々の計画を進めることに繋がる。柩が開くということは『世界歯車』の新たな候補者が生まれたという事じゃろう。それをうまく利用してやれぃ睦月よ。挽回のチャンスじゃ」
「あ、有難い・・・助かる・・・。それでは早速5代目の『王の者』を見つけ、滅ぼして参・・・」
「君、ワシの話を聞いてたかの?」
師走はあくまで声は荒げなかったが、静かに怒りを顕にしているようだった。睦月は目の辺りを痙攣させた。
「皆にも言って聞かせておろうが、もし睦月どののように手当たり次第数で押し殺そうとすれば、きっと目的成就はまた次の世代になる・・・君はまず5代目の王の者の所在、名前、なんでも良い、場所を把握するんじゃ。分かったかね?」
睦月には勿論一刻も早く自分の部下のしでかした汚名を晴らしたいという気持ちがあったし、顔も名も知らぬ人間に世界歯車を強奪されたというのが許せなかった。だが、とにかくここにいる者達の中で最も位の低い自分が・・・ましてや、最高ランクの師走に逆らえる訳もなく、ただ、首を縦に振るしかなかった。
「うむ、物分りがよくて助かるわい。それでは睦月どの以外は引き続き普段通りに過ごしていただきたい。全てはこの世を救世される神『パングラム』様復活のために」
「「「パングラム様復活のために」」」
睦月を残し部屋から出ていく11人。睦月は1人怒りに震えていた。
それは勿論失態を犯した黄梅に怒っていたのもあるが、それよりも自分も『陰暦』の一員だというのに無視陰口のハケにされる事への怒りだった。
「くっそぉ・・・今に見てやがれ・・・俺が仕えるのはパングラム様のみ・・・。俺を見下した陰暦全員俺様の靴を舐めさせて後悔させてやる・・・」
睦月はおもむろにケータイを取り出すと、話をし始めた。
「薺か・・・睦月だ。黄梅がやられたんでな・・・あぁ、お前に命令を下す。海南大学の教授『斎藤将大』から世界歯車を強奪したものを吐かせろ・・・分かったな・・・」
一旦切ると、睦月はもう1人の部下へ連絡を繋ぐ。
「満作・・・次の命令を下す。もはや力無き俺様の部下だった者には用は無い、以上だ」
わかりました、と奇妙な笑い声を放つ満作との連絡を即座に切り上げると、睦月もまた、11人と同じく、その部屋から出て行ったのであった・・・。
「世界歯車は動き始めた・・・さあ、パングラム様の1の部下、この睦月様が蹂躙してやる・・・待っていろ、名も顔も知らぬ新たな王の者よッ!!」
闇の組織って書いてると自分の趣味嗜好が出てきますよね。
それでは次回もまたよろしくお願いいたします。