早朝5時。宙良が目を覚ます原因になったのは、小夜子の家のドアのチャイム音のせいだった。
10秒程度で1度鳴らされるそれは、五月蝿いという訳ではないのだが、寝ようと意識すれば寝れない、面倒くさい規則性だ。
「あ~~~~も~~~~~分かった!今出るからやめてくれ!!」
ドタドタと階段を降りると、宙良は若干怒り気味にガタガタ音を鳴らして玄関ドアの前に立つ。
「はーい、今出ます」
宙良の知り合いに、こんな面倒なチャイムするやつは浮かばなかった。だから宅急便などのサービス業者だと思い、一応声や顔は取り繕ったのだが、ドアを開いた、その目の前に居たのは宙良のまったく身に覚えのない巫女装束を来た少し年下っぽい少女だった。
少女はその頭から足まで全身ずぶ濡れになっており、彼女の突っ立っている玄関先は雨でも降った後のような有様だった。
こんな変な知り合いが真面目頑固な正一郎にいるようにも思えなかった宙良は、おそらく小夜子さんの知り合いなんだろうなと納得することにした。
「あ、あの――・・・小夜子さんの知り合い、っすか?」
じー。少女は身長差的に自然に上目遣いを決め込むと、何も言わず宙良の顔を顎からデコまでしっかりと確認しているようだった。
「え、えーとー・・・その・・・ははは」
朝っぱらから血圧が上がってないのも相まって頭が回らず、宙良は反応に困る。そんな宙良の困り顔を読み取って、自分が喋らないから困っているんだ・・・と理解したわけでは断じてないが、少女はようやく重い口を開いた。
「お、お・・・」
「お?」
「王様」
「ぇ」
見ず知らずの少女に、王様なんて言われる筋合いも常識も持ち合わせていない宙良は目を丸くする。え、もしかして、このサービス業はサービス業でもそっち系のサービス・・・今まで噂でしか聞いたことのない、破廉恥なお店のデリバリーなんじゃ・・・。
宙良はそんなお店は受け付けていません、金も払えません。ごめんなさい、と言おうとしたが。
「へくちゅん」
寒さに震える少女を見て、様子がおかしい、何か深い事情を持つ子なんじゃないかと心配する。もし家出なら、心配しているであろう少女の親御さんに1秒でも早く連絡を付けなければならないし。兎に角、風邪でも引いてしまうと可哀想だ。
「あのさ、王様とかよく分かんないし呼ばれる程偉い人間って訳でもないんだけど・・・とりあえず、風呂貸してやるからさ、上がりなよ」
「・・・ありがとう」
少女は首を縦に振ると、玄関をまたいだ。
濡れ巫女さんが突然あらわれたら、貴方なら家にあげますか?それとも不審がってあげない?
私は不審がって通報します()