海南病院。そこにパトカーがぞろぞろと到着したのは、9時を過ぎた頃の話だ。
黒いスーツを身にまとい、とある男が眉間にシワを寄せて事件の発生した現場へと向かう。後ろには沢山の部下を連れ、その内の1人が厳格そうな男に状況を説明していた。
「ガイシャは身元不詳30代前後の男。明け方8時頃見回り中に返事のないガイシャの様子を確認した看護師に発見されました」
「死亡推定時刻は。凶器はなんだ」
「深夜2時から3時までの間ということです。凶器は未だ発見されていません。しかし・・・その・・・殺され方が・・・うげぇぇ・・・」
部下の男は現場に到着して、その凄惨な殺人方法に吐き気を催した。死体は病室の白い壁に叩きつけられ、胸に半径10cmもあろう杭を打たれている。顔面はぐしゃぐしゃに潰され、もはや誰かどうかなど、確認することは困難だった。
黒いスーツの男は胸の前に手を合わせる。
「こら、工藤君。こういう現場に早く慣れろと言っただろう。警察官をやっていけないぞ」
「はぁ・・・はぁ・・・す、すみません剣崎警部。まだまだ厳しいっす・・・」
「・・・まあ、誰もが通る道だ。場数さえ踏めば、いずれ仏さんの前で冷静を保てるようになる」
「は、はは・・・あまりそういう場数は踏みたくないっスね・・・」
「ごもっともだ。出来れば誰にも傷ついて欲しくはない。それではまず、ガイシャが海南病院に送られることになった経緯を教えてくれないか」
剣崎警部は病院の院長に声をかける。
「この男性が運ばれてきたのは昨日の朝方で・・・昨日の守宿の方で起きたトラックの炎上事件の犯人ということでした。うちの病院ではそういった特殊な方は一般的な病人とは隔離する決まりになっておりまして・・・それに警察の方にもそうした方が良い、と言われたので個室に入院させたのですが、まさかこんな事になるなんて・・・」
「ふむ。工藤君」
「な、なんですか剣崎警部」
「ガイシャは昨日の時点で私達の他に警察関係者にお世話になっていたようだが・・・私の耳にはそんな情報届いていないのは何故だ?」
「そ、それが・・・守宿で起きた案件だったのですが、その犯人であり、今回の被害者の男性と、唯一の生き残りの男性を受け入れたのが海南病院だったので、海南警察署の方が全面的にトラック炎上事件を引き受ける事になったようです」
「・・・まったく。海南はこういう事件に限って妙に察しと行動が早い。で、院長さん。ガイシャに付きまとう怪しい人影はなかったか?」
「い、いえ・・・人影も物音1つ見回りの看護師はしなかったと言っておりました。もちろん、犯行時刻の際も・・・」
「ふむ。とすると、ガイシャはトラック炎上の犯人と聞いたが、もしやその際に言葉を発せないほど重体だったのではないか?」
「いえそれも違います。確かに非常に巨大なモノに背中を殴打された形跡こそありましたが、命に全くの別状もありませんでしたし、意識を取り戻した際も虚ろな目であったものの警察の話に真摯に答えていましたし」
「なるほど・・・ありがとう。業務に戻ってもらって結構だ。それでは工藤君」
「な、なんでしょう剣崎警部」
「深夜に起きた犯罪。それも派手に殺しているのは、あからさまに未計画では無く、ガイシャと犯人になんらかの接点がある事を示している。ガイシャの身辺確認も出来ていないことから、まず君は唯一のトラック炎上事件生存者の身辺警護と情報収集の任に付け。私は海南警察署に向かい、トラック炎上事件の詳しい詳細の書類を手に入れてくる」
「わ、分かりました!」
工藤は慌ただしく廊下へと飛び出す。その姿を確認した後、剣崎は次の目的地である海南警察署へと向かった。
この世の摂理と言いますか、壁を押せば同じ力で押し返されるのと同様に、しでかした罪は必ず同じ仕打ちとして返ってくる、因果応報でございます。
そして、少しお知らせです。
毎週水曜と土曜に投稿していたのですが、毎週土曜のみに変更させていただきます。申し訳ございません。
それでは来週の土曜日もよろしくお願いします。