「うおおおおおおおお――――――ッッッ!!!!!!」
突然発狂したかのような大声に、ドリアンのような刺々しい身体と黒豚のような顔を持つ化物は後ろを振り返った。
振り返ったときには既に声の主である宙良は横を通り過ぎ、柩の元へとスライディングを決めた。
依然化物は見えない壁に四苦八苦しているようだ。
「何をしようと言うのです・・・・・・死を早めたいのですか小僧?後悔しますよ」
「へっ。その後悔って言葉、後でブーメランにならなきゃいいけどなッ」
宙良は左側にある柩に、そっと左手を押し当てた。すると、どうだろう。宙良の頭の中を強烈な電流が流れたみたいな、そんな痛みが襲う。
「ぐぅぅ―――!!?」
右手で頭を抱え込むと、脳内にまるで撮りだめたデジカメの色々な写真を高速で見るような感覚に襲われる。
それは鮮明で、体験なんてしたことなかったのに経験したようで。見知らぬ顔や風景が片っ端から浮かんでは消え、消えたは浮かび。そうして最後に残ったのは、真っ暗闇に浮かぶ白銀の歯車だった。
宙良が歯車を一目見た瞬間、今まで見てきたどんな工芸品よりも綺麗で繊細で、そして酷く恐怖心を持った。好奇心も持った。それに触れてみたい、そんな欲求が宙良を満たしたとき、自然と柩を触れていた左手を前に伸ばすと、彼の視界は現実へと舞い戻ってきた。
「はぁ・・・・・・はぁっ・・・・・・」
べっとりと、まるで悪夢を見た子供のように汗を体中に付着させた宙良は、あまりの情報量で理解しきれない脳みそを自分の顔を両手で叩くことで動かした。
そうして普段通りのポテンシャルを発揮する宙良の脳は、何故か1度も開けたことのない石の柩の開け方を熟知しているようで。先程触れた左側の柩の上側に手を当てると、それは紙風船のように軽い感覚で、横にスライドした。
「なんと・・・・・・あれだけ開かなかった蓋がいとも容易く・・・」
斎藤は驚きを禁じえない。
開いた柩の中から、1つだけ空中に浮遊し現れたのは白銀の歯車。それを黙って見る化物の目の前からは既に防御壁は消え去っているようだった。
「そんな・・・こんな奴に・・・きひひひ・・・起動できるなんて・・・!」
「なあ、あんた」
宙良は冷静な声で話しかける。
「な、なんですかねぇ・・・」
「1つだけ聞きたい。その返答次第で、俺は戦う覚悟は完了すっから、よく考えてから答えるように。この惨事、起こしたのはあんたか?」
どんな事を聞かれるのか。身構えていた黒い化物はその質問に拍子抜けした。そして、腹を抱えて笑った。
「きーひっひひ!何を言い出すのかと思ったらそんな事ですかぁ―?もちろん、やったのは私ですよ~。炎に包まれ泣き叫びながら死に逝くバカの雑魚どもを鑑賞するのは楽しかったなぁーッ!!!!」
「分かった。それだけで十分だ。俺は極力話し合いで解決したいと思ってたけど、それだけ聞ければもう言葉は要らない。あんたは抵抗出来ない人達を自らの力を行使し泣かせたッ!!だから今ここでその力ごとッ!この俺がブッ叩いてやるッッッ!!!」
歯車は勢いを持って宙良の心臓へと突き刺さる。しかし傷みなどなく、勇気だけが宙良の心を満たした。すると、胸から刺さった歯車よりも小さい歯車達が無数に溢れて、宙良の左手の上で何かを形作る。
それは、2メートルはあるだろうか。巨大な剣。例えるのなら、斬馬刀に近い武器を模していた。
完成されたそれは、もはや歯車らしさも微塵もなく。ただ宙良の眼前の敵を叩き伏せるためのツルギでしかなかった。
「王の、再臨だ―――・・・・・・」
痛みを忘れてそう呟く斎藤。戦闘態勢で聞き拾えない化け物と相田宙良は、睨みをきかせたままだった。
「そんじゃあ、行くぞ」
瞬きをする脳内信号を眼に与える前に届くほどの神速で、白銀の斬馬刀は化け物の胴体目掛けて振り下ろされる。
王って言葉をもう少し専門用語とか、ひねろうとか、作品製作段階で考えていたんですが、結局一番ストレートに心を貫く言葉が王だってのでこの形に落ち着きました。
それではまた次回、よろしくお願いします。