「分かった。それだけで十分だ。俺は極力話し合いで解決したいと思ってたけど、それだけ聞ければもう言葉は要らない。あんたは抵抗出来ない人達を自らの力を行使し泣かせたッ!!だから今ここでその力ごとッ!この俺がブッ叩いてやるッッッ!!!」
歯車は勢いを持って宙良の心臓へと突き刺さる。しかし傷みなどなく、勇気だけが宙良の心を満たした。すると、胸から刺さった歯車よりも小さい歯車達が無数に溢れて、宙良の左手の上で何かを形作る。
それは、2メートルはあるだろうか。巨大な剣。例えるのなら、斬馬刀に近い武器を模していた。
完成されたそれは、もはや歯車らしさも微塵もなく。ただ宙良の眼前の敵を叩き伏せるためのツルギでしかなかった。
「王の、再臨だ―――・・・・・・」
痛みを忘れてそう呟く斎藤。戦闘態勢で聞き拾えない化け物と相田宙良は、睨みをきかせたままだった。
「そんじゃあ、行くぞ」
瞬きをする脳内信号を眼に与える前に届くほどの神速で、白銀の斬馬刀は化け物の胴体目掛けて振り下ろされる。
黒い化物はそれを間一髪で斜め後ろへと跳び逃げた。
触れればおしまい。それだけの威圧感がその一撃にはあった。
「しかし・・・どれだけ重い一撃も、当たらなければ意味はありませんよ・・・私にはそれだけの~スピードがあるッ!逃げ惑うトラックに追いつき追い抜くほどにはねぇ!!」
宙良より10メートル後ろに着地した化物は、巨体をものともしない速度で5メートル幅の反復横跳びをしながら近づいてくる。宙良はそれをただ無言で、目で追っていた。
「ほぉら、おしまいですううううッ!!!!」
宙良の左より突撃する化け物。それをひらりと宙良は紙一重で避けると、その背中目掛けて白銀の斬馬刀を殴りつけた。
「ぐげげげげぇぇぇ―――!!!??」
道路を摩擦で焦がしながら炎へ突っ込み遥か遠くの電柱にぶつかった化物は、すでに化物ではなかった。化けの皮は剥がれ、壊され、ただの世紀末に出てきそうなパンチの効いた肩パッドを付けている人に変貌していた。
宙良は肩に武器を掲げる。
「どんだけ速くたって、目に見えちゃ遅いぜ。後は線ではなく面で捉えれば言いだけだ。さながら、ハエたたきって寸法だ」
宙良の斬馬刀を模したそれは、瞬時に横幅をプラス5メートル追加した薄いものに変形してあった。しかし、それは破壊される事なく、ファンキーな男を叩きつけたのであった。
「さて、と」
宙良はその剣の戻し方も理解していた。ただ、戻れと念じればいいだけ。すると巨大なそれはまるで元々無かったかのように振る舞い、胸の中へと収納された。
「斎藤さん、終わったよ」
「あぁ・・・・・・・・・そのよう、だな・・・・・・」
戦いの後に残ったのは静けさと虚しさだけ。
それを噛み締めた2人は、遠くから聞こえる救急隊員達を乗せた車両のサイレンを耳にした。
大人になってからはヒーローって悩んで歯を食いしばって虚しくても戦うからかっこいいんだと思って見ています。そして現在、自分でそれを小説にしています。
それでは次回もよろしくお願いします。