1台の救急車がサイレンを鳴らし到着する。救急隊員は現場の状況をただ1人立つ事が出来ていた宙良から聞いた。宙良は誰がこの事件を起こしたのか、誰が生き残っているのかを加害者の男をぶちのめした武器の事だけはぐらかして話した。
救急隊員はあらましを聞き終わると、唯一の生存者である斎藤と宙良に叩きつけられ地面に突っ伏している加害者の男の脈を確認した。どうやら2人とも弱っていはいるものの死んではいないらしい。
「守宿の消防隊が到着するまで時間がかかりそうです。とにかく、患者を2人とも海南の病院へ搬送します。あなたも怪我をしているようですが大丈夫ですか?」
「いや、俺は大丈夫。その2人を送ってやってくれ」
「・・・・・・分かりました。救助活動感謝します。・・・そういえば、爆発の危険性がありますのでここを離れた方がよいかと。では」
「ああ」
救急車は再びサイレンを響かせて、海南の方へと走っていった。宙良は今尚燃え盛る火の手を避けつつ、自転車とリュックサックを取りに戻る。
ちょうどその時、ぽつぽつと雨が降り始める。雨は次第に強くなり、宙良の頬を貫いていた熱線は弱くなっていった。
宙良は折りたたみ傘を持っていたが、ずぶ濡れになりたい気分だった。髪の先から滴り落ちる雨を感じながら、燃える鉄の固まりに手を合わせた。そして、救急隊員に言われた通りこの場を離れるため、自転車を走らせた。
遊ぶ約束をした、子供たちの元へと向かうために。
・・・
・・・・・・
・・・・・・守宿の救急隊が到着する5分前。
朝早く、急に降り始めた豪雨に事件現場の炎は沈静化されていた。
トラックだった鉄くずの荷台に乗せられた2つの柩。そのうち宙良に開けられていない柩がゆっくりと内側から開いたのはその時だった。
内より現れたのは、巫女装束を身に纏う16歳の少女。腰まで届く黒髪は柩の外へ出ると同時に雨を多量に含んだ。
柩から出ると、辺りを虚ろな目で見回す。少女は、もう1つの柩に入っていたモノとそれを扱うヒトが大事で、それがどこに今あるのか、探しているのだ。
少女はこの場所がどこかも、何故もう1つの柩が空なのに誰もいないのか皆目検討が付かなかったが、とにかくここに居たままでは見つけ出すことなんて出来ないことだけは分かっていた。
「おう・・・・・・・・・さま・・・・・・・・・」
ぽつりと、そう呟いた少女は、トラックを離れ・・・どこかを目指して歩く。
後に残るのは、ざぁー・・・と雨が振る際の環境音だけ。
ヒーローの戦いって、戦争もそうですが日常を侵食していくんですよね。これが見てて辛くて、だからこそ色々と思うことがあります。
それではまた次回、よろしくお願いします。