カミカゼ✩エクスプローラー! 風花ストーリー 作:ノアの方舟
「慶司くん、お待たせー」
「おお、服はもう買ったのか?」
「うんっ、このとおり」
風花は手に持っている紙袋を俺に見せつけてきた。
俺は何も言わずに紙袋を風花から奪う。
「あ……。いいのに、これぐらい」
「風花が良くても俺がダメなの。さて、時間も時間だしどこか飯でも食いに行くか」
全く、風花は可愛いなぁ。
「やったー! 慶司の奢りだぁ!」
「今日は買い物に付き合ってくれたからな。特別だぞ?」
「マジで!? なんでも言ってみるもんだねぇ」
琴羽は奢られる気満々だな。
まぁ、あんな笑顔を見ることができたんだ。それの料金だと考えれば安いもんだ。
「じー……」
「ん? どうし――――」
「ていっ!」
「痛ぁ!?」
優花さんに足を踏まれた……痛い。特に心が。
「浮気は許しませんっ」
「あははは……」
優花さん、私は浮気なんてしてません。ちょっと見惚れていただけです。
「大丈夫だよ、優花。慶司くんには私が一番愛されていますからっ」
「出た、謎の自信。高校の時から変わってないよね~風花は」
優花は踏んでいた足をそっとどかし、上目遣いで俺を見てくる。
「……本当?」
あぁ、クソっ! 可愛いなぁ!
俺はそんな抱きしめたい気持ちを抑え、優しく微笑みかける。
「ああ、本当だよ。俺は風花を誰よりも愛してる」
「……うん、よろしい」
許されたみたいだ。
「ささっ、仲直りしたのなら早く行こ! もう私お腹ペコペコ~」
「おまっ、俺の奢りだってこと忘れんなよ!?」
「わかってるわかってる~。さーて、いくら奮発してもらおうかな~?」
「わかってねぇ!!」
俺と琴羽のやりとりは飲食店に着くまで続いた。
◇◇◇
「慶司……? 慶司か!?」
飲食店に着き、全員の注文を待っていると不意に背後から声をかけられた。
どこか懐かしさを覚えながら俺は後ろを振り向く。
「あ? 俺は確かにけい――――航平?」
「おお! やっぱり慶司か! 愛しの友よ!!」
声をかけてきたのは俺の愛しの友といっても過言ではない――――浜北航平だった。
そして、航平左薬指には……指輪が嵌めてあった。
「お前……まさか――――」
「あら、慶司くんじゃない。お久しぶりね」
俺が航平にとある疑問をぶつけようとした瞬間、またもや懐かしい声がした。
「汀……さん?」
「ふふっ、残念。私はもう『汀』じゃなくて『浜北』よ。浜北薫子。よろしくね」
彼女は小さな女の子を連れていた。
ちょっと待て、『浜北薫子』? それって……それって……!?
俺は航平を連れ出す。
(おい! お前、まさか汀さんと!?)
(ああ、そのとおりだ! 俺は遂に薫子先生と結婚できたんだ!)
おいおい……マジかよ……。
あの航平が結婚出来たってだけでも驚きなのに、相手が汀さんだと?
(なんて言って脅したんだ?)
(酷くない!?)
「あ、航平先生。こんにちはー」
「おう! 界司も来てたんだな!」
航平……先生……?
「誰だお前。俺の息子になに吹き込んでる」
「航平だよ! 浜北航平!! 高校の時ルームメイトだっただろ!?」
「いや、俺の知っている航平は、先生なんて出来るほど頭は良くない」
「酷い!」
おいおい……こいつ変わり過ぎてないか?
「みぎ――――薫子さん?」
「はい、どうしました? 慶司くん」
「なんで……その……航平なんかと?」
「ああ、やっぱり気になっちゃうのね」
この答え方は、以前にも聞かれた事がある答え方だ。
「えっとね、彼。澄之江学園を卒業した時に私に求婚してきたのよ」
それは俺も知っている。
恋人をすっとばして求婚だなんて航平らしいと思っていた。
だが――――。
「その時は流石に断ったわ。いくら卒業したとはいえ浜北くんは私の生徒だもの」
そう、航平は玉砕したのだ。
その後、「旅に出る」とか言ってそれっきりだったな……。
あの時は航平らしくないと思っていたが……。
「でもね、その時に言っちゃったのよ……『教員免許を取ったら考えてあげる』って」
「教員免許……? まさか……!?」
あの時、航平が旅に出た理由って……!
「おう! 俺は薫子先生のおっぱいの為に五年前、教員免許を取ったのだ!」
「誰だよお前」
「浜北航平だよ!? いい加減泣くよ!?」
まぁ、変わっていないっちゃ変わってないか。
こいつ、おっぱいの為なら教員免許まで取るのかよ。正直見直した。
「っと、そう言えば慶司は今から飯か? なら同席しないか? 積もる話もあるだろうし」
「いいぜ、俺も聞きたいことは山ほどある……だけど」
「『あの事件』のことは言うな……だろ?」
流石だな。
俺は本当に良い奴とルームメイトになったよ。
「すまないな」
「気にするな! 俺と慶司の仲だろ?」
航平はそう笑って注文を始めた。
浜北がキャラ崩壊している気しかしない