艦隊これくしょん〜ブラック提督(笑)の奮闘   作:SKYアイス

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第一部の主人公的ポジションは朝潮が
第二部の主人公的ポジションは春雨が

この鎮守府に主人公は駆逐艦しかいないのか……?つまり駆逐艦は宇宙の意思だった?(錯乱)


第37話

「それは、確かな情報なんだな?」

「はい、つい先程の入電によれば……ですが」

 

 川内達と一悶着起こした後大淀が緊急の報告があると言ってきた。その内容はとある鎮守府が壊滅し、調査の為に横須賀の提督が艦隊を派遣したとのこと。

 

 ついこの間大佐と揉め事を起こした後だというのにこの状況……最近は本当に間が悪いなと思わずにはいられなかった。

 ふと、鎮守府壊滅という報告を聞いてあのレ級のフラグシップの事を思い出す、先日奴を撃退したのにも関わらず奴のことを思い出してしまった。

 

 ーまさかな……考えすぎだろう……ー

 

 だが、一度考えてしまってはどうしても思考がそれについて考えてしまう。レ級のフラグシップ……一つの鎮守府を壊滅させるほどの何かを持つのは現状自分が知りうる深海棲艦の中でもそいつしかいないのだ……だからこそ考えてしまう。

 もしも奴が戻ってきたとしたら、そんな可能性を。

 

 故に提督は考える、自分も艦隊を向かわせるべきか。

 今回の案件は既に大規模作戦に少なからず影響を与える物だ、鎮守府壊滅という事態は誰も予想していない事態だろうから、これだけで狂いが出る。

 

 そして、壊滅した鎮守府へ艦隊を派遣した後のメリット、デメリットも考える。

 

 

 

 メリットは生存者がいれば生存者を保護し命を救う事ができるということ……その生存者から情報を貰う事ができ、鎮守府を壊滅させた存在の正体を知る事ができるかもしれないという事。

 

 デメリットは……これらのメリットが生存者がいる前提で(・・・・・・・・・)発生している(・・・・・・)という事だろう。また、現在はこれらのメリットが発生しているという可能性しか存在しないというのも大きな要因だ。

 今はまだメリットが発生しているが現地に赴き生存者がいない事が判明した時点で、この出撃がデメリットしか残らない……言い方は悪いが無駄足となる。

 

 そしてデメリットは、鎮守府を壊滅させた存在と鉢合わせる可能性と、出撃による資材の減少、道中の深海棲艦と戦闘し損傷する可能性がある事、そして……万が一生存者がいなかった場合の自分の感娘が受ける精神的なダメージ……ぱっと思いつく限りでこれだけのデメリットが存在する。

 

 しかも、じっくりと考えれば考える程にデメリットが大きく目立ってしまう。幸い横須賀の提督が既に艦隊を派遣している、彼女に任せるのも選択肢の一つだろうが……その場合は自分が考えているデメリットを彼女一人が負担してしまう事になる。

 

 自分には10強という規格外の存在がいるが、彼女にはそんな存在はいない、たしかに彼女の感娘は歴戦の強者達だが……それでも自分の規格外の彼女達に比べたら……

 

「提督、何故指示を出さないんです?私達も艦隊を派遣し、横須賀の提督の援護をするべきでは?」

 

 思考していると、大淀が何処か怒りを含んだような声色で意見してきた。

 大淀の言うことも分かる、自分と横須賀の提督が力を合わせればデメリットの一つである未知との遭遇にも対処できるだろう、ついこの間レ級とも共闘した実績もあるし、連携についても問題は無い……。

 

 それでも、自分は自分の部下が可愛い物なんだ……確かに恩もあるし横須賀の提督も個人的には好きだ……だがデメリットの事を考えてしまうとどうしても踏ん切りがつかない、それにデメリットはこれだけじゃない。

 

 最大のデメリットは、艦隊運用による資材の消費……現在自分の鎮守府は、レ級の撃退作戦と大佐との戦闘によって資材が心許ない状態になっている。この状況で更に資材を消費させる訳にはいかなかった。

 だからこそ……今回は艦隊を動かすわけにはいかなかった(・・・・・・・・・・・・・・・・)

「……我が鎮守府からは感娘を援軍には向かわせない、そう横須賀の提督に伝えておけ」

「ッ……!何故、です……!」

「メリットとデメリットを吟味した結果……と言っておこうか」

「見捨てるのですか!?横須賀の提督も、壊滅した鎮守府の人達も!!」

「……ああ」

 

 それを言ったら、大淀は全身をわなわなと震わせて提督を睨みつけてから一礼、その後に執務室の扉を乱暴に開け飛び出していった。

 

「…………」

 

 提督はそれを見送り、白紙に文字を書いてそれを机に置いてから、自分も執務室を後にする。確かに今回の件はデメリットが大きいし、自分の感娘をそんなデメリットに付き合わせる事はない。

 

 部下を巻き込む訳にはいかない……そう考え自分も執務室を出る。

 

「まったく、司令官はいつもそうですね」

「お前……」

 

 執務室から出た所にいたのは、自分が最も信頼している彼女だった。

 

「大方部下を巻き込む訳にはいかないーとか、私達が苦労するーとか考えてるんですよね?」

「……この間の大佐の件でうちの資材も心許ない、これ以上無駄に資材を消費する訳にはいかない」

「だから、自分一人が出向くんですか?自分一人なら燃料だけの消費で済むから」

「……」

「沈黙は肯定と受け取りますよ?」

 

 仕方が無い、今回の案件はそういう事なのだから。

 明日からは資材の確保の為の出撃、遠征になる……その為の戦力の消費は許されない。

 だからこそ今回は自分一人で向かうつもりだった、勿論死ぬ気はないが。

 

 

「司令官はたまに馬鹿になりますよね、そんなので私達(貴方の感娘)が納得すると思ってるんですか?」

「なら……どうするんだ?この鎮守府の資材の状況はお前も知っているだろう?」

「はい、私も正直今回の件については……正直厳しいと思います、救援活動に成功した後の感娘の救援にも、資材……特に燃料や弾薬は使いますからね、万が一のためにも」

 

 そう、自分達だけが燃料を使う訳じゃない……救援できたら、その感娘達の道中の深海棲艦と戦うための弾薬や海上を移動するための燃料も必要になってくる、その燃料は、弾薬は何処から持ってくる?

 

 答えは当然、救援に向かう鎮守府の感娘だ、恐らく横須賀の提督も第二艦隊には燃料や弾薬を積んだ駆逐艦が主体の補給用の編成にしているはず。

 横須賀の提督は資材に余裕があるとこの間の演習でそれとなく聞いているが……うちの鎮守府は違う、大佐の件やレ級の件で資材を著しく消費している、もうこれ以上資材を減らす訳にはいかないのだ。

 

「なら分かっているな?今回出撃するのは俺だけだ……下手したら足でまといになるかもしれんが、人手は1人でも多い方が良い、だがこちらの鎮守府の資材の消費は最低限のみが必要条件……これは作戦だ、救援活動という名の……俺の中ではもう大規模作戦は始まっている」

 

 提督の言葉を静かに彼女は聞いていた、ずっと提督を見てきた彼女は提督がそう言うのを半ば確信していた……だからこそ彼女は提督を一人では行かしたくなかった。

 

「……もしもの時は……横須賀の感娘達が戦闘をするような事態になったら、司令官は逃げられるんですか?」

 

 彼女の問いかけには、答えない……答えられない。

 

「やっぱり司令官は相変わらず、です。……私も行きます、司令官を無事に帰らせる事ができるのは時雨ちゃんより私が適任ですよね?司令官はまだ死ぬ訳にはいきませんから」

「……個人的には反対だが……お前の言うことも正しい、俺一人では万が一の事態に対処できる可能性は少ないが、お前がいてくれたら俺は、俺達は誰一人欠けることなく帰れるだろう」

「じゃあ、雪風も連れて行ってくれますよね?しれぇ」

 

 ふと、声が聞こえた。

 提督達に声をかけたのは雪風、何処から聞いていたのかは分からないが……彼女はにこにこと笑いながら提督達に提案してきた。

 

「雪風、気持ちは嬉しいが……」

 

 自分と対話していた彼女だけの出撃資材も苦しい、そこに駆逐艦とはいえ雪風も連れて行くとなると……そう考えていたら、雪風がドラム缶を持っていた事に気が付いた。

 

「おい、なんだそれは?」

「これですか?この前出撃していたら拾っちゃいました!」

「ほ、報告は……」

「忘れてました!」

 

 ー何だそれは……?ー

 

 開いた口が塞がらない、そんな状態になったのは久しぶりだ……ドラム缶を確認すると、丁度駆逐艦二隻分の資材が入っている事に気が付く。

 これこそ幸運の力か……まるで昔話のご都合主義みたいな展開だと提督思った。

 

 これで資材の心配は解消された。後は二人を連れて海域に向かうだけ。

 

「大丈夫です!雪風がいる限りしれぇには傷一つ付けさせません!」

「私も頑張りますよ、雪風ちゃんだけに負担はかけたくありませんから……ね」

「……ああ、助かる……二人共」

 

 自分は本当に良い部下に恵まれた……そんな心情を胸に抱きつつ、二人の部下に感謝を送る。

 その言葉に二人は笑顔で応え、提督の手を握った。

 

「お前達二人には苦労をかけるな、最初の頃から……」

「そう思うなら、偶には自分を大事にしてくださいね?」

「しれぇも偶には遊びましょうよ!最初の頃にやった大富豪は楽しかったです!」

「おいおい、それはお前の一人勝ちになるだろうに」

「そんな事無いですよ!しれぇの戦略には雪風の幸運も流石に敵わないです!」

「大富豪って運も戦略も必要だからね、あ、その時は私も誘って下さいね?司令官」

「……考えておくよ」

 

 こうして、三人は誰にもバレないようにこっそりと海へ出る。

 

 

 

 

 

 

 これは、大規模作戦まで六日と八時間位の出来事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、普段からお前達は道具だーって言ってる人が随分と部下思いになりましたね?司令官?」

「道具には使い所って物がある、今回はそういうタイミングじゃない……それを分かっているだろ?」

「それはそうですけど、偶には労ってくれても良いんじゃないですかー?」

「……これが無事に終わったら、お前達に間宮の甘味を奢ってやる」

「本当ですか!ありがとうございますしれぇ!」

(今月の俺の給金……トホホ……)




大富豪は基本的に四人でやるゲーム
雪風は提督が一番最初に開発した感娘です。つまりあとの二人は……
今回の案件は結構賛否両論あると思いますが……まぁ深く考えない方が良いかもしれない……?

そして前書きで書いた主人公ポジションの子が空気になるという現象、大規模作戦の時は活躍するから……(震え声)

最後に一言、雪風は本当に資材を拾ったのでしょうかねぇ……?ドラム缶の中に資材が入ってただけ、報告は忘れていた。つまりこれらが意味することは……?クフフ(暗黒微笑)

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