艦隊これくしょん〜ブラック提督(笑)の奮闘   作:SKYアイス

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今更ですけど、提督がモニターで見てる光景はアーケード艦これの奴をイメージした感じです。


第39話

 大海原を二人の感娘と一台の船が進む、船の大きさは人三人が乗り込める位の大きさで、速度も特別速いわけでもない船だ。

 またその船の左右をそれぞれの感娘が囲む形で目的の場所へと進む。

 

 提督は今回壊滅した鎮守府の場所、そしてそこにいる人物を知っていた、提督の名は天音雫。性別は男性だがその容姿は中性的な外見をしており、初見では女と思っていた程に幼い容姿をしている。

 確か今年で彼は16歳という年齢だった筈だ、個人的な印象は人懐っこく勤勉な少年という印象だ。

 

 確か佐世保の提督と特に交流していて知識を学び、勤務態度や鎮守府の運営、何より大規模作戦で話題になっていた敵の補給地の大体の位置の特定という、大きな戦果を残していた。

 

 提督が補給地を特定できて、敵の補給地を奪取できたのは彼の情報があったからこそだ。彼の情報が無ければ大体の位置も掴めず青葉を向かわせる事もできなかった。

 

 彼の将来性は提督も期待していたし、元帥も彼の事を気にかける程には将来性を期待されていた。そんな彼の鎮守府が壊滅した……

 

 提督は雨音雫がもしかしたら自分や横須賀の提督や佐世保の提督の並ぶ程の実力を持てるかもしれないと期待していた……期待していた分今回の壊滅したという事実に少なからず怒りを覚えていた、壊滅させた存在に地獄を見せてやると思った程には提督は怒っていた。

 

 普段の提督ならメリットとデメリットが釣り合っていなかったら見捨てるだろう……だが今回は違う。

 これは、個人的な事情だ。だからこそ自分一人だけでも行くべきだと判断した。

 

 信じられなかったのだ……あの雨音雫が死んだ事を、自分の目で確かめなければとどうしても思った。

 とはいえ資材や作戦の日数も考慮すると……自分一人だけで行った方がベストだろうと考えたが……雪風が前の出撃で資材を二人分確保してくれたのが幸いで護衛も付ける事が出来た。

 

 それも吹雪と雪風という、鎮守府の中でも屈指の実力を持つ二人を。純粋な戦闘力は10強に劣るがその能力は10強並の実力を持つ、そんな彼女達と一緒なのは心強い。

 

 柄にもないが……頼もしいと思ってしまう。

 

 ふと、海上を進むうちに考える……もしも生存者がいたとしてその感娘はどうなるのだろうかと、自分の鎮守府はつい最近春雨を迎えた、彼女の育成や朝潮の育成もまだ満足のいく状態に達していない。

 資材の関係もあり意外と現在の鎮守府は余裕が無いのだ……出来れば横須賀の提督に預けたいが、彼女も彼女で余裕があるとは言えないだろう。

 

 レ級の時や大佐の時も合わせると、彼女には随分と苦労させてしまったし借りも作った。佐世保の提督は事情が事情だ……彼の弟子ならあるいは……そう考えていたところで、吹雪が声を上げた。

 

 

 

「し、司令官!あれを!」

 

 珍しく慌てた様子の声色で遥か遠くに見える何かを指さした。

 ああ、こちらでも確認できた……距離が離れて薄らとしか見えないが……それでも分かった。

 立ち上がる黒煙と、距離が離れていても分かるほどの硝煙の匂いが……

 

 

 戦慄した。

 

 海上という広い視野が約束された状況でも辛うじて目視できる距離なのにこの状況……一体何が起こったのか?たらり……と額に嫌な汗が垂れるのが分かった。

 

「こ、こんな……」

 

 雪風が声を震わせて呟く、自分も二人の様子を見る余裕がなくなっているのか、黒煙立ち上る場所から目が離せない……離そうとも思わない。

 

 目に焼き付いてしまう。その光景を……

 

「急ぎましょう、司令官!」

 

 吹雪の言葉に提督は無言で首を縦に振った。

 

 これだけでも生存者がいる事は絶望的だ……それでも、自分は行かなくてはいけない。あの場所へと。

 

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「……え?」

 

 横須賀の提督は自分が見た物が信じられなかった。

 モニター越しとはいえ見える光景を見た瞬間、ポロリと手元に持っていたペンを落とした。

 傍にいる横須賀の大淀も、その表情を驚愕に染めていた。

 

『こ、こんな……』

 

 第一艦隊の旗艦を任されている蒼龍も、その光景を見た瞬間身体を震わした。彼女ですらこの反応なのだ……勿論僚艦の感娘……特に駆逐艦の面々は初めて見るその光景に悲鳴をあげた。

 

『これが……壊滅した鎮守府……なの?』

 

 蒼龍が小さく震えた声で呟く。そしてその蒼龍の言葉に横須賀の提督も同意せざるを得なかった。

 壊滅したといっても、これ程距離が離れていながら分かるレベルの黒煙……もっと近づけばどうなるのだろうか?

 

 そして、信じられない事は立て続けに起こってしまう。

 

『ほ、報告です!この距離でも分かる程硝煙の香りが……!』

「んなっ!?あ、有り得ないよ!こんなに離れているのに……しかも周りは海なんだよ!?匂いが届く訳が無い!」

『で、ですが香るんですよ!?私だって信じられない!こんな……こんな!!』

 

 蒼龍が悲鳴に似た声色で提督に報告する。

 これ程までに離れていて香る硝煙の匂い……本当に何が起こったのか?そしてそれを行った存在は何なのか?

 

「そ、総員警戒を怠らないで!もしもこの現象を起こした存在が近くにいるなら……間違いなく戦闘になる!!」

 

 

 横須賀の提督の指示の影響か、先程よりも感娘達は落ち着いた様子で目的地へと向かう。

 

 

『あれは……船と感娘?提督、一台の船と感娘を発見した、どうやら同じ方角へ向かっているようだが……』

 

 僚艦の一人である長門からの報告に横須賀の提督は疑問を持つ、この状況で動くなら呉の提督だが……彼は先程呉の大淀から動かないと聞かされていた。

 彼以外にこの状況で動くなら誰だ?そう考えていたが

 

『あれは、呉の提督です!随伴艦は吹雪と雪風、向こうもこちらを発見したのか接近してきます!』

「あ、うん」

 

 結局呉の提督だった、報告は何だったのだろうか?誤報?それとも呉提督のツンデレが発動した?どっちにしろ人手が増えるのは良いことだ。それにしても呉の提督自らが出向くとは……一体どういう事なのだろうか?

 

『こちら、呉鎮守府所属の吹雪と雪風、そして提督の海色海斗。其方の所属を教えてもらいたい』

『横須賀鎮守府所属、旗艦の蒼龍です……あの、失礼ですが呉の提督は何故直接こちらへ?』

「……この目で確認したかった……それだけだ」

 

 嘘だ、呉の提督は損得をきちんと考えられる人間だ。そんな彼が自分の目で確かめる事の危険性をきちんと理解している筈、絶対他になにか理由があるに違いないと考えた。

 だが、それを聞くほど野暮ではないし無駄に聞いて機嫌を損ねるのも面倒なので、このまま合流して件の鎮守府に向かうべき……そう考えた。

 

「ねえ海色君、道中で深海棲艦と遭遇はした?」

『いや、していない……まさかとは思うが』

「うん、こっちも遭遇していない」

 

 それとなく思った事を聞いてみるが、向こうも深海棲艦と遭遇せずにスムーズにこちらに来れたようだ。

 これは中々幸運だなと思うが……彼の随伴艦に雪風がいるならそれも納得する。

 彼女の幸運は前回のレ級騒動で知ったばかりだからだ。

 

『………そうか』

「?……まぁいいや、総員呉の提督を先導しつつ目的地に向かって」

『了解です!』

 

 横須賀の提督の答えに何か思う所があるのか、呉の提督は思い詰めたような表情をして俯いた、だが横須賀の提督はそれに気付く事なく自分の艦隊に指示を出した。

 

 

『……………誘われてるのか?』

 

 ぽつり、と誰にも聞こえない位に小さな声で呉の提督は呟いた。




次回は鎮守府に辿り着き……そして地獄を見るでしょう。

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