お月様まで何マイル?   作:メープルシュガー

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作品を書くにあたって、月姫と歌月十夜を押入れから引っ張り出してプレイしてます。アルクについて調べるつもりが普通に楽しんでました。
改めてやると再発見も多くて楽しいですね。


第5話

 無事アルビダを撃破した私たち一行はこれまでのコビーの給金と私たちへの迷惑料としてアルビダ海賊団の連中から小船と多少の水と食料、金を貰い装いも新たに出発した。

 コビーはアルビダ海賊団での生活で雑用の他に航海士もしていたらしい。

 

「いやー、これなら無事に次の町まで行けそうだね」

「僕にはお二方とも航海術がないのに海に飛び出したことが信じられませんよ……」

 

 あまりにもノープランな私たちの旅に呆れた表情を浮かべるコビー。

 

「あの……ルフィさん、ワンピースを目指すってことはあの”偉大なる航路”に入るってことですよね?」

「ああ」

「……あそこは海賊の墓場とも呼ばれる場所で……」

 

 私たちの旅を心配してるのだろう、なかなか続きがでてこない。その先にはどうあっても不吉な言葉しかないだろうに。

 

「うん、だから強い仲間が要るんだ。これからお前のいく海軍基地に捕まってる奴」

「ああ……ロロノア・ゾロですか?」

「いい奴だったら仲間にしようと思って」

 

 ここでルフィが爆弾を投下、その衝撃にコビーがあんぐりと口を開けている。

 

「な、なにを言ってるんですかルフィさん! ロロノア・ゾロは通称”海賊狩りのゾロ”って呼ばれるほどの悪名高い恐ろしい奴なんですよ!」

「ふーん」

「だから仲間にしようなんてバカな考えは」

「でも別に俺は仲間にするって決めたわけじゃなくて、もしいい奴だったら、」

「悪い奴だから捕まってるんですよ!」

 

 二人の会話がヒートアップする、いやコビーが一方的に騒いでるだけだが。これでは平行線のまま話が繋がらないので適当な所で待ったをかける。

 

「まあまあ、とにかく目的の町に行ってみないことには何もわかんないんだから。そんなに声を荒げないの」

 

 なんだか最近の私こういう役回りが多い気がする。お姉さんというよりおかんになった気分だ。

 

「それにあながち、せんちょの考えも悪くないかもしれないよ?」

「お?」

「え?」

 

 どういうこと? と問うような視線にウインク一つで答える。

 船はゆく、海軍基地へ。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 道中、せっかく手に入れた食料をルフィが後先考えず食べてしまうというハプニングはあったものの、コビーの航海術により驚くほどあっさり海軍基地のある町シェルズタウンに着くことができた。

 五日は持つはずだった食料が底をついたので、まだまだ続くこれからの旅のための備蓄と生活雑貨をこの町で補充しなくてはならない。

 こっちはそれなりにやることが多いっていうのに我らがキャプテンは町について早々、飯屋に向かって歩き出す。その姿に私とコビーは小さく嘆息した。

 

「いやー、食った食った!」

「食べすぎですよ……船でもあんなに食べたのに一体その身体のどこに入るんですか」

「男の子だからね、食べ盛りなんだよきっと。コビーもたくさん食べないと大きくなれないよ?」

「それにしたって限度が……」

 

 現在、食事も終わりお茶を飲みながら一息ついている。食事中、会話の中にゾロやモーガン大佐の名前が出るたびに他の客がビビりっぱなしで私以外の二人は困惑していた。

 

「それで二人はこれから海軍基地に向かうんだよね?」

「ああ、ゾロって奴がどんな奴か見てくる」

「またルフィさんはそんなこと言って……アルクさんは一緒に来ないんですか?」

「そりゃ海賊名乗ってるんだから、海軍基地がある町に長居するのはまずいでしょ。せんちょの用事が終わるまでに私は出港準備を進めとくよ」

「それもそうですね」

「いやー、仲間がいると色々やってくれて助かるなー」

 

 クルーとしてキャプテンの補佐は重要な仕事だ。というよりそういうこまかな雑務はルフィには期待できないため、私がやるしかない。

 ルフィが海軍基地に向かうので、十中八九問題を起こすことは分かってるがまあなんとかなるだろう、ルフィだし。コビーがちょい心配なので保険をかけておく。

 

「なにか問題があったら大声で『たっけてー!』って叫んでね。飛んでいくから」

「は、はあ。分かりました」

 

 コビーはよく分かっていなさそうだったがとりあえず頷いてくれたのでよしとしよう。

 

「じゃ、出発するか!」

 

 ルフィのその言葉に私たちは会計を済ませ店を出る。肉は買えよ! 絶対だからな! というルフィの言葉を背に受けながら、はいはいと返事をして二人と別れた。

 

 

 

「よい、しょっと」

 

 二人と別行動を始めて3時間、ようやく一通りの買い物を済ませ船に荷物を詰め込むことが終わった。時間はかかったが必要なものは買えた。基本である水と食料、生活雑貨、航海に必要な道具、医療用品一式エトセトラエトセトラ。

 

「こんなもんかなー」

 

 自身の仕事を終えた達成感とともにうーんと伸びをする。さてと、二人はどうしてるかな?

 その時、町の方角から一人の男が走ってきた。

 

「お、おいアンタ! 飯屋にいた麦わらの男の連れだろう!?」

「はい?」

 

 息も絶え絶えにその男性が確かめるように声をかける。必死な声色からとても焦っていることが見受けられた。

 

「えっと、はいそうですけど」

「アンタ、早くこの町から離れたほうがいい! 麦わらの男が海軍大佐の一人息子を殴り飛ばしたんだ! 早く逃げないとアンタも仲間も殺されちまうよ!」

 

 そういや、そんなイベントあったな。モーガン大佐の一人息子と言えば、確かコビーと一緒にガープに鍛えられる奴だったよね。名前はヘ……ヘル……ヘルメット?

 

「やるなーキャプテン。早速海軍に喧嘩を売ったかー」

「お、おい、そんなのんびりしてる場合じゃないだろう! 麦わらの男はもう海軍基地に向かったんだぞ!」

「あぁありがとね、教えてくれて。それじゃ迎えに行ってくるよ」

 

 軽く微笑み感謝を伝えると、脚に力を込める。私を中心として暴風が吹き荒れ、船が大きく揺れた。ドンという音とともに私の身体は地上の重力から解き放たれ弾丸のように空を駆ける。

 その跡には呆然と尻餅をついて空を見上げる男性しかいなかった。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「みっけ」

 

 上空から海軍基地を見下ろす。割と状況は切羽詰まっているようで多数の海軍兵士がコビーと磔になっている男に銃口を向けていた。

 空から急下降し地面に降り立つ直前でスピードを緩めふわりと着地した。位置はコビーたちと海兵のちょうど間。

 

「空から……女……!?」

「ア、アルクさん!? いったいどこから……!?」

「やっほ、コビー。問題あったら飛んでくるって言ったじゃん」

 

 背後からコビーと磔になった男(まあゾロなんだけど)の驚愕した声に振り向いて返事をする。

 

「ねえねえ、それより急いで来たから服装スカートのままなんだ。一応、押さえてたんだけど降りるときにパンツ見えなかった? 大丈夫? 私、痴女じゃない?」

「出会い頭になんてこと聞くんですか! そんな状況じゃないでしょう今は! あと見えませんでした!」

「よかったー」

「なんなんだ、この女……?」

 

 私とコビーの軽口にようやく海兵たちも我に返ったようで、

 

「女! キサマ何者だ! そいつらの仲間か!」

「うん、友達なんだ。だから殺さないでもらえると嬉しいな」

 

 代表して声を上げた上官っぽい兵士に、ニコリと優雅に微笑を浮かべる。アルクェイドの人外の美ともいうべき美貌に相手はひるんだように後ずさりをした。

 

「殺せ……」

 

 海軍兵士の後ろからくぐもった声が聞こえた、モーガンか。

 

「そいつらを射殺しろォ!」

 

 その命令に兵士たちが一斉に銃口を私たちに向けなおす。私は表情を変えないまま銃弾を防ぐため腕を前に突き出した。

 発砲される瞬間、ルフィが私の眼前に現れその身に銃弾の雨が降り注ぐ。

 

「ありゃ」

「ルフィさん!」

「お前……!」

 

 上げた声は上から私、コビー、ゾロの順。

 

「効かーん!」

 

 グッと引き絞った身体を広げ、銃弾を弾き飛ばす。驚愕した声が海兵たちから上がった。

 

「てめぇ……! 一体何者なんだ!?」

 

 ゾロの問いただすような声にうちのキャプテンはニッと笑みを浮かべ、

 

「俺は海賊王になる男だ!」

「その仲間です」

 

 ついでに私もシュタッと手を上げて応える。驚くゾロにルフィは近づき、背負っていた三本の刀を突き出す。

 

「ほら、お前の宝物どれだ? わかんねぇから三本とも持ってきちゃった」

「三本とも俺のさ……俺は三刀流なんでね」

 

 ルフィはふーんと納得すると、ゾロから海兵に視線を移し、

 

「ここで俺と一緒に海軍と戦えば立派な悪党だ。このまま死ぬのとどっちがいい?」

「うわ、容赦ないね。せんちょ」

 

 ゾロはルフィのその言葉についに観念したように不敵な笑みを浮かべ、

 

「てめぇは悪魔の息子かよ……いいぜ、ここでくたばるくらいならなってやろうじゃねぇか、海賊に!」

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