黄昏の艦隊   作:秋太郎

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外部からの一手

パラオ泊地。

5年前に本土にいる提督・艦娘達が命を削り、落とし、幾千もの死体を積み重ねて得た土地である。

最初期のパラオ泊地は酷いもので、ひっきりなしに深海棲艦に鎮守府を襲撃されたものだ。

本土から離れていることもあって支援も得られにくく、現場だけでどうにかすることも珍しくはなかった。孤立無援状態かつあまりの襲撃の多さに精神を病むものも多く、多くの艦娘達が犠牲となった。

また提督達も無事とは言えなかった。

戦果を挙げねば上からドヤされ、艦娘を犠牲にしてしまえば下から怒りがぶつけられる。ストレスから鬱になるものや、艦娘に暴力を振るう者、自害する者などやはり精神を病んでいく者が多かった。

そんな中に送り込まれた人物がいた。

その人物は3年前にパラオ泊地に新人として着任したが、その手腕をもってしてパラオ泊地周辺の敵を一掃し、周辺海域を沈静化させた。

パラオ泊地英雄とまで謳われた彼らにはいつしか「黄昏の艦隊」と呼ばれるようになった。

 

しかしその栄光は長く続くかなかった。

送られた資料によれば、1年前に彼は突如発狂し薬に溺れ艦娘に手を出しそして何者かに殺されかけた。半月前に病院から退院したが、他の提督や一部の艦娘達から罷免を求められた。

パラオ泊地で一体何があったのだろうか。

事実確認が取れてない以上常日頃人材不足であるパラオ泊地から問題を起こしたとはいえ、有用な人材を切り捨てる必要もない。

実際、問題があるのは彼だけではないのだ。軍部から見れば他のものも十分に問題があるといえよう。ただやはり人材不足なのだ。

どうしたものか、と頭を抱えているとドアを叩く音が聞こえた。

 

「入れ」

 

入ってきたのは大和であった。

静かに一礼したあと、新任の提督をお連れしましたと言い1人の男を招き入れた。

 

「あー…すまん。 名前はなんだったかな」

「宇山 浩二と申します。 今年より鎮守府に着任することになります」

 

宇山…成績優秀者の中でもトップクラスであったと記憶している。

将来有望で是非私に面倒を見て欲しい、と打診があった。

彼を見るとその目は輝き、私に対する尊敬の念も見て取れる。またその目は希望に溢れていて、眩しさを覚えるほどだ。とても素直な人間なのだろう。

 

(こやつは現実を知らんな)

 

内心でそう毒づくとどうしたものかと再び頭を悩ませた。

こういう人間にものを教えるには現実を叩きつけたほうが…とそこまで考え、ふとあることを思いついた。

 

「宇山少佐、君は非常に優秀だと聞いている」

「ありがとうございます!」

「そんな君をここで燻らせるのはどうかと思う」

 

そこまで言うと宇山は困惑の表情を浮かべた。

恐らく本人としてはこの横須賀鎮守府トップである私ーー小塚 雄一 ーーの元で働けると期待していたのだろう。そして恐らく上の人間も都合のいい駒を大本営の近くに置くためにこんな手回しをしたのだろう。

ーー私の艦隊がまともに動かせないことを知っていて。

なんにせよ丁度いい。あやつがどんな状態であろうと、こやつの経験には悪いものにはなるまい。パラオ泊地で何が起こったのか探ることもできる。貴重な人材を潰すわけにもいかないし、悪影響及ぼすようであれば直ぐにこちらに連れ戻せばいい。

 

「君に必要なのはより戦場に近い現場だ。 そこで、君はこの世界の現状を知るべきだーー君にはパラオ泊地に行ってもらおう」

 

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