振り向きへホームラン【完結】   作:puc119

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松明を持って猫ちゃんの住処へ行くと、猫ちゃんたちが華麗なサイドステップを披露してくれます
かわいい(`・ω・´)




第12話~配給は大食いマグロ~

 

 

 ガタゴトと揺れる馬車の上。

 今の季節はわからないけれど、それほど暑くはない日差しと晒された場所の上へ吹く風が心地良い。てか、この世界って季節はあるのか? 雪のない雪山とか氷海へ行ってみたい。

 まぁ、どうせ季節なんてないんだろうけどさ。

 

 あの相棒がいないせいで、随分と静かな馬車となっている。いつもなら彼女がずっと喋ってくれるおかげで、この道のりもそれほど長いとは感じなかった。

 しかし、今この馬車に相棒はいない。まぁ、俺が置いて行ったってのもあるんだけど。

 かと言って、俺一人と言う訳でもない。

 

 隣を見る。

 ジンオウガ一式、背中には多くのソロハンマー使いがお世話になったであろうヴェノムモンスター。身長は俺よりも低く、たぶん年齢も下だと思う。胸の大きさは残念だけど、整った顔立ちをしているとはっきりわかる。

 そんな一人の女性が隣に座っている。ただただ前を見ている様子で、何を考えているのかなんてわからない。

 

「どうかしたの?」

 

 俺が見ていることに気づいたのか、こてりと首を傾げ、此方を向いて彼女が言った。

 

「ああ、いや……ただ、どうして君がこのクエストに来たのかなって思ってさ」

 

 この彼女のHRは3以上。一方、俺はHR1。そしてこのクエストは遺跡平原の採取ツアーだ。別に大型種を倒す予定なんてないし、今日は時間いっぱい魚を釣る予定。そのことは彼女にも伝えてある。そうだと言うのに、彼女がこのクエストに来る理由がわからなかった。

 俺みたくお金が足りないから魚を釣りに来た。とかならわかるけれど、それは違うだろう。だってこの子、貧乏臭がしないもん。

 

「……暇だったから来ただけ。それにたまには魚釣りも悪くない」

「えっ、君も魚釣りするの?」

 

 マジですか。てっきり採掘や採取をしているものだと思っていた。

 いや、だって遺跡平原の魚を釣ったところでお金を稼げる以外の意味なんてほとんどない。古代魚とかカジキマグロが釣れるならまだわかるけど。

 

「そのつもりだったけど。えと……何か、マズかった?」

「い、いや。別に問題はないぞ」

 

 ホントこの子は何を考えているんだろうなぁ……

 装備を見る限り、パーティープレイをしたくないと言うことはないと思うけれど、今まではずっとソロだったんだろう。そうだと言うのに、いきなり俺についてくるとは……

 

 はっ! もしかしてこの子、俺のことが好きなんじゃ!? ……まぁ、それはないか。今までカッコイイところなんて見せたことがないし。

 

 ホント、何考えてんだろうね?

 

「へい、アイルー。あとどれくらいだ?」

「まだ3分の1も来てないニャ」

 

 長いねぇ……

 

「旦那。今日はいつものハンターと一緒じゃないのかニャ?」

「ああ、あの相棒はお休みだ」

 

 休みと言うより、俺が抜けがけしただけ。だからバレたらまた怒られそうだ。どうかバレませんように。

 

「うニャー…………浮気?」

 

 色々と違うわ。

 馬鹿言ってないでキビキビ働け。

 

 恐る恐る、隣の彼女の様子をチラリと見てみたが、特に変わった様子はなかった。

 

 何をビビっているんだか……

 

 でも、まぁ、それも仕方の無いことだと思うのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 その後は彼女との会話もなく、ひたすらにゆっくりと過ぎ去って行く景色を見ながら、馬車に揺られ続けた。痛いほどの沈黙ではあったけれど、何を話せば良いのかなんてわからない。

 これならソロで来た方がよっぽど気は楽だった。

 

 別に彼女のことが嫌いとか言うわけではないんだけどさ。

 

 そして、ようやっと遺跡平原へ到着。

 ずっと座っていたせいで固まってしまった体を伸ばす。

 

「よしゃ! 行くかっ!」

 

 いつものように声だし、気合を入れる。

 そうでもしないとこの臆病者は動いてくれないのだ。

 

 しかし、いきなりそんな声を出したものだから、隣にいた彼女は驚いたらしく、ビクっとなり此方を見た。

 すみません。癖なんです。

 

 う~ん、相棒なら『おおー!』とか言ってくれるんだけどなぁ。どうにも調子が狂う。

 

 ま、気にしたってしゃーない。彼女には悪いけれど、自分のペースで行かせてもらおう。

 

 

「釣りは何処でやるの?」

「ネコの所」

 

 遺跡平原で釣りのできる場所は2つある。一つがベースキャンプで、もう一つがアイルーやメラルーの住処となっているエリア10。ああ、あとエリア10には山菜じいさんもいるか。

 

 エリア10で釣りをする理由は、彼処でないと黄金魚が釣れないから。今回の目的はお金集め。そのためには小金魚と黄金魚を釣る必要がある。そして小金魚はベースキャンプでも釣ることはできるけれど、黄金魚は釣れない。だからちょっと遠いけどエリア10まで行く必要があった。

 

 支給品ボックスから、地図だけを取り出す。

 そんじゃ、ま。行きますか。

 

 

 

 

 エリア10へ着くと、数匹のアイルー、メラルーと山菜じいさん。そしてオトモにすることのできるアイルーがいた。

 オトモアイルーを雇ってみようかと考えてみたけれど、どう考えても邪魔にしかならないだろうからやめておいた。筆頭オトモとか言う明らかなバグがいないだけまだマシだけど、オトモアイルーの活躍する光景は思い浮かばない。無駄にヘイト稼ぐの本当にやめてください。

 

 魚がいると思われる水場へ釣り竿を投げる。餌は付けない。

 ゲームの時見たく、どんな魚が泳いでいるのかはわからないけれど、数匹の魚影ははっきりと見えた。どの魚が泳いでいるのかわかれば、黄金ダンゴを使ってリセットできるんだけど、これではそれも意味はないだろう。

 まぁ、黄金ダンゴなんて持っていないんだけどさ。それに時間はあるんだ。のんびりやろう。

 

 糸を垂らすこと数秒。クイっと釣り竿が引っ張られた。それに合わせて釣り竿を上げると、其処には一匹の魚。たぶんサシミウオだと思う。

 

 釣りをする場合、普通なら魚が食いつくまで、0~2回ランダムでフェイントが入る。けれども、スキルで釣り名人が発動している場合は、そのフェイントは確定で0。

 原理は意味わからんけれど、便利なスキルです。

 

「……そう言えば、どうして釣りなんてするの?」

 

 竿を引き上げ、釣った魚をアイテムポーチへ入れながら彼女が聞いてきた。チラリとしか見えなかったけれど、その魚は大きく金色に輝いていた。黄金魚、良いなぁ……

 

「あ~……そのですね。お金が欲しかったんですよ」

 

 恥ずかしさを紛らわすために竿を投げる。

 そんな恥の多い生涯です。

 

「そっか」

 

 そしてまた無言に。

 

 なんだこの空気は。助けてください。

 男女が並んでひたすら釣り。傍から見ればきっとすごい光景だろう。

 

 こんなことになるのなら、相棒を誘えば良かったかもしれない。

 

 

 

 

 その後もやっぱり会話なんてなく、ひたすらに釣りを続けた。

 サシミウオと大食いマグロ、黄金魚は釣った数が10匹を超えてしまい、もうアイテムポーチへ入れることができない。小金魚もかなりの量を釣ったと思う。

 随分と生臭いアイテムポーチになってしまったものだ。ホント、アイテムポーチの中ってどうなっているんだろう。

 

 持ちきれなくなった魚は、後ろで踊っているアイルーやメラルーへあげることに。ニャーニャー言って魚を受け取ってくれる姿はなかなか可愛い。只で魚をもらえるとわかったのか、今では俺と彼女の後ろには魚を求めるネコたちの行列ができている。魚難民とでも言えば良いだろうか。

 

 今釣った魚を全部売れば、少なくとも5000zは超える。それでも、せっかく時間をかけて此処まで来たのだ、時間いっぱい釣りを続けよう。お金があって困ることはないはず。

 まぁ、そろそろ終わりの時間だとは思うけど。

 

 相変わらず無言な二人。別に沈黙は嫌いではないはずだけど、この空気は少々重い。

 

「……あぁ^~魚がぴょんぴょんするんじゃぁ^~」

 

 まぁ、かと言って彼女と話すことなんてないん……

 

「今なんか言ったっ!?」

 

 なんか聞こえたぞ、おい。

 

「……何も言ってない」

 

 そうか空耳か。

 なんだろう。俺、疲れているのかな。そうだとしたら精神的にだろうな。色々と疲れているんです。

 

 

「……貴方って、どうしてハンターになったの?」

「ん~、どうしてかって言われてもなぁ」

 

 彼女からの質問が来た。

 けれども、それは非常に応え難い質問。

 

「そのだな……気がついたらさ。ハンターになっていたんだよ。他にやれそうなこともなかったし、それで続けてる。君は?」

 

 もしかしたら、俺はもう元の世界へ帰ることはできないかもしれない。モンハンにはクリアなんてないのだから。

 それでもできる限りはやってみたいんだ。意味はわからないけれど、せっかくこの世界へ来たんだ。それなら俺の好きにやらせてもらう。

 

「やっぱりそうだったんだ……私も気がついたらそうなってた」

 

 うん? ……私も?

 ちょ、ちょっと待て。いきなり過ぎる。せめて伏線くらいは用意してほしい。

 

 水面へ垂らした糸が強く引かれた。けれども、それよりも今は聞かなければいけないことがある。

 

 だって、この彼女の言葉はまるで……

 

 

「私は――この世界の人間じゃない。貴方もそうなんでしょ?」

 

 

 此方を真っ直ぐと向き、彼女が言った。

 

 頭の中が一瞬で真っ白に。つまり彼女は俺みたく……そんなことがあるのか? こんな馬鹿げた話が俺以外にも存在するのか?

 

「……君はいつからこの世界に?」

「一年くらい前から」

 

 再び視線を水面へ垂らした糸へ向ける彼女。

 その糸も強く引っ張られていたけれど、彼女は釣り竿を上げようとはしなかった。

 

 一年……それだけの時間を過ごしても、彼女は元の世界へ帰ることはできていない。

 ……まいったね、こりゃあ。元の世界へ帰るのは本当に無理なのかもしれない。まだ決め付けるのは早いけれど、望みは――薄い。

 

 そんなことを考えたこところで、クエストの終了時間が来た。

 

 とりあえず、今日の目標は達成することはできたけれど、何と言うか……今まで見えなかった大きな壁が、見えた気がした。

 でもそれが良いことなのか、悪いことなのかはわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 遺跡平原からの帰り道。

 彼女には色々と聞かなければいけないことがあったはずなのに、碌な会話をしなかった。

 

 唯一した会話も……

 

「君は元の世界へ帰りたい?」

「わかんない……貴方は?」

「……俺もわかんねーや」

 

 その程度のものだった。

 何かを聞かなければいけない。でも何を聞けば良いのかがわからない。何も考えずハンマーを振り回すくらいしかできないような不器用者なんです。

 

 

 そのまま会話もなく、バルバレへ到着。

 飯を誘う気にもなれず、彼女とは別れることに。

 

 けれども、このまま別れちゃダメな気がして、手を挙げ帰ろうとしている彼女を呼び止めた。

 

「どうしたの?」

 

 俺にもわかりません。

 

 さて、そんなことを言っても呼び止めてしまったんだ。なんでもありませんはマズいだろう。何か理由を作らなければいけない。

 

 

 ふむ……

 

 

「直ぐに追いついてやるからちょっと待ってろ」

 

 

 彼女へ指を差し、騒がしい集会所の中でも響くような声で高らかに宣言。

 そんな俺の言葉に彼女は驚いたような顔をした。

 

「……うん、待ってる」

 

 そして、そんな言葉を落としてから、静かに笑った。

 

 彼女と俺の間にはまだまだ大きな差がある。それでも、絶対に追いついてやろうだなんて、随分と自分勝手なことを去って行く彼女の後ろ姿を見送りながら思った。

 

 

 

 

 

 

 

 彼女と別れたあと、さっきのクエストで釣った黄金魚と小金魚は全て売却。黄金魚10匹、小金魚24匹で合計17000z。これで暫くはお金に困ることもなさそうだ。

 

 お金が入り財布は重くなったけれど、気分は重くない。

 あの彼女とのこともあり、少しばかり沈んでいた気分はもういない。これで調合書も買うことができると、ウキウキ気分で帰宅。

 

「……おかえり」

 

 そして、家の扉を開けるとそんな相棒の声が聞こえた。

 扉を閉めた。

 

 いかんいかん、間違えて相棒の家へ入ってしまったか。流石に浮かれすぎていたようだ。

 

 外へ出て家の場所を確認。

 けれども、どうやら俺の家で間違っていないらしい。

 

 ……まいったね、こりゃあ。

 

 ホント、上手くいかない人生です。

 なんて言い訳をすれば良いのやら……

 

 






実際に遺跡平原採取ツアーで50分釣りを続けた結果ですが

サシミウオ:57
大食いマグロ:38
眠魚:13
小金魚:26
黄金魚:26
シンドイワシ:18

となりました
予想以上に黄金魚が釣れ、眠魚が釣れません
50分かけてこの程度ですので、お金稼ぎにはあまり向いていないかもしれませんね


と、言うことで第12話でした
もう文字数は気にしないことに
それでも5000文字は超えないよう頑張ります……

これで暫くはハンマーの彼女とお別れでしょうか?
あまり彼女ばかり構っていると、虫棒使いの相棒さんがダークサイドに堕ちそうですし

次話はお説教な気がします
では、次話でお会いしましょう

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